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GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生
監督:パスカル・プリッソン
出演:プリシラ・ステナイほか
日本公開:2020年
千年杉のように気高く、優しく―94歳のケニア人小学生・ゴゴ
3人の子ども、22人の孫、52人のひ孫に恵まれ、ケニアの小さな村で助産師として暮らしてきたプリシラ・ステナイ。愛称はゴゴ(ケニア西部・カレンジン族の言葉で「おばあちゃん」の意)。
幼少期に勉強を許されずに、教育の大切さを痛感していたゴゴは、学齢期を迎えたひ孫たちが学校に通っていないことに気づき、周囲を説得して6人のひ孫たちとともに小学校に入学する。
他の小学生たちと同じように寄宿舎で寝起きし、ゴゴは制服を着て授業を受ける。耳はすっかり遠くなり、目の具合も悪い中での勉強一筋縄ではいかないが、助産師として自分が取り上げた教師やクラスメイトたちに応援されながらゴゴは勉強に励んでいく・・・
旅先から持ち帰れるものといえば、お土産や思い出のほかに、出会いがあります。出会いというのは、旅をしたその場でのやりとりだけではなく、旅した地から離れたあとに「あのときあの場所で会ったあの人は 今なにをしているのだろうか」と思いを馳せる形で、数ヶ月・数年・数十年後にまで新鮮さが持続するものです。
94歳で小学生として学ぶゴゴのような人に旅先で会ったとするならば、間違いなく折に触れてその面影を思い出すことでしょう。この映画を見ることで「今頃ゴゴはなにをしているのだろうか」と思うようになることは間違いありません。
小学生に混じって瑞々しい日々を過ごすゴゴの微笑ましいシーンが続く本作には、ケニアにおける貧困・教育に対する問題提起も含まれています。
ゴゴは英語や数学などの知識がなく、90代からそれを学び直すのはかなり無理があるという様が映し出されています。一転して、助産師としてのゴゴが映るシーンでは、彼女はエコーも使わずに胎児の性別を特定し、雄弁に妊婦に助言を伝えるという形で自分が会得した知識を惜しみなく共有しています。
このコントラストを以って「貧困によって、学びの機会が失われることがあってはならない」と多くの観客は思うことでしょう。グサッと刺すような感じではなく、このようにしなやかなタッチの問題提起は、ゴゴが主役の本作だからこそ可能な表現だと思います。
『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』、12/25(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー。詳細は公式サイトからご確認ください。