©Gachot Films/Idéale Audience/Neos Film 2018
ジョアン・ジルベルトを探して
監督:ジョルジュ・ガショ
出演:ミウシャ、ジョアン・ドナート、ホベルト・メネスカル、マルコス・ヴァーリ
日本公開:2019年
憧れの人々を探し求めて、ボサノヴァの聖地リオ・デ・ジャネイロへ
『イパネマの娘』『想いあふれて』などの名曲で知られる「ボサノヴァの神様」ジョアン・ジルベルト。フランス生まれでブラジル音楽をこよなく愛するジョルジュ・ガショ監督はリオ・デ・ジャネイロのどこかに今も暮らしているというジョアン・ジルベルトを訪ねる旅に出る。
監督にはもう一人「訪ねる」人がいる。もうこの世にはいないドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーだ。
マーク・フィッシャーは、2008年を最後に公の場に出なくなったジルベルトに会うためにリオ・デ・ジャネイロに向かったが、結局会うことはかなわなかった。そして、その顛末を記した本『オバララ ジョアン・ジルベルトを探して(Ho-ba-la-lá: À Procura de João Gilberto)』が出版される1週間前、自らの命を断った。
ジョルジュ・ガショ監督は、マーク・フィッシャーの意志を引き継ぐため、彼の本を頼りにジョアン・ジルベルトゆかりの人びとや土地を訪ねていく。
どんな旅にも、力学のようなものが働いています。ある人は世界遺産に興味があり、ある人は食に興味があり、ある人は写真に興味があり、力の働き方は様々です。旅の目標が明確にある場合も、漠然としている場合も、その力学によって旅をしている張本人は動かされていきます。
本作で監督は自分自身の意志で旅しているというよりも、ジョアン・ジルベルトとマーク・フィッシャーという2人の亡霊が作り出す強力な磁場に身を任せるように旅をしていきます。一方は確かにこの世に存在するけれどもその姿はつかめない、幻のようなレジェンド、いわば「憧れの存在」(ジョアン・ジルベルトは2019年7月に亡くなりましたが、この旅の最中はまだ存命でした)。
もう一方は、「永遠に追いつけない存在」である死者で、彼と会った人や、彼が存在していた証明である著作を通して、監督はその距離を縮めていきます。
このように夢と現実の間を彷徨うような不思議な旅を演出している力学が、本作の最大の見所です。旅はジョアン・ジルベルトがかつて暮らしていた田舎町・ディアマンティーナにまで及び、磁場に引き寄せられるようにジョアン・ジルベルトを知る人々や元妻で歌手のミウシャ(撮影後の2018年12月に亡くなりました)も自ずと監督のもとに集まってきてありのままの姿を見せてくれます。
陽気なイメージのあるリオ・デ・ジャネイロ(ブラジル)の町を黙々と、亡霊に語りかけるようにひたすら練り歩くオリジナルな旅を描いた『ジョアン・ジルベルトを探して』は、8/24(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。