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バジュランギおじさんと、小さな迷子
監督:カビール・カーン
出演:サルマーン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラ、カリーナ・カプールほか
日本公開:2019年
永らく背中合わせの印パを駆け抜ける、でこぼこコンビの珍道中
パキスタンの小さな村に住む6歳の少女・シャヒーダー。成長しても声を出すことができないシャヒーダーを心配した母は、彼女をつれてインドのイスラム寺院に願掛けに行くものの、帰り道で離ればなれになってしまう。インドに取り残されたシャヒーダーは、ヒンドゥー教のハヌマーン神を熱烈に信奉する青年・パワンに救われ、パワンは彼女を親元に返すまで面倒を見る決意をする。
ひょんなきっかけで、パワンはシャヒーダーがパキスタンからやってきたことに気づく。一度決心を固めたパワンは、周囲の制止に耳を貸さない。パスポートもビザも持たず、国境を障壁とも思わず、パワンはシャヒーダーをパキスタンの親元に送り届ける旅に出る。
インド映画興行第3位を記録した本作。表向きは、インド・パキスタン両国同士の長年にわたる対立を背景に、「インドに“迷い込んだ”パキスタンの少女を、インドの青年が“見知らぬ国”・パキスタン送り届ける旅」というストーリーです。インド映画お決まりのダンスシーンも満載です。
しかし物語の奥底にはインドの制作クルーたちによって、パキスタンへの歩み寄りの心があちこちに散りばめられています。インド人もパキスタン人も、本当は言いたいのだけれどなかなか言えないこと。それは、「インドとパキスタン、お互い本当は仲良くしたい」ということです。
例えばパワンとシャヒーダーがパキスタンに入ってすぐ、警察に追いかけられながらバスに身を隠している時に、パワンの苦心を知った集金係がこんなセリフをいいます。
「あなたみたいな人が、インド・パキスタン両方にたくさん増えればいいのに」
近くて遠い国。それが現在のインドとパキスタンの関係なのだと思います。面白いことに、本作ではパキスタン設定のシーンがインドで撮影されています。許可や製作上の理由でそうなったのかもしれませんが、それができてしまうということを以っても、インドとパキスタンが実は近いのだということが示されています。
『バジュランギおじさんと、小さな迷子』は、1/18(金)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。
デリー
「旅の玄関口」デリー。この都市は、はるか昔から存在した歴史的な都でもあります。 古代インドの大叙事詩「マハーバーラタ」では伝説の王都として登場。中世のイスラム諸王朝やムガール帝国などさまざな変遷の後、1947年にはイスラム教国家パキスタンとの分離独立を果たします。現在ではインド共和国の首都として、その政治と経済を担い、州と同格に扱われる連邦直轄領に位置づけられています。