天空からの招待状
監督:チー・ポーリン
出演:西島秀俊(日本語版ナレーション)、ウー・ニエンジェン(オリジナルナレーション)
日本公開:2014年
全編空撮!
上から台湾を見て、内から自分の心を探る
高い場所に来て街の景観を眺めるという経験は、海外だけではなく国内の旅行でもおそらく一度はどなたもされたことがあるかと思います。また、飛行機で窓側を必ずリクエストされる方は、空から景色を見ることの醍醐味を既にご存知でしょう。
街並みや自然をじっくりと眺める…その時に何を思うかは人それぞれですが、日常における些細な悩みや、何か案じていることがある時に心が晴れるような気持ちになったことがある方は多いのではないかと思います。
この映画を監督したチー・ポーリン監督は長年にわたり航空写真家として活躍してきて、誰よりも台湾の国土のことを知り、そして台湾を愛する人物です。初監督作品にもかかわらず約90分全編空撮という前代未聞の形で、台湾の国土から全世界に問題を投げかけるドキュメンタリーを撮ることに成功しました。
日本人にとって懐かしくなってしまうような田園風景、雄大な山(玉山・雪山の素晴らしい映像もたっぷりと含まれています)や海の景観、農作業から都会の人々の営みまで…3年かけて地道に撮影したという映像は数々の奇跡的な光景がおさめられています。一方、気候変動・エネルギー問題・ごみ問題・山地住宅開発などによる環境破壊など、目を背けたく成るような台湾社会の憂慮も、美しい光景を見つめてきた視線と同じままで見つめていきます。この映画に映し出される映像は、さながら神の視線を体現しているかのようです。
『天空からの招待状』は台湾では2013年の年間興行ランキング第3位になるなど大ヒットを記録しましたが、この作品の原題は『看見台湾』というタイトルです。言葉のリズムなど詩的な理由もあるということですが、ただ「見」るだけでなく、「看る」と「見る」という二つの言葉を重ねることで、鑑賞者の心の中をも映し出そうとしているようにも思えます。鳥になったような気分で台湾を眺めて、何が自分の心に思い浮かんでくるか楽しみにご覧ください。