マレーナ

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シチリア

マレーナ

 

Malena

監督: ジュゼッペ・トルナトーレ
出演: モニカ・ベルッチ、ジュゼッペ・スルファーロほか
日本公開:2001年

2017.1.18

シチリアの青い空には目もくれない、
少年のひたむきな恋心

舞台はイタリア・シチリア島。第二次大戦勃発直後の1940年から物語が始まります。12歳の少年・レナートは町で一番美しい女・マレーナに一目惚れをして、彼女のすることなすことを目撃しようと追いかけ続けます。やがて、敗戦とともにマレーナの夫は戦死したことがわかり、父親も空爆で命を落とします。生きていく術をなくし落ちぶれていくマレーナを、レナートはただ見守ることしかできず・・・

シチリアで撮られた映画といえばこの作品の監督であるジュゼッペ・トルナトーレの代表作『ニュー・シネマ・パラダイス』や、『ゴッド・ファーザー』シリーズが有名ですが、この『マレーナ』もそれらの作品と全く違った切り口でシチリアの情景の美しさを映し出しています。

物語の舞台になっているのはシチリア島南東にあるシラクサの街ですが、1940年代の設定がそのままの街並みで撮られたそうです。実際私が2007年に訪れた際も、映画のような街並みだという感想を持ちました。石畳の光沢や感触、シチリアの気候と陽気な人々の醸し出す雰囲気、建築の荘厳さはいまだに脳裏に焼き付いています。

この映画の特徴的な点は、レナート少年の妄想混じりの視点で物語が進んでいくことです。レナートはシチリアの青い空や私が感動したような街並みには目もくれず、一心不乱にマレーナを追い続けます。逆説的ですが、レナートがそうした光景を見なければ見ないほど、物語の波風が立つという構造にストーリーが緻密に計算されています。

歴史と同じく映画にも”if”はありませんが、もし例えばこの映画が同じヨーロッパでもパリで撮られていたとしたら、思春期の少年の繊細な感情は描ききれなかったでしょう。ポスターの絵になっているような、シチリアのすっきりとした空と海・照りつける日差しが少年の入り組んだ心情を描くのに必要不可欠だということは、この地で育ったトルナトーレ監督が確信していたのでしょう。

シチリアの少年の青春を覗いてみたい方、『ニュー・シネマ・パラダイス』『ゴッド・ファーザー』とは違うシチリアが見てみたい方におすすめの一本です。