ナマステ!西遊インディアです。
今回はチャンディーガル建築さんぽ、その4。これで一旦このシリーズはおしまいです。
これまでご紹介したル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレゆかりの場所にくわえて訪れたい、ロック・ガーデン(ネック・チャンド彫刻庭園)を中心に、ローズガーデンなどチャンディーガルと近郊の見どころスポットを、写真をたっぷり使ってご紹介します。
■もくじ
1.ロックガーデン(ネック・チャンド彫刻庭園)
2.ザキール・フセイン・ローズガーデン
おまけ:カングラ・フォート
1. ロックガーデン Nek Chand Saini’s Rock Garden
キャピトル・コンプレックスと同じセクター1にあるユニークな彫刻庭園。40エーカー(東京ドーム約3.5個分)の広大な庭園は、装飾、彫刻まですべてリサイクルされた廃材で作られています。
近年だと、Netflix映画「Shershaah」(2021年)のロケ地になったことでも知られています。
入場料は大人30ルピー、子供10ルピー。外国人料金だと一人100ルピーです。
アスレチックのようでもあるので、小さなお子様と一緒に家族で訪れるのも楽しそうです。
庭園名の「ネック・チャンド」とは、この庭園をつくったネック・チャンド・サイニ(Nek Chand Saini)氏のこと。
1957年から50年以上にわたり、長い時間をかけてできあがった庭園です。
不思議な造形物であふれたこの庭園のなりたちには、ちょっとおもしろいエピソードがあります。
コルビュジエの指揮によってモダンな街の建設が進んでいたチャンディーガル。
当時、ネック・チャンド氏は道路検査官として働いていたそうで、建設工事によって発生した大量の廃材に興味をもつようになります。そのうち、陶器やタイル、ガラスの欠片などを拾い集めるようになり、やがてそれらを使って人や動物の彫刻を作り始めました。
1957年には森を切り開いて庭園を造り、集めた廃材で作った彫刻やオブジェを並べ始めます。ですが、当時それは違法行為だったので、人目を盗んでコッソリつくっていたのだそう。毎日のように仕事が終わったら自転車で森に行き、夜から早朝まで創作を続けたのだとか。すごい情熱です。
それから18年ものあいだ秘密で造られていた庭園ですが、1975年、ついに当局に知られてしまいます。
その頃にはなんと、12エーカー(東京ドーム約1個分)の広さに。何百体ものオブジェが並ぶ立派な庭園になっていました。
違法行為が明るみになったことにより、役人たちは政府の土地を不法に占拠していたネック・チャンド氏を追い出そうとします。ネック・チャンド氏は公務員としての職を失うおそれがあり、また、ここまで造りあげた庭園も壊されてしまう可能性がありました。
しかし、初代チャンディーガル連邦直轄地の主任委員であり、市の景観整備に尽力したランダワ氏は違法行為よりもその特異性と芸術性に着目。
ランダワ氏の支援もあり、その存在価値が市の文化財として認定され、ネック・チャンド氏はあらためて庭園の建設監理担当に任命されることとなりました。
こうして、ネック・チャンド氏は正式に庭園造りに取り組めるようになり、さらには市が50人のスタッフを雇い、造園作業に動員できるようになりました。
このことは新聞でも報じられ、当時の新聞記事がチャンディーガルの建築博物館に展示されています。
一見シュール(?)に見えなくもないですが、じっくり見てみるとなんとも言えないユニークな表情をしている人形たち。ほんのり微笑んでいるようにも見え、なんだかだんだん愛着が湧いてきます。
庭園は1976年に正式に一般公開されました。
以来、長年にわたりチャンディガールの芸術と文化のシンボル的存在として愛されています。
2. ザキール・フセイン・ローズガーデン Zakir Hussain Rose Garden
第3代大統領ザキール・フセイン・カーン氏にちなみ、上述のランダワ氏によって名付けられたバラ園。1967年に設立されました。
30エーカーという広大な敷地に、1600種、5万本以上のバラが咲きます。
開花のピークは3月頃で、その頃になると美しい花壇には色とりどりのバラが咲きます。毎年2月から3月にかけて開催されるバラ祭りでは、多くの人でにぎわうそうです。
市内中心部からアクセスしやすいので、地元の人々がピクニックを楽しんだりする憩いの場として利用されています。
コルビュジエの建築スポット巡りの小休憩に、おやつを買ってのんびりするのもよさそうです。
おまけ:カングラ・フォート Kangra Fort
ヒマーチャル・プラデーシュ州カングラ地区にある歴史ある要塞跡。チャンディーガルから約230km、ダラムサラから約20kmの位置にあります。
もはやチャンディーガルと言うよりはダラムサラ近郊と言った方が正確ですが、チャンディーガル/ダラムサラを両方訪問される方に、寄り道スポットとしてご紹介です。
砦は、ダウラダール山脈の麓にある2つの川(マンジー川とバンガンガ川)に挟まれた丘の上に立っています。
周辺を見下ろすことができる丘の上にあり、天然のお堀に囲まれているため防御力が高く、難攻不落の城ともいわれていました。
ラージプート族のカトック王朝から、ムガル帝国、シク教徒の指導者、イギリス軍守備隊の占領、そして現在まで、この地の歴史的変遷を物語る城塞遺跡です。
正確な起源は不明ですが、地元の言い伝えによると、紀元前に遡るジャイナ教寺院とバラモン教寺院が砦内に現存する、ヒマーチャル・プラデシュで最古の城塞遺跡とされています。
近くの丘の頂上には、グルカ戦争(1814-1816年)のネパール軍将軍にして国民的英雄であるバダ・アマル・シンによって建てられたと伝わるジャヤンティ・マタ寺院が見えます。寺院に行く方法はトレッキングのみだそうです。
城塞の中は見学することができ、入場料は外国人料金でも250ルピー(現地料金20ルピー)とお手頃。
ダラムサラからチャンディーガルへの車移動などの際に、気軽に立ち寄ることができます。
史跡としてもおもしろいですが、ダウラダール山麓の2つの川に挟まれた丘の上に立っているので、周辺を見渡すのも気持ちがいい見晴らしスポットです。
コルビュジエによってデザインされた、街全体が建築のオープン・ミュージアムのようなチャンディーガルの都市。
他の都市と比べると街並みが整然としているので「インドらしくないインド」と称されることもありますが、チャンディーガルの成立や都市計画のバックグラウンドを知ると、現代インドを形づくる重要な存在であることがわかります。
(もちろん、いわゆる「混沌としたインド」から少し離れてゆっくりできる場所でもありますが…!)
※2024年2月訪問時の情報です。ご訪問の際は最新の情報をご確認ください。
参考:チャンディーガル州政府公式サイト、チャンディーガル観光局公式サイトなど
Photo & Text: Kondo
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