グジャラートのテキスタイルを巡るうえで、外せないのがパトラ織。今回はナショナルアワードも受賞したムハンマドさんの絞り染めと今や数家族のみが受け継いでいるパトラ織をご紹介します。
■絞り染め
インドで絞りの産地はグジャラートとラジャスタンがあげられますが、グジャラートでは絞り染めのことを「バンダニ」と呼びます。
ムスリムのコミュニティで作られるバンダニは吉祥の意味があり、婚礼用のヴェールや祭礼、結婚式に参列するときの晴れ着として、特に女性に好まれてきました。また、アメリカ在住の日本人アーティストであるワダ・ヨシコさんが絞り染めの技法を用いたアート作品を1983年に出版した「Shibori」という本で紹介し、「シボリ」が世界中で有名になりました。また国際絞りシンポジウムも開かれ、第2回はグジャラート州のアーメダーバードで開催されました。
これをきっかけにカッチの人々も「シボリ」という言葉を使うようになりましたが、カッチの人は今までの伝統的な布をくくって染めるものは「バンダニ」、針を使って波縫いをきゅっと縮めて染める方法を「シボリ」と呼んでいるようです。
小さな絞りの作業はまさに職人技!!
括ったら染めの作業です。
この状態から、この様に引っ張ると「ブチブチッ」という音とともに糸が取れていきます。
広げるとこんな感じ↓
■パトラ織
パトラ織の産地、パタンで今もパトラを織り続けている僅かな家族の中でも、最も有名なサルヴィ氏。博物館も併設しています。
パトラ織の起源は諸説ありますが一説には、12世紀、パタンを治めていたソランキ王朝の王様の招へいで、ジャルナ(現ムンバイより東へいったところ)からパトラ織をする700家族がパタンに移動し、ここにパトラ織りが定着したと言われています。サルヴィ家もそのうちの1家族だったそうです。インドでは、その後も宮廷や富裕層の間でサリーとしてパトラが織られ、特に結婚式用として使われました。また、海を渡り、各地の織物に影響を与えました。特に東南アジアや、日本でも江戸時代に織られ、今でも九州の「久留米絣」がこの技法を持ちます。パトラは「経緯絣(たてよこがすり・ダブルイカット)」で織られます。予め、経糸、緯糸それぞれの部分部分を糸でくくり、色で染めます。これを何回も繰り返し、複数の色で染めるこの作業は長い時間がかかり、この作業だけで、全体の7割近くを占めます。
その後、織り機で、経緯の柄を併せながら織っていきます。少し織ると、鉄のピンを使って柄をしっかり合わせる作業をします。
細かい作業のため、1日に約15㎝程度しか織れないそうです。このため、長さ6mのサリーを1枚織るためには5~6か月もかかります。経糸、緯糸どちらもそれぞれ染めるのがダブルイカット、経糸もしくは緯糸のどちらかのみを染めるのがシングルイカットと呼ばれています。
絞り染め、ダブルイカット、どちらも素晴らしい職人技。
作業を見ているだけでもあっという間に時が過ぎていきます。パトラ織の工房は博物館も兼ねており、ランチも食べられるので、グジャラートを旅行される際には是非お立ち寄りください。
次回はアジアライオンに出会える、国立公園をご紹介します。
※この記事は2012年6月のものを修正・加筆して再アップしたものです。
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