アクセス抜群の「野鳥の楽園」:ケオラディオ国立公園②

ナマステ!西遊インディアです。

前回はデリーからアクセスバッチリの国立公園・ケオラディオの概要についてご案内いたしました。
ケオラディオ国立公園①

 

今回は、実際にケオラディオで観察した内容をもとに、出会える動物たちについてご紹介いたします!

 

■ケオラディオ国立公園でみられる鳥・野生動物

375種を超える鳥類、また34種の哺乳類が確認されているケオラディオ国立公園では、メイン道路からだけでも様々な動物の観察を楽しむことができます。

 

▮インドクジャク

 

インドクジャク

 

インドの森のサファリでは一般的に見ることができます。ヒンドゥー教ではシヴァ神の息子:スカンダが乗る動物とされており、インドの国鳥にもなっています。インド、スリランカ、ネパール、パキスタンなどに広く分布。クジャクというと美しい羽根のイメージがありますが、これは成熟した繁殖期のオスにのみ見られるものです。腰の上部から生えており、「上尾筒(じょうびとう)」と呼ばれます。メスへの求愛の際、また他のオスに対しても自分の存在をアピールするために広げられることがあります。

 

▮ヘビウ

 

羽を乾かすヘビウ

 

木の枝の上で羽を乾かしています。首が長く、泳ぎが得意な鵜で、水面から首だけを出して泳ぐ様子が蛇のように見えるためこの名がついています。英語ではSnakebird、またはダーツの矢に例えてDarterと呼ばれます。水中を泳ぐ姿、また濡れた羽を広げて陽にかざし、羽を乾かしている様子もよく見ることができます。

 

▮ワカケホンセイインコ

 

インド、スリランカに広く分布しており、低地から標高2000m以下の森林、サバンナ、湿地、市街地などに生息しています。成熟した雄は首に首輪のように毛が黒色になるのが得量です。ペットとしても人気のあるインコですが、海外へ持ち出されてペットとされたものが逃げ出して野生化しており、日本でも野生化したワカケホンセイインコが繁殖を広げ、在来種のニッチを奪っていることが問題となっています。インド各地でよく目にすることができる鳥の一つです。

 

 

▮インドコキンメフクロウの雛

 

 インドコキンメフクロウの雛

 

木の洞で休んでいます。ジャストフィットしている様子が可愛いですね。インドコキンメフクロウは南アジアから東南アジアにかけて広く分布する小型のフクロウ。開けた草地や農地、村のそばでも見ることができ、木や岩にできた穴などに巣をつくります。夜行性のため、昼のサファリでは休んでいる姿を見ることが多いですが、昼間に活動している姿を見ることができることもあります。ヒンドゥー教では、フクロウはブラフマー神の妻、ラクシュミーが乗る動物ともされています。インドコキンメフクロウの学名は ”Athene brama” (ラテン語)ですが、この ”brama”はヒンドゥー教のブラフマー神に由来して名付けられたものです。

 

▮オスのチータル(アクシズシカ)

 

アクシズジカ

 

インドの森サファリで一般的に見られるシカの仲間。インドではチータル (chital) と呼ばれ、「斑点のある」という意味があります。インド、バングラデシュ、ネパール、ブータン、スリランカに生息しています。 体の白い斑点が特徴的で、角は毎年落ちて生え変わります。その際、古い角を食べる行動が見られますが、これはカルシウムを接種のためだと考えられています。また、オス同士の争いに角が使われます。アクシスジカの群れとハヌマンラングールの群れは一緒にいることが多く、樹上のサルが落とした実をアクシスジカが下で食べている等、仲の良い様子が度々観察されています。ベンガルタイガーやアジアライオンを見ると「アラームコール」を発します。

 

▮インドトキコウ

 

 

 

ケオラディオ国立公園は、アジア最大の営巣地です。

 

▮サンバー

 

 

水のなかを移動しています。サンバーは漢字で書くと「水鹿(すいろく)」です。

 

▮ニルガイ

 

 

インドの森に生息する、最大のシカ科の動物。頸がウマに似ていることから、「ウマシカ」などとも呼ばれることもあります。体毛は短く、オスとメスで色が異なります。オスは暗い灰色(青っぽいことからBlue Bull=青い牛ともよばれます。ニルガイの名前もニルが青、ガイが牛を意味します)、メスは灰褐色です。

 

 

ケオラディオ国立公園で観察できる野鳥、野生動物を紹介しましたが、これらはまだまだ一部です。他にもたくさんの野鳥たちが公園内では観察できます。

 

また、公園内には所々に湖があり、湖面に映る森の影、そして朝もやの中の日の出など、美しく幻想的な風景が広がっています。本当に、首都圏にあるとは思えない程、穏やかな時間が過ぎています。

 

ぜひアグラ、ジャイプルの観光とセットで訪問してください。もしくはデリーからの週末旅行としても大変お勧めです! インドの森の魅力・美しさを楽しんでいただけるはずです!

 

 

 

カテゴリ:■インド北部 , インドで野鳥観察 , バーラトプル , ラージャスターン州
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アクセス抜群の「野鳥の楽園」:ケオラディオ国立公園①

ナマステ! 西遊インディアです。

 

インドの観光と聞くとタージ・マハルのような歴史的建造物や、バラナシのような聖地の観光を思い浮かべる、という方も多いかと思います。しかし、インドはその広い国土の中で100以上の国立公園を設定しており、サファリツアーの目的地としても世界的に非常に高い人気がある国です。

国内の全ての国立公園の面積を合わせると、なんと国土の1%以上が国立公園に指定されているほど。国立公園の設置はもちろん野生動物の保護が第一の目的ですが、現在では各地の国立公園が巨大な観光資源としての役割を果たしています。

 

今回は、デリーからのアクセスが大変よく、週末に気軽にバードウォッチングをお楽しみいただける国立公園・ケオラディオ国立公園についてご紹介します。

 

ケオラディオ国立公園ではこんなに可愛らしいインドコキンメフクロウの子どもたちと出会えるかも!

 

■ケオラディオ国立公園の概要

 

ケオラディオ国立公園付近の航空写真(Google mapより)

 

ケオラディオ国立公園は、ラジャスタン州バーラトプルの街の中に位置しており、タージ・マハルがあることで有名なアグラの街から約58㎞西に移動した場所にあります。アグラ、ジャイプル、そして首都デリーという通称”ゴールデントライアングル”の3都市からも比較的アクセスが良く、多くのバードウォッチャーが訪れる「野鳥の楽園」として知られています。周辺都市の観光にプラスして、手軽にインドの自然を楽しむことができるのが大きな魅力となっています。

 

ケオラディオ国立公園の面積は他の有名な国立公園と比較すると非常に狭く、僅か29平方キロメートルほどです。もともと付近を流れるヤムナー川の氾濫原だった公園の敷地はくぼ地になっており、美しい湖沼地帯が広がっています。ラムサール条約にも登録されている湿地帯は、375種を超える野鳥が飛来することで知られています。

 

ケオラディオ国立公園内の湿地帯
ケオラディオ国立公園内の湿地帯。バードウォッチャーでなくても自然を楽しめる美しい公園として多くの人が訪れます
ラダックから飛来するリュウキュウガモ(Lesser Whistling-Duck)

 

また、湿地帯の中に森林や草原といった陸地(ドライゾーン)がモザイク状に広がっており、このような場所ではサンバーやアクシズシカ、ニルガイなどの陸生の野生動物も観察することができます。園内には各所に遊歩道が設置されている他、メインの道路ではサイクルリキシャーを利用できるため、このメイン道路をサイクルリキシャーでのんびりと巡るお手軽なルートも人気です。

 

メイン道路を走るサイクルリキシャー
メイン道路を走るサイクルリキシャー

 

■ケオラディオ国立公園の歴史

先にも書きました通り、この場所はもともとはヤムナー水系の氾濫原の天然のくぼ地でした。18世紀半ばに当時のマハラジャにより堤防が築かれて湖が誕生し、そこに多くの水鳥が集まる様になっていきます。

ケオラディオは野鳥の飛来地として知られるようになっていきますが、1850年代から1965年までは現地のマハラジャ、そして入植してきたイギリス人の狩猟地として利用されていました。最盛期には一日に2000羽以上の鴨が狩猟された時もあったと伝えられています。その後1971年には鳥類保護区になり、1982年からは国立公園として整備が進められています。

 

公園は以前はバーラトプル鳥類保護区と呼ばれていましたが、現在は敷地内にあるシヴァ寺院の名にちなみ、ケオラディオ国立公園と呼ばれています。その後1981年にラムサール条約の登録湿地となり、1985年にはインドでは3つ目の自然遺産として、世界遺産に登録されています。

 

2004~2007年には干ばつ、そして付近住民の合意を得られず公園への水の供給が制限されたことにより生態系が激変する事態となりましたが、現在は水門によって人為的に給水量が調節され、公園内の環境は回復しています。公園は高さ2mの外壁で完全に覆われており、公園内での水牛の放牧を禁止するなど、野鳥の保護のための様々な対策が取られています。

 

早朝、ケオラディオ国立公園内の湖をボートで遊覧

 

ケオラディオには中央アジアや中国、シベリアから多くの野鳥が越冬にやってきます。アヒル、ガチョウ、ペリカン、サギなどをはじめ、オオワシやカタシロワシなどの絶滅危惧種も越冬地として利用しており、世界的にも重要な飛来地の一つとして1981年にラムサール条約にも登録されています。

 

 

間近での観察のチャンスも
間近での観察のチャンスも

サファリのシーズンは雨季の終わった10月から2月まで。早朝または夕方が観察に適しています。公園内はサイクルリキシャーで回ることができ、4WDやバスで移動する一般的なサファリとは異なり、静かな湖沼地帯の雰囲気を味わいながら野鳥を観察することができます。もちろん野鳥専門のガイドに案内をしてもらうことも可能ですが、サイクルリキシャーの運転手も簡単な英語を使って野鳥を教えてくれる方が多いようです。

 

サイクルリキシャーでケオラディオ国立公園を探索
サイクルリキシャーでケオラディオ国立公園を探索

 

来訪者の中には巨大な望遠レンズを何本も抱えて本格的に撮影をする方も多いです。公園はメインの道路の他に小さなトレイルがいくつも整備されており、時間をかけてゆっくりと回ることもできます。北インドの主要な観光地だけを巡るツアーではケオラディオ国立公園を訪れないツアーも多いのですが、賑やかな街や有名観光地とは対照的に、ゆっくりとインドの自然を楽しめるお勧めのスポットです。

 

次回の記事では、ケオラディオ国立公園で観察できる野鳥や動物について、ご紹介します。

 

「野鳥の楽園」:ケオラディオ国立公園②

 

 

Text by Okada

 

 

カテゴリ:■インド北部 , インドで野鳥観察 , バーラトプル , ラージャスターン州
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