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ポトフ 美食家と料理人
監督: トラン・アン・ユン
出演: ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメルほか
日本公開:2023年
フランスの美食家・ドダンが感じていた「人生の愉しみ」
19世紀末、自然豊かなフランスの田舎で、美食家・ドダンは「食」を追求する生活を送っている。
彼の閃めくメニューを完璧に再現するのは、料理人のウージェニー。
ドダン・ウージェニーのタッグの評判は、ヨーロッパ各国に広まっていた。ある日、皇太子から晩餐会に招かれたドダンは、食の真髄を示すべく、一般的基準としては簡素すぎて晩餐向きではない料理・ポトフをメインに据えることに決める。
時を同じくして、長らく結婚はしないままパートナーシップを貫いてきた2人は、結婚することになる。しかし、もともと体調が芳しくなかったウージェニーは倒れてしまう・・・
本作をつくったベトナム系フランス人のトラン・アン・ユン監督とは、2017年にベトナムのダナンで行われたマスタークラスでつながりがあり、その当時から本作のことは「フランスの食に関する映画にもうすぐ着手する」と聞いていて楽しみにしていました。
トラン・アン・ユン監督からは色々なことを教わりましたが、一言でまとめると、どのように映画を生活(人生)とをイコールにするかを教わりました。それゆえに、映画人、ひいてはアーティストの生活というのは、そうではない人と違わなければいけない(違うという自覚を持つ)ということでした。
本作はまさに、料理と生活(人生)がイコールになっている状態、そしてその時間の流れをそのままとらえた一作です。
「5, 6年に1本しか自分は映画を作らない」「映画監督見習いのときは美術館で働いていて、毎日休み時間に絵を眺めていた」などという話も聞きましたが、鍛え抜かれた観察眼でじっくり熟成されるようにつくられた本作は、もちろんストーリーを追うという映画の慣例的な見方もさせてくれますが、いつの間にか「ただ観ているだけ」の、没入した状態になっていることに観客の多くは物語のどこかで気付かされるでしょう。
おそらく「美味しそう」「食べたい」というだけではなく、何と言えばいいかわからない(映画を観ていただくしかない)のですが、料理が人の姿や建物や自然造形のように見えてくる瞬間があると思います。その瞬間をぜひ楽しんでいただきたいです。
ロケ地はフランス中西部・ロワールのようですが、西遊旅行にはそのもう少し西・南の地方を歩きつつ食を楽しむツアーがあります。あわせてぜひチェックしてみてください。
『ポトフ 美食家と料理人 』は、12/15(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。そのほか詳細は公式ホームページをご確認ください。