“インド版定食”ターリー&ミールスとインドのB級グルメ②

ジャレビ店
アムリトサル街かどのミターイー店

ナマステ!西遊インディアです。
前回の記事では、“インド版定食”ともいえる❶ターリーと❷ミールスについてご紹介いたしました。

今回は、インドの庶民に愛されるB級グルメについてご紹介します。

❸ B級グルメ (ストリートフード&スイーツ)

B級グルメを「安価で、贅沢でなく、庶民的でありながら、気軽に食べられる料理」と定義するなら、インドはまさにB級グルメの宝庫!
インドに来たら、ぜひ一度は庶民の味である屋台料理やスイーツにトライしていただきたいもの。
ここでは紹介しきれないほどたくさんの種類がありますが、今回は、街かどで食べられるスナックやミターイー(スイーツ)といった甘いおやつなど、ストリートフードを中心に10個に絞ってピックアップしてみました。
 

パニプリ1. パニプリ PANIPURI पानीपूरी

ピンポン玉のように揚げた生地に穴を開け、ジャガイモなどの具と甘酸っぱいスープを入れて一口でパクリ。定番のストリートスナック。

ワダ2. ワダ VADA वड़ा

ティファン(南インドの軽食)の定番。ペースト状にしたウラド豆とスパイスを混ぜて、ドーナツ状に揚げたもの。豆腐のように素朴な風味があり、どこか懐かしい味。

ジャレービー

3. ジャレービー JALEBI जलेबी

小麦粉でつくったゆるい生地をひも状にして熱した油に落として、くるくると渦巻きの形に揚げます。かりんとうのような雰囲気ですが、シロップに浸かっているので甘さは強烈!

ドーサ

4. ドーサ DOSA डोसा

今やインド全土で人気の南インドを代表するティファン。ロール型、三角形、ガレットのように四角いものなど形は色々。ピリ辛のポテトをくるんだもの(マサラドーサ)からココナッツ味まで、具のバリエーションも多彩です。

ポハ

5. ポハ POHA पोहा

ライスフレークを水でもどして、ターメリックなどのスパイスで味付けした料理。ピーナッツやタマネギを入れることもあります。スナック麺をかけるとジャンクなテイストに。レモンをかけてさっぱりといただきます。

グラブジャムン

6. グラブジャムン GULAB JAMUN गुलाब जामुन

“世界一甘いお菓子”といわれるインドの定番ミターイー。小麦粉・砂糖・濃縮乳でつくった生地を揚げて、カルダモンで香りづけしたシロップに浸します。噛むとシロップがじわっと染み出てきて、口の中に広がります。

バナナチップス

7. バナナチップス BANANA CHIPS केले के चिप्स

南インドで出会うバナナチップス。ココナッツ油で揚げた、塩味とほのかに甘みがある素朴な味。サクサクした軽い食感でいくらでも食べてしまいそう!インドらしくマサラ味もあります。

焼き芋

8. 焼き芋 SWEET POTATO शकरकंद

冬に北インドで見かける焼き芋の屋台。注文すると、お芋の皮を剥いてダイス状にざくざくと切り、マサラとレモンをさっとかけてくれます。

ウッタパム

9. ウッタパム UTTAPAM उत्तपम

南インド風お好み焼き。生地はドーサに似ていますが、こちらはホットケーキのように厚みがあり、タマネギやトマトなどの具を入れます。ココナッツとトマトのチャトニと一緒に。

マワ

10. マワ MAVA मावा 

水牛の多いグジャラート地方のミターイー。大鍋でミルクと砂糖を煮詰めると飴色になり、砕いたお米のような質感に。味はキャラメルそのものといった感じで、ひと口食べると甘みと香ばしさが広がります!

北インド、南インドの大きなくくりではまとめきれないほど、多彩な味わいのあるインド料理。もちろん地域のみならず、文化やコミュニティ、季節によっても異なります。来るたび違う表情を見せてくれるインドを、ぜひ「食」の面からも、新しい発見とともに楽しんでみてください!
 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel
 
参考図書:「家庭で作れる 東西南北の伝統インド料理」(香取薫/河出書房新社)、「知っておきたい!インドごはんの常識」(パンカジ・シャルマ[文]、アリス・シャルバン[絵]、サンドラ・サルマンジー[レシピ]/原書房)

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“インド版定食”ターリー&ミールスとインドのB級グルメ①

インドのグルメといえば、真っ先に思い浮かぶのが“インド版定食”のターリーもしくはミールスと、街を歩けば必ず目にする屋台のストリートフードではないでしょうか。
それぞれ地域やコミュニティによってたくさんのバラエティがありますが、今回は大きく
❶ ターリー(北インド)
❷ ミールス(南インド)
❸ B級グルメ(ストリートフード&スイーツ)
の3つに分けてご紹介します。

❶ ターリー Thali(北インド)

大皿に数種類のカレーやおかず、主食のお米やチャパティが盛られます。本来「ターリー」という言葉は「銀の大皿」を意味しますが、トレーに盛られた料理のことも指します。季節や土地柄で料理の内容が変わり、例えばグジャラートのものは「グジャラーティー・ターリー」のように、地域の名前を付けて呼ばれます。
様々なおかずが付くのは、アーユルヴェーダの6つの味覚(甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味)に基づくもの。多様な食材を使って6つの味覚すべてを一度の食事でとることで、栄養のバランスが整うと考えられています。
 

ターリー(北インド)
北インドのターリー(一例)

・ライス:日本と同じく、インドの大部分の地域で主食として食べられます。北から南まで、湿度、温度差、日照時間など気候の異なる地域で、様々な栽培方法で作られます。香り・色・形が異なり、種類はなんと100種類以上あるとか。
 
・ロティ(パン):小麦粉を練って薄く焼いたチャパティが一般的。タワという鉄製のフライパンで毎日家庭で焼かれます。手間のかかるナンは日常的に家庭で食べられることはなく、レストランやお祝いの席で食べられます。
 
・パパド:薄焼きせんべいのようなスナック。そのまま食べてもよし、割ってライスにかけてもよし。
 
・サブジ(野菜のドライカレー):じゃがいもなどの野菜をスパイスで炒めた汁気のないおかず。
 
・野菜のカレー:ナスやカリフラワー、グリンピースなどを具材にしたカレー。パニール(インド版カッテージチーズ)が入ることも。ベジタリアンが多いインドでは、野菜を使ったカレーの種類が豊富。主軸として具材に使われる野菜は1~2種類で、料理名にその野菜の名前が使われます。
 
・肉のカレー:ノンベジタリアンメニューの場合は、チキンやマトンを使ったカレーも。
 
・サラダ:キュウリやスライスしたタマネギ。塩とレモン汁、コショウを軽くかけて。
 
・ダヒ(ヨーグルト):口の中がリセットされるだけでなく、混ぜて食べる“味変”の楽しみも。キュウリやタマネギを加えてライタにすることも。
 
食べる順番は人それぞれお好みですが、主食がロティとライスの両方があるときは、ロティから先に食べることが多いようです。たとえば、ロティでそれぞれのカレーを味わったら、ライスにはマイルドな野菜カレーをかけて、次は辛味のあるお肉のカレーを少しかけて味変して、サラダで口の中を一旦リセット。今度はサブジで野菜の食感を味わって…など、自分なりに食事を楽しめるのもターリーのいいところ。
また、メニューは基本的に、様々な地域の料理を組み合わせることはなく、同一地域内の料理を組み合わせます。旅先でターリーを食べれば、その土地の味・おいしさを一度に知ることができるともいえます。

一口メモ:「カレー」は何語?
「ソース」を意味するタミル語の「カリ」に由来するといわれています。かつてイギリス人が英語にとり入れ、スパイスを使った料理全般を「カレー」と呼ぶようになったのだそう。

❷ ミールス Meals(南インド)

南インドではミールスと呼ばれます。ココナッツをよく使うため、北に比べると味付けはマイルド。基本的には野菜や果物を具材にしたベジタリアン料理で、おかずは、豆と野菜を煮たサンバルなどのカレーや炒めもの、すっぱくて辛いラッサム(汁物)など。カレーリーフの香りや胡椒の爽やかな辛味も特徴です。米どころの南では、主食は小麦より米がメイン。清浄で殺菌効果もあると考えられているバナナの葉に盛り付けられます。「カトリ」という小さなボウルにカレーやおかずを入れ、それらを大皿に載せて提供されることも。
 

ミールス(南インド)
南インドのミールス(一例)

・ライス、ロティ、パパド
 
・ラッサム:トマトやタマリンドなどを煮た、すっぱくて辛いスープ。
 
・サンバル:豆と野菜を煮て作ったマイルドなカレー。
 
・ポリヤル:マスタードなどのスパイスで味付けした野菜炒め。
 
・ピックル:インドの辛い漬け物。青マンゴーやニンジンなどの野菜で作ります。
 
・チャツネ:料理を引き立たせる薬味。ココナッツやトマト、ミントのものがよく出てきます。
 
・アチャール:パイナップルやマンゴーで作られた、辛くてすっぱい付け合わせ。
 
揚げ物にもココナッツオイルを使うので、北インドの料理に比べてさっぱりとしているのが特徴。海沿いでは、カニやエビ、魚もよく食べられます。
ちなみに、料理は最初からたくさん盛られるのではなく、おかわりしていく形式。揚げものやラッサム、甘いものが出されるタイミングなどは、州やコミュニティの食習慣、集まりのグレードによってさまざま異なります。ですが、いずれの場合でも、食欲が湧くよう、よりおいしく、体に良い順番で提供することを軸に考えられています。

一口メモ:地域によって違う!ターリーいろいろ

  • グジャラーティー・ターリーグジャラート
    ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
  • パンジャービー・ターリーパンジャーブ
    バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
  • ベンガル・ターリーベンガル
    イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。
グジャラーティー・ターリー
グジャラート
ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
パンジャービー・ターリー
パンジャーブ
バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
ベンガル・ターリー
ベンガル
イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。

 
南インド料理は人気があり、今やほぼインド全域といってもいいくらいに南インド料理を提供するレストランがあります。とくにデリーにはさまざまな地域料理のレストランがあるので、気軽にトライすることもできます。
ぜひ一度、その土地の味覚がワンプレートに集結したターリー、ミールスを味わってみてください。
 
次回は、ストリートフードやスイーツを中心に、B級グルメについてご紹介します。
 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel
 
参考図書:「家庭で作れる 東西南北の伝統インド料理」(香取薫/河出書房新社)、「知っておきたい!インドごはんの常識」(パンカジ・シャルマ[文]、アリス・シャルバン[絵]、サンドラ・サルマンジー[レシピ]/原書房)

 


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インド料理と基本のスパイス

コショウやクローブなどのスパイス

今回は、インドとは切っても切れない存在であるスパイスについてお話しします。
 

古代より、スパイス(香辛料)は貴重品として扱われ、ギリシャやローマといった大国をはじめ、世界中から求められてきました。
“スパイスロード”や“香辛料貿易”などの言葉が生まれたことも、その需要の高さを物語っています。
香辛料に関わる歴史は複雑で壮大!インドの歴史はもちろん、世界史を語る上でも欠かせません。
インドにおいては、紀元前3000年頃からすでに黒コショウやクローブ等の多くの香辛料が使われていました。そして、それは現在に至るまで変わることなく続き、インドの人々の生活には必要不可欠の存在です。

市場のスパイス売り(シッキム)

古代からスパイスがそこまで求められた最大の理由は、なんといってもその薬効でしょう。
肉や魚を長期保存する術をもたなかったヨーロッパの人々にとって、スパイスの防腐作用は衝撃的なものでした。
未知なる東方からもたらされた、独特の香りを放つスパイス。コショウに至っては、ヴェネツィア人に「天国の種子」と呼ばれていたほど。当時は手に入れることが難しく、それゆえ彼らをますます魅了したそうです。

シナモンやウコンが入ったスパイスボックス

インドでは、そんな魅惑のスパイスがどの料理にもふんだんに使われています。その効能は、実際どんなものがあるのでしょうか。インド料理に使われる代表的なスパイスをいくつかご紹介します。

 
ターメリック हल्दी(ハルディ) 別名:ウコン
消化作用や新陳代謝を良くする働きがあります。抗酸化作用、抗炎症作用にも優れていて、体質改善や皮膚病にも効果があるとされています。
 
コリアンダー धनिया(ダニヤ)別名:香菜・パクチー
胃腸の働きを促し、新陳代謝を活性化させる働きのほか、頭痛の改善や鎮静作用など豊富な効能があります。カロチンやビタミンを豊富に含みます。
 
クローブ लौंग(ローング)別名:丁香
殺菌・消毒の効果があります。生薬・芳香健胃剤としても用いられ、胃腸の働きを高める作用があります。
 
クミン जीरा(ジーラ)別名:馬芹
健胃、消化促進、解熱などの効果があり、下痢や腹痛を緩和します。抗酸化作用があり、免疫力を上げる効果も。ガンや循環器系の病気の予防にも用いられます。
 
ジンジャー अदरक(アダラク)別名:生姜
日本でも身体を温めたり、風邪の療法に用いられます。発散、健胃、保温、解熱、消炎、沈嘔など多くの効能があります。
 
カルダモン इलायची(イラーイチー)別名:ショウズク
疲労回復や整腸作用、冷え性の改善や油分を除去する効果があります。口臭予防や体臭を消すのにも効果的です。
 
シナモン दालचीनी(ダールチーニー)別名:ニッキ
世界最古のスパイスのひとつ。樹皮から取れる精油には殺菌効果・活性作用があり、口臭予防や美肌効果まであるといわれています。
 
この他、日本でもお馴染みの黒コショウ(ゴールミルチ)やニンニク、タマネギ、ナツメグなどにも様々な効能があります。

シナモン(ダールチーニー)

これらのスパイスは個々の効能はもちろん、組み合わせによっても様々な力を発揮します。つまり、インド料理はもはや薬膳料理といっても過言ではありません。スパイスは、暑い気候のなかで暮らすインドの人々が、健康を保つために欠かせない存在なのです。

そして、スパイスを用いるのは食事だけではありません。薬草として医薬的に使用されたり、有名なアーユルヴェーダにも使われます。スパイスとともにあるインドの人々の生活は、まさに“医食同源”なのです。

スパイスをふんだんに使ったインド料理は、もはや薬膳料理といえるかもしれません!

※この記事は2015年4月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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