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桜桃の味

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イラン

桜桃の味

 

طعم گيلاس

監督: アッバス・キアロスタミ
出演: ホマユーン・エルシャディほか
日本公開:1998年

2016.11.23

長く曲がりくねった道の終わりを求めて
イラン映画の歴史に残る一作

この作品は2016年に惜しくも亡くなったイランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督の代表作で、「ジグザグ三部作」と言われる『友だちのうちはどこ?』『そして人生はつづく』『オリーブの林をぬけて』を経てより洗練されたキアロスタミ監督の表現が力強くにじみ出ている作品です。

舞台はイランの首都・テヘラン郊外。荒涼とした道を、中年の男バディが車で走っています。彼は職を探している男を助手席に乗せてはジグザグ道を行き、遠くに町を見下ろす小高い丘の一本の木の前まで無理矢理に連れてゆき、ある仕事を依頼します。その仕事とは、翌日の朝に同じ場所に来て穴の中に横たわっている自分の名前を呼び、もし返事をすれば助け起こし無言ならば土をかけてくれというもので、つまり自殺の手助けをしてくれという依頼です。クルド人の若い兵士も、アフガン人の神学生も、この依頼を聞き入れません。自殺を手伝う人物を探し回るうちにバディはある老人と出会います。老人は嫌々ながらも、病気の子供のために彼の頼みを聞き入れた上で、自分のある経験をバディに語って聞かせます…

映画の内容ではなくこの作品に関する私自身の思い出ですが、この映画を初めて見たのはイギリスに留学している時で、イエメン人のハウスメイトと一緒に作品を鑑賞しました。荒涼としたジグザグ道を行くシーンでアラブ圏の人が話す英語独特の巻いたrの発音とともに”Jimbo, this is the real life of us. (「これが中東の日常だよ」というようなニュアンスかと思います)”と彼から言われたのをいまだによく覚えています。イエメンでも砂漠の中の荒涼としたジグザグ道を走ることは日常的によくあることなのでしょう。この映画に劇的な展開はほとんどなく、私の友人の言葉が示す通りただ現実の延長線上を走っているようなストーリーですが、巧みに計算された演出でキアロスタミ監督は静かに物語を操っていきます。

旅先でのふとした会話や出来事に人生を動かされたことがある方、イランの”real life”を見てみたい方にオススメの作品です。

ONCE ダブリンの街角で

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アイルランド

ONCE ダブリンの街角で

 

Once

監督: ジョン・カーニー
出演:グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロバほか
日本公開:2007年

2016.11.16

アイルランドの首都ダブリンに、
寄せては返すミュージシャンたちの人生

アイルランドの首都・ダブリンの路上で日々ギター演奏をしている「男」は、ある日チェコ移民の「女」と出会います(この映画には、メインキャラクター2人に名前がありません)。男が偶然掃除機を修理するバイトをしていたことなどから交流が始まり、女にピアノの才能があることを男は知ります。男は女のために曲をつくり、その曲でセッションをして素晴らしいハーモニーが生まれ、二人はひかれあっていきます。

この映画を見ながら、私は以前アイリッシュ・ミュージックを聞くためにアイルランドに旅したことを思い出しました。ダブリンはそれほど大きな街ではなく、メインストリートのオコンネル通りからすぐの場所にアイリッシュ・パブがひしめき合うテンプル・バーというエリアがあります。物語が展開する上で重要な場所となるグラフトン通りもまたそのすぐ近くにあり、世界各地から集った路上ミュージシャン(バスカー)たちが昼夜を問わず思い思いの演奏をして賑わっていました。

バスカー(busker)という単語について、不思議な響きの単語なので一度その語源を調べたことがありますが、スペイン語の”Buscar”という単語が由来で、英訳するとseek(探し求める)という言葉でした。ダブリンの街角でバスカーたちを眺めていると、演奏すると同時に自分の行き先や音楽のスタイルを探し求めているという感じがして、単語の持つルーツに納得したのを覚えています。

メインとなる2人はプロのミュージシャンですが、演技はこの映画の時が初めてだったそうです。自然な演技をとるための工夫かと思いますが、望遠で遠くから撮影されたシーンも多く、おそらく予算の関係で通行人はエキストラではなく実際に通りを行き交う人がおさめられています。その結果、さながらドキュメンタリーのような、ダブリンの街で実際に起きた出来事を記録したような雰囲気で物語が展開していきます。さらに、主人公たちの名前が匿名なことによって、私がダブリンで見た光景の中でそうした数々のドラマがあったのではないかと想像させてくれました。

ダブリンのリズムを感じてみたい方、一度でも音楽に心を動かされたことのある方にオススメの作品です。

アイルランド周遊

遥かなる緑の大地、妖精が住むと信じられている幻想的な自然。
ケルトの伝統が息づく南北アイルランドを周遊。

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ダブリン

この町の最大の見所はトリニティカレッジに残る旧図書館です。この旧図書館には「ケルズの書」と呼ばれる装飾写本が保存されています。

ディーパンの闘い

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スリランカ

ディーパンの闘い

 

Dheepan

監督: ジャック・オディアール
出演: アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサン、カラウタヤニ・ヴィナシタンビほか
日本公開:2016年

2016.11.9

力強く静かな象のように・・・
平和を求めるスリランカ難民の闘い

内戦で妻子が殺された兵士ディーパンはフランスに入国するため赤の他人の女・ヤリニと少女・イラヤルとともに偽装家族となり、故郷・スリランカを旅立ちます。難民審査を通り抜け、パリ郊外の団地でディーパン・ヤリニともになんとか職を得て、他人同士の家族の間にも少しずつ交流が生まれていきます。生活にも少し余裕が出てやっと明るい未来が見え始めた時、またしても暴力の影が3人に忍び寄ってきます・・・。

この物語はスリランカで1983年から2009年まで続いたシンハラ人とタミル人の内戦が背景となっています。内戦の原因は元をたどればイギリス植民地時代(イギリス領セイロン時代)に遡ります。それ以前にも古くから関わりがあった両者は、長い時間をかけて社会の中で融和を築いていました。しかし、植民地時代にイギリスが紅茶プランテーションのために大量のタミル人を南インドから移住させ、さらにシンハラ人よりタミル人を優遇したことで、長い間かけて形成されたバランスをあっけなく崩してしまいました。1948年にスリランカが独立した後いがみ合いは激化していき、「仏教徒のシンハラ人」と「ヒンドゥー教徒のタミル人」という形でルーツが同じはずの宗教も戦争の理由として組み込まれてしまいました。

主人公・ディーパンを演じたアントニーターサン・ジェスターサンは、実際にスリランカ内戦を経験した元兵士(タミル側)で、フランスに亡命後作家として活躍している人物です。ディーパンがどのような経験を内戦中にしたのかは劇中ではほとんど語られませんが、役者自身の経験がディーパンの一挙手一投足に説得力を生み出しています。

劇中で特に私が印象的だったは、唐突に何回か挿入される象のカット(おそらく夢の内容を表現した)シーンです。私は時々旅先で「この国に来てるのに、何でこんな夢を見るのだろう?」と思うような奇妙な夢を見ることがあります。日本を離れて、イギリスに留学していた時に初めて英語で見た夢も思い出深いです。スリランカからフランスへの長い旅路の中、そして慣れない異国の地で登場人物たちは日々どんな夢を見ていたのでしょうか。ぜひそういった点も想像しながら映画を鑑賞してみてください。

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ

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モロッコ

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

 

Only Lovers Left Alive

監督: ジム・ジャームッシュ
出演: トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカほか
日本公開:2013年

2016.11.2

数世紀に渡るヴァンパイアの記憶と、
港街・タンジールの息吹

舞台はアメリカのデトロイトと、モロッコのタンジール。ヴァンパイアのアダムはアメリカのデトロイトで匿名ミュージシャンとして活躍しています。恋人で同じくヴァンパイアのイヴは、モロッコのタンジールで老年のヴァンパイア作家を匿いながらひっそりと暮らしていますが、アダムを訪ねデトロイトへやってきます。数世紀に渡る命を持っているヴァンパイアの彼らであっても、やはり久々の再会は会話を弾ませ、夜の街や楽器に溢れたアダムの家の中で他愛のない会話に花が咲きます。そこに、イヴの妹・エヴァが転がり込んできて、ふたりの大切な時間が徐々にかき乱されていきます…

本作はほかのヴァンパイア映画にみられるようなホラーシーンがほとんどなく、iPhoneやインターネットを使いこなすヴァンパイア同士のウイットのきいた会話が中心であるというとても珍しい映画です。「モーツァルトの弦楽五重奏曲第一番は実は自分が作曲した」とアダムが言うなど、歴史上の人物にからんだエピソードも登場してコミカルな部分も見られますが、人間の何倍もの長さの寿命を持つヴァンパイアの視点から「命とは何か」ということが語られる不思議なドラマです。

その独特な雰囲気を後押しするのが、仄暗いデトロイトの街並みと、そしてなんといってもタンジールの街並みです。私自身もタンジールの街には思い出があります。12月半ばからクリスマスにかけてモロッコを旅行し、あえてクリスマスはタンジールで過ごし、12月26日にフェリーでタンジール港から1時間半くらいであっという間にスペインのアルヘシラス港に渡りました。当然ながら、モロッコではクリスマスの日には特に何も起こらない普通の日で、スペインに入るとクリスマスの余韻が街に残っていました。ローマ帝国時代や、レコンキスタの時代から様々な歴史の蓄積がある街ですが、文化の境目に自分が立っているかのような、五感で街の歴史を感じ取れるような街でした。

また、タンジールのシーンで登場するレバノン人歌手、ヤスミン・ハムダンの美しい歌にも注目です。

一風変わったヴァンパイア映画を見てみたい方、タンジールの不思議な雰囲気に浸ってみたい方にオススメの映画です。

 

 

湾生回家

3f957571fe6dd0c9(C)田澤文化有限公司

台湾

湾生回家

 

湾生回家

監督: ホァン・ミンチェン
出演:冨永勝、家倉多恵子、清水一也、松本洽盛、竹中信子、片山清子 他
日本公開:2016年

2016.10.26

故郷は台湾、国籍は日本
6人の湾生の心を探るドキュメンタリー

1895年の下関条約締結から終戦の1945年まで、台湾は日本の統治下にありましたが、この間に台湾で生まれ育った約20万人の日本人は湾生(わんせい)と呼ばれます。「回家」の「回」は中国語で「帰る」という意味を持ち、本作『湾生回家』は湾生たちがそれぞれの思い出を胸に、心から愛してやまない台湾を訪れるドキュメンタリー映画です。

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湾生たちの多くは敗戦後も台湾にそのまま住んでいたいと願っていたそうですが、ほとんどの人々が日本に強制送還されました。この映画では台湾を去った湾生とともに、台湾に残った湾生も紹介されていて、戦争の終結という歴史的出来事が人々の人生にどのように影響してきたのかを映し出しています。

旅に出る目的の中でも、自分のルーツを振り返る旅であったり、思い出を探し求める旅というのは美しく、また時に悲しいものです。「回家」という単語が示す通り家に帰るのであれば「ただいま」と言えますが、台湾を去った湾生にはそうした帰る家は残されていません。かわりに自分と同様に年齢を重ねた同志や、友人の子どもや、自然の景観に触れ合っていきます。

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劇中では数十年来の感動的な再会、70年・80年のあいだ家族の墓を探し求めてきた人の姿、戸籍という文字の資料が一人の人間の中に眠っていた感情を涙が溢れるほどに喚起させる場面に遭遇することができます。

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戦後70年以上がすぎ、人々から忘れられようとしている湾生の人々に目を向けることで私たちは何を学ぶことができるでしょうか。湾生を生んだのは戦争です。日本が台湾を統治したこと、湾生たちが台湾を離れなければいけなかったこと、そのどちらにも戦争が関わっています。 たとえば、現在ヨーロッパでは中東や北アフリカなどからの移民が大きな社会問題となっていますが、日本人にとってそれはどうしても実感がわきにくい問題です。かつて日本と台湾の間で何が起こったのか、そしてどのように人々が交流してきたのかを振り返ることで、そうした現在の諸問題に対して日本人らしい関わり方を持てるかもしれないと私は思いました。

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湾生の人々の儚く美しい思い出に触れることで、きっと自分の故郷への思い出も湧き出てくることでしょう。

『湾生回家」は11/12より岩波ホールほかにてロードショー。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。

天空からの招待状

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台湾

天空からの招待状

 

看見台湾

監督:チー・ポーリン
出演:西島秀俊(日本語版ナレーション)、ウー・ニエンジェン(オリジナルナレーション)
日本公開:2014年

2016.10.19

全編空撮!
上から台湾を見て、内から自分の心を探る

高い場所に来て街の景観を眺めるという経験は、海外だけではなく国内の旅行でもおそらく一度はどなたもされたことがあるかと思います。また、飛行機で窓側を必ずリクエストされる方は、空から景色を見ることの醍醐味を既にご存知でしょう。

街並みや自然をじっくりと眺める…その時に何を思うかは人それぞれですが、日常における些細な悩みや、何か案じていることがある時に心が晴れるような気持ちになったことがある方は多いのではないかと思います。

この映画を監督したチー・ポーリン監督は長年にわたり航空写真家として活躍してきて、誰よりも台湾の国土のことを知り、そして台湾を愛する人物です。初監督作品にもかかわらず約90分全編空撮という前代未聞の形で、台湾の国土から全世界に問題を投げかけるドキュメンタリーを撮ることに成功しました。

日本人にとって懐かしくなってしまうような田園風景、雄大な山(玉山・雪山の素晴らしい映像もたっぷりと含まれています)や海の景観、農作業から都会の人々の営みまで…3年かけて地道に撮影したという映像は数々の奇跡的な光景がおさめられています。一方、気候変動・エネルギー問題・ごみ問題・山地住宅開発などによる環境破壊など、目を背けたく成るような台湾社会の憂慮も、美しい光景を見つめてきた視線と同じままで見つめていきます。この映画に映し出される映像は、さながら神の視線を体現しているかのようです。

『天空からの招待状』は台湾では2013年の年間興行ランキング第3位になるなど大ヒットを記録しましたが、この作品の原題は『看見台湾』というタイトルです。言葉のリズムなど詩的な理由もあるということですが、ただ「見」るだけでなく、「看る」と「見る」という二つの言葉を重ねることで、鑑賞者の心の中をも映し出そうとしているようにも思えます。鳥になったような気分で台湾を眺めて、何が自分の心に思い浮かんでくるか楽しみにご覧ください。

 

台湾最高峰・玉山(3,952m)と
第二の高峰・雪山(3,886m)登頂

台湾五岳の最高峰・玉山と第二の高峰・雪山を登頂するよくばりコース。主峰を含む11連峰の見事な山容の玉山、対照的に、尾根上に広がる草原や森など変化に富んだルートを歩く雪山。どちらも台湾の山旅を十分に満喫できるトレッキングコースです。

彷徨える河

彷徨える河_表_チラシ©Ciudad Lunar Producciones

配給: トレノバ、ディレクターズ・ユニブ

コロンビア

彷徨える河

 

El abrazo de la serpiente

監督:シーロ・ゲーラ
出演:ヤン・ベイブート、ブリオン・デイビス、アントニオ・ボリバル・サルバドール、ニルビオ・トーレスほか
日本公開:2016年

2016.10.5

「コロンビア人も知らないコロンビア」で 交錯する2人の来訪者の記憶

舞台は20世紀初頭コロンビア・アマゾン川流域。ドイツの探検家・テオの病気を治すために、先住民・カラマカテの案内でヤクルナという聖なる植物を探し求める旅が始まります。

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数十年後、テオの著作をもとにヤクルナを求めて同じ地に訪れたアメリカの植物学者・エヴァンが年老いたカラマカテと出会います。カラマカテは昔の記憶を失いかけていましたが、エヴァンの旅に同行することで少しずつ過去の出来事を思い出していきます…

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植民地としてのコロンビアの歴史もストーリーに大きく関わっていますが、物語の源泉をじっと見つめると、「記憶」あるいは「知識」というテーマが潜んでいることがわかってきます。老年になり記憶を失ったカラマカテは、自身のことを「チュジャチャキ 」と呼びます。おそらく先住民の言葉かと思われますが、写真に映った人物のことを指したり、字幕では「無の存在」と訳されています。そして、シーロ・ゲーラ監督は、会話の中で巧みにカラマカテと欧米人の時間軸の違いを描き出していきます。

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カラマカテは侵略者によって村を滅ぼされた中で唯一の生き残った男で、記憶をバトンタッチする相手がいません。この映画の原題は「大蛇の抱擁」という意味だそうですが、記憶を受渡す相手がいないカラマカテを、アマゾンの大自然が包み込んだというのがチュジャチャキという言葉の本質ではないかと思います。つまり、一個人の記憶がなくなるということはごく自然なことである、という考え方を示しているのではないかということです。

自分の記憶が確実に失われていることに当惑しているカラマカテは、知識を伝達することを目的とした植物学者・エヴァンに共鳴するかのように旅に同行したいと自分の意志で申し出ます。

何かを得るということは、何かを失うことになるかもしれない…そうした疑念を抱くかのように、訪問者たちはカラマカテと仲良く旅をするというよりはお互い背中合わせのような状態で、不思議な間柄のまま旅をしていきます。

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この映画の大きな見どころの一つは、老年のカラマカテが実際にオカイナ族という民族の最後の一人であるアントニオ・ボリバル・サルバドールによって演じられていることです。物語もドイツの民族学者テオドール・コッホ=グリュンベルクとアメリカの生物学者リチャード・エヴァンズ・シュルテスの実際の手記を元に構成されていますが、製作陣が先住民の人々に協力を請い説き伏せるまでの学者並みの努力は敬服に値します。

コロンビアやアマゾンに興味がある方、ジャングルの奥深くまで冒険に出た気分になってみたい方に特にオススメです。

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『彷徨える河』は2016年10月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次上映。

詳細は公式サイトからご確認ください。

黄金郷コロンビア

オリノコ源流域に隠された虹色に輝く川カーニョ・クリスタレスと黄金郷伝説の残るコロンビアのみどころを巡る9日間の旅。植民地時代の面影を今に残す世界遺産カルタヘナも訪問。

みかんの丘

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ジョージア

みかんの丘

 

Mandarinebi

監督:ザザ・ウルシャゼ
出演:レムビット・ウルフサク、エルモ・ニュガネンほか
日本公開:2016年

2016.10.5

ジョージアとアブハジアから
ミカンのように鮮やかな色の未来を願って

ジョージアから独立を主張しているアブハジアに、100年以上前からエストニア人が住む集落があります。ジョージアとアブハジアの間で紛争が勃発しても、ミカンを栽培するイヴォとマルゴスはそこに残っていました。ある日、戦闘で負傷した2人の兵士を家の中で介抱することになります。1人はチェチェン兵のアハメド、もう1人はジョージア兵のニカです。アブハジアを支援するチェチェン人とジョージア人は、紛争の敵同士で本来ならばすぐにでも殺しあう関係ですが、イヴォの家では決して殺しあいはしないというルールが取り決められます。その中で、アハメドとニカの考え方も変わっていきます。

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旧ソ連諸国の政治状況はとても複雑ですが、日本人である私たちは逆に客観的にその状況を見れるかもしれません。アブハジアにいるエストニア人、ムスリムのチェチェン人、キリスト教徒のジョージア人…私たちには簡単に見分けることはできません。

時々私は「関係ある」ことと「関係ない」ことは何が違うのかと考えることがあり、この映画を見て再度そのことについて思い出しました。たとえばジョージアに旅したことがあれば、このアブハジア紛争問題は比較的身近な問題に感じるでしょう。シリアに行ったことがあればシリア紛争について人よりアンテナを張れるでしょう。しかし、多くの日本人にとってはアブハジア紛争やシリア紛争の前により身近な事柄があります。「関係ない」ことはどのようにすれば「関係ある」ことになるのでしょうか。

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そうしたことを監督も考えているように私には思えました。『みかんの丘』は立場の異なる兵士から戦場を奪い、ただの人間にした時に互いの関係はどのように変化するかということが描かれています。監督はアブハジア問題を世間に知らせるということよりもも、アブハジア問題を通じて「人間とは何か」という普遍的な大きなテーマを描くことを目指しているのではないかと思いました。監督が大ファンだという黒澤明監督さながらのヒューマニズムに溢れた描写が濃密に散りばめられた作品です。

『みかんの丘』は9/17より岩波ホールほかにてロードショー中。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。

 

コーカサス3ヶ国周遊

広大な自然に流れる民族往来の歴史を、コンパクトな日程で訪ねます。
複雑な歴史を歩んできた3ヶ国の見どころを凝縮。美しい高原の湖セヴァン湖やコーカサス山麓に広がる大自然もお楽しみいただきます。

民族の十字路 大コーカサス紀行

シルクロードの交差点コーカサス地方へ。見どころの多いジョージアには計8泊滞在。独特の建築や文化が残る上スヴァネティ地方や、トルコ国境に近いヴァルジアの洞窟都市も訪問。

とうもろこしの島

bdff34d1692745f7(c) ARIZONA FILMS

ジョージア

とうもろこしの島

 

Simindis Kundzuli

監督:ギオルギ・オヴァシュヴィリ
出演:イルヤス・サルマン、マリアム・ブトゥリシュヴィリほか
日本公開:2016年

2016.9.28

中洲に浮かぶ平和への意志
知られざるアブハジア紛争の行く末

コーカサス山脈から黒海へ流れるエングリ川に、毎年雪解けとともに肥沃な土が運ばれ中洲ができ、その場所で冬の貴重な食料となるとうもろこしが育てられる…という導入から映画は始まります。

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『とうもろこしの島』はジョージアと、ジョージアから独立を主張するアブハジアの間の川という舞台設定で、両親を亡くした孫娘と老人がとうもろこしを育てていく様子がほぼセリフ無しで語られていきます。

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アブハジアという地名を聞いて何かを連想できる日本人はそうそういないかと思います(私も今回この映画を見た後で調べて初めて知りました)。普遍性を重視したいという監督の意志で最終的に12ヶ国の合作で作りあげられたこの映画は、むしろアブハジアのことを何も知らないで見たほうが強烈な印象が残るかもしれません。のどかな日常が実は戦争の暗い影に覆われていたということが映画が進むに連れて徐々に明らかになっていきます。

この映画はセリフが本来必要かと思われるところでひたすら黙って物語が進むので、セリフが発された時には少しドキリとします。その数少ないセリフはもちろん周到に計画されているはずですが、私はそのセリフから「意志」というキーワードが思い浮かべました。

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「あたり前のことがあたり前にできる」ということは、日本にいるとなかなか享受しにくい幸福かもしれません。日常的なことであっても、何かをしようという意志があって、それが達成できるということは幸福なことです。

自然は時に人間に牙を剥き、そうした人間の自由を奪います。なぜ地震がくるのか、なぜ津波が街を飲み込むのか…「なぜ?」といくら思いを巡らせても自然は答えてくれません。しかし、戦争はその「なぜ?」という問いの矛先を何かに向けることができてしまいます。国家への怒りが個人に、個人への怒りが国家に向かいかねません。アブハジア紛争は今現在も続いているといいますが、負の意志の連鎖が続いてしまわないように願うばかりです。

『とうもろこしの島』は岩波ホールほかにて9/17からロードショー中、その他詳細は公式HP よりご確認ください。

コーカサス3ヶ国周遊

広大な自然に流れる民族往来の歴史を、コンパクトな日程で訪ねます。
複雑な歴史を歩んできた3ヶ国の見どころを凝縮。美しい高原の湖セヴァン湖やコーカサス山麓に広がる大自然もお楽しみいただきます。

民族の十字路 大コーカサス紀行

シルクロードの交差点コーカサス地方へ。見どころの多いジョージアには計8泊滞在。独特の建築や文化が残る上スヴァネティ地方や、トルコ国境に近いヴァルジアの洞窟都市も訪問。

チャーリー

B2 _ポスター_入稿配給・宣伝:CELLOID JAPAN & DOZO Films

(C)Charlie the Malayalam Film, DOZO Films & Celluloid Japan

インド

チャーリー

 

Charlie

監督:マーティン・プラーカット
出演:ドゥルカル・サルマーン、パールワティほか
日本公開:2016年

2016.9.21

海から山までかけ巡る マジカル・ミステリー・ツアー in 南インド

主人公はインドのシリコンバレーといわれているバンガロールに住む女性アーティスト・テッサ。うまくいっているように見えてどこか物足りない日々を送っていたテッサは、実家に戻った時に親が勝手に縁談を進めていたことで一気に旅心に火がつき、アラビア海に面する港街・コーチンへと旅立ちます。

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ヒッチハイクをしてたどり着いたコーチンのアパートで、テッサは不思議な漫画を見つけますが、気になるところで漫画は終わってしまっています。漫画を描いたという元住人のチャーリーを探す中で、テッサは様々な人々と出会っていきます。

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新しい場所に行くということだけでなく、ゆったりとした時間の中で自分の日常をじっくり見つめなおすことも旅の醍醐味かと思います。

人生が何かしらの形で停滞するということは、できれば起こってほしくありませんが、ある意味そうした行き詰まりは人生の魅力ともいえるのではないかと私はこの作品を見て感じました。インド映画らしい軽快なテンポでテッサは移動していきますが、新しい場所に移動していくというよりも、自分の頭のなかをぐるぐるまわっていくような印象で物語は進んでいきます。

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本作はケララ州の公用語マラヤーラム語で製作された作品(マラヤーラム語作品の日本でのロードショーは初!)で、「ボリウッド映画」ならぬ「モリウッド映画」と言われているそうですが、多少は踊りと歌が入るところはやはりインド映画です。現実と非現実がボリウッド映画よりも少しひかえめな形で融合していて、テッサの頭のなかをのぞいて思索によりそうようなムードで、自由を追い求める旅に観客を一緒に案内してくれます。

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また、映画の中に押し付けがましくない形でケララ州の文化・風習が織り交ぜられています。カエルのような強烈な顔のカタカリダンス役者、南インドの男性が日常的に着るスカートのような腰巻き・ルンギ、異なる宗教が共存している様子、爽やかな海辺や紅茶園など観光的な魅力も描かれています。

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マラヤーラム語映画界を数十年に渡り牽引してきたスターの息子という経歴を持つイケメン、ドゥルカル・サルマーン演じるチャーリーの飄々とした人物像も見どころです。

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映画は10/1よりキネカ大森他でロードショー。その他詳細は公式HPをご確認ください。

楽園の南インド

ベンガル湾に面した壮大なマハーバリプラムの遺跡群、南インドの信仰の中心象徴ともいえるマドゥライのミナークシ寺院、ハウスボートのバックウォータークルーズ、コロニアルなコチ、そしてニルギリ鉄道まで南インドを満喫していただきます。

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コーチン(コチ)

ケララ州にある観光客に人気の都市。特に見所としておすすめなのは、フォート・コーチンとマッタンチェリー地区。古くから香辛料貿易としてヨーロッパ人の来訪も多く、教会やユダヤ人地区など異国情緒が溢れます。