(C) Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014
汚れたミルク あるセールスマンの告発
監督:ダニス・タノビッチ
出演:イムラン・ハシュミ、ダニー・ヒューストンほか
日本公開:2017年
水は暮らしの生命線、ミルクは生命の源泉―優秀なパキスタン人営業マンの葛藤
1994年のパキスタンで、青年・アヤンは国産の薬品を売るセールスマンをしていたが、妻・ザイナブの勧めで大手グローバル企業の面接を受け、営業マンとなる。
数年後、友人の医師から、アヤンの勤める企業の粉ミルクを不衛生な水で溶かして飲んだ乳幼児が死亡する事件が多発していることを知らされる。強引な売り込みによって、本来は母乳で充分な母親にも医師らが粉ミルクを処方していたためだ。
責任を感じたアヤンは会社を辞め、医師らへの賄賂として使った金品の領収書などの書類をもとに、無責任で強引な販売姿勢を告発するが・・・
西遊旅行のHPをご覧になっている方、ツアーに行かれる方はやや例外的かもしれませんが、パキスタンという国はまだ日本人にとっては日頃接する情報が限られており、やや「遠い国」といえるかもしれません。
しかし、最近お台場で行われていたITの展示会で、ひときわ勢いを感じたのはパキスタンとバングラデシュのブース(おそらく国の補助もあって国ごとにまとめていらしているのだと思います)でした。映像もとても凝ったもので、日本の企業のブースよりも色使いが派手でグイグイと引き込むパワーを感じました。担当者の方は「ITエンジニアの世界で次来るのはパキスタンといわれている」とおっしゃっていました。何が言いたかったかというと、やはりパキスタンもグローバル化の強い波は今まで受けてきましたし、世界進出する勢力もあるということです。
話が変わるようですが、秘境ツアーに行く際に添乗員(おそらくかつての僕だけではないはず)が常に気にかけていることは、何だかご存知でしょうか。そう、「水」です(あとは付随して「トイレ」もです)。ちなみに、久々に本HPの「西遊旅行の『旅』のかたち」のページを見ましたが、「水道水が飲めないエリアでは、毎日ウォーターサーバーなどからお水をお配りします。プラスチックゴミの削減のため、お客様にはマイボトルをご持参いただきます」と、サステナブル・ツーリズムに関する記載があり、時代の流れを感じました。
それだけやはり「水」というのは生命線ですし、日本には配給されていない映画ですが、ボスニア内戦において「川に毒を流す」という攻撃を軸に両国の関係性や人々の姿を描いた作品を映画祭で観たことがあり、「水」は権力に関わっていたり争いの火種になることもあります。
だからこそ、「水」を切り口にした本作では、既存のパキスタンに関わる映画にはない人々の姿を見ることができます。
邦題がやや旅情そそられない感じですが、英題は”Tigers”(どんな意味合いかはぜひご覧になってみてください)で、1994年当時のパキスタンに暮らす人々の人生を追体験でき、結果的にはパキスタンという国に興味を持てる内容となっています。