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ラダックエリアの見どころ、続いて下ラダック側を紹介いたします!
前回: ラダック第5弾:上ラダックの観光
■下ラダック(シャム)
アルチ僧院やラマユル僧院など、ラダックエリアでは見逃せない僧院が点在しています。また、上ラダックよりも標高が低いため、農作に適しており、夏は緑、秋には黄金色の畑を見ることができます。上ラダック側より標高が低いので、高度順応も兼ねてラダック観光の序盤で訪問するのにおすすめです。
▮アルチ僧院(Alchi Gompa)
アルチ僧院は小さな集落であるアルチ村に建つ僧院で、仏教美術の宝庫ともいわれています(アルチ僧院はこちらでもご紹介しました>>ラダック第3弾)。
10世紀末にリンチェン・サンポによって建てられたと伝えられるこの僧院には、現在「僧院」としての機能はほとんどありませんが、内部には、創建当時の壁画が残り、その内容はラダック随一です。
11 世紀半ばに建てられたという三層堂(スムツェク)は、名前のとおり三階建てで上層になるにつれ面積が小さくなる先細りの建築物です。独特の様式を模したファザード(建物の正面部分)は、柱は溝彫り式でうずまき模様が施されており、ギリシャ風の建造物を思わせる建築。また三角形の枠組みの中にそれぞれに尊格の木像が施されており、これらはどれもカシミール様式の特徴を表したものとなっています。
前述のとおり、カシミールや中央アジア美術の系統をひいてるチベット仏教美術における「リンチェン・サンポ様式」は、壁画の着色に「青(群青)」を多用していることが特徴として挙げられます。三層堂の壁面には所狭しと「青を基調とした千体仏」が描かれていますし、また仏塔内部には、チベット仏教寺院としては非常に珍しく、「飛天」や「白鳥」が装飾として描かれています。まさにカシミール様式の代表的な僧院であり、「インド・チベット仏教の至宝」と呼ぶに相応しいものです。
アルチ僧院は、ぜひとも訪問時間をゆっくりとって、訪問ください。
▮ラマユル僧院(Lamayuru Gompa)
「月世界」と呼ばれる独特の地形を通り過ぎつつ走ると、岩山の中腹に建つラマユル僧院が見えてきます。「ユンドゥン・タルパリン」という名前を持つ、カルギル地区のディグン・カギュ派の総本山の僧院です。
11世紀にこの地でカギュ派の開祖マルパの師匠である、ナローパがこの場所で瞑想したのがはじまりと言われ、現在でも200名の僧侶がこの僧院で修行を行っています。毎年チベット暦の5 月には「ユンドゥン・カブギェ」というお祭りが催されており、周辺の村々から多くの人が訪れます。
注目ポイントは、ドゥカン(勤行堂)内部にある「ナローパの瞑想石窟」。ドゥカンの片隅にある石窟内は、チベット仏教の宗派の1つであるカギュ派の創始者ナローパが瞑想を行ったと言われており、洞内にはナローパと、彼の師であるティローパ、彼の孫弟子であるミラレパの像が祀られています。
現存するラマユルのお堂の中で最古の建物であるのが、センゲカン(獅子堂)です。センゲカンは11 世紀、リンチェンサンポが創建したといわれています。
内部にはナンパ・ナンツァ(大日如来)像を中心とした金剛界五仏の塑像が残っています。インドで大乗仏教が発展していくにつれ「聖なる存在の仏」としての要素が強まってきた「五仏」。この五仏の塑像とそれを取り巻く装飾は、アルチと並ぶ秀作と言われています。
中央に大日如来、その周りを、阿閦如来(あしゅく)、宝生如来(ほうしょう)、阿弥陀如来(あみだ)、不空成就如来(ふくうじょうじゅ)の四仏が取り囲んでいます。
センゲカンには、他にも護法尊のマハカーラ(大黒天)や、ユニークな骸骨の壁画「チティパティ(屍陀林王)」などが描かれています。「チティパティ」とは墓場の主という意味であり、チベットの伝説によればもともとは苦行僧であったとされています。あるとき深い瞑想に入りましたが、その深さときたら、その隙を狙って泥棒が彼らの頭をはね、泥の中に身体を捨てたことに気づかないくらいだったとか。その時以来、彼ら(夫婦で描かれていることが多い)は泥棒の宿敵になり永遠の復讐を誓ったと言われています。
▮月の谷
ラマユル僧院の麓に広がるのが「月の谷」と呼ばれるポイント。この場所には、次のような伝説が残されています‥‥「数万年前、この地には大きな湖がありました。紀元前15 世紀頃、聖者ニマグンがこの湖に住む龍神(ル)の供養を行うため湖上に麦の種を撒いたところ、その種が「卍(ユンドゥン)」の形を示し、その事がラマユルの古名「ユンドゥン」の由来となりました」 ‥‥現代になり、地質調査を行ったところ、この地は本当に湖が存在していることが判っており、月の世界を思わせるこれらの地層は湖の底に積もった堆積物による地層であることも判明しています。
▮ニダプク石窟(Nyidaphunk)
サスポールという村のメインの車道から砂利道を15分ほど登った先にあるニダプク石窟は、15~16世紀に開かれたとされています。「ニダ=太陽と月」、「プク=お堂」つまり「太陽と月のお堂(日月堂)」という意味です。朝から晩まで外の太陽と月を眺めて修行したことから名付けられました。かつては修行地として栄え、岩山の中腹に彫られた100以上の洞窟の中で修行や瞑想をしていたとされています。
いくつかの洞窟のなかには、現在も壁一面に描かれた壁画が残っています。ですが、洞窟までの足場が危険な個所が多く、現在見学できるもので壁画が綺麗に残るのは一か所のみです。
当時、僧は石窟内で瞑想だけを行っていたのではなく、修行の一環として仏画を描いていたといわれています。石窟の内部は所狭しと仏画が描かれており、一切の余白がなく見ごたえがあります。壁画はポストリンチェンサンポ様式のもので、赤色を多用しています。
▮リキール僧院(Likir Gompa)
ゲルグ派の総本山で、ラダックではヘミス僧院に次ぐ権威を有している僧院です。11世紀頃の創建と伝えられていますが、詳細は不明とされています。現在見ることのできる建物は、火災による焼失後の18世紀に再建された建物です。僧院のすぐ隣には1997年に完成した高さ20mほどの金色の弥勒菩薩像が建っており、その姿は遠くからでも望むことが出来ます。
チベット歴の12月末、この僧院でリキール・グストルというお祭りが開かれます。その際にご開帳されるツォンカパのトンドルは全ラダックで最大の大きさです。
僧院のすぐ隣には1997年に完成した高さ20mほどの金色の弥勒菩薩像が建っています。衆生をすぐに救いに立ち上がれるよう、腰かけスタイルです。
次回は、郊外の見どころであるパンゴン・ツォとヌブラ谷を紹介します!
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