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母たちの村

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セネガル・ブルキナファソ

母たちの村

 

Moolaade

監督:ウスマン・センベーヌ
出演:ファトゥマタ・クリバリほか
日本公開:2006年

2016.7.6

人間の尊厳とは何か?セネガルの日常から世界に投げかける問題提起

「アフリカ映画の父」と評されるセネガル人映画監督センベーヌ・ウスマン(1923年生まれ、2007年に死去)の引退作『母たちの村』はアフリカにおけるFGM(女性器切除)の慣習をテーマにした作品です。主演のファトゥマタ・クリバリは実際に女性器切除を受けているそうで、劇中でも女性器切除をしたために2回流産をし、娘の出産の時に帝王切開をしなければならなかったという設定で主人公・コレを演じています。原題のMoolaadeとは「保護を求める人々を守らないとバチが当たる」という風習で、自分の娘に女性器切除をさせなかった主人公・コレに4人の少女たちが保護を求めに来たことから物語が始まります。

物語は非常にシンプルで、伝統・慣習を守ろうとする父権的な権威に固執する男性たちと、自由を求める女性たちの対立を描いています。監督はFGMを批判する立場に明確にたっていますが、争いに焦点をあてるというよりもセネガルの日常をあくまで朗らかに描くことに徹し、その流れの中で価値観の対立を描いていきます。終始アフリカののどかな雰囲気を感じ取ることができ、そのリズムからはみ出すことなくFGMを廃するべきだという姿勢を示すことで、シリアスなテーマをとっつきやすく表現しています。宗教上の理由と言いがかりをつけてFGMを続けようとしている男性たちの人間性をも尊重していて、撮影当時80歳を超えていた監督の人生の分厚さが感じとれます。名匠ウスマン・センベーヌがこの映画で目指したところは、アフリカの一つの慣習から「人間の尊厳」という普遍的な事柄へと物語を昇華させることだったのでしょう。

2004年のカンヌ映画祭・ある視点部門でグランプリを獲得した本作はFGMについて予備知識がなくても全く問題なく鑑賞でき、またセネガルのカラフルな世界を堪能できるオススメの一本です。

夢のアフリカ大西洋岸ルート
カサブランカ~ダカールを走る

カサブランカから大西洋岸を走り抜けダカールまで、移り変わる景色、民族、文化、アフリカが凝縮された縦断ルートの旅へ。かつてのダカールラリーのコースをも含む、ロマンあふれる縦断ルート。

シアター・プノンペン

7b09bc5633d53445©2014 HANUMAN CO., LTD

HanumanFilms-Logo (2) パンドラ配給

カンボジア

シアター・プノンペン

 

The Last Reel

監督:ソト・クォーリーカー
出演:マー・リネット、ディ・サーベット、ソク・ソトゥン、トゥン・ソーピー、ルオ・モニーほか
日本公開:2016年

2016.6.29

映写機から放たれる未来への光
カンボジア人女性監督による決意の一作

映画の舞台は現代カンボジア。首都・プノンペンは、1970年代のクメール・ルージュ(ポル・ポト派)による恐怖政治の時代を経て、今ではグローバルなダンス音楽が街中に響くようになっています。一方、テレビでは大量虐殺を繰り広げたポル・ポト派の裁判がいまだに続く・・・そうした描写から映画は始まります。

主人公の女子大生・ソポンはふと入った映画館「シアター・プノンペン」で流れている作品に自分の母が出演していることを発見します。その作品『長い家路』はポル・ポト派による作品処分を切り抜けた貴重な作品で、母の美しい姿にソポンは魅了されますが、フィルムの最後の一巻が欠けていることを映写技師から聞きます。そして、ソポンは病床の母のために物語の結末を自分で完成させたいと思うようになります。

ソボンの熱意は徐々にまわりの人々の感情や人生を動かしていきますが、その原動力となっているのはカンボジアの過去をみつめる監督自身の眼差しの強さに他なりません。自国の目を背けたくなるような歴史をしっかりとみつめ、一体何が起きたのか、これからの世代に何を伝えられるのかということを必死で模索しているエネルギーが映画から伝わってきます。

私自身、クメール・ルージュによる惨劇を世界史の授業で学ぶ知識以外で実感した出来事があります。Dengue Feverという2000年代アメリカのカンボジアン・サイケデリック音楽バンドがきっかけで知った人気女性歌手パン・ロン(劇中でもうっすらと似たような曲が流れています)がポル・ポト時代に粛清されたと知ったことです。パン・ロンの曲を聞くと50・60年代当時のにぎやかな雰囲気がそのまま私の耳に響いてきましたが、何の罪もない彼女の身にあった悲劇を知った時、まるで曲が何か重要なものを置き去りにした状態で鳴っているように聞こえました。ソボンもきっと未完の映画から何か抜け落ちたイメージを受け取って、それを必死で埋めようとしているのだと終始共感しながら鑑賞しました。

プノンペン  メイン写真

監督のソト・クォーリーカーはこれから東京国際映画祭製作のオムニバス映画への参加も決まっている注目の新人女性監督です。映画の冒頭から「おそらくこの作品は女性が撮ったのだな」とわかる独特の瑞々しいタッチで物語が描かれます。期待の女性監督の情熱を体感したい方、カンボジアの今と過去を見つめてみたい方にオススメの作品です。

7月2日(土)より岩波ホールにて公開
以後、全国順次公開予定。

その他詳細は公式サイトからご確認ください。

ハノイからプノンペンへ陸路で繋ぐ
アジアハイウェイ1号線を行く

2015年1月に開通した橋を利用しベトナムからカンボジアへ。7つの世界遺産も訪問。

大クメール周遊

クメール王朝の歴史を紐解くゆとりある遺跡探訪の旅。シェムリアップに5連泊・こだわりのホテルに滞在。

プノンペン

カンボジアの首都。フランス植民地時代の美しい建物が残り、「東洋のパリ」とも称される。カンボジア国王の居住地・カンボジア王宮には、今も国王一家が暮らす。

独裁者と小さな孫

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ジョージア

独裁者と小さな孫

 

The President

監督:モフセン・マフマルバフ
出演:ミシャ・ゴミアシュビリ、ダチ・オルウェラシュビリほか
日本公開:2015年

2016.6.15

現代国際社会への示唆に満ちた
生々しいフィクション

今からそう昔でも未来でもないある日、地球上のどこかにあってもおかしくないないある独裁国家で突如クーデターが起きます。キューバのカストロ議長のように軍服を着こなす独裁者は孫(おそらく6歳ぐらいの少年)と宮殿を逃げ出し、民家に身を隠したり変装したりしながら逃走します。独裁者はその旅路の最中、自分の行った統治の結果を見ることになります。はたして独裁者、そしてその孫は何を思いどのような運命が彼らを待っているのでしょうか…

監督はイランの巨匠モフセン・マフマルバフ。イラク戦争・アラブの春・シリア騒乱などの国際問題を連想させつつも明らかに架空の世界と分かるタッチで進んでいく物語から、世界的巨匠の実力を伺い知れます。主人公たちが住居を追われてあてもなくさまようというストーリーは、監督自身も自由な表現を求めてイランを出てロンドン・パリを拠点に映画を作っているという事実も反映されているように思えます。

冒頭で独裁者が孫を楽しませるために街全体の電気をつけたり消したりしますが、撮影地はジョージアの首都・トビリシです。行ったことがなければまずどこだかはすぐにはわからないような、不思議な雰囲気を醸し出しています。日本人にはまだまだなじみのないジョージアの光景に、映画開始直後から引き込まれることでしょう。 コーカサス地方で撮影された映画を見てみたい方、映画の持つフィクションの力を体感したい方にオススメの映画です。

 

コーカサス3ヶ国周遊

広大な自然に流れる民族往来の歴史を、コンパクトな日程で訪ねます。
複雑な歴史を歩んできた3ヶ国の見どころを凝縮。美しい高原の湖セヴァン湖やコーカサス山麓に広がる大自然もお楽しみいただきます。

民族の十字路 大コーカサス紀行

シルクロードの交差点コーカサス地方へ。見どころの多いジョージアには計8泊滞在。独特の建築や文化が残る上スヴァネティ地方や、トルコ国境に近いヴァルジアの洞窟都市も訪問。

Tbilisi

トビリシ

クラ川に面したジョージア(グルジア)の首都。ペルシャ系、トルコ系、モンゴル系と様々な民族の侵略を受けて来た歴史を持ちます。市内を一望できる丘の上にはジョージア正教のメテヒ教会が建ち、旧市街の中にも数多くの教会やシナゴーグが建っています。

ラッチョ・ドローム

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インド・トルコ・エジプト・フランス・スペイン

ラッチョ・ドローム

 

Latcho Drom

監督:トニー・ガトリフ
出演:タラフ・ドゥ・ハイ・ドゥークス、チャボロ・シュミットほか
日本公開:2001年

2016.6.8

流浪の民たちの道筋を辿る旅へ思わず出たくなる、至幸の映像詩

自身がロマ(北インドのロマニ系に由来するジプシー)のルーツを持つアルジェリア生まれのトニー・ガトリフ監督は『ガッジョ・ディーロ』『トランシルヴァニア』など他にも多くのロマに関する映画を撮っていますが、その中でも特に代表作と言われているのが本作『ラッチョ・ドローム』です。題名はロマ語で「良い旅を」という意味で、映画はロマが元々住んでいたと言われるインド北西部のラジャスタンからスタートし、スロヴァキア、トルコ、ハンガリー、エジプト、南フランスなどを経て最終的にスペイン・アンダルシア地方にたどり着きます。各地で奏でられる音楽をひたすら映し出すというドキュメンタリーに近いタッチで描かれていますが、本作がドキュメンタリーと必ずしも言い切れないのは、その土地土地の日常の様子や街の音、そして音楽に聞き入る人々が醸しだす熱気が力強い物語を紡いでいる点にあります。特にジョニー・デップが「世界一好きなバンド」と公言しているルーマニアのタラフ・ドゥ・ハイドゥークスが地元のクレジャニ村で老若男女を巻き込んで演奏する風景や、ジプシー・スウィングの大御所チャボロ・シュミットが南フランスのサント・マリードゥ・ラ・メールの祭りの中で演奏する映像は圧巻です。私自身、この映画の影響でルーマニア・ハンガリー・ポーランド・南フランス・トルコなどを旅しました。

ジプシー音楽を知ってみたいという方、一気に魅力的な場所を多く見れるのでどこに旅行に行こうか考えていらっしゃる方におすすめの1本です。

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イスタンブール

ビザンツからオスマンまで、帝国の興亡を見つめてきた街。ボスポラス海峡を隔て、アジアとヨーロッパにまたがるトルコ最大の都市。首都はアンカラに遷都されましたが、現在でもトルコの文化、商業の中心です。

子供の情景

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アフガニスタン

子供の情景

 

بودا از شرم فرو ریخت‎,

監督:ハナ・マフマルバフ
出演:ニクバクト・ノルーズほか
日本公開:2009年

2016.6.1

若きイランの女性監督がどうしても伝えたかったアフガニスタンの姿

舞台はアフガニスタンのバーミヤン。アフガニスタンでロケが行われた映画はそもそもあまりないのではないかと思いますが、その中でも2001年にターリバーンによって仏像が爆破されたバーミヤンで撮影されたのはおそらくこの映画ぐらいでしょう。

6歳の少女・バクタイは学校に行きたいと言って家を飛び出し、小さな旅が始まります。なんとかノートを手に入れて学校に向かうものの、途中でターリバーンを真似て戦争ごっこをする少年たちに巻き込まれてしまいます。映画公開当時まだ10代だったハナ・マフマルバフ監督は、少女の視点で見た世界の端々の美しさを描くと同時に、アフガニスタンが抱えている社会問題の深刻さ・複雑さを表現しています。監督はどのように演出したのか定かではありませんが、邦題の示す通り製作陣は「子供の情景」に入り込むことに徹して、キャストの子ども・大人たちに自由に演技をさせたのでしょう。重いテーマを背負いながらも、登場人物たちのとても自然で作為がない立ち振舞が映画を見やすくしています。

劇中に多くの比喩が登場しますが、ターリバーンによって破壊された仏像があった空洞もひとつの大きな比喩でしょう。何が無くなったのか、そして空洞をこれからどのように埋めていくのか。そうした比喩が込められているように思えます。この作品の原題は『Buddha Collapsed out of Shame(ブッダは恥辱のあまり崩れ落ちた)』ですが、アフガン内戦も9.11も仏像の爆破も、子どもたちには何の責任もありません。バクタイの年齢が2001年に生まれたか生まれていないかぐらいの6歳であるというのも、偶然かもしれませんが題名に大きな関わりがあるように思えます。

子どもの純粋さに触れてみたいという方から、じっくりと国際情勢について考えてみたいという方、教育の機会が与えられていない国の子どもたちについて考えてみたいという方まで広くおすすめできる訴求力に溢れた映画です。

霧の中の風景

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ギリシャ

霧の中の風景

 

Τοπίο στην ομίχλη

監督:テオ・アンゲロプロス
出演:タニア・パライオログウ、ミカリス・ゼーナほか
日本公開:1990年

2016.5.25

生涯をバルカン半島の未来に捧げた
名匠による壮大なロードムービー

「旅」という行為の最も基本的な要素は一体何でしょうか。長回しカットを多用し、まるで神が天界から世界を見下ろしているかのような視点で映画を撮るギリシャの名匠テオ・アンゲロプロス監督は、12歳の少女と5歳の少年の旅を人生・政治・歴史など様々な事柄に対する問題提起に変身させていきます。姉弟はドイツにいる父に会いに行くと無一文でアテネ駅から電車に飛び乗り、長い旅路が始まります。時代設定は1970年代ですが、70年代でも現在でもギリシャを含むバルカン半島の政治事情は日本人にとってあまり馴染みのあるものではないでしょう。近年、バルカン諸国では経済危機に加えて難民の受け入れ問題を抱えていますが、こうした陸続きの国々の感覚は我々日本人にはなかなか掴みにくいものです。映画を通しての感覚的理解は、そうした諸問題と私たちの距離を近づけてくれるものの一つではないでしょうか。作品制作当時の時代背景を色濃く反映した悲しいストーリーではありますが、自分のルーツや安住の地を求めてひたすらさまよう本作のストーリーは、70年代のギリシャの抱えていた状況を理解するだけではなく現代グローバル社会における問題を考える上でも大切な要素を含んでおり、今でこそ人々の心に響く作品かもしれません。

無力なゆえに呆然として目の前で起こる出来事をただ傍観することしかできない姉弟ですが、旅は無情にも次の場所へ次の場所へと二人を連れてまわり、「見る」ことこそが旅であるということを教えていきます。主人公たち自身の視線と、その旅を見守る映画の視線という二重の構造によって、「見る」ことそのものについて映画は問いを立てているようにも思えます。バルカン諸国に興味のある方や、現実と非現実の狭間を行くような不思議な気持ちに浸りたい方におすすめいたします。

古代マケドニアの遺産と南バルカンの自然界遺産

マケドニア、ギリシャ、ブルガリアの3ヶ国を巡り、各地で数々の歴史遺産を見学。かつてアジアまでの東方遠征を行い歴史に燦然とその名を残したマケドニア王・アレキサンドロス大王を輩出した現在のペラ(ギリシャ)や、その父王で強国マケドニアの礎を築いたフィリッポス2世の墳墓が発見されたヴェルギナなど、古代マケドニアで特に重要な史跡を訪ねます。

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テッサロニキ

ガレリウス帝の凱旋門、7世紀のフレスコ画も残るアギオス・ディミトリオス教会、考古学博物館等、見所あふれるギリシャ第2の都市。

火の山のマリア

火の山のマリア(C)LA CASA DE PRODUCCIÓN y TU VAS VOIR-2015

グアテマラ

火の山のマリア

 

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監督:ハイロ・ブスタマンテ
出演:マリア・メルセデス・コロイほか
日本公開:2016年

2016.5.13

母として、女性として・・・
心のなかのマグマが揺れ動く

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舞台は黒く重々しい雰囲気の火山が眼前にそびえる高地。家族と農業を営み先住民の文化を受け継ぎながら暮らす17歳の少女・マリアは、アメリカに憧れている青年・ペペとの間に子どもを授かります。そして、段々と社会の歪みにまきこまれていきます。目の前に大きな火山がある環境で育てば、おそらく誰しもが自然に対して畏怖心を抱くようになるでしょう。中でマグマが揺れ動いていても、外からその様子を察することは容易なことでありません。マリアとその家族はそうした場から生まれた伝説や精霊の存在を信じて生きています。しかし、社会が作り出す貧困と格差は容赦なく彼女たちの生活に覆いかぶさってきます。また、一見黒い火山に映えるように思える民族衣装の色・柄は彼女たちの誇りであると同時に、植民地時代に民族の判別のためにつくられた印であるという歴史的経緯を持っています。

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そうした時間・空間の多重構造が押し付けがましくない形で描かれており、火山の音に耳をすましているような静かな雰囲気に浸ることができます。グアテマラの長編映画として日本で初めて公開された本作は、生きる力強さを鑑賞者に国境を超えて与えてくれるでしょう。

グアテマラ・ホンジュラス マヤ文明と世界遺産の旅

密林に眠る古代マヤ遺跡と今も息づくインディヘナの伝統文化にふれる旅。ティカル、キリグア、コパンと3大マヤ遺跡を訪問。民族色豊かなチチカステナンゴにも1泊し、日曜市を見学。

中米最高峰タフムルコ(4,220m)登頂

劇中のパカヤ火山を訪れ、火山活動を見学。中米最高峰タフムルコ登頂と、第4の高峰サンタマリア火山から迫力の火山活動を見学。グアテマラの大自然を満喫し、温泉や郷土料理も楽しむ。

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火山

写真は、劇中に登場するパカヤ山から程ない距離にそびえるアグア山を望む街・アンティグア。1979年に「アンティグア歴史地区」としてユネスコの世界遺産にも登録。

夏至

ベトナム

夏至

 

A LA VERTICALE DE LETE

監督:トラン・アンユン
出演:トラン・ヌー・イエン・ケーほか
日本公開:2001年

2016.3.10

雨と緑が映える、
絵筆で書いたようなベトナム映画

旅先で雨が降ると少し憂鬱になってしまうこともあるかもしれません。しかし、この映画を見ると雨の降る音にも色々あり、雨粒が落ちる場所によって音が違うことに気付かされます。ストーリーは三姉妹を主人公として、夫婦間の愛憎などヘビーな内容も含んでいるのですが、そうした展開も劇的にはならずにさらりと流れていきます。流れていくというよりも、ハロン湾の奇岩の中に大の字で浮かぶ登場人物のように、ストーリーはどこに行くでもなく、ただ浮かんでいるだけなのかもしれません。雨がたくさん降り、草花が茂って、湿度で人々は汗をかき、暑さを和らげるかのように簾が風にかすかに揺れる…というように、登場人物たちが過ごす環境が綿密に構成された映像・音響で表現され、映画に浮力をもたらしているのでしょう 。東南アジアの湿度が伝わり、冬に観ても知らないうちに体があたたまっているような不思議な鑑賞体験ができるかもしれません。

世界遺産ハロン湾2泊3日の豪華クルーズと陸のハロン湾ニンビン訪問の旅

豪華客船AUCO号でハロン湾クルーズ楽しむGW企画。2014年新たに世界遺産に登録された古都ホアルー、チャンアンも訪問。ニンビンでは古民居風ホテル「エメラルダ・リゾート」に宿泊。

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ハロン湾

ベトナム北部、トンキン湾北西部にある湾。大小3000もの奇岩や島々が存在する。中国がベトナムに侵攻してきた時、竜の親子が現れて敵を破り、口から吐き出した宝石が湾内の島々になったと伝えられている。