“インド版定食”ターリー&ミールスとインドのB級グルメ②

ジャレビ店
アムリトサル街かどのミターイー店

ナマステ!西遊インディアです。
前回の記事では、“インド版定食”ともいえる❶ターリーと❷ミールスについてご紹介いたしました。

今回は、インドの庶民に愛されるB級グルメについてご紹介します。

❸ B級グルメ (ストリートフード&スイーツ)

B級グルメを「安価で、贅沢でなく、庶民的でありながら、気軽に食べられる料理」と定義するなら、インドはまさにB級グルメの宝庫!
インドに来たら、ぜひ一度は庶民の味である屋台料理やスイーツにトライしていただきたいもの。
ここでは紹介しきれないほどたくさんの種類がありますが、今回は、街かどで食べられるスナックやミターイー(スイーツ)といった甘いおやつなど、ストリートフードを中心に10個に絞ってピックアップしてみました。
 

パニプリ1. パニプリ PANIPURI पानीपूरी

ピンポン玉のように揚げた生地に穴を開け、ジャガイモなどの具と甘酸っぱいスープを入れて一口でパクリ。定番のストリートスナック。

ワダ2. ワダ VADA वड़ा

ティファン(南インドの軽食)の定番。ペースト状にしたウラド豆とスパイスを混ぜて、ドーナツ状に揚げたもの。豆腐のように素朴な風味があり、どこか懐かしい味。

ジャレービー

3. ジャレービー JALEBI जलेबी

小麦粉でつくったゆるい生地をひも状にして熱した油に落として、くるくると渦巻きの形に揚げます。かりんとうのような雰囲気ですが、シロップに浸かっているので甘さは強烈!

ドーサ

4. ドーサ DOSA डोसा

今やインド全土で人気の南インドを代表するティファン。ロール型、三角形、ガレットのように四角いものなど形は色々。ピリ辛のポテトをくるんだもの(マサラドーサ)からココナッツ味まで、具のバリエーションも多彩です。

ポハ

5. ポハ POHA पोहा

ライスフレークを水でもどして、ターメリックなどのスパイスで味付けした料理。ピーナッツやタマネギを入れることもあります。スナック麺をかけるとジャンクなテイストに。レモンをかけてさっぱりといただきます。

グラブジャムン

6. グラブジャムン GULAB JAMUN गुलाब जामुन

“世界一甘いお菓子”といわれるインドの定番ミターイー。小麦粉・砂糖・濃縮乳でつくった生地を揚げて、カルダモンで香りづけしたシロップに浸します。噛むとシロップがじわっと染み出てきて、口の中に広がります。

バナナチップス

7. バナナチップス BANANA CHIPS केले के चिप्स

南インドで出会うバナナチップス。ココナッツ油で揚げた、塩味とほのかに甘みがある素朴な味。サクサクした軽い食感でいくらでも食べてしまいそう!インドらしくマサラ味もあります。

焼き芋

8. 焼き芋 SWEET POTATO शकरकंद

冬に北インドで見かける焼き芋の屋台。注文すると、お芋の皮を剥いてダイス状にざくざくと切り、マサラとレモンをさっとかけてくれます。

ウッタパム

9. ウッタパム UTTAPAM उत्तपम

南インド風お好み焼き。生地はドーサに似ていますが、こちらはホットケーキのように厚みがあり、タマネギやトマトなどの具を入れます。ココナッツとトマトのチャトニと一緒に。

マワ

10. マワ MAVA मावा 

水牛の多いグジャラート地方のミターイー。大鍋でミルクと砂糖を煮詰めると飴色になり、砕いたお米のような質感に。味はキャラメルそのものといった感じで、ひと口食べると甘みと香ばしさが広がります!

北インド、南インドの大きなくくりではまとめきれないほど、多彩な味わいのあるインド料理。もちろん地域のみならず、文化やコミュニティ、季節によっても異なります。来るたび違う表情を見せてくれるインドを、ぜひ「食」の面からも、新しい発見とともに楽しんでみてください!
 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel
 
参考図書:「家庭で作れる 東西南北の伝統インド料理」(香取薫/河出書房新社)、「知っておきたい!インドごはんの常識」(パンカジ・シャルマ[文]、アリス・シャルバン[絵]、サンドラ・サルマンジー[レシピ]/原書房)

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“インド版定食”ターリー&ミールスとインドのB級グルメ①

インドのグルメといえば、真っ先に思い浮かぶのが“インド版定食”のターリーもしくはミールスと、街を歩けば必ず目にする屋台のストリートフードではないでしょうか。
それぞれ地域やコミュニティによってたくさんのバラエティがありますが、今回は大きく
❶ ターリー(北インド)
❷ ミールス(南インド)
❸ B級グルメ(ストリートフード&スイーツ)
の3つに分けてご紹介します。

❶ ターリー Thali(北インド)

大皿に数種類のカレーやおかず、主食のお米やチャパティが盛られます。本来「ターリー」という言葉は「銀の大皿」を意味しますが、トレーに盛られた料理のことも指します。季節や土地柄で料理の内容が変わり、例えばグジャラートのものは「グジャラーティー・ターリー」のように、地域の名前を付けて呼ばれます。
様々なおかずが付くのは、アーユルヴェーダの6つの味覚(甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味)に基づくもの。多様な食材を使って6つの味覚すべてを一度の食事でとることで、栄養のバランスが整うと考えられています。
 

ターリー(北インド)
北インドのターリー(一例)

・ライス:日本と同じく、インドの大部分の地域で主食として食べられます。北から南まで、湿度、温度差、日照時間など気候の異なる地域で、様々な栽培方法で作られます。香り・色・形が異なり、種類はなんと100種類以上あるとか。
 
・ロティ(パン):小麦粉を練って薄く焼いたチャパティが一般的。タワという鉄製のフライパンで毎日家庭で焼かれます。手間のかかるナンは日常的に家庭で食べられることはなく、レストランやお祝いの席で食べられます。
 
・パパド:薄焼きせんべいのようなスナック。そのまま食べてもよし、割ってライスにかけてもよし。
 
・サブジ(野菜のドライカレー):じゃがいもなどの野菜をスパイスで炒めた汁気のないおかず。
 
・野菜のカレー:ナスやカリフラワー、グリンピースなどを具材にしたカレー。パニール(インド版カッテージチーズ)が入ることも。ベジタリアンが多いインドでは、野菜を使ったカレーの種類が豊富。主軸として具材に使われる野菜は1~2種類で、料理名にその野菜の名前が使われます。
 
・肉のカレー:ノンベジタリアンメニューの場合は、チキンやマトンを使ったカレーも。
 
・サラダ:キュウリやスライスしたタマネギ。塩とレモン汁、コショウを軽くかけて。
 
・ダヒ(ヨーグルト):口の中がリセットされるだけでなく、混ぜて食べる“味変”の楽しみも。キュウリやタマネギを加えてライタにすることも。
 
食べる順番は人それぞれお好みですが、主食がロティとライスの両方があるときは、ロティから先に食べることが多いようです。たとえば、ロティでそれぞれのカレーを味わったら、ライスにはマイルドな野菜カレーをかけて、次は辛味のあるお肉のカレーを少しかけて味変して、サラダで口の中を一旦リセット。今度はサブジで野菜の食感を味わって…など、自分なりに食事を楽しめるのもターリーのいいところ。
また、メニューは基本的に、様々な地域の料理を組み合わせることはなく、同一地域内の料理を組み合わせます。旅先でターリーを食べれば、その土地の味・おいしさを一度に知ることができるともいえます。

一口メモ:「カレー」は何語?
「ソース」を意味するタミル語の「カリ」に由来するといわれています。かつてイギリス人が英語にとり入れ、スパイスを使った料理全般を「カレー」と呼ぶようになったのだそう。

❷ ミールス Meals(南インド)

南インドではミールスと呼ばれます。ココナッツをよく使うため、北に比べると味付けはマイルド。基本的には野菜や果物を具材にしたベジタリアン料理で、おかずは、豆と野菜を煮たサンバルなどのカレーや炒めもの、すっぱくて辛いラッサム(汁物)など。カレーリーフの香りや胡椒の爽やかな辛味も特徴です。米どころの南では、主食は小麦より米がメイン。清浄で殺菌効果もあると考えられているバナナの葉に盛り付けられます。「カトリ」という小さなボウルにカレーやおかずを入れ、それらを大皿に載せて提供されることも。
 

ミールス(南インド)
南インドのミールス(一例)

・ライス、ロティ、パパド
 
・ラッサム:トマトやタマリンドなどを煮た、すっぱくて辛いスープ。
 
・サンバル:豆と野菜を煮て作ったマイルドなカレー。
 
・ポリヤル:マスタードなどのスパイスで味付けした野菜炒め。
 
・ピックル:インドの辛い漬け物。青マンゴーやニンジンなどの野菜で作ります。
 
・チャツネ:料理を引き立たせる薬味。ココナッツやトマト、ミントのものがよく出てきます。
 
・アチャール:パイナップルやマンゴーで作られた、辛くてすっぱい付け合わせ。
 
揚げ物にもココナッツオイルを使うので、北インドの料理に比べてさっぱりとしているのが特徴。海沿いでは、カニやエビ、魚もよく食べられます。
ちなみに、料理は最初からたくさん盛られるのではなく、おかわりしていく形式。揚げものやラッサム、甘いものが出されるタイミングなどは、州やコミュニティの食習慣、集まりのグレードによってさまざま異なります。ですが、いずれの場合でも、食欲が湧くよう、よりおいしく、体に良い順番で提供することを軸に考えられています。

一口メモ:地域によって違う!ターリーいろいろ

  • グジャラーティー・ターリーグジャラート
    ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
  • パンジャービー・ターリーパンジャーブ
    バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
  • ベンガル・ターリーベンガル
    イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。
グジャラーティー・ターリー
グジャラート
ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
パンジャービー・ターリー
パンジャーブ
バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
ベンガル・ターリー
ベンガル
イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。

 
南インド料理は人気があり、今やほぼインド全域といってもいいくらいに南インド料理を提供するレストランがあります。とくにデリーにはさまざまな地域料理のレストランがあるので、気軽にトライすることもできます。
ぜひ一度、その土地の味覚がワンプレートに集結したターリー、ミールスを味わってみてください。
 
次回は、ストリートフードやスイーツを中心に、B級グルメについてご紹介します。
 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel
 
参考図書:「家庭で作れる 東西南北の伝統インド料理」(香取薫/河出書房新社)、「知っておきたい!インドごはんの常識」(パンカジ・シャルマ[文]、アリス・シャルバン[絵]、サンドラ・サルマンジー[レシピ]/原書房)

 


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インド料理と基本のスパイス

コショウやクローブなどのスパイス

今回は、インドとは切っても切れない存在であるスパイスについてお話しします。
 

古代より、スパイス(香辛料)は貴重品として扱われ、ギリシャやローマといった大国をはじめ、世界中から求められてきました。
“スパイスロード”や“香辛料貿易”などの言葉が生まれたことも、その需要の高さを物語っています。
香辛料に関わる歴史は複雑で壮大!インドの歴史はもちろん、世界史を語る上でも欠かせません。
インドにおいては、紀元前3000年頃からすでに黒コショウやクローブ等の多くの香辛料が使われていました。そして、それは現在に至るまで変わることなく続き、インドの人々の生活には必要不可欠の存在です。

市場のスパイス売り(シッキム)

古代からスパイスがそこまで求められた最大の理由は、なんといってもその薬効でしょう。
肉や魚を長期保存する術をもたなかったヨーロッパの人々にとって、スパイスの防腐作用は衝撃的なものでした。
未知なる東方からもたらされた、独特の香りを放つスパイス。コショウに至っては、ヴェネツィア人に「天国の種子」と呼ばれていたほど。当時は手に入れることが難しく、それゆえ彼らをますます魅了したそうです。

シナモンやウコンが入ったスパイスボックス

インドでは、そんな魅惑のスパイスがどの料理にもふんだんに使われています。その効能は、実際どんなものがあるのでしょうか。インド料理に使われる代表的なスパイスをいくつかご紹介します。

 
ターメリック हल्दी(ハルディ) 別名:ウコン
消化作用や新陳代謝を良くする働きがあります。抗酸化作用、抗炎症作用にも優れていて、体質改善や皮膚病にも効果があるとされています。
 
コリアンダー धनिया(ダニヤ)別名:香菜・パクチー
胃腸の働きを促し、新陳代謝を活性化させる働きのほか、頭痛の改善や鎮静作用など豊富な効能があります。カロチンやビタミンを豊富に含みます。
 
クローブ लौंग(ローング)別名:丁香
殺菌・消毒の効果があります。生薬・芳香健胃剤としても用いられ、胃腸の働きを高める作用があります。
 
クミン जीरा(ジーラ)別名:馬芹
健胃、消化促進、解熱などの効果があり、下痢や腹痛を緩和します。抗酸化作用があり、免疫力を上げる効果も。ガンや循環器系の病気の予防にも用いられます。
 
ジンジャー अदरक(アダラク)別名:生姜
日本でも身体を温めたり、風邪の療法に用いられます。発散、健胃、保温、解熱、消炎、沈嘔など多くの効能があります。
 
カルダモン इलायची(イラーイチー)別名:ショウズク
疲労回復や整腸作用、冷え性の改善や油分を除去する効果があります。口臭予防や体臭を消すのにも効果的です。
 
シナモン दालचीनी(ダールチーニー)別名:ニッキ
世界最古のスパイスのひとつ。樹皮から取れる精油には殺菌効果・活性作用があり、口臭予防や美肌効果まであるといわれています。
 
この他、日本でもお馴染みの黒コショウ(ゴールミルチ)やニンニク、タマネギ、ナツメグなどにも様々な効能があります。

シナモン(ダールチーニー)

これらのスパイスは個々の効能はもちろん、組み合わせによっても様々な力を発揮します。つまり、インド料理はもはや薬膳料理といっても過言ではありません。スパイスは、暑い気候のなかで暮らすインドの人々が、健康を保つために欠かせない存在なのです。

そして、スパイスを用いるのは食事だけではありません。薬草として医薬的に使用されたり、有名なアーユルヴェーダにも使われます。スパイスとともにあるインドの人々の生活は、まさに“医食同源”なのです。

スパイスをふんだんに使ったインド料理は、もはや薬膳料理といえるかもしれません!

※この記事は2015年4月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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天空のチベット ラダック第2弾:基本情報(暮らし・民族・食)

ナマステ!西遊インディアです。
今回は、ラダックエリアの気候、暮らしや食事などについて、ご紹介いたします。

■気候

夏は短く、冬は長いラダック地方。6月~9月頃がいわゆるラダックの夏です。日中は30度前後まで気温が上がり日差しも強烈ですが、朝晩は10度以下まで下がることもあり、特に天気が悪い日は冷え込みます。青い空と、緑、雪を被った白い山脈の組み合わせが非常に美しい時期です。

 

7月撮影のレーの街。晴天率も高く、過ごしやすい時期です

10月~4月上旬はラダックの冬。日中でも氷点下まで気温が下がり、時には-20℃を超える極寒の世界となります。積雪もあり、峠道は通行不可となってしまうことも多いです。レー・デリー間の国内線も、天候不良によるフライトキャンセルが頻発する時期です。

 

1月、レー郊外の道路の様子
ルンバク村の1月

一般的には、6~9月がラダックの観光シーズンとされており、この時期はレーの街や郊外の観光地は大変賑わいます。

また、季節の見どころとして4月中旬~5月上旬頃、標高の低いインダス川沿いの村々では、杏の花が咲きます。薄いピンク色の杏の花はとても可愛く、日本の桜を思い出します。日中はまだ寒いですが、4月頃に杏の花目当てで行くのもいいですね。

 

4月、満開の杏の花

ラダックは年間降水量が非常に少なく、一年を通し非常に乾燥しています。また天気も変わりやすいです。お出かけの際は、事前に現地の気候をチェックのうえ、日よけ・乾燥・暑さ・寒さ対策が必要です。

■暮らし

家畜の世話をする女性

伝統的なラダックの暮らしは、散らばった小さな村々での営みで、主な仕事は牛の飼育と耕作です。近年までほとんど完全な自給自足が成り立っていました。標高4000m前後の土地のため耕作できる土地は少なく、また作物が育つ時期は約4ヶ月間と極めて短いです。しかし、人糞と家畜の糞尿を肥料にし、氷河から溶け出した水を畑に引く複雑な灌漑のシステムを開発。集約的な農耕農業で、1年間に必要な小麦や大麦の生産を可能にしました。

 

初春、畑作業に勤しむ女性(ラマユル村にて)

もっとも重要なものは家畜で、特にヤクが重要視されています。ヤクは穀物を脱穀したり、土地を耕したり、荷物の運搬に利用され、糞は肥料や乾燥させてこの地方唯一の燃料になります。乳を採り、肉を食べたり、毛皮を衣服・カーペットなどの原料として使用します。

 

ラダックの夏の間は大変忙しいです。大麦、小麦、豆、杏やその他果樹の収穫、干しアンズなど長い冬を越すための保存食作り等、休む暇もなく作業をこなします。

 

8-9月は刈り入れ作業の時期です
ラダックの女性は働き者!

ちなみにラダックでは、厳しい環境下で、食料や資源が少ないため、人口増加を抑えるために兄弟で妻を共有する一妻多夫性が取り入れられてきました。現在は、インドの法律で禁じられ、一夫一妻制となっています。

■民族・言語

ラダックで暮らす人々の多くは、チベット系の民族であるラダック人(ラダクスパ)です。ほとんどの人はチベット仏教を信仰していて、服装や食事、風習など、チベットと共通する部分がたくさんあります。言語はチベット語の方言、ラダック語。チベット語と文字は同じですが、発音はかなり異なります。

 

ラダック北西部のダー・ハヌーには、頭に花を飾る華やかな風習で知られる、ドクパ(ブロクパ)と呼ばれる人々が住んでいます。アーリア系民族ですが、仏教徒です。ラダック語ともバルティ語とも異なる、ドクスカットという言語を使っています。ラダック東部のチャンタン高原には、チベット人の遊牧民たちが暮らしています。

 

ダー村の女性たち。頭の花飾りが特徴的です
ダー村の男性

■民族衣装

ラダックは標高が高く、紫外線を目いっぱい浴びる場所です。夏でも肌をあまり出さず、紫外線や乾燥から体を守っています。冬は凍てつく寒さから体を守るためにしっかりとした防寒が必要です。寒くなってくると、男女ともに着用するのは、ゴンチェというウールの上着です。

その他、帽子はティビ、靴はパブーといいます。

 

「ゴンチェ」と「パブー」
ラダックの山高帽「ティビ」

ペラクは主にザンスカール地方に伝わる、トルコ石がふんだんに使われた女性用の頭飾りです。母から娘へと受け継がれる、いわゆる家宝です。お祭りや、特別な行事のときに被ります。一度被らせてもらいましたが、トルコ石が隙間なく並べられているため被るとずしっととても重いです。

 

トルコ石をあしらったぺラク

伝統的な民族衣装を纏う人は近年減ってきているそうですが、レーを離れて郊外の村まで行けば、年配の方を中心に着用している人々はまだ目にします。民家訪問でお邪魔させてもらった時、試着させてもらえることもあります!

 

■食事

ラダック地方はチベット文化圏ですので、チベット料理が主流です。主に大麦、小麦を主食とし、ラーメンのようなトゥクパ、タントゥク(ワンタンメン)、モモ(餃子)などのチベット料理は、日本人にも食べやすいあっさりした味付けです。 「ツァンパ」と呼ばれる炒った大麦を粉にしたものをお碗の中でバター茶と練って作る「コラック」。ツァンパを大鍋で水から練って作る「パバ」。これらは自家製ヨーグルトなどと一緒に食べることが多いです。また、インド料理もポピュラーで、野菜カレーやチャパティなどもよく食べられています。大きな町やムスリムの多い町では、チキンやマトンを使った料理も食べることができます。

 

モモ
トゥクパ
ラダッキ・ブレッド。焼きたては特においしい!

 

 

ラダックシリーズ③へ続きます!
ラダック第3弾: チベット仏教の世界と仏教美術の宝庫アルチ僧院

 

 

 

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インドの紅茶の歴史とマサラチャイ

ナマステ!
現在、インドの土産物と言えば紅茶、というほどインドを代表する特産物になっている紅茶ですが、インドでの紅茶の栽培や流通の歴史は、意外なことにそこまで古くなく、比較的新しいものです。

今回はインドにおける紅茶栽培へと至る道のりと、マサラチャイへの発展の歴史をご紹介していきます。

 

土産物屋で売られる紅茶
土産物屋で売られる紅茶

■茶がヨーロッパへ至るまで

茶は中国南西部の雲南省からミャンマー、チベット高原当たりの山岳部に自生していたものが原産で、中国では有史以前から薬として飲用されていました。その後、6世紀頃から飲み物として一般化していきます。朝鮮半島や日本には古くから伝わっていたものの、ヨーロッパへと伝わるのは17世紀頃になってからでした。

 

中国雲南省 ペー族の三道茶
中国雲南省 ペー族の三道茶

初めてヨーロッパへ運ばれた茶は、1610年にオランダ船によって長崎からアムステルダムへ運ばれた茶と言われています。このころのオランダは中国やインドネシア等のいわゆる「東洋貿易」において支配的な立場にあり、始めはオランダ東インド会社によって日本や中国の茶がヨーロッパへ運ばれました。イギリスはオランダを経由して茶を輸入していました。

 

特に西ヨーロッパではそもそも水が硬水であって飲用に適さず、都市で清潔な水を入手することが困難だったため、生水を飲むということがほとんどなく、食事以外では喉を潤すためにビールやワインなどのアルコール、また牛乳などが飲用されてきました。17世紀に入って国内に茶が流通し始めると、まずは非常に高価な輸入品の「東洋の秘薬」として飲用されるようになります。その後、高価な茶に同じく高価な砂糖を入れて飲むのが貴族層の間で流行し、17世紀後半から喫茶習慣が根付き始めます。

 

この頃、ヨーロッパでは茶に少し先行する形でコーヒーの飲用が始まっていました。17世紀後半から各地にコーヒーハウスが生まれており、紅茶もここで一般に飲まれるようになっていきます。イギリス国内での需要に伴い、イギリスは中国から大量の茶を輸入することになりますが、これを自国の植民地で賄うためにインドでの茶栽培が始まっていきます。

 

収穫を控えた茶葉
収穫を控えた茶葉

 

■インドでの紅茶栽培の始まり

従来、中国以外での栽培は難しいとされていた茶ですが、1823年にイギリス人冒険家ブルースによって北東部のアッサム州で自生種が発見され、「アッサム種」として品種改良が始まります。イギリス国内でも高い評価を受けたアッサム茶はインド国内でも栽培が拡大され、また1841年にはダージリン地方で中国種の栽培が始まります。1845年には緑茶と紅茶の違いは製法の違いにあり、原料となる茶葉は同じ樹種であることが発見され、中国種とアッサム種の交配からさらに品種改良が進み、インドで研究された紅茶栽培法は同じくイギリスの影響下にあったスリランカやバングラデシュで適用されていきます。

 

茶摘み風景(インド:ダージリン)
茶摘み風景(インド:ダージリン)

 

茶摘み風景(インド:ダージリン)
茶摘み風景(インド:ダージリン)

 

茶摘み風景(スリランカ:ヌワラエリヤ)
茶摘み風景(スリランカ:ヌワラエリヤ)

 

■マサラチャイの誕生

一般的にインドでは、チャイと言えば茶葉を濃く煮出し牛乳と砂糖を入れたミルクティーを差し、それにさらにジンジャー、カルダモン、シナモン等のスパイスも加え一緒に煮出したものをマサラチャイと言います(ちなみにヒンディー語での発音ではチャーエです。また、チャイとマサラチャイを特に区別せずに、スパイス込みでもチャイということもあります)。

 

現在では「インドといえばチャイ」と言っていいほど国民的な飲み物になったチャイですが、そこに行き着くまでにはちょっとした歴史があります。
インドで茶葉の栽培が始まったころ、紅茶はイギリス国内では高価な嗜好品でした。そのため、インド国内で作られた紅茶も高品質なものはヨーロッパへ輸出していましたが、低品質な茶葉やブロークン、ダストと呼ばれる砕けて粉末状になった茶葉などは、輸送コストを抑えるためにもインド国内での消費を生む必要がありました。

イギリスは当初はこれらの茶葉をストレートで煮出したものを普及させようとしましたが、あまりにも苦みが強く受け入れられませんでした。植民地内での需要を生むために色々と試し、またインド人のアレンジが加わった結果、スパイスと牛乳と砂糖で濃く煮出したマサラチャイが生まれました。これもすぐに受け入れられた訳ではありませんでしたが、もともとインドではスパイスを湯や乳で煎じて飲む習慣があり、それを紅茶と砂糖で風味付けした飲みやすいものとしてインド国内で徐々に習慣化されていきました。

 

チャイ
レストランのチャイ

その後、チャイ(マサラチャイ)が一般にも急速にに普及していきますが、そのきっかけとなるのがCTC製法の確立です。

CTCとは、Crush(砕く)・Tear(裂く)・Curl(丸める)の3段階の製造工程の頭文字をとった製法名です。収穫後茶葉を押しつぶし、細かく引き裂いてから、丸めて粒状へと加工します。短時間でしっかりとした茶葉の味を抽出できるように開発された、現在最も世界で生産量が多い製法です。ティーバック用、またはアッサム茶葉、ケニア茶葉用に広く取り入れられています。茶葉の粒のサイズは目的によって砂のように細かいものから数ミリ程度の粒まで調節することができます。

 

インドのチャイにはこのCTC製の茶葉がぴったり合います。牛乳や砂糖、スパイスに負けない強い紅茶の香りを簡単に出せるようになったことで、マサラチャイの人気は広まり、インド(特に北インド)の一般的な飲み物となっていきます。

 

観光客や旅行者、インドの富裕層を中心にストレートティーも飲まれていますが、現在では庶民の飲み物と言えば何といってもマサラチャイです。街のどこでもマサラチャイの売り子や屋台を見ることができ、今や生活に欠かせないものとなっています。オフィスで働いていても午前に1回、午後に1回のチャイブレイクタイムが設けられ、チャーエ・ワーラー(お茶売りの男性)が登場します。

 

路上のチャイ屋台(バラナシ)
路上のチャイ屋台(バラナシ)では素焼きのカップが使われているところも。飲み終わったカップはそのまま土に還るエコなシステム

チャイの基本材料は牛乳・紅茶・スパイスですが、砂糖の有無の他、それぞれの分量やスパイスの種類などは自由に組み合わせ可能ですので、各家庭や店ごとに異なる味わいを見せています。

 

インドのマサラチャイ、最初に飲んだ時はその甘さにびっくりしたものですが、毎日飲むうちに今では深く煮出された茶葉の味と甘さが逆に落ち着く様になりました。

 

旅行中でも、チャイ屋で沸騰させて煮出した熱々がもらえるため、屋台のものでも安心して飲むことができます。インドの愉しみとして、ほっと一息つけるチャイをぜひ各地で飲んでみてください。

 

Text by Okada

 


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