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オリ・マキの人生で最も幸せな日

f785771cfd66e7a9(C)2016 Aamu Film Company Ltd

フィンランド・北欧

オリ・マキの人生で最も幸せな日

 

Hymyileva mies

監督: ユホ・クオスマネン
出演: ヤルコ・ラハティ、オーナ・アイロラ ほか
日本公開:2020年

2019.12.18

モノクロでもカラフル―あるボクサーの宝物のような記憶

1962年夏、パン屋の息子でボクサーのオリ・マキは、世界タイトル戦でアメリカ人チャンピオンと戦うチャンスを得る。準備はすべて整い、あとは減量して集中して試合に臨むだけというタイミングで、オリはライヤという女性に恋をする。

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フィンランド国中が試合の結果を期待し盛り上がる中、オリは試合のプレッシャーとささやかな幸せとの間を揺れ動く・・・・・・

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スポーツはしばしば国民的記憶をつくり出します。海外旅をしていてスポーツの話をしていると、自分の全く知らない熱狂の存在(たとえばインド・パキスタン・スリランカのクリケットなど)を知り、また逆に自国の熱狂が海外では全く知られていないことに驚くことがあります。

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私が自分の記憶で真っ先に思い出すのはサッカー日本代表の軌跡(ドーハの悲劇、ジョホールバルの歓喜、日韓ワールドカップなど)。記憶の深いところにはあるのは長野オリンピック(寒そうな開会式での力士の土俵入り、スキージャンプのドラマ、スピードスケートやボブスレーという競技を知ったこと)。近年ではラグビー日本代表の躍進、そしてこれからのイベントとしては、東京オリンピックが間違いなく日本人の国民的記憶として多くの人の心に残っていくことになるでしょう。

本作は、実在の人物であるオリ・マキの人生を再現する形のドラマです。フィンランドの年輩の人にとって、1962年の世界タイトルマッチがどれほど記憶に残っているものなのかはわかりません。フィンランド語のWikipediaを見る限りでは、ビックイベントだったようなので、日本での力道山の活躍のように、ある年代の人々にとっては広く知られている出来事なのでしょう。

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しかし、ライヤとのことは書いていませんし、減量の難しさについては発言が引用されていても、本作のテーマである「幸福」についてはもちろん記録が残されていません。

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たまたまオリ・マキと同郷だった監督は、ある日の邂逅をきっかけに彼の記憶をすくい取り、メインキャストも同郷出身で固め、彼の記憶の再現を試みました(ちなみに鑑賞後に知りましたが、オリ・マキ本人がある重要なシーンに出演していて、彼は2019年4月に亡くなっているので本作は貴重な晩年の姿の記録にもなっています)。

こうした製作プロセスによって、本作はひとつのストーリーながらもどこか断片的で、美しい記憶のかけらが拾い集められたかのような雰囲気を醸し出しています。モノクロの色調、フィルムの質感もそれを助長しています。

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幸福度が高いことで知られるフィンランドの人々の精神性を垣間見れる『オリ・マキの人生で最も幸せな日』は、1/17(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。そのほか詳細は公式ホームページをご確認ください。

 

リンドグレーン

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スウェーデン・北欧

リンドグレーン

 

Unge Astrid

監督: ペアニレ・フィシャー・クリステンセン
出演: アルバ・アウグスト、マリア・ボネヴィー ほか
日本公開:2019年

2019.12.11

児童文学作家 アストリッド・リンドグレーンの作風を育んだ、ひとときの旅

スウェーデンの世界的児童文学作家 アストリッド・リンドグレーンは、日々子どもたちから送られてくる手紙を読みながら、自らの青春時代に思いを馳せる。

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スウェーデンのスモーランド地方で、アストリッドは兄弟姉妹と自然の中で伸び伸びと暮らしていた。思春期を迎えた彼女は、より広い世界や社会に目を向けるようになっていた。

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率直で自由奔放な彼女は、しだいに村のしきたりや閉鎖的な社会に息苦しさを覚え始める。そんな中、父親の知り合いが彼女の文才を見抜き、新聞社で仕事が決まる。長かった髪をバッサリ切り、新たな人生を歩む決意をしたアストリッドは、激動の数年を過ごすことになる・・・・・・

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本作はアストリッド・リンドグレーンが代表作『長くつ下のピッピ』『ロッタちゃん』を出版する数十年前を描き、彼女の人生の中でもひときわつらい時間に焦点をあてています。ある目的で彼女がスウェーデンからデンマークに移動するシーンでは、1920年代後半のパスポート印が押されます。

有名作家の伝記とはいえ、約90年前の出来事を、そして生涯ではなく限定されたひと時を映画にする意義はどこにあったのでしょうか。

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それは、本作のメインテーマが「自由」であることに大きく関わっているように思えます。劇中では、彼女が女性であるがゆえに背負わなければいけない不自由さと力強く闘う姿が描かれています。

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のちに彼女が子どもに勇気と感動を与える児童文学作家になることを、ほとんどの観客はわかっている状態で本作を鑑賞するはずです。劇中で21世紀の現代社会に対する言及は一切されていませんが、90年前の彼女が不自由さを乗り越えていった一連の描写を21世紀を生きる私たちが鑑賞することで、「自由」というテーマが力強く発されるようなストーリーテリングが本作ではなされています。

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印象的なシーンのひとつに、アストリッドが息子に即興のつくり話をするシーンがあります。私も娘が寝る前に同じようにしたことがありますが、話してみて驚くのは、自分が過去にした旅の経験が思わぬ形で物語に反映されることです。

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道路を塞ぐ羊の群れ、満点の星空、足を踏み外したら谷底に真っ逆さまのがけっぷち、数百年・数千年の歴史を持つ世界遺産、通じない言語、お湯がなかなか出ないシャワー、やっとたどり着いた宿で食べるあたたかい食事・・・・・・旅の経験は、どんな些細なことでも心の奥底に眠るものなのでしょう。自分の物語の中に異文化体験の片鱗がひょいと出てくることに驚きながら娘に話し続けたことを、本作を鑑賞しながら思い出しました。

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絵本の世界の裏側を旅できるような『リンドグレーン』は12/7(土)より岩波ホールほか全国順次公開中。そのほか詳細は公式ホームページをご確認ください。

幸福路のチー

f72bca1baa596b37© Happiness Road Productions Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.

台湾

幸福路のチー

 

幸福路上 On Happiness Road

監督: ソン・シンイン
出演: グイ・ルンメイ、ウェイ・ダーション ほか
日本公開:2019年

2019.11.27

目が潤む、涙をのむ、懐かしむ―幸福の形を見つめ直す中年女性・チーの心象風景

台湾の田舎町で必死に勉強し、渡米してアメリカ人と結婚し子どもをつくり、一見順風満帆な人生を歩んでいる女性・チーは理想と現実のギャップに思い悩んでいる。

そんなある日、祖母の訃報を受けたチーは故郷の「幸福路」に久々に戻る。しかし、故郷の景色はすっかり変わってしまっていた。子ども時代の懐かしい思い出を振り返りながら、チーは人生や家族の意味について思いを巡らせる・・・・・・

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本コラム「旅と映画」では実写だけではなくアニメーション映画も紹介したいなと常々思っていましたが、『幸福路のチー』がその第1作目となりました。

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本作を観た印象を漢字一字で表すとすれば「懐」がふさわしいでしょう。部首のりっしんべんは「心」、旁(つくり)の上下は「衣服の襟元」、そして真ん中の部分は「目から涙が垂れている様子」を表した象形文字です。ポスターデザインも「懐」の漢字が意味するように、真っ白なシャツと水色の涙が映えるようなデザインになっていますが、本作は主人公・チーの目から流れる涙が物語の主軸になっています。

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チーは1975年生まれ。民主化へと向かう国内政治、中国との国際関係、9.11テロなど、さまざまな時代背景を盛り込みながらチーの過ごしてきた人生が描かれていきます。アニメーションのタッチは、観客の想像力が入り込めるような余白が設けてあり、観客は自身の思い思いの記憶を混ぜることができます。一方で、チーの思い出に引き込まれる場面では余白の割合が少なく、色彩も力強く放たれているように思えます。

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ソン・シンイン監督とは個人的に会ったことがあり、台北にある仕事場にもお邪魔したことがあります。京都大学に留学していたということで、日本語がとても上手い監督です。国や時間の境目を「懐かしさ」で越境していくスタンスは、日本のアニメーション作品に多大な影響を受けながら確立したと聞きました。

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未来への展望のしかたによって過去の意味合いは変わると信じさせてくれる『幸福路のチー』は11/29(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー。そのほか詳細は公式ホームページをご確認ください。

 

LORO 欲望のイタリア

LORO_B2_N(C)2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

イタリア

LORO 欲望のイタリア

 

Loro

監督: パオロ・ソレンティーノ
出演: トニ・セルビッロ、エレナ・ソフィア・リッチほか
日本公開:2019年

2019.11.20

ベルルスコーニという1人の男が示す、イタリアの重厚な歴史

2006年、イタリア・サルデーニャ。広大な敷地を持つゴージャスな高級ヴィラにイタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニは住んでいる。因縁の政敵であるロマーノ・プローディに敗北し失脚したベルルスコーニは、首相の座に返り咲くタイミングを虎視眈々と狙っている。

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青年実業家のセルジョは政界進出の足がかりをつかむため、ベルルスコーニに近づく。持ち前のセールストークで首相復帰に向けて足場を固めていくベルルスコーニだったが、政治家生命を揺るがす大スキャンダルが明るみに出て・・・・・・

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あらすじだけ読むと、本作は世間を騒がせつづけてきたベルルスコーニの人生のスキャンダラスな面を描いた作品のように見えます。しかし実際は、積もりに積もった瓦礫をガラガラとかきわけて「イタリアの集合的記憶」を歴史の奥底から引きずり出すような深みを持った作品です。イタリアの名匠パオロ・ソレンティーノは「2006年から2010年にかけて、ベルルスコーニにうごめいていた感情の正体を知りたい」という企画意図で本作の製作にあたったといいます。

2000年代に入ってから、国内外で転機といえる出来事が起きてきました。2001年、9.11同時多発テロ。2008年、リーマンショック。2011年、東日本大震災・福島第一原発事故などはその代表格でしょう。本作では2009年にイタリア中部で起きたラクイラ地震が、ベルルスコーニとイタリアにとっての転機として描かれています。

本作を見ながらイタリアの雄大な歴史を振り返り、私はローマ帝国の皇帝・ネロを連想しました。ネロは母親の策略によって16歳という若さで皇帝となり、54年から68年までローマを統治し、「ローマの大火」でキリスト教徒迫害を行ったとされています。そんな愚かな面が取り沙汰されることが多いネロですが、彼は芸術を愛し、絵画や読書を楽しめる浴場を建設するなどして大衆を喜ばせていたという一面もあり、その扇動的手法は後世の政治家に学ばれたといいます。

ベルルスコーニと時代を共にする私たちの時代は、後にどのように「集合的記憶」として振り返られるのか。そんな壮大な疑問を観客に突きつける本作の鑑賞体験は、まさに価値観が変わる出来事を巻き起こす旅のようです。

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ベルルスコーニのスキャンダラスな人生が豪華絢爛な美術・衣装で再現されているだけでなく、イタリアの歴史の重層性を感じさせてくれる『LORO 欲望のイタリア』は、11/15(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中。その他詳細は公式ホームページをご確認ください。

読まれなかった小説

42b6dde6ca3244a0(C)2018 Zeyno Film, Memento Films Production, RFF International, 2006 Production, Detail Film,Sisters and Brother Mitevski, FilmiVast, Chimney, NBC Film

トルコ

読まれなかった小説

 

Ahlat Ağaci

監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:アイドゥン・ドウ・デミルコル、ムラト・ジェムジル、ベンヌ・ユルドゥルムラー、ハザール・エルグチュルほか
日本公開:2019年

2019.11.13

読まれない小説の価値とは?―トルコの巨匠が描く、うまくいかないことの美点

舞台はトルコ北西部。作家志望の青年シナンは、大学を卒業してからトロイ遺跡近くの故郷・チャナカレ県チャンへ戻り、初めての小説を出版しようとする。知人を辿って出資を募ったり、地元の有名作家に議論を持ちかけたりと奔走するが、どれも空回りに終わってしまう。

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シナンの父・イドリスは引退間際の教師だ。ギャンブルにおぼれている父を、シナンは疎ましく思っている。自分の小説の最も良き理解者がイドリスであるなどとは、シナンは考えもしない。

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父と同じ教師になり平凡な人生を送ることに疑問を抱きながらも、シナンは教員試験を受け、現状を好転させようと葛藤しながら日々を過ごす。

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作家志望の青年の心象風景を描いた本作は、物語の本筋とはさほど関係ないショットや想像上の光景が唐突にドラマ展開の中に挿入される点が特徴的です。一見、物語の理解を妨害するような描写でありながらも、映画鑑賞後に町中や身の回りを見渡してみると、ある面白みをじわじわと感じさせてくれます。それは「自分が世の中を見ている通りに、他人は世の中を見ているとは限らない」ということです。

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私が西遊旅行に勤めているときに、同じツアーに複数回添乗することがしばしばありました。社歴が浅い頃は、同じツアーなのだから同じように案内すれば大丈夫だろうと心のどこかで思っていましたが、それは大きな間違いであることに追々気付かされました。

前のツアーの参加者の方にとってなんでもない場所や景色でも、別の機会にはマジカルな光景となる可能性がある。あるいは、前のツアーで好評だった場所や景色が、天候・時間などといったタイミングの兼ね合いやツアーの流れによって、添乗員やガイドさんがうまく演出しないと楽しんでもらえない可能性がある。自分がごく普通だと思っても、参加者の方は美しい・おいしい・スペシャルだと思っていることがある・・・・・・そういったことが、添乗回数を重ねる度にわかってきました。

つまり、あたり前のことではあるのですが、人の頭の中にはそれぞれ違う脳が入っていて、自分が他人の脳で考えることはできない(他人のことを考えるには、自分の脳で他人のことを考えるしかない)ということです。

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本作には、3時間強という時間の中に膨大な量の哲学的会話がおさめられていますが、後味としてはまるで一枚の絵画を見たかのような印象です。トルコ・チャナカレ県の紅葉・雪・霧など美しい景観もあいまって、青年のうまくいかなさの中に隠れている前向きなパワーが、時間をかけて詩的にじっくりと浮き彫りにされていきます。

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『読まれなかった小説』は、11/29(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。(2014年のカンヌ映画祭で最高賞を受賞した過去作『雪の轍』もぜひあわせてチェックしてみてください)

雪の轍

poster2(C)2014 Zeyno Film Memento Films Production Bredok Film Production Arte France Cinema NBC Film

トルコ

雪の轍

 

Kis Uykusu

監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:ハルク・ビルギナー、メリサ・ソゼンほか
日本公開:2015年

2019.11.6

雪深きカッパドキアで、心の奥底にダイブする

トルコ、世界遺産のカッパドキアに佇む「ホテル・オセロ」。元舞台俳優・アイドゥンはホテルを運営しながら、親から受け継いだ膨大な遺産をやりくりしながら何不自由なく暮らしている。しかし、若く美しい妻・ニハルとの関係はうまくいっておらず、一緒に住む妹・ネジラともぎくしゃくしている。さらに、父の代から家を貸しているイスマイルの家賃滞納問題から逆恨みを買い、息子のイリヤスはアイドゥンの車に石をぶつける。兼ねてから慈善事業に興味を抱いていたニハルはイスマイル家族に憐れみを持つが、その考えの違いからアイドゥンと対立する。

やがて季節は冬になり、カッパドキアの地に雪が降り積もっていく。雪深い景観に呼応するかのように、アイドゥンを中心にした人間関係も、かねてから積もってきた軋轢が目に見える形で現れてくる・・・・・・。

本作のロケ地であるカッパドキアは、中東でも有数の観光地です。もう10年以上前になりますが、私は映画で描かれているのとちょうど同じぐらい雪が降り積もっているときにカッパドキアを訪れたことがあります。洞窟ホテルに宿泊しましたが、暖炉であたたまりながら他の宿泊者と話したり、窓の外の雪をただただ眺めたのをよく覚えています。

奇岩群を目にし、洞窟ホテルに泊まり、降り積もった雪の中を寒さにぐっと堪えながら歩く。もし冬のカッパドキアに旅をすれば、そうした経験をする可能性が高いでしょう。

旅には人を変える力があります。本作では、議論の応酬や迷いの衝突によって「心の中を巡る旅」が表現されています。奇岩群を見ることは、自分の奇妙な部分を見つめること。洞窟ホテルに泊まることは、自分の心の奥底を覗き込むこと。雪の中を歩くことは、まだ見ぬ自分に踏み入っていくこと・・・・・・人によって化学反応は異なりますが、旅におけるひとつひとつの行動は、日常生活とは違った人生の方向性を私たちにもたらしてくれます。白銀のカッパドキアでの深い思索と静かな気づきの瞬間を描いた『雪の轍』は、踏み出せばくっきりと足跡が残るような新鮮なイメージにあふれた、深く降り積もった新雪のような一作です。

 

洞窟ホテルに4連泊 カッパドキアゆったりハイキング

アナトリア高原が生み出した奇跡の奇岩群カッパドキア。ハイキングではカッパドキアの谷に分け入り、次々に現れる奇岩の造形美や洞窟住居が織り成す景観をお楽しみいただきます。

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カッパドキア

トルコ、アンカラ東南部にある世界遺産カッパドキア。まるで地の果てを思わせる不思議な奇岩群がひしめきあう風景は、思わず息を飲むほどの迫力です。古代噴火によって堆積した火山灰や岩が長い歳月をかけ浸食されて生まれた風景です。初期キリスト教の時代には多くのキリスト教徒たちが迫害や弾圧を逃れ、この地下に隠れ住んだといわれ、今も残る岩窟教会がその歴史を物語っています。

テルアビブ・オン・ファイア

8f3bfc7583fb2866(C)Samsa Film – TS Productions – Lama Films – Films From There – Artemis Productions C623

イスラエル

テルアビブ・オン・ファイア

 

Tel Aviv on Fire

監督:サメフ・ゾアビ
出演:カイス・ナシェフ、ヤニブ・ビトンほか
日本公開:2019年

2019.10.23

「イスラエル-パレスチナ問題」をネタに、思いっきり笑う

舞台はイスラエルとパレスチナ自治区。エルサレム在住のパレスチナ人青年・サラームは、第3次中東戦争が勃発した1967年を舞台にした人気メロドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』の制作現場で、脚本家を夢見ながらインターンとして働いている。撮影所はパレスチナ自治区・ラマッラーにあり、サラームはエルサレムの自宅から毎日軍の検問所を経て通勤する。

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ある日、ひょんな失言からサラームは検問所の主任・アッシの部屋に連行される。アッシの妻が『テルアビブ・オン・ファイア』の大ファンだということで事なきを得て、さらに図らずも脚本のリサーチができたサラームは、製作現場の修羅場で打開策となるアイデアを提案したことを認められ、脚本家の道を歩むチャンスを手にする。

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パレスチナ問題、シオニズム、中東戦争、ユダヤとアラブ・・・・・・日本人にとってはなかなか触れる機会がなく、理解を深めにくい事柄かもしれません。本作はもちろんそういった知識があっても楽しめますが、むしろ知識がないほうが楽しめるかもしれない稀有な作品です。言い換えると、理解が浅めのほうが、劇中のコメディ要素が強調されるように演出の計算がなされているということです。

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たとえば、エルサレム在住のサラームはパレスチナ自治区のスタジオで行われる撮影現場に、ヘブライ語の言語指導で現場に入っています。なぜ、そのような仕事が必要になるのか。なぜ、撮影所に行くために検問所を通る必要があるのか。なぜ、特定の演出が「ユダヤ的」「アラブ的」だと争点になるのか。こうした点について、作中で説明が皆無なわけではありませんが、アラブ料理・フムスなど文化的な要素を駆使しながら、説明しすぎない絶妙なバランスでコメディが展開されていきます。日本の観客の多くは「分かりすぎていると感じられない笑い」を感じることになるでしょう。

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こうしたスタンスには本作の製作経緯が関係しているかもしれません。製作国にはルクセンブルク・フランス・ベルギーという3カ国がイスラエル以外に名を連ねています。つまり、「外からの視点」が大いに反映されている作品であるということです。

エルサレムの歴史的な街並みや観光名所は作中にほぼ登場せず、スタジオ内(おそらくイスラエルではない場所で撮られたのでしょう)を中心に物事が進行していきます。検問所ももちろんセットでの撮影です。「撮れない」「映せない」という製作当時は制限だったかもしれない条件が、観客の想像力を誘発する演出に変身していて、結果的に、「想像上のイスラエル・パレスチナ」という、誰も行けない場所を脳内で旅することができる作品となっています。

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『テルアビブ・オン・ファイア』は11月22日(金)より新宿シネマカリテ・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次ロードショー。詳細は公式ホームページをご覧ください。

パレスチナ西岸と聖地エルサレム滞在

パレスチナとイスラエルの今と昔に触れる―ベツレヘムに2連泊。パレスチナ自治政府事実上の首都ラマラ、「誘惑の山」があるエリコ、旧市街が世界遺産に登録されているヘブロンなど、パレスチナ自治区の代表都市も巡ります。

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エルサレム

長い歴史を持ち、旧約聖書・新約聖書のゆかりの地にあふれ、何日滞在しても足りないエルサレム。マグダラのマリアが生きたミグダルの遺跡や、イエスが悪魔の誘惑を受けたとされるエリコ、ベエル・シェバの井戸など、通常のツアーでは訪れないエルサレムの魅力を巡るツアーも取り揃えています。(聖書の舞台を行く イスラエル周遊10日間

第三夫人と髪飾り

7b758173d43a9c4c(C)copyright Mayfair Pictures.

ベトナム

第三夫人と髪飾り

 

The Third Wife

監督:アッシュ・メイフェア
出演:グエン・フオン・チャー・ミー、トラン・ヌー・イエン・ケー、マイ・トゥー・フオンほか
日本公開:2019年

2019.9.25

「男児を生んでこそ夫人になれる」―19世紀ベトナムの価値観と、現代女性の自由

舞台は19世紀の北ベトナム。14歳の少女メイは、絹の里を治める大地主の3番目の妻として嫁いでくる。穏やかでエレガントな第一夫人には息子がひとり、美しく魅惑的な第二夫人には娘が三人いたが、一族にはさらなる男児の誕生が待ち望まれていた。

やがてメイは妊娠する。メイは身の回りに渦巻く愛憎や社会の矛盾に戸惑い悩みながらも、出産に向けての心を整えていく・・・

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19世紀・ベトナムの女性たちの物語は、現代社会に暮らす私たちに「女性の自由とは何か?」という大きな疑問を投げかけます。当時は男児を生むことが女性にとって最も重要な役割でした。劇中、メイのように現代の基準からすれば結婚にはまだ早い少女が結婚を拒否され、父親に「唯一の役目も果たせないのか」と見捨てられる、悲しい場面があります。

現代社会ではそうした悲劇は起きていないかというと、「いまだに起きている」と答えざるをえません。日本でもベトナムでもその他の国々でも、形は変われどいまだに「唯一の役目も果たせないのか」に近い言葉が発されることが往々にしてまかり通っています。

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監督のアッシュ・メイフェアは映画製作を欧米で学び、本作で母国の慣習を「外の目線」で見つめています。「旅と映画」では、『娘よ』(パキスタン)、『シアター・プノンペン』(カンボジア)、『少女は自転車に乗って』(サウジアラビア)といった同傾向の作品を今まで紹介してきましたが、本作もまたそうした新潮流の一作として、他の国の作品と見比べて鑑賞していただくと深みがさらに増すはずです。

ロケ地についても言及しておかなければいけません。本作の重要なロケ地のひとつは、ハノイから南に約90kmのところにあるチャンアンです。物語は、カルスト地形の奇岩に囲まれつつ流れる川を、舟に乗ったメイが進んでいく場面から始まります。また、川に隣接した洞窟でも撮影が行われており、「生と死」の不思議に直面するメイの心理を表現する上で重要な役割を果たしています。

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チャンアンは2014年に「景観複合体」として世界遺産に登録され、隣接しているホアルーはベトナム初の独立王朝の都が置かれた場所です。おそらくこの地の景観は太古の昔からさほど変わっておらず、様々な人の生き死にを目にしてきたのでしょう。「世代」「継承」というテーマを醸し出す本作は、ロケ地によってさらにそのメッセージ性が増しているように感じました。

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こだわり抜いたセットや衣装も必見の『第三夫人と髪飾り』は10月11日(金)よりBunkamuraル・シネマほか、全国順次ロードショー。詳細は公式ホームページをご覧ください。

ハノイからプノンペンへ陸路で繋ぐ アジアハイウェイ1号線を行く

2015年に開通した橋を利用しベトナムからカンボジアへ 7つの世界遺産も訪問

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チャンアンの景観複合体

「陸のハロン湾」と賞されるカルスト地形の景勝地・ニンビン郊外のチャンアン川にて、手漕ぎ船での川下り「チャンアンクルーズ」が楽しめます。

ヒンディー・ミディアム

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インド

ヒンディー・ミディアム

 

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監督:サケート・チョードリー
出演:イルファーン・カーン、サバー・カマルほか
日本公開:2019年

2019.8.28

英語コンプレックスのインド人夫婦が繰り広げる、ドタバタお受験戦争

デリーの下町で洋品店を営むラージと妻のミータは、娘を私立校に入れることを考えている。親の教育水準・居住地・英語能力までもが合否に影響することを知り、夫婦は娘と一緒にお受験塾に通い、高級住宅地へ引っ越しをする。しかし、結果は全滅。

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落胆した2人であったが、希望していた私立校が低所得者層のために入学の優先枠を設けているという話が報じられているのを目にする。お受験熱を再燃させたラージとミータは、優先枠での入学を狙うために貧民街への引っ越しを決行する・・・・・・

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人々の暮らしぶりを見ることは、旅において大きな楽しみの一つです。私が西遊旅行で添乗していたときには、長距離移動のバス車内でガイドさんに、教育システム・仕事事情・平均所得・食生活など人々の暮らしを知るヒントになる情報を必ずといっていいほど聞いて、ツアー参加者の皆様と質問大会をしていました。

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本作が観客に見せてくれるのは、インドの首都・デリーに暮らす中流階級(ミドルクラス)の葛藤です。ストーリーは、親の学歴によって子どもの入学が拒否された実際の事件にインスピレーションを受けているそうです。
(タイトルの「ヒンディー・ミディアム」はヒンディー語で授業を行う公立学校のことで、主人公夫婦が娘を入れようと必死になっているのは英語で授業を行う名門私立校「イングリッシュ・ミディアム」です)

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困窮している主人公が状況を打破しようと抗ったり、富や名声を得た主人公が没落してどん底に突き落とされる姿を描く映画は多くあります。しかし、本作はそうした典型的なストーリーテリングとは一線を画したユニークな切り口で、「貧富の差」や「階級社会」というヘビーなテーマを扱いながらも、コミカルに物語が展開していきます。

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本作のユニークな点とは、貧富の差が直接的に描かれるのではなく、上流でも下流でもない中流の主人公たちが、上流になりきろうとした結果、自ら下流の生活(貧民街への引っ越し)を選ぶ滑稽さにあります。そして、主人公夫婦は「本当の富や豊かさとは何なのか」を自分たちよりも圧倒的に貧しい人々から学んでいきます。

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この誰も傷つけることのない温かなストーリーテリングによって、下町生まれというラージの出自、学歴という取り返しのつかない過去、英語ができないというミータのコンプレックスは蔑まれることなく全て笑いの要素となっていきます。近年のインド映画のクオリティには圧倒されるばかりですが、本作に見られる洞察の深さ・視野の広さは、インド映画のさらなる発展を予感させるものとなっています。

ヒンディー・ミディアム/メイン

インド国内だけではなく中国でも大ヒットとなった『ヒンディー・ミディアム』は、9/6(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。

ナマステ・インディア大周遊

文化と自然をたっぷり楽しむインド 15の世界遺産をめぐる少人数限定の旅

Chandni_Chowk

デリー

「旅の玄関口」デリー。この都市は、はるか昔から存在した歴史的な都でもあります。 古代インドの大叙事詩「マハーバーラタ」では伝説の王都として登場。中世のイスラム諸王朝やムガール帝国などさまざな変遷の後、1947年にはイスラム教国家パキスタンとの分離独立を果たします。現在ではインド共和国の首都として、その政治と経済を担い、州と同格に扱われる連邦直轄領に位置づけられています。

ジョアン・ジルベルトを探して

4ba6efce99576c01©Gachot Films/Idéale Audience/Neos Film 2018

ブラジル

ジョアン・ジルベルトを探して

 

Where Are You, Joao Gilberto?

監督:ジョルジュ・ガショ
出演:ミウシャ、ジョアン・ドナート、ホベルト・メネスカル、マルコス・ヴァーリ
日本公開:2019年

2019.8.21

憧れの人々を探し求めて、ボサノヴァの聖地リオ・デ・ジャネイロへ

『イパネマの娘』『想いあふれて』などの名曲で知られる「ボサノヴァの神様」ジョアン・ジルベルト。フランス生まれでブラジル音楽をこよなく愛するジョルジュ・ガショ監督はリオ・デ・ジャネイロのどこかに今も暮らしているというジョアン・ジルベルトを訪ねる旅に出る。

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監督にはもう一人「訪ねる」人がいる。もうこの世にはいないドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーだ。

マーク・フィッシャーは、2008年を最後に公の場に出なくなったジルベルトに会うためにリオ・デ・ジャネイロに向かったが、結局会うことはかなわなかった。そして、その顛末を記した本『オバララ ジョアン・ジルベルトを探して(Ho-ba-la-lá: À Procura de João Gilberto)』が出版される1週間前、自らの命を断った。

サブ7

ジョルジュ・ガショ監督は、マーク・フィッシャーの意志を引き継ぐため、彼の本を頼りにジョアン・ジルベルトゆかりの人びとや土地を訪ねていく。

サブ1

どんな旅にも、力学のようなものが働いています。ある人は世界遺産に興味があり、ある人は食に興味があり、ある人は写真に興味があり、力の働き方は様々です。旅の目標が明確にある場合も、漠然としている場合も、その力学によって旅をしている張本人は動かされていきます。

本作で監督は自分自身の意志で旅しているというよりも、ジョアン・ジルベルトとマーク・フィッシャーという2人の亡霊が作り出す強力な磁場に身を任せるように旅をしていきます。一方は確かにこの世に存在するけれどもその姿はつかめない、幻のようなレジェンド、いわば「憧れの存在」(ジョアン・ジルベルトは2019年7月に亡くなりましたが、この旅の最中はまだ存命でした)。

サブ4

もう一方は、「永遠に追いつけない存在」である死者で、彼と会った人や、彼が存在していた証明である著作を通して、監督はその距離を縮めていきます。

サブ8

このように夢と現実の間を彷徨うような不思議な旅を演出している力学が、本作の最大の見所です。旅はジョアン・ジルベルトがかつて暮らしていた田舎町・ディアマンティーナにまで及び、磁場に引き寄せられるようにジョアン・ジルベルトを知る人々や元妻で歌手のミウシャ(撮影後の2018年12月に亡くなりました)も自ずと監督のもとに集まってきてありのままの姿を見せてくれます。

サブ2

陽気なイメージのあるリオ・デ・ジャネイロ(ブラジル)の町を黙々と、亡霊に語りかけるようにひたすら練り歩くオリジナルな旅を描いた『ジョアン・ジルベルトを探して』は、8/24(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。

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