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軽蔑
監督: ジャン・リュック・ゴダール
出演:ブリジット・バルドー、ミシェル・ピコリほか
日本公開:1964年
青の洞窟で有名なカプリ島で―南イタリアの光が照らす恋愛悲劇
脚本家のポールは映画プロデューサーのプロコシュから、オーストリアの巨匠であるフリッツ・ラングが監督する大作映画『オデュッセイア』の脚本の手直しを依頼される。
ある日ローマにある国立撮影所・チネチッタを、ポールは妻で女優のカミーユとともに訪れていた。用事を済ませると、ポールとカミーユはプロコシュから自宅へ招かれる。カミーユとプロコシュは先にスポーツカーで向かい、ポールは後から到着する。すると、カミーユの態度はなぜか豹変しており、彼に対して軽蔑のまなざしを向ける。
後日、ポールとカミーユは映画のロケのため、2人の関係をめぐる悲劇の幕開けとも知らずに、カプリ島にあるプロコシュの別荘を訪れる。
本作は、いまだなお斬新な作品をつくり続けているフランスの巨匠 ジャン・リュック・ゴダールのキャリアの中でも最も有名な作品の一つです。ブリジット・バルドーなど、豪華出演陣や耽美的な世界観も見どころですが、「旅」という意味では断崖絶壁が連なるカプリ島・ナポリ湾の絶景と、その大自然の中に堂々と建つ現代建築 ヴィラ・マラパルテの存在感が必見です。
私は学生時代に、シチリアのパレルモからカターニャに行く途中で、わざわざ迂回してフェリーに乗ってナポリ行き、この建築を見に行くためだけにカプリ島を訪れたことがあります(一応青の洞窟にも行きましたが)。そして、「南イタリアを歩く」のコースの一つでもあるカプリ島・東海岸トレイルを歩きました。
ヴィラ・マラパルテは私有地のため、遠くからしか眺めることができませんでしたが、素晴らしい建築でした。機能としては別荘なのですが、階段があって屋上にのぼれて、舞台であるかのような構造になっています。まるで、まわりの岩山が意志を持って伸びてきて、人間のために舞台を作っているかのような建築です。
そこで往年のスターであるブリジット・バルドーとミシェル・ピコリの悲しい恋愛劇が展開されるわけですが、建築や衣装の色彩と南イタリアの光がそのドラマを盛り立てます。『軽蔑』というタイトルのイメージとは裏腹に、ついロケ地を巡礼したくなってしまうような一作です。