夏至
監督:トラン・アンユン
出演:トラン・ヌー・イエン・ケーほか
日本公開:2001年
雨と緑が映える、
絵筆で書いたようなベトナム映画
旅先で雨が降ると少し憂鬱になってしまうこともあるかもしれません。しかし、この映画を見ると雨の降る音にも色々あり、雨粒が落ちる場所によって音が違うことに気付かされます。ストーリーは三姉妹を主人公として、夫婦間の愛憎などヘビーな内容も含んでいるのですが、そうした展開も劇的にはならずにさらりと流れていきます。流れていくというよりも、ハロン湾の奇岩の中に大の字で浮かぶ登場人物のように、ストーリーはどこに行くでもなく、ただ浮かんでいるだけなのかもしれません。雨がたくさん降り、草花が茂って、湿度で人々は汗をかき、暑さを和らげるかのように簾が風にかすかに揺れる…というように、登場人物たちが過ごす環境が綿密に構成された映像・音響で表現され、映画に浮力をもたらしているのでしょう 。東南アジアの湿度が伝わり、冬に観ても知らないうちに体があたたまっているような不思議な鑑賞体験ができるかもしれません。
ハロン湾
ベトナム北部、トンキン湾北西部にある湾。大小3000もの奇岩や島々が存在する。中国がベトナムに侵攻してきた時、竜の親子が現れて敵を破り、口から吐き出した宝石が湾内の島々になったと伝えられている。