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Bi Gan A SHORT STORY ビー・ガン ショート・ストーリー
監督: ビー・ガン
出演: タン・ジュオ、チェン・ヨンゾンほか
日本公開:2023年
世界で最も期待されている監督の1人、中国・貴州省出身 ビー・ガンの世界観
孤独で変わり者の黒猫は、自由になりたいカカシに尋ねる。
「この世の中で、一番大切なものは?」
答えに困ったカカシは、黒猫に三人の奇人と会うように進言する。
その三人の奇人とは、ほろ苦さと引き換えにめずらしい飴を配るロボット、愛する人を忘れるため「食すると記憶が短くなる」という麺をすする女、時間を操る魔法を使えるようになりたくて劇場に棲みついた悪魔。
観客は奇想天外な旅に導かれていく・・・
以前、本コラムでも『凱里ブルース』『ロングデイズ・ジャーニーこの夜の涯てへ』をご紹介したビー・ガン監督。今回の新作は15分の短編映画で、ワンコインで劇場公開されるという例外的な興行が行われます。世界で最も期待されている作家ゆえの、異例の興行形態に注目が集まっていますが、今回この記事では監督の出身地・貴州(中国南西部・山岳地域にある省)という場所と作品の関わりについて考えてみたいと思います。
この写真中で、線路の先の光景が貴州の都市なのかはわからないのですが、エンドクレジットには貴州、および州都の貴陽のクレジットが入っていたので、確実に本作の撮影は貴州のどこかで行われています。
ちなみに、ビー・ガンは題名に「凱里」(貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州の都市)とはっきり入っている『凱里ブルース』だけでなく、『ロングデイズ・ジャーニーこの夜の涯てへ』でも凱里を舞台にしていて、今はわかりませんが『ロングデイズ・ジャーニーこの夜の涯てへ』の制作の時は凱里にいまだに住んでいるという記事を見たことがあります。
ほぼ同じキャストでずっと撮り続ける監督、ほぼ同じようなストーリーを形を変えて撮り続ける監督など、監督にはそれぞれクセのようなものがありますが、ビー・ガンの場合は貴州という故郷の風土と作品は切っても切り離せないのでしょう。
おとぎ話のような導入から、夢想的空間だけでなく、いたって現実的な都市空間とを行き来したり、滞留してみたり、夢想と現実のボーダーラインに片足立ちする感じで立ってみたり・・・ビー・ガン独特の「ステップ」のようなものが、映画の流れを作り出しています。それゆえに、15分という短い時間でも、異次元に旅できる作品となっているのでしょう。
『Bi Gan A SHORT STORY ビー・ガン ショート・ストーリー』は、10/27(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。そのほか詳細は公式ホームページをご確認ください。