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お坊さまと鉄砲
監督: パオ・チョニン・ドルジ
出演: シェラップ・ドルジ、ウゲン・ノルブ・へンドゥップほか
日本公開:2021年
ブータンらしいピースフル・クライム・サスペンス
2006年。長年にわたり国民に愛されてきた国王が退位し、民主化へと転換を図ることが決まったブータンで、選挙の実施を目指して模擬選挙が行われることに。
周囲を山に囲まれたウラの村でその報せを聞いた高僧は、なぜか次の満月までに銃を用意するよう若い僧に指示し、若い僧は銃を探しに山を下りる。
時を同じくして、アメリカからアンティークの銃コレクターが“幻の銃”を探しにやって来て、村全体を巻き込んで思いがけない騒動へと発展していく⋯
以前ご紹介した長編監督デビュー作『ブータン 山の教室』がアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされて、世界的に注目を集めた監督の第2作目。
100年以上国王を中心とする絶対君主制だったブータンが議会制民主主義へ移行し、憲法が公布され、首相が選出されるなど立憲君主制に移行したのは2008年のことでした。そのひとときを描いた映画です。
物語の中で、さりげなくチベット仏教国・ブータンならではの文化が紹介されていきます。映画をやっている僕からすると、物語本筋もさることながら、素晴らしくプロデュースされていて「上手いな」と唸ってしまいました。
1980年代半ば以降に教育を受けた人々(2006年時点で20代後半〜30代前半)は、英語が公用語となった後なので、英語が流暢に喋れる点。
議会制民主主義が導入されようとも、秘密の任務をこなそうとしていようとも、お坊さんへの敬意や不徳を避ける精神が勝ってしまい「ブータンらしい葛藤」が生まれる点。
儀式・お祭りにおいて、男性器をかたどった祭具(家の壁にもときどき描いてあります)が使われたり大事にされていることを、映画の文法において男性性を象徴する「銃」という小道具が自然に引き出して終盤の展開に活きてくる点。
そして、そこまで計算していたかどうかわかりませんが、アメリカという国でドナルド・トランプが再選された直後にこの映画が公開になるというのは、タイミングが完璧すぎると思いました。
政治のことを描いているけれどもほのぼの平和すぎてブータンらしい映画『お坊さまと鉄砲』は、12月13日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか、全国順次ロードショー。詳細は公式ホームページをご覧ください。