(C)TRIO IN PRAGUE 2016
配給:熱帯美術館
プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード
監督:ジョン・スティーブンソン
出演:アナイリン・バーナード、モーフィッド・クラークほか
日本公開:2017年
古都プラハの美しい町並みの中で、愛に悩むモーツァルト
1787年、プラハはオペラ『フィガロの結婚』の話題で持ちきりになっていて、作曲家のモーツァルトにも注目が集まっていた。ウィーンに住むモーツァルトは息子を失い、悲しみに暮れる日々を過ごしていたところに新作の依頼を受けて、プラハにやってくる。『フィガロの結婚』のケルビーノ役を演じるオペラ歌手・スザンナと出会い、モーツァルトは彼女の美貌に魅了されていく・・・
本作はモーツァルトが名作オペラ『ドン・ジョヴァンニ』をプラハで初演したという史実から着想を得て、プラハの上流階級社会を舞台に、事実と大胆な想像が織り交ぜられて展開していく物語です。モーツァルトに関する史実や言い伝えを再現するようなシーンもあり、それは知っていてもそうでなくても楽しめる演出となっていますが、どのように『ドン・ジョヴァンニ』が作られたかという経緯に関しては、多くが原作者の想像によって描かれています。
私は、本作がいざなう想像の旅路の途中で、ある旅の記憶を思い出しました。パキスタンのラホール博物館で、ヘレニズム文化と仏教文化が融合したガンダーラ美術の数々を目の前で見た時のことです。ガンダーラ美術はアレクサンダー大王の東征によってヘレニズム文化の影響があり芽生えた美術だと言われており、アレクサンダー大王はインダス河口あたりで西に引き返したと言われています。隆々とした筋肉の弥勒菩薩立像を見て「アレクサンダー大王は本当にこの辺りまで来たのだな・・・」と、数千年の歴史がその像に宿っているのを感じました。
本作の映像の中にも、それと同様に歴史の流れが宿っている被写体があります。それは、18世紀を現在の町並みでそのまま再現できるプラハの町そのものです。モーツァルトが曲を作った背景だけでなく、名作と言われる音楽・文学・映画にどれだけ深い感情が関わっているのかを観客に想像させてくれる普遍性は、重厚な歴史が織りなすプラハの圧倒的な雰囲気に支えられています。また、当時の上流階級の暮らしぶりが表現された素晴らしい美術や衣装にもぜひ注目してみてください。
『プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード』は12月2日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。その他詳細は公式HPをご確認ください。
プラハ
世界で最も美しい町ともいわれる、チェコ共和国の首都