SHIFT 恋よりも強いミカタ

mihon(C)2013 Cinema One Originals

フィリピン

SHIFT 恋よりも強いミカタ

 

Shift

監督:シージ・レデスマ
出演:イェン・コンスタンティーノ、フェリックス・ローコーほか
日本公開:2014年

2017.9.6

男性みたいな女性×女性みたいな男性 マニラに暮らす若者たちの世界

舞台はフィリピンの首都・マニラ。真っ赤な髪の少女・エステラは、シンガーソングライターになることを夢見つつ、コールセンターで働いている。女子高あがりのエステラは、大学に入って初めて男友達ができるものの、ボーイッシュすぎてなかなか恋人の対象として見てもらえない。

職場で遅刻ばかりしているエステラは、ある日自分の指導員となったトレバーと親しくなる。トレバーは、自分がゲイであることを家族に知られているが、腹を割ってそのことを話し合えずにいる。互いに過去を共有しあい、徐々にエステラはトレバーに心惹かれていくが、超えられない「性差」の壁が二人の間に立ちはだかる・・・

「行ってみないと分からない」ということは世の中に多く、それは旅の醍醐味でもあります。たとえば、日本のニュースで中東の国の名前が出てくる時と、北欧の国の名前(中東よりも遠く、かつ西欧よりも行く機会が一般的にないという意味で)が出てくる時、前者のニュースほうが内戦やテロなどといったネガティブな内容である確率は圧倒的に高いでしょう。たしかに、中東には実際戦闘が行われている地域や、行くことが困難な場所もあります。しかし、何千万人の人々がそこで日常生活を送っているということ、同国内や周辺の地域でもそういったこととは無縁で平和な場所もあるということは、情報の偏りの中でどうしても抜け落ちてしまいがちです。

この映画を私が2014年に見た時、私のフィリピンに対するイメージは、まるでマニラに実際「行ってみた」かのように大きく変わりました。それまで私が持っていたフィリピンのイメージは、経済発展をとげていることは知りつつも、比較的田舎で、タイ・ベトナムなど他の東南アジア諸国に比べて発展途上であるというようなイメージでした。

映画を見てまず感じたのは、マニラの都会的な光景、日本にもあるようなコールセンター、そしてそこで飛び交うクリアな発音の英語に対する新鮮味です。フィリピンでは学校の授業やニュースでもタガログ語とあわせて英語が日常的に使われていて留学しに来る人が増えていると聞いたことはありましたが、それも納得できる雰囲気が醸し出されていました(その後、フィリピンの映画監督たちと映画祭などを通じて出会い、この映画で描かれていた現代フィリピンの国際感覚の続きを見たような感覚になりました)

そして、LGBTに関して映画でオープンに語られる風土がある点にも一見の価値があります。東南アジアの爽やかな青春ドラマを見たい方、特にまだフィリピンに行ったことがない方にオススメの一本です。