メイド・イン・バングラデシュ

e8a2c3ad29be5251(C)2019 – LES FILMS DE L’APRES MIDI – KHONA TALKIES – BEOFILM – MIDAS FILMES

バングラデシュ

メイド・イン・バングラデシュ

Made in Bangladesh

監督:ルバイヤット・ホセイン
出演:出演:リキタ・ナンディニ・シム、ノベラ・ラフマンほか
日本公開:2022年

2022.3.30

「どう生きたいか」で「どう働くか」を決める―バングラデシュ女性たちの働き方改革

2010年代前半、大手アパレルブランドの工場が集まるバングラデシュの首都ダッカ。衣料品の工場で働く既婚女性シムは、失業中の夫に代わり一家の大黒柱として働く最中、厳しい労働環境に苦しむ同僚たちと労働組合を結成するべく立ち上がる。

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工場幹部による脅しや周囲の人々からの反対に遭いながらも自ら労働法を学び、自分の理想とする暮らしを手にするために、シムは伝統・慣習の力に抗いはじめる……

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「ラナ・プラザ」と聞けばピンとくる方はピンとくる出来事が2013年にバングラデシュで起こりました。大手グローバル・ファッションブランドの商品も扱う縫製工場が入っている8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落し、1100人超の死者が出た事件です。犠牲者の多くは、働き手の女性たちで、彼女たちは男性オーナーたちの支配的経営やずさんな人事・労務管理体制に苦しんできました。

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本作はそういった出来事と、10代半ばからバングラデシュの労働闘争に関わってきたダリヤ・アクター・ドリという女性の実話をもとにつくられたフィクション作品です。

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『メイド・イン・バングラデシュ』で描かれる男性たちは、ストーリー上は、一見すると主人公・シムの思いを阻む「敵・悪者」といった見え方をします。

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「正義を掲げる女性たちが、悪に抗う話」、より俯瞰した目線で見れば、「グローバル資本主義という悪に、女性たちが疑問を投げかける話」と見えやすいということです。

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もちろんそういった側面もあると思いますし、そう観ていただいても楽しめる作品だと思うのですが、私は「良い/悪い」というフィルターを極力はずして本作を鑑賞することをオススメします。

鑑賞中、最近福岡で行ったある取材撮影を思い出していました。銀行の休眠預金を活用したソーシャルビジネス事業の取材です。女性のエンパワーメント(能力開花)事業・不動産事業・コワーキングスペース運営を連動させて、「どう働くか」に従属して「どう生きるか」が決まってしまうのではなく、「どう生きたいか」という思いによって「どう働きたいか」が自ずと導かれるような社会を目指す。そんな未来を志向するアライアンス企業でした。

本作の作り手のスタンスも、そのアライアンス企業と同様であると私は感じました。

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「やりたいか/やりたくないか」、つまり「どう生きたいか」という尺度が主人公・シムの中で育ち始め、多くの人が変えられないと思い込んでいる「どう働くか」を揺り動かしはじめる話を描く意図が最も強いということです。
(その点に最大限集中するにあたって、男性たちや大手ファッション・ブランドが「良いか/悪いか」という尺度は若干邪魔だと私は思うので、「良い/悪い」というフィルターは極力はずすことをオススメしました)

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そのようなシムの心中で沸き起こるダイナミズムに触れることは、旅先で全く知らない人との邂逅の中で、生きる勇気をもらう感覚にとてもよく似ています。

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旅から戻ってきた後しばらくして「あの人は今頃どうしているかな」と思い返すことがあるように、「バングラデシュの女性たちは今頃どう生きているかな」と鑑賞後に思いを馳せるようになるはずの『メイド・イン・バングラデシュ』は、4/16(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー。詳細は公式サイトからご確認ください。

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写真撮影に徹底的にこだわった特別企画 通常ツアーで訪れないような厳選の撮影スポットへ。

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ダッカ

バングラデシュへの旅は、たくさんの人々との出会いも大きな魅力のひとつです。畑で働く人々、漁をする人々、雑踏のなか力一杯リキシャのペダルを踏む人や、エネルギッシュに逞しく生きるベンガルの人々はとても人懐っこく、たくさんの笑顔で迎えてくれます。