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ざくろの色
監督: セルゲイ・パラジャーノフ
日本公開:1991年
フィルムに焼き付けられた 世界最古のキリスト教国・アルメニアの精神世界
18世紀、アルメニア。王妃に恋をした宮廷詩人サヤトは、想いを詩と琴の演奏で伝える。しかし恋が実ることはなく、サヤトは修道院に幽閉されてしまう・・・
「詩人の幼年時代」「詩人の青年時代」「王の館」「修道院」「詩人の夢」「詩人の老年時代」「死の天使との出会い」「詩人の死」の8章構成で、サヤト・ノバの生涯が摩訶不思議に描かれていく・・・
皆さんは「年に一度は観たくなる映画」がありますか?
僕は何本かありまして、特に年末年始に観たくなるアルメニアの名匠セルゲイ・パラジャーノフ監督の代表作をご紹介できればと思います(また、来週頃にコーカサスの作品を紹介するからという理由もあります)。
1969年に制作された本作(あるいはセルゲイ・パラジャーノフ作品)は、いわゆる「カルト映画」と呼ばれる区分に入る作品で、長きにわたって世界各地に一定数の熱狂的なファンを保持し続けています。アルメニアという国が、ノアの箱舟伝説で有名なアララット山の麓に広がる、世界最古(西暦301年以来)のキリスト教国であることも、本作が伝説的作品と呼ばれるひとつの所以となっているはずです。
1ショット1ショットが絵画 あるいは 舞台かのような本作は、正直、多少コーカサスやアルメニアの背景知識を学んで鑑賞したとしても、何がどうなっている話なのかさっぱりわかりません。
しかし、その「わからなさ」が面白く、それはつまり、観れば確実に「旅気分」とでもいえるアドベンチャーを味あわせてくれるということです。物語のあらすじが分からなくても、タイトルにあるザクロや魚・羊・書物などのモチーフが登場してかなり凝った演出がなされるので、鑑賞環境さえしっかり整えればいつの間にか異世界に引きずり込まれてしまうのではと思います。
セリフらしいセリフは全くなく、サヤト・ノバの詩やアルメニア民族伝統楽器・歌唱によって映画のリズムが織りなされているのですが、まさに異世界と呼ぶにふさわしい世界観で、「ずいぶん遠くに来たなぁ」と旅先で思うような心地にさせてくれます。
今後数回も、異世界を味あわせてくれるコーカサスの作品を紹介できればと思います。まだ海外旅行を検討するには探り探りな世の中ですが、今年も映画鑑賞を通じて海外秘境旅行気分を味わうお手伝いをできればと思います。