恋の秋

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フランス

恋の秋

 

Conte d’automne

監督: エリック・ロメール
出演: マリー・リヴィエール、ベアトリス・ロマンほか
日本公開:1998年

2024.5.1

ワイン畑で人生談義―エリック・ロメール監督が描くロワールのテロワール

舞台は南仏のローヌ渓谷。小さな農園でワイン作りに勤しむ陽気な女性・マガリと、本屋を営むイザベルは親友同士で共に40代。

夫を亡くして以来独身のままでいるマガリを心配するイザベルは、マガリになりすまして彼女の再婚相手を探し始める・・・・・・

近年、デジタル・リマスターされた名作映画が多く公開となっています。2010年に亡くなったエリック・ロメール監督の作品も、ここ数年でリマスター化が進んでいます。日本の作家でも、『ドライブ・マイ・カー』でカンヌ映画祭やアカデミー賞をとった濱口竜介監督や同世代の深田晃司監督は、共にロメールの演出に強い影響を受けています。

すごく大雑把にまとめると本作(および他のロメール作品)は、「登場人物たちがまとまりないことをうだうだと喋っている映画」です。いわゆるラブ・ストーリーを見慣れている方にとっては、何も起こらなさすぎて面食らう作品かもしれません。「ここからどうなるのだろう?」という類のドキドキ感はほとんどありません。

むしろ主人公のマガリは、ずっとウジウジしていて「純粋な友情なんてない」とか「結婚はしたいけどでも条件がないわけじゃないしねぇ、まあ難しいよね」と、どちらかというと悲観的。そしてとても自己中心的に描かれます。だからこそ、愛情の萌芽がほんの一瞬感じられたときに、とても顕著に観客はそれを目撃することができます。

「幸せがときめく瞬間」という公開当初のポスターに記載してあるコピーはまさにその通りで、ダイナミックさよりもそういう微細な心を描いているのです。

なぜそういう演出なのかというもうひとつの狙いは、ローヌ渓谷という場所の性質そのもの(ワインでいうところのテロワール)を監督が描きたいということもあったのではと思います。季節の移り変わりの中で、うつろう心。フランスの田舎を散歩しながら、人生談義をしているかのような気分になる作品です。

南仏・プロヴァンスの田舎道を歩く
リュベロン地方とローヌ渓谷の美しい村を訪ねて

オリーブの木立やブドウ園の広がる渓谷、色鮮やかに咲く野花、自然の景観に溶け込んだ美しい村にゆったり流れる時間。誰もが一度は憧れる陽光降り注ぐプロヴァンスの豊かな大地を巡ります。ゴッホが晩年を過ごし、作品にも描いたアルピーユ山脈、断崖に張り付く美しい村の点在するリュベロンの渓谷、ローヌ渓谷にブドウ畑の広がるダンテル・ド・モンミライユ山麓、プロヴァンス最高峰モン・ヴァントゥ、歩いて巡るプロヴァンスの魅力を余すことなく堪能いただきます。