“インド版定食”ターリー&ミールスとインドのB級グルメ①

インドのグルメといえば、真っ先に思い浮かぶのが“インド版定食”のターリーもしくはミールスと、街を歩けば必ず目にする屋台のストリートフードではないでしょうか。
それぞれ地域やコミュニティによってたくさんのバラエティがありますが、今回は大きく
❶ ターリー(北インド)
❷ ミールス(南インド)
❸ B級グルメ(ストリートフード&スイーツ)
の3つに分けてご紹介します。

❶ ターリー Thali(北インド)

大皿に数種類のカレーやおかず、主食のお米やチャパティが盛られます。本来「ターリー」という言葉は「銀の大皿」を意味しますが、トレーに盛られた料理のことも指します。季節や土地柄で料理の内容が変わり、例えばグジャラートのものは「グジャラーティー・ターリー」のように、地域の名前を付けて呼ばれます。
様々なおかずが付くのは、アーユルヴェーダの6つの味覚(甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味)に基づくもの。多様な食材を使って6つの味覚すべてを一度の食事でとることで、栄養のバランスが整うと考えられています。
 

ターリー(北インド)
北インドのターリー(一例)

・ライス:日本と同じく、インドの大部分の地域で主食として食べられます。北から南まで、湿度、温度差、日照時間など気候の異なる地域で、様々な栽培方法で作られます。香り・色・形が異なり、種類はなんと100種類以上あるとか。
 
・ロティ(パン):小麦粉を練って薄く焼いたチャパティが一般的。タワという鉄製のフライパンで毎日家庭で焼かれます。手間のかかるナンは日常的に家庭で食べられることはなく、レストランやお祝いの席で食べられます。
 
・パパド:薄焼きせんべいのようなスナック。そのまま食べてもよし、割ってライスにかけてもよし。
 
・サブジ(野菜のドライカレー):じゃがいもなどの野菜をスパイスで炒めた汁気のないおかず。
 
・野菜のカレー:ナスやカリフラワー、グリンピースなどを具材にしたカレー。パニール(インド版カッテージチーズ)が入ることも。ベジタリアンが多いインドでは、野菜を使ったカレーの種類が豊富。主軸として具材に使われる野菜は1~2種類で、料理名にその野菜の名前が使われます。
 
・肉のカレー:ノンベジタリアンメニューの場合は、チキンやマトンを使ったカレーも。
 
・サラダ:キュウリやスライスしたタマネギ。塩とレモン汁、コショウを軽くかけて。
 
・ダヒ(ヨーグルト):口の中がリセットされるだけでなく、混ぜて食べる“味変”の楽しみも。キュウリやタマネギを加えてライタにすることも。
 
食べる順番は人それぞれお好みですが、主食がロティとライスの両方があるときは、ロティから先に食べることが多いようです。たとえば、ロティでそれぞれのカレーを味わったら、ライスにはマイルドな野菜カレーをかけて、次は辛味のあるお肉のカレーを少しかけて味変して、サラダで口の中を一旦リセット。今度はサブジで野菜の食感を味わって…など、自分なりに食事を楽しめるのもターリーのいいところ。
また、メニューは基本的に、様々な地域の料理を組み合わせることはなく、同一地域内の料理を組み合わせます。旅先でターリーを食べれば、その土地の味・おいしさを一度に知ることができるともいえます。

一口メモ:「カレー」は何語?
「ソース」を意味するタミル語の「カリ」に由来するといわれています。かつてイギリス人が英語にとり入れ、スパイスを使った料理全般を「カレー」と呼ぶようになったのだそう。

❷ ミールス Meals(南インド)

南インドではミールスと呼ばれます。ココナッツをよく使うため、北に比べると味付けはマイルド。基本的には野菜や果物を具材にしたベジタリアン料理で、おかずは、豆と野菜を煮たサンバルなどのカレーや炒めもの、すっぱくて辛いラッサム(汁物)など。カレーリーフの香りや胡椒の爽やかな辛味も特徴です。米どころの南では、主食は小麦より米がメイン。清浄で殺菌効果もあると考えられているバナナの葉に盛り付けられます。「カトリ」という小さなボウルにカレーやおかずを入れ、それらを大皿に載せて提供されることも。
 

ミールス(南インド)
南インドのミールス(一例)

・ライス、ロティ、パパド
 
・ラッサム:トマトやタマリンドなどを煮た、すっぱくて辛いスープ。
 
・サンバル:豆と野菜を煮て作ったマイルドなカレー。
 
・ポリヤル:マスタードなどのスパイスで味付けした野菜炒め。
 
・ピックル:インドの辛い漬け物。青マンゴーやニンジンなどの野菜で作ります。
 
・チャツネ:料理を引き立たせる薬味。ココナッツやトマト、ミントのものがよく出てきます。
 
・アチャール:パイナップルやマンゴーで作られた、辛くてすっぱい付け合わせ。
 
揚げ物にもココナッツオイルを使うので、北インドの料理に比べてさっぱりとしているのが特徴。海沿いでは、カニやエビ、魚もよく食べられます。
ちなみに、料理は最初からたくさん盛られるのではなく、おかわりしていく形式。揚げものやラッサム、甘いものが出されるタイミングなどは、州やコミュニティの食習慣、集まりのグレードによってさまざま異なります。ですが、いずれの場合でも、食欲が湧くよう、よりおいしく、体に良い順番で提供することを軸に考えられています。

一口メモ:地域によって違う!ターリーいろいろ

  • グジャラーティー・ターリーグジャラート
    ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
  • パンジャービー・ターリーパンジャーブ
    バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
  • ベンガル・ターリーベンガル
    イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。
グジャラーティー・ターリー
グジャラート
ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
パンジャービー・ターリー
パンジャーブ
バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
ベンガル・ターリー
ベンガル
イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。

 
南インド料理は人気があり、今やほぼインド全域といってもいいくらいに南インド料理を提供するレストランがあります。とくにデリーにはさまざまな地域料理のレストランがあるので、気軽にトライすることもできます。
ぜひ一度、その土地の味覚がワンプレートに集結したターリー、ミールスを味わってみてください。
 
次回は、ストリートフードやスイーツを中心に、B級グルメについてご紹介します。
 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel
 
参考図書:「家庭で作れる 東西南北の伝統インド料理」(香取薫/河出書房新社)、「知っておきたい!インドごはんの常識」(パンカジ・シャルマ[文]、アリス・シャルバン[絵]、サンドラ・サルマンジー[レシピ]/原書房)

 


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ラダックのブッダ・プルニマ Buddha Purnima

ジュレ―!西遊インディアです。

2023年5月5日は、仏陀の誕生・悟り・涅槃を祝う「ブッダ・プルニマ」の日でした。
西遊旅行の今年のGWのラダックツアーで、ちょうどお祭りの日にレーを訪れることができました。

■ブッダ・プルニマ Buddha Purnima
仏教の伝わる各地で「ウェーサーカ祭」として祝われる日。
日本では「花まつり」「灌仏会」にあたります。
仏陀の人生の中で重要な誕生・悟り・涅槃の3つがこの同じ日に起こったとされ、ラダックではチベット暦の4月(ウェーサーカ月 Visakha)の満月の日に当たるので、毎年日付が異なります。
ヒンドゥー教では、仏陀はヴィシュヌ神の9番目の化身(アヴァターラ)と考えられており、この日はヒンドゥー教徒と仏教徒の両方に祝われます。インド全国共通の祝日(Gazetted holidays)ですが、とくにラダックではダライ・ラマの誕生日に次ぐ重要な祝日です。

  • ヴィシュヌ神の10の化身。中央下段がブッダ
  • ヴィシュヌの化身としてつくられたブッダ像
ヴィシュヌ神の10の化身。中央下段がブッダ
ヴィシュヌ神の10の化身。中央下段がブッダ

ヴィシュヌの化身としてつくられたブッダ像
ヴィシュヌの化身としてつくられたブッダ像

 
「プルニマ」とはサンスクリット語で満月のこと。「ブッダ・ジャヤンティ(Jayanti = 誕生日)」ともよばれますが、ザンスカール出身の現地ガイドさんによると、「プルニマ」の方がより敬意をこめた呼称なのだそうです。ちなみに、今年は釈迦の誕生から2567年目に当たります。
 
例年レーでは、ラダックにおける仏教組織(ラダック・ブッディスト・アソシエーション)が主催し、ピース・マーチの行進と、ポロ・グラウンドでの見世物が行われます。
ピース・マーチの練り歩きは、市街中心部にあるレー・ジョカンを出発して、シャンティ・ストゥーパ、ナムギャル・ツェモの順で回り、ポロ・グラウンドをゴールとして行われます。
 
まずは市民たちが行進するピース・マーチ。シャンティ・ストゥーパから降りてくる行進の列です。


僧侶たちの列の後には、誕生日を迎えたお釈迦様がトラックに乗って移動してきます。

経典を持った人々の列が通り過ぎるとき、頭を下げると手に持つ経典を軽く叩くように頭に乗せて行ってくれました。

ピース・マーチを見た後に向かったシャンティ・ストゥーパでは、ブッダ・プルニマならではのイベントで、仏陀の人形に水をかけてきれいにし、自分の心身を清めようというブースがありました。
日本の灌仏会でもお釈迦様の像に甘茶をかける慣習があり、遠く離れたインドの地でも、共通点を感じます。

シャンティ・ストゥーパ

日本の灌仏会で見る仏像よりちょっとかわいらしい仏陀人形。
でも、日本の灌仏会と同じく「天上天下唯我独尊」の誕生仏のポーズです!
 
道中、行列に配っているハルワやサモサ、ジュースをいただきながら、広場へ向かいました。

いただいたハルワ。カシューナッツが入っていて、甘くておいしいです

レーの町の広場、ポロ・グラウンドでの見世物を見学しました。広場の真ん中に作られた壇上で、市民やお坊さんが踊りを披露していました。
ナムギャル・ツェモから見たポロ場

たくさんの見物客でにぎわっています!

仮面(チャム)を付けて踊る様子


日本の縁日やお祭りのように賑やかでした!
 
明るい雰囲気に包まれた、ブッダ・プルニマ祭のラダックの様子でした。
これからはお祭りの多い季節。ラダックは本格的な旅行シーズンを迎えます。
 
 
■おまけ
ピース・パレードで見学した色々な山車


 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel

 


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インド料理と基本のスパイス

コショウやクローブなどのスパイス

今回は、インドとは切っても切れない存在であるスパイスについてお話しします。
 

古代より、スパイス(香辛料)は貴重品として扱われ、ギリシャやローマといった大国をはじめ、世界中から求められてきました。
“スパイスロード”や“香辛料貿易”などの言葉が生まれたことも、その需要の高さを物語っています。
香辛料に関わる歴史は複雑で壮大!インドの歴史はもちろん、世界史を語る上でも欠かせません。
インドにおいては、紀元前3000年頃からすでに黒コショウやクローブ等の多くの香辛料が使われていました。そして、それは現在に至るまで変わることなく続き、インドの人々の生活には必要不可欠の存在です。

市場のスパイス売り(シッキム)

古代からスパイスがそこまで求められた最大の理由は、なんといってもその薬効でしょう。
肉や魚を長期保存する術をもたなかったヨーロッパの人々にとって、スパイスの防腐作用は衝撃的なものでした。
未知なる東方からもたらされた、独特の香りを放つスパイス。コショウに至っては、ヴェネツィア人に「天国の種子」と呼ばれていたほど。当時は手に入れることが難しく、それゆえ彼らをますます魅了したそうです。

シナモンやウコンが入ったスパイスボックス

インドでは、そんな魅惑のスパイスがどの料理にもふんだんに使われています。その効能は、実際どんなものがあるのでしょうか。インド料理に使われる代表的なスパイスをいくつかご紹介します。

 
ターメリック हल्दी(ハルディ) 別名:ウコン
消化作用や新陳代謝を良くする働きがあります。抗酸化作用、抗炎症作用にも優れていて、体質改善や皮膚病にも効果があるとされています。
 
コリアンダー धनिया(ダニヤ)別名:香菜・パクチー
胃腸の働きを促し、新陳代謝を活性化させる働きのほか、頭痛の改善や鎮静作用など豊富な効能があります。カロチンやビタミンを豊富に含みます。
 
クローブ लौंग(ローング)別名:丁香
殺菌・消毒の効果があります。生薬・芳香健胃剤としても用いられ、胃腸の働きを高める作用があります。
 
クミン जीरा(ジーラ)別名:馬芹
健胃、消化促進、解熱などの効果があり、下痢や腹痛を緩和します。抗酸化作用があり、免疫力を上げる効果も。ガンや循環器系の病気の予防にも用いられます。
 
ジンジャー अदरक(アダラク)別名:生姜
日本でも身体を温めたり、風邪の療法に用いられます。発散、健胃、保温、解熱、消炎、沈嘔など多くの効能があります。
 
カルダモン इलायची(イラーイチー)別名:ショウズク
疲労回復や整腸作用、冷え性の改善や油分を除去する効果があります。口臭予防や体臭を消すのにも効果的です。
 
シナモン दालचीनी(ダールチーニー)別名:ニッキ
世界最古のスパイスのひとつ。樹皮から取れる精油には殺菌効果・活性作用があり、口臭予防や美肌効果まであるといわれています。
 
この他、日本でもお馴染みの黒コショウ(ゴールミルチ)やニンニク、タマネギ、ナツメグなどにも様々な効能があります。

シナモン(ダールチーニー)

これらのスパイスは個々の効能はもちろん、組み合わせによっても様々な力を発揮します。つまり、インド料理はもはや薬膳料理といっても過言ではありません。スパイスは、暑い気候のなかで暮らすインドの人々が、健康を保つために欠かせない存在なのです。

そして、スパイスを用いるのは食事だけではありません。薬草として医薬的に使用されたり、有名なアーユルヴェーダにも使われます。スパイスとともにあるインドの人々の生活は、まさに“医食同源”なのです。

スパイスをふんだんに使ったインド料理は、もはや薬膳料理といえるかもしれません!

※この記事は2015年4月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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ヒンドゥー教の新年を祝うお祭り「ディワリ」

毎年10月末から11月初めに、インドの最も大きなお祭りのひとつである「ディワリ」が行われます。

ヒンドゥ教の新年をお祝いするこのお祭りは、ヒンドゥ暦の第7番目の月の初日から5日間にわたって行われます。時期的に「収穫祭」の意味合いもあり、インドの人々にとっては1年で最も重要かつ盛り上がるお祭りです。

ディワリの電飾が光るショッピングモール
スーパーにもディワリ用のギフト商品が並びます

ディワリはもともと「光の祭り」とも呼ばれており、お祭りの期間中は富と幸運の神であるラクシュミーを家に招くために、夜間は無数の灯明などで家の周りを明るく照らす習慣があります。
このお祭りに向けて、人々は家中の隅々まで大掃除をし、新しい洋服を新調したり、壁の塗装などを塗りなおしたり、時には家具一式までも新調したり。気分一新、ディワリを迎えるのです。

約1週間のお祭り期間中は、夜には灯明で家の周りを明るく照らし、家族・親族が集まってお祈りをして、その後みんなでご馳走を囲んで粛々と新年を祝う、というのが昔からのスタイル…なのですが、この伝統のお祭りも、近年の経済発展とともに少し様変わりしているようです。

玄関先に置かれた灯明

ささやかだった「灯明の明かり」は、今や家をピカピカと照らす色とりどりの電飾にとって代わり、各家庭の夕食後のイベントは、夜通し行われる花火と爆竹を家族総出で見学…というのが、近年のディワリのスタイルです。

一番盛り上がるのは、ディワリの最終日。お祭りの本番は暗くなった夜7時~8時くらいから。
家々でラクシュミーに祈りをささげ、豪華な夕食を食べたら、三々五々外に出て花火を打ち上げ、爆竹を鳴らしてお祝いをします。ひとしきり鳴らし終わったら、また家に入ってデザートを食べたり、チャイを飲んでみんなでくつろぎ、家族同士の贈り物の交換などをして過ごします。それが一段落すると、また外に出て花火と爆竹…飽きたらチャイを…飽きたら花火と爆竹…チャイ…花火…これを一晩中繰り返します。

左:ディワリでにぎわう街 右:花火を楽しむ人々

家々を飾る電飾は、ご近所同士で規模やセンスを競争し合っていることもあり、年々派手になってきていて、イルミネーションと言っても過言ではないレベルのお宅も少なくありません。日本のクリスマスシーズンを彷彿とさせます。

そして、もちろん花火の派手さもご近所と競争!
隣近所に負けじと、各家々で競うようにあちこちで打ち上げます。
爆竹も、周りには負けられないとばかりに半端ではない量を一度に鳴らしたりすることも。
目の前で鳴らされると、若干気が遠くなるほどです。

ときには、それどこで買ってきたの…??と思うほど立派な、日本の花火大会で見られそうな(ちょっと大げさですが)豪華できれいな花火が打ち上がることもあります。

きれいに飾られた街で、ひっきりなしにあちこちから打ち上がる花火。
そこにこだまする爆竹の音と人々の歓声。

ディワリはまさに、年に一度の「お祭り騒ぎ」なのです。
 
※この記事は2011年11月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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【仏陀の道】入滅の地クシナガル

皆様こんにちは。今回ご紹介するのは入滅の地クシナガルです。

古代インドの十六大国の一つで、マッラ人の首都。仏典によれば、人々は釈尊の遺体を荼毘に付し、ここに塔を建てて祀ったと伝えられ、法顕や玄奘が訪れたころにはすでにさびれていたが、精舎や塔があり、仏陀の涅槃像が安置されていたようです。

釈尊の故郷ルンビニはクシナガルの北側に位置し、「父・母に足を向ける事はできない」との意味から「頭を北にして」涅槃に入られたとのこと。これが「北枕」の習慣の始まりだといわれます。

 

まずは、大涅槃堂。

インド政府により1956年(釈尊生誕2500年記念事業)に建立されました。内部の涅槃像は、砂岩製で5世紀、グプタ王朝期に作成され、19世紀にアレキサンダー・カニンガム(イギリスの考古学者)らが発見したもの。

大涅槃寺の周囲には、僧院跡の遺構が残ります。

 

涅槃堂からすぐ近くの場所に釈尊が最後の説法を行った場所があります。

小さな精舎の中には11世紀パーラ王朝時代の降魔成道像が安置されています。

 

そして車で5分程移動したところにある荼毘塚(ラーマーバル仏塔)

釈尊の遺体は、荼毘に付されると時、火はなかなか付かなかったが、後継者たる摩訶迦葉が500人の弟子と1週間後に到着して礼拝すると、自然に発火したという説があります。

 

クシナガルとラジギールの間に位置するヴァイシャリ。

商業都市として栄えたリッチャヴィ族の都。ジャングルの猿までが、釈尊にハチミツを供養したのもこの地だそう。

釈尊が最後の旅の途次に立ち寄った地で釈尊の死後、第二結集が行われたといわれています。

 

仏舎利が発見された八分起塔は4回ほど増築されています。発見された仏舎利は現在パトナ州立博物館にあります。

 

アショカ王柱も非常にきれいな状態。三ヶ月後に涅槃することを修行者たちに宣言された場所という説もあります。

 

柱頭の獅子像は、現存する獅子像では最古の様式です。

 

西遊旅行のツアー「仏陀の道」では、クシナガルから国境を越えて生誕の地ルンビニへと向かいます。

釈尊が誕生した場所といわれる場所に建てられたマヤ・デヴィ寺院。建物の中には、1996年に発掘された釈尊がこの地で誕生したことを記すマーカーストーンやマヤ夫人の像、紀元前3~7世紀ごろのものと考えられるレンガ造りの礎石を見ることができます。

目の前のプスカリニ池は、マヤ夫人が出産の前に沐浴し、釈尊の産湯にも使われたといわれる池です。

 

 

現在(2022年2月)、国境が開いていないので陸路での移動は難しいですが、クシナガル周辺での仏跡周遊の際は、是非お隣のネパールまで足を運んでみてください。

 

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【仏陀の道】晩年を過ごしたラジギール

今回は、お釈迦様が仏陀になってから過ごしたラジギールのご紹介です。

 

「目覚めた人」という意味をもつ「仏陀」。

29歳で出家した後は様々な仙者を訪ね、教えを請いながら修行を続けるも、なかなか悟りを開くまでに至りませんでした。

そこから苦行が始まりますが、苦行像はインドではあまり創られなかったようです(苦行像はパキスタンのラホール博物館やペシャワルの博物館にあるものが有名ですね。尚、ルンビニに行くと、仏像は右手を上に指した「誕生仏」スタイルが多いです)。

80歳で涅槃に入るまで教えを説き続けた仏陀は、当時としてはかなりの長寿、まさに奇跡の人だったのではないでしょうか。

 

 

 

■ラジギール

ラジギールは、出家したシッダールタが修行した場所であり、晩年滞在して説法を重ねた場所です。インド最初の統一王朝マガダ王国の首都ラージャグリハ(王舎城)があった所だといわれています。

 

お釈迦様が苦行したといわれる前正覚山。

 

ブッダガヤからラジギールに向かう途中にあります。

車で麓まで行き、坂道を上がること約15分。(籠屋もいます)洞窟の入り口に到着です。

 

どのくらいの期間苦行をしていたかは定かではありませんが、苦行だけでは悟りの境地に至らないと判断した後

尼連禅河で沐浴をし、すぐ近くの村でスジャータから乳粥の供養を受けたといわれています。

 

少しずつ体力を戻しながら、成道の境地に達し「仏陀」となったのが35歳のこと。

そう、出家をしてからわずか6年程の修業期間なのです。

 

 

ラジギールに滞在する際には是非訪れていただきたいのが霊鷲山。

 

 

サンスクリット語でグリドラクータといい、音写して耆闍崛山(ぎじゃくっせん)ともいいます。釈尊時代、インドのマガダ国の首都王舎城を取り巻く五山のなかの一つで、その名は山頂が鷲の嘴(くちばし)に似ているからとも、山頂に鷲がすんでいたからとも伝えられています。釈尊はしばしばここにとどまり、多数の経典を説いたとされる。現在の石畳は「ビンビサーラ王の道」と呼ばれ、王が説法を聞くために整備したと言われています。

 

訪問するなら、是非早朝に。朝焼けが望めます。

霊鷲山の麓、すぐ近くにはビンビサーラ王が寄進した竹林精舎と温泉精舎(現在、大半はヒンドゥー教寺院)もあります。

 

そして、外せないのがナーランダ大学址です。

 

 

ナーランダは、5世紀頃に創設された最大の仏教の学院(大学)があった町。学生1万人以上、教師も1,000人を数えたといわれ、階建ての校舎の他、六つの寺院、七つの僧院があったそうです。

古代世界では最大の教育施設だった大学は、12世紀イスラーム勢力のインド征服により完全に破壊され、それと共にインドでの仏教の衰退が始まりました。

釈尊が最後に旅をしたルートでもあり、マガダ国の王舎城(ラジギール)から多くの弟子を従え、パータリガーマに至るまでの旅の立ち寄り地点と言われています。

(隣接している博物館は金曜日が休館となります)。

 

ラジギールの近くには釈尊亡きあと最初の仏典結集が行われた「七葉窟」があります。

七葉窟とは、当時、洞窟の入口に七葉の木(ジタノキ)が立っていたので、そう名付けられたと日本では言われていますが、現地の地名の意味は、「七つの川」だそうです。

 

岩山の中腹に白いペンキで塗られた七葉窟

 

ラジギールはブッダガヤやバラナシとセットで訪問する方が多いですが、行くなら最寄りはパトナ空港(ビハール州)になります。

 

※この記事は2011年7月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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【仏陀の道】初転法輪の地サールナートとブッダガヤ

皆様こんにちは。

 

インドの宗教といえば、圧倒的大多数を占めるのがヒンドゥー教ですが、その他にもイスラム教、キリスト教、ジャイナ教、シク教等々多くの信仰が混在しています。

 

仏教もその一つです(2011年の調査では信者はインド全体人口の約0.7%)。

仏教は、紀元前5世紀頃にインドで生まれ、13世紀以降に衰退していきますが、その聖地と呼ばれるスポットはインド国内に点在しています。

 

今回から数回に分けて、インド・ネパールに点在する仏跡をご紹介していきます。

インド国内で仏教徒の多い地域は、ラダックエリアとマハラシュトラ州を中心としたインド中央部ですが、仏跡はビハール州(インド東部)の辺りに多くあります。

 

一般的に4大仏跡と呼ばれているのが、下記の場所です。

・降誕の地 ルンビニ(ネパール)

・初転法輪の地 サールナート

・成道の地 ブッダガヤ

・入滅の地 クシナガル

 

 

■サールナート

インドといえばバラナシのガンジス川を思い浮かべる方も多いと思いますが、そのバラナシ郊外にあるのが、釈尊が初めて説法をした地サールナートです。

 

仏教はここから各地に広まっていきました。

ブッダガヤで悟りを開いた釈尊はかつて苦行を共にした5人の修行者に会い行きます。乳粥の供養を受けた釈尊を「苦行を捨てた者」とし、口をきかないようにしていましたが、近づいてきた釈尊の威厳に打たれ説法を願い出ます。

またここは『鹿野苑』という名でも知られていますが、これは当時ここにたくさんの鹿が住んでいたことに由来しているとの説があり、仏陀の最初の説法もこの5人の弟子と森に住む鹿に対して行われたと言われています。

 

アショカ王(前3世紀中頃)の頃から12世紀までの遺址と多数の彫刻が出土し、グプタ時代に最も栄えたことが明らかになった場所。また東方に現存するダメーク・ストゥーパは、高さ約42m、基部の直径約28mあり、グプタ時代の貴重な例です。現在、公園のようにきれいに整備され、中心には仏舎利を収めたダメーク・ストゥーパが堂々とそびえます。

 

 

バラナシ見学といえば、ガンジス川のボート遊覧がメインになりがちですが、

世界遺産として登録されているサールナートも外せません。

あまり大きくないですが、博物館には初転法輪のレリーフがあります。非常に美しいので、残念ながら撮影は禁止されている博物館なので、バラナシ見学の際には是非訪れてみてください。

(博物館は金曜日が閉館ですが、バラナシ市内から近いので前後のお日にちで訪問スケジュールも調整可能です)

 

 

■ブッダガヤ

釈尊は、人間の4つの苦しみ「生・老・病・死」の答えを求めて出家をします(四門出遊)。

それから6年間、苦行を続け、尼連禅川を渡った村でスジャータという娘からの乳粥供養を受けます。そして、苦行が悟りをひらくための道ではないことを自覚します。

その後、ウルベーラの森(現在のブッダガヤ)に辿り着き、大きな菩提樹の木の下で、深い瞑想の後、悪魔(マーラ)の数々の誘惑を退けます(降魔成道)。そして、悟りをひらき仏陀となりました。

 

 

ブッダガヤには、全ての仏教徒にとってとても重要なマハーボディ寺院(世界遺産)があります。

アショカ王が紀元前3世紀に建てた寺院が起源と言われていますが、現在の寺院は、総レンガ製の南インド・トラヴィダ様式でグプタ朝(5~6世紀)建立のもの。

高さ55mで現存する最古の仏教寺院のひとつです。

 

菩提樹(5代目だそう)のもと金剛宝座で成道された後、釈尊は、第1週目は同じ金剛宝座で禅定を続けられました。

 

釈尊成道後、第6週目は豪雨が荒れ狂い、ムチリンダ竜王に守られながら禅定に入っと言われています。

 

※本物のムチリンダ池はブッダガヤ郊外にあります。

 

夜間はライトアップされているので、是非ブッダガヤで一泊した際には夜も訪れてみてください。

 

 

次回は、ラジギールをご紹介します。

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グジャラートの魅力【6】 ジャイナ教の聖地 シャトルンジャヤ山

ヒンドゥー教徒が大多数を占めるインドの中で、ジャイナ教徒の占める割合は約0.4%。非殺生、非暴力の思想を徹底的に追求し、厳しい戒律のもとで生活をしているジャイナ教徒が一生に一度は訪れたいと願う聖地の一つがパリタナにあるシャトルンジャヤ山です。

3750段の階段を登り切った場所から見る863もの寺院群はまるで要塞の様です。

一番古い場所は11~12世紀の間に建てられており、今の形になるまでに900年近くの年月を要したと言われています。

 

 

■ジャイナ教とは・・・

紀元前6世紀頃にインドに興ったジャイナ教。現在では、おもにインドに数百万人の信者がいます。ジャイナ教は厳格な苦行、禁欲、不殺生を重んじ、大きく分けて裸衣派と白衣派があります。裸衣派は特に厳しく、生まれた時の赤ん坊の姿を最も神聖とし、僧は糸一本も身に着けずに修行をします。神はなく、代々の出家者を信仰します。また、彼らは究極のベジタリアンで、肉や卵を食べないどころか、植物の生を絶つ、にんじん等の根菜も食べません。また、僧職者は道を歩いている虫も殺さないよう、自分の行く道をほうきではきながら歩いたり、また飛んでいる虫を誤って飲み込まないよう、マスクをつけて歩くほど徹底している僧もいます。

 

 

早朝、麓の入り口からスタート。

 

食習慣も厳しいジャイナ教徒。登山中の飲食は禁止となっており、参道や頂上には食堂やお店はありません。

 

禁止事項を書いている看板。

お水も、道中に水飲み場がたくさんあります。

(ただ、ペットボトルの水を持っている人は沢山いました。)

 

麓にはカゴ屋もたくさん。

 

3750段と聞くと、体力が不安な方もいらっしゃるかと思いますが、

一段毎の幅は低く、約2時間ほどで山頂に到着できます。

 

山頂寺院は靴を脱いで見学しましょう。※寺院内部の撮影は禁止されています。

シャトルンジャヤ山頂は南北に分かれていてTonkと呼ばれる壁で囲まれた要塞のような寺院群で構成されています。

 

南北の別れ目↑

 

↑北側エリアから眺める南の寺院群

 

■パリタナへの行き方

ベストシーズンは11~2月頃。

モンスーン時期にはクローズしている場合もあります。

 

シャトルンジャヤ山での宿泊は禁止されているので、日没には閉まります。その為、ゆっくり見学するなら早朝出発がマスト。

麓のパリタナにはホテルはほぼ無く、巡礼者向けの施設が中心なので、パリタナから1時間半ほどの場所にあるバブナガルに宿泊して、早朝に移動するのがお勧めです。

(アーメダバード~バブナガル間は約5時間。)

 

12~1月頃だとそれほど暑すぎず、快適に見学できる時期です。

魅力満載のグジャラート、絶景好きな方は是非一度訪問してみてください。

 

 

 

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グジャラートのサファリ 最後のアジア・ライオンの暮らす森、ササン・ギル国立公園

今回はグジャラートでのサファリ、アジアライオンに出会えるササンギル国立公園をご紹介します。

 

ササンギル国立公園は1965年に設立されたグジャラート南部の国立公園で広さは1,412平方キロ。そのうちの258平方キロは国立公園として完全保護下にあり、1,153平方キロは保護区となっています。 ギル野生動物保護区は最後のアジア・ライオンが生息することで知られています。学術名Panthera leo percicaと呼ばれるライオンは、古くはメソポタミア、古代ペルシャ文明のレリーフにも登場し、現在のイラン・イラク・パキスタン・インドの南部地方に広く生息していましたが、現在はこのギル野生動物保護区にのみに残る貴重な存在となってしまいました。

 

ギルの森林は1900年代初頭にジュナーガルの王族が保護区とされ、そのころにはトロフィー・ハンティングによる乱獲のためアジア・ライオンの数は15頭にまで激減していました。その後の政府の森林局やNGOの人々の努力により、このギルの多様性ある落葉樹の森でアジア・ライオンはその数を増やし、2015年の調査では523頭に、そして2020年の調査では674頭にまで回復しています。

 

ギル国立公園は乾燥したチークと広葉樹林の森、東部にはアカシアの林とサバンナが広がり、その中を7つの川が流れ4つの貯水池を作っています。300カ所ほどの動物の水場となる場所があり、暑気にはこの水が野生動物たちの命をつないでいます。国立公園の東部と西部でも気候・降水量が大きく異なり、アカシアの林やサバンナの広がる東部では年間降水量が650ミリですが、西部では1000ミリを超えます。

 

↑ゲート入り口。

 

ジープに乗っていざサファリへ!!

ササン・ギルで観察できる主な野生動物をご紹介します。

アジア・ライオン Asiatic Lion、キンイロ・ジャッカル Golden Jackal、インド・マングース Indian Mongoose、チータル Chital、ニルガイ Nirgai(Bluebull)、サンバー Sambar、ワイルド・ボアー Wild Boar、マーシュ・クロコダイル Marsh Crocodile そのほか、たくさんの野鳥。

 

まずは、アジアライオン。結構ジープの近くまで来ることもあります。

ただ、観察のベストシーズン、というとやはり2月下旬~5月。乾期は水場に動物が集まるので観察しやすいですが、暑すぎてライオンがだらけていることも(もともと夜行性の動物ですから、日中は寝ています)。

 

 

その他、ササンギルの森で出会える動物たちの一部をご紹介します。

 

Nilgai ニルガイ
体の大きな鹿でBluebullと呼ばれ、オスはグレー色の大きな体をしています。鹿とは思えないほど大きな子もいます。

 

 

Sambar サンバー
水場に多く集まり「水鹿」とも呼ばれます。丸い耳が特徴的。

 

 

Chital(Spotted Deer)アクシスジカ
インドの森で最も一般的な鹿

 

 

Golden Jackal キンイロ・ジャッカル

 

Marsh Crocodile マーシュ・クロコダイル
そして水場にはワニも。乾期の水の少ない時期には観察しやすいです。

 

 

■ササン・ギルへのアクセス

アーメダ―バードから車両移動で7~8時間です。

フライトは少ないですが、ディウ(約2時間)、ラージコット(約4時間)などその他のグジャラートの都市からもアクセス可能です。

サファリはジープの事前予約が必要です。国立公園内に入ることが許されるジープの数に制限がありますのでインドの祝祭日が重なる時期など早めの予約が必要です。

是非、アジア最後の貴重な存在であるライオンたちの住む森を訪問してみてください。

 

※この記事は2013年11月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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グジャラートの魅力【5】 絞り染めと伝統を受け継ぐ経緯絣パトラ織り

グジャラートのテキスタイルを巡るうえで、外せないのがパトラ織。今回はナショナルアワードも受賞したムハンマドさんの絞り染めと今や数家族のみが受け継いでいるパトラ織をご紹介します。

 

■絞り染め

 

インドで絞りの産地はグジャラートとラジャスタンがあげられますが、グジャラートでは絞り染めのことを「バンダニ」と呼びます。

ムスリムのコミュニティで作られるバンダニは吉祥の意味があり、婚礼用のヴェールや祭礼、結婚式に参列するときの晴れ着として、特に女性に好まれてきました。また、アメリカ在住の日本人アーティストであるワダ・ヨシコさんが絞り染めの技法を用いたアート作品を1983年に出版した「Shibori」という本で紹介し、「シボリ」が世界中で有名になりました。また国際絞りシンポジウムも開かれ、第2回はグジャラート州のアーメダーバードで開催されました。

これをきっかけにカッチの人々も「シボリ」という言葉を使うようになりましたが、カッチの人は今までの伝統的な布をくくって染めるものは「バンダニ」、針を使って波縫いをきゅっと縮めて染める方法を「シボリ」と呼んでいるようです。

 

小さな絞りの作業はまさに職人技!!

括ったら染めの作業です。

 

 

糸が括られた状態

この状態から、この様に引っ張ると「ブチブチッ」という音とともに糸が取れていきます。

 

広げるとこんな感じ↓

 

 

■パトラ織

 

パトラ織の産地、パタンで今もパトラを織り続けている僅かな家族の中でも、最も有名なサルヴィ氏。博物館も併設しています。

パトラ織の起源は諸説ありますが一説には、12世紀、パタンを治めていたソランキ王朝の王様の招へいで、ジャルナ(現ムンバイより東へいったところ)からパトラ織をする700家族がパタンに移動し、ここにパトラ織りが定着したと言われています。サルヴィ家もそのうちの1家族だったそうです。インドでは、その後も宮廷や富裕層の間でサリーとしてパトラが織られ、特に結婚式用として使われました。また、海を渡り、各地の織物に影響を与えました。特に東南アジアや、日本でも江戸時代に織られ、今でも九州の「久留米絣」がこの技法を持ちます。パトラは「経緯絣(たてよこがすり・ダブルイカット)」で織られます。予め、経糸、緯糸それぞれの部分部分を糸でくくり、色で染めます。これを何回も繰り返し、複数の色で染めるこの作業は長い時間がかかり、この作業だけで、全体の7割近くを占めます。

 

その後、織り機で、経緯の柄を併せながら織っていきます。少し織ると、鉄のピンを使って柄をしっかり合わせる作業をします。

細かい作業のため、1日に約15㎝程度しか織れないそうです。このため、長さ6mのサリーを1枚織るためには5~6か月もかかります。経糸、緯糸どちらもそれぞれ染めるのがダブルイカット、経糸もしくは緯糸のどちらかのみを染めるのがシングルイカットと呼ばれています。

 

絞り染め、ダブルイカット、どちらも素晴らしい職人技。

 

作業を見ているだけでもあっという間に時が過ぎていきます。パトラ織の工房は博物館も兼ねており、ランチも食べられるので、グジャラートを旅行される際には是非お立ち寄りください。

 

次回はアジアライオンに出会える、国立公園をご紹介します。

 

※この記事は2012年6月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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