ふたりのベロニカ

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ポーランド

ふたりのベロニカ

 

La double vie de Veronique

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
出演:イレーヌ・ジャコブ、フィリップ・ボルテールほか
日本公開:1992年

2017.1.25

冷戦時代のポーランドとフランスで、時代の渦を越える第六感の交流

時代は1980年代。ポーランドに住むベロニカは、コンサート歌手としてのデビューを決め、恋人と幸せな日々送っています。時々突発的に胸が痛みことだけが気がかりでした。ある日、ベロニカは広場で「連帯」(独立自主管理労働組合)のデモ隊と機動隊の衝突を掻い潜るようにして歩いている最中、フランス人の観光客が乗るバスの中に自分とそっくりの女性を見つけます。彼女はベロニカに気づかないまま去っていきますが、ベロニカはいつももう一人の自分がいるような不思議な感覚がしていたことをふと思い出し、考えを巡らせます。

バックパッカーのような気ままな旅に限らず、スケジュールに沿って旅行をしていても、旅には偶然の出会いや出来事がつきものです。旅行中に撮った写真を見返して「この人たちは今どこにいて、何をしているのだろうか・・・」と思いを巡らせたことがある方は多いのではないでしょうか。その逆もまた然りで、旅で出会った人たちの側も、私たちのことを思い出す瞬間がきっとあることでしょう。

久しぶりに連絡したら、ちょうど相手も連絡しようと思っていた・・・など、人が人を想うことというのは、時に何とも説明がつかない不思議な感覚を私たちにもたらします。私の映画をいつも欠かさず見に来てくれる大事なお客さんの一人に、ネパールでたまたま同じバスに乗り合わせた人(日本人)がいます。普段は全く連絡をとりませんが、新作のお知らせをする度に「そろそろ連絡が来ると思っていた」と言われ、いつも興味深い感想を私に伝えてくれます。映画館でその人に会うたびに不思議なめぐり合わせを感じますが、この映画はそうした偶然や運命といったものの流れを、冷戦という大きな時代背景とともに描いています。

この映画の最も印象的かつ重要な出会いの場面は、ベロニカが自分の生き写しのような女性に遭遇するクラクフの広場で撮影されました。本国では1991年に映画が公開されたので、撮影は1989年の冷戦終結から間もない頃に行われたのでしょう。実際、私はこの場所をアウシュビッツ訪問とクレズマー音楽(ユダヤ音楽)を聞くのを目的に、2008年に訪れたことがあります。その時見た風景は映画の中のものとはだいぶ違っていました。東欧諸国の中で共産主義時代の名残を一番感じたのはルーマニアでしたが、クラクフは駅のそばにカルフールなどがあり英語も通じる場所が多い近代的な雰囲気の街でした。

冷戦終結前後のクラクフの光景が見たい方、誰か会いたいと思っている人がいる方におすすめの映画です。

中欧地下世界
神秘の鍾乳洞群とヴィエリチカ岩塩坑

東スロバキアからタトラ山地を抜けポーランド、そしてプラハへ。

DSCF7596織物会館

クラクフ

ヨーロッパ中部と黒海、ヨーロッパ南部とバルト海を結ぶ中世の貿易路上にあり、商業の中心地として発展した古都。