ラダックのブッダ・プルニマ Buddha Purnima

ジュレ―!西遊インディアです。

2023年5月5日は、仏陀の誕生・悟り・涅槃を祝う「ブッダ・プルニマ」の日でした。
西遊旅行の今年のGWのラダックツアーで、ちょうどお祭りの日にレーを訪れることができました。

■ブッダ・プルニマ Buddha Purnima
仏教の伝わる各地で「ウェーサーカ祭」として祝われる日。
日本では「花まつり」「灌仏会」にあたります。
仏陀の人生の中で重要な誕生・悟り・涅槃の3つがこの同じ日に起こったとされ、ラダックではチベット暦の4月(ウェーサーカ月 Visakha)の満月の日に当たるので、毎年日付が異なります。
ヒンドゥー教では、仏陀はヴィシュヌ神の9番目の化身(アヴァターラ)と考えられており、この日はヒンドゥー教徒と仏教徒の両方に祝われます。インド全国共通の祝日(Gazetted holidays)ですが、とくにラダックではダライ・ラマの誕生日に次ぐ重要な祝日です。

  • ヴィシュヌ神の10の化身。中央下段がブッダ
  • ヴィシュヌの化身としてつくられたブッダ像
ヴィシュヌ神の10の化身。中央下段がブッダ
ヴィシュヌ神の10の化身。中央下段がブッダ

ヴィシュヌの化身としてつくられたブッダ像
ヴィシュヌの化身としてつくられたブッダ像

 
「プルニマ」とはサンスクリット語で満月のこと。「ブッダ・ジャヤンティ(Jayanti = 誕生日)」ともよばれますが、ザンスカール出身の現地ガイドさんによると、「プルニマ」の方がより敬意をこめた呼称なのだそうです。ちなみに、今年は釈迦の誕生から2567年目に当たります。
 
例年レーでは、ラダックにおける仏教組織(ラダック・ブッディスト・アソシエーション)が主催し、ピース・マーチの行進と、ポロ・グラウンドでの見世物が行われます。
ピース・マーチの練り歩きは、市街中心部にあるレー・ジョカンを出発して、シャンティ・ストゥーパ、ナムギャル・ツェモの順で回り、ポロ・グラウンドをゴールとして行われます。
 
まずは市民たちが行進するピース・マーチ。シャンティ・ストゥーパから降りてくる行進の列です。


僧侶たちの列の後には、誕生日を迎えたお釈迦様がトラックに乗って移動してきます。

経典を持った人々の列が通り過ぎるとき、頭を下げると手に持つ経典を軽く叩くように頭に乗せて行ってくれました。

ピース・マーチを見た後に向かったシャンティ・ストゥーパでは、ブッダ・プルニマならではのイベントで、仏陀の人形に水をかけてきれいにし、自分の心身を清めようというブースがありました。
日本の灌仏会でもお釈迦様の像に甘茶をかける慣習があり、遠く離れたインドの地でも、共通点を感じます。

シャンティ・ストゥーパ

日本の灌仏会で見る仏像よりちょっとかわいらしい仏陀人形。
でも、日本の灌仏会と同じく「天上天下唯我独尊」の誕生仏のポーズです!
 
道中、行列に配っているハルワやサモサ、ジュースをいただきながら、広場へ向かいました。

いただいたハルワ。カシューナッツが入っていて、甘くておいしいです

レーの町の広場、ポロ・グラウンドでの見世物を見学しました。広場の真ん中に作られた壇上で、市民やお坊さんが踊りを披露していました。
ナムギャル・ツェモから見たポロ場

たくさんの見物客でにぎわっています!

仮面(チャム)を付けて踊る様子


日本の縁日やお祭りのように賑やかでした!
 
明るい雰囲気に包まれた、ブッダ・プルニマ祭のラダックの様子でした。
これからはお祭りの多い季節。ラダックは本格的な旅行シーズンを迎えます。
 
 
■おまけ
ピース・パレードで見学した色々な山車


 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel

 


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インドのお祭り コルゾックグストール

ナマステ!西遊インディアです。

以前、デリーから陸路で行くレーの時に途中で立ち寄ったコルゾック僧院。

標高4,500mに位置するこの僧院でも、年に一度お祭りが開催されます。

グストールとは・・・

「グ」とは9や19、29の「9」の付く日を表し、「ストール」とは「トルマ=麦粉やツァンパ、バターなどで作った立体的なお供え物」のことです。「9の付く日にトルマを壊すお祭り」となり、コルゾック僧院では毎年チベット暦の7月29日にあたる日に合わせてこのお祭りが開かれます。

天空のチベット ラダック第8弾:祭り・チベット仏教の用語とマナー・お土産など

 

2日間にわたって行われるグストール祭のハイライトは2日目

(初日はディックとよばれる予行練習が行われます)

 

まずは動物達のお清めの儀からスタート

飼われている動物を開放し、新しい人生を与えてやる儀式。

ここで解放された動物は寿命を全うでき、食べられることはないそうです。

 

続いてタンカのご開帳

 

チャムが始まる前にはハトゥクと呼ばれる道化が会場整備に一役買います。

祭りをひらくには、昔も今も莫大な費用がいります。スポンサーだけでは賄えないので、寄付やお布施を集める役割も担います。

 

13黒帽の舞やチティパティの舞など、他のお祭りと共通しているチャムもありますが、午後には皆まとめて登場します。

 

会場の中央に置かれた悪の象徴“ベレ”(悪いことをすべて吸収してくれます)は、チャムの最後、大黒天により八つ裂きにされていきます。

最後はこんな姿に。

これは、トルマと一緒に焼かれるそうです。

 

チャムが終わるとハシャンの登場です。

ハシャンは日本では七福神の布袋和尚にあたるそうです。もともと中国唐の時代の禅僧であり仏教寺院に多額の金銭的な貢献をしたという伝説的な人物です。

お祭りでは人々にお布施や喜捨の大切なころを教える役目をしているそうです。ハシャンは子供を大変かわいがった人として知られ、後にハトクという子供のお面をつけた子供の僧が必ず従います。

 

先日ご紹介したツェチュとの違いがこちら

「トルマ」の破壊です。

グストールでは、最後にトルマを一定方向に向かって破壊する儀式もつきものなのですが、壊す方向はお祭り終了後に占いで決められます。

 

これは特に時間が決まっていませんので、本堂内で法要が行われていましたが、私が見学した時は2時間以上待ってようやく決まった方向へと運ばれていきました。村の端の方まで持っていき焼かれるそうです。

夏はラダックのお祭りシーズン。

大事な儀式でもありますが、地元の方たちにとっては年に一度のお楽しみでもあります。この日の為によそ行きの服を身にまとった地元の方たちとの交流もお楽しみください。

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ラダック最大のお祭り ヘミス僧院のツェチュ②

前回はツェチュの午前の部をご紹介しました。

ここからは午後の部です ↓↓

 

(4)12守護尊の舞

各僧院に描かれている守護尊の舞です。マハカーラ(大黒)やヤマ、パルデン・ラモなど。

 

(5)The four Goma

赤、白、黄、緑と4色の門番たち。幸福や豊かさの為に動く神のような存在です。フック(白)で邪気を捕まえ、ロープ(黄)でそれらを縛り付けます。鉄鎖(赤)で固定し、ベル(緑)で惑わせて逃げられなくするといったように持ち物それぞれに意味があります。

(6)チティパティの舞

チティパティ(屍陀林王)と呼ばれる骸骨の仮面です。「墓場の主」という意味を持つこの仮面は、かつては苦行僧だったそうで、祭りの時に悪霊を退散させる重要な役割を担うとされています。

 

チティパティの衣装、2015年頃にリニューアルされた模様です。

2013年時にはこんな感じでした↓

 

(7)パドマサンバヴァの忿怒の舞

平和と幸福に反する悪の心を解き放ち、浄土へと導きます。

手には剣や短剣を持っています。

 

(8)ダーキニーの舞

守護尊の一つヘールカの妃であるダーキニーの舞。赤、白、黄、赤、青色の5体のチャムです。祭り会場の中央にある、邪気を吸収させたトルマを破壊していきます。

 

(9)勇士の舞

 

大体16時前にはチャムは終了します。

お祭りの間は本堂は僧侶の方たちの控室のようになるので見学は出来ません。

内部をゆっくり見学したい方は、お祭りの後、又は別日に行くのがお勧めです。

 

ラダックのお祭りは、大切な宗教行事。地元の方たちにとっても、年に一度のお楽しみです。

マナーを守って気持ちよく見学しましょう。

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ラダック最大のお祭り ヘミス僧院のツェチュ①

夏になるとラダックではお祭りシーズン到来!

ツェチュ、グストール、カブギャットなど、由来に応じでお祭りの呼び名も様々です。

ヘミス僧院は17世紀の創建以来ラダック王家の援助の下で大きな力を持ってきたこともあり、ラダックでもっとも裕福なゴンパのひとつ。もちろんお祭も盛大で、国内外から観光客も多くやってきます。そんなヘミス僧院のツェチュについてご紹介します。

ツェチュとは・・・

チベット文化圏の寺院での祭りのことですが、本来は「(月の)十日」を意味します。

これは、紀元後八百年前後にチベット仏教をヒマラヤ一帯に流布した、ニンマ派の祖師グル・リンポチェ(パドマサンバヴァ)にちなんでいます。彼の生涯には十二の重大な出来事が起きたといわれ、各月の十日に、その月に該当する出来事の法要を行います。

また、「月の十日にツェチュ祭のあるところには必ず戻ってくる」という言葉を残したとも言われています。ツェチュ祭とは、グル・リンポチェを再び目の前に拝み、法要を行う、一年のうちでも大切な日です。

ヘミスツェチュはチベット歴の5月10~11日(太陽暦の6~7月)に行われます。発表される2日間のスケジュールのうち、盛り上がるのは僧侶によるチャムが行われる初日です。

(3日間開催とある場合、1日目は僧侶たちのリハーサル、2日目がチャムの日です)

 

そして、大事なイベントの一つが大タンカの御開帳。

毎年行われるのですが、12年に一度、申年にはグル・リンポチェの特別なタンカの御開帳があります。前回は2016年でしたが、この年は例年以上の人出になります。

 

■例年御開帳されるタンカ↓

 

■12年に一度ご開帳されるタンカ (2016年撮影) ↓

 

チャムは10時頃からスタート

解説等は無いのですが、プログラムは毎年同じ感じです。10時ごろ、流れに沿ってチャムもスタートします。

 

(1)13黒帽の舞

13名の僧侶によって舞われるもの。広場全体を清める意味を持ちます。口元のマスクは悪霊を吸い込まない為。彼ら黒帽の僧侶たちはシャナクと呼ばれ、ダオ(仏教における悪の象徴を表す人形)にまつわる儀式など、チャムの中でも重要な役割を果たします。

 

 

(2)祝福の儀

16名の銅製のマスクをつけた踊り手たちの舞。

会場に来ている人たちに、祭りの開始を告げ、邪気をとりはらいます。

 

(3)パドマ・サンバヴァ八変化

グル・リンポチェは8つの化身の姿を持っていたと言われています。いろいろな姿がありますが、その中でもブータンの聖地・タクツァン僧院はグル・リンポチェがグル・ツェンゲの一つ「グル・ドルジドロ」という姿で虎に乗ってやって来たという伝説が残っています。

祭りでは、お坊さん達に連れられて八変化相が次から次へと登場しますが、パドマサンバヴァは金色の傘が掲げられ人一倍大きな仮面として表現されているので、一目で判別をつけることができます。用意されたイスに座っているパドマサンバヴァの前で、八変化相が次々と舞いを披露していきます。

 

 

通常、ここまでが午前の部。

次回は午後から行われるチャムをご紹介します。

 

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インドヒマラヤ冒険行③ デリーから陸路で行くラダック

ついに、レーに到着です。

ラチュルン・ラ(5060m)を越えてまっすぐラダックの中心レーへと向かうこともできますが、さらに寄り道をしてチャンタン高原の湖ツォ・モリリを目指します。

 

ラチュルン・ラ

湖手前にはツォ・カルという塩湖があります。ここで採れていた塩は、スピティにあるキッバル村等での物々交換の材料になっていた品です。

 

ツォ・カル

まずはチャンタン高原について、ご紹介します。

 

■チャンタン高原

チベット北西部からラダック南東に広がる広大なチャンタン高原。1962年のインド・中国紛争の後、チャンタン高原の西の一部がインドに属することになりました。平均標高が4,500mの高原には湖が点在し、古くからチャンパと呼ばれるチベット遊牧民が暮らしてきました。

チャンタン高原の人々の生活の糧は大切な家畜と、その家畜が食む草。家畜はヤク、羊、そしてパシュミナヤギです。冬はマイナス30℃以下になる厳しい環境では草が生える期間も短く、このわずかな草を食い尽くさないよう、チャンパの人々は年に8~10回キャラバンを組んで移動します。

 

早朝、遊牧民のテントを訪れると、乳しぼりをしている様や、バター、ヨーグルトなどを作っているところが見学できます。

乳しぼりの後、子ヤギたちがミルクを飲まないように胸に薬草を塗られて、日中はエサを求めてさらに山の方へと移動するヤギたち。夕方になると戻ってきます。

 

そんなチャンタン高原の西の端、標高4,500mの土地に美しい半塩湖「ツォ・モリリ」が広がります。 湖畔の小さな村「コルゾック村」の中心にはチベット仏教のコルゾック僧院が建ち、周辺の人々の信仰の拠り所となっています。

 

コルゾック僧院※グストール祭の様子

朝、ツォ・モリリを出発。ここからレーまでは約8時間。

ポロコンカ・ラを通り、塩湖ツォ・カルの辺りまで来ると国道に合流。

荒涼とした渓谷の中をぐんぐん進み世界で2番目に高いタグラン・ラ(5327m)を越えて、一気に町へと入ります。

 

タグラン・ラ

レーのバザールの様子です。

飛行機で移動すれば1時間程で到着する町ですが、荒涼とした景色を眺めながら陸路で移動するのも、飛行機では味わえない雰囲気満載の楽しい旅なのでオススメです。

 

この他、デリーからマナリへと移動。ロータンパスを越えてキーロンからレーに移動するルートもありますので、また別の記事でご紹介したいと思います。

 

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インドヒマラヤ冒険行② デリーから陸路で行くラダック

前回はデリーからタボへと移動しました。

タボの観光で外せないのが『ヒマラヤのアジャンタ』と言われるタボゴンパ。

残念ながら内部の写真撮影は禁止です。

 

■タボゴンパ

996年にリンチェンサンポによって築かれた壮大なゴンパ。「ヒマラヤのアジャンタ」と形容されるそのタボ僧院を中心としてタボの街が広がっています。西チベット・グゲ王国から当時の仏教の中心地であったカシミールに派遣されたリンチェンサンポは、グゲ王国に帰国する時に絵師や工芸師など、多くの技術者を連れて帰りました。リンチェンサンポの指揮の下、その彼らによって建てられたゴンパ。入口を入ると目の前に土の固まりが飛び込んできますが、一歩お堂の中に入ってみると、そこには当時の最先端であったカシミール様式の仏教芸術が、素晴らしい保存状態で残されています。特に惹きつけらるのは大日堂のご本尊、四方向に向かって静かな微笑をたたえる大日如来と、そのご本尊を取り巻くように造られた数多くの尊格の像は必見です。

 

ダライ・ラマ14世は1996年にこの僧院を訪れ、カーラチャクラ大灌頂を行いました。その後、ダライ・ラマ14世はご自身のダライ・ラマとしての最後の瞬間を、この僧院のこのお堂で迎えたいとおっしゃられたといわれています。

リンチェン・サンポは2 度目にカシミールへ赴いたとき 32 人の建築家、画工、仏師を連れて帰国し、翻訳のみならず西チベット、ラダック、スピティの各地に108の寺院を建造したといわれていますが。このような建築様式、壁画の画風はカシミール様式・リンチェン ・サンポ様式と言われます。現在このカシミール様式の仏教芸術が残されているのは、 ラダックのアルチ 、 グゲ(チベット)トリン 、そしてこの スピティのタボの3か所です。

 

近くには歩いて行ける高台があり、そこからタボ・ゴンパを臨むことができます。

 

タボから北西に移動し、スピティ谷の中心地・カザへ。この辺りにはスピティ最古の歴史を持つキ・ゴンパがあります。

まずはスピティ川の合流ポイント

 

キ・ゴンパ

ゴンパからも絶景。特に7~8月にかけては小麦畑の緑がきれいです。

 

更に西へと移動し、クンザン・ラ(峠)を越えてラホール谷の中心地キーロンへ。

 

余裕があればキーロンから少し南下して3980mのロータンパスへフラワーウォッチングに出かけることも可能です。

 

西チベットの交易路として栄えていたキーロンでは、バザールの散策も楽しめます。この先、設備の整った宿は少ないエリアです。キーロンで宿泊し、翌日から更に北上、ついにジャンムー・カシミール州へと入ります。

 

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インドヒマラヤ冒険行① デリーから陸路で行くラダック

インド国内の観光客はもとより、外国人にも大変人気のエリア・ラダック。

ラダックの中心地レーへ行くには、デリーから毎日国内線の運航があり、1時間程で着いてしまうので意外とアクセスは容易です。

では、デリーから陸路で行くとどうでしょうか。

 

実はこの、デリーから陸路でラダックまで行くルートは、道中絶景の連続! そしてデリーのヒンドゥー教の濃厚な世界から、だんだんとチベット仏教世界へと人々の信仰や、また文化慣習も変わっていく様も体験できる、本当に魅力的なルートなのです。

 

ルートはいくつかありますが、少し時間をかけながらレーまで行ってみましょう。

 

【世界遺産 カルカ・シムラ鉄道に乗車】

早朝、薄暗いデリーの町を抜けて駅へと向かいます。まずは、ニューデリーからカルカまで約6時間の列車の旅。チェアカーと呼ばれる座席タイプのシートで中々快適です。

デリーで荷物を運んでもらう際は料金交渉もお忘れなく!

 

 

カルカ到着後、トイ・トレインのホームへと移動します。

カルカからシムラまでは約5時間。少しずつ標高をあげる列車はゆっくりゆっくり進みます。

※カルカ・シムラ鉄道

インド北部・ハリヤナ州のカルカから、避暑地として知られるシムラ(ヒマーチャル・プラデーシュ州の州都)までを結ぶ登山鉄道。イギリス統治時代の1903年、夏の首都だったシムラの交通の便のために開設されました。区間は総延長 96 km 、両端の駅の標高差は 1,420 m(カルカは 656mシムラは 2,076 m)。途中には険しい地形を反映して103ヶ所のトンネルと864ヶ所の橋があります。軌間は 762 mm のナロー・ゲージ(狭軌)で、いわゆる「トイ・トレイン」。2008年、世界遺産として「インドの山岳鉄道群」を拡大する形で登録されました。

 

 

夕方、列車は避暑地シムラ駅に到着。明るいうちに到着すればバザールの散策も可能です。

カラフルなシムラの街並み↓

 

シムラで1泊し、翌日はカルパまでの移動です。

シムラから北東にサトレジ川へ進んでいき、キナール地方へと入ります。この辺りから緑のフェルトをつけた独特の帽子(キナウル帽)をかぶった方々が増えてきます。

 

14の地区に分かれているヒマーチャル・プラデーシュ州ですが、シムラ、キナール、ラホール・スピティの3つの地区、谷を越えてラダックのあるジャンムー・カシミール州へと北上します。

レコンピオの町を過ぎカルパに向けてグネグネと坂を上がります。

天気が良ければシバ神が冬場にこの地にやってきて、瞑想したという伝説のあるキナール・カイラスを展望できます。

 

翌日、さらに北上してタボまでの移動です。標高もグッと上がります。

サトレジ川とスピティ川の合流ポイントを過ぎたあたりから、道は細くなります。ここからスピティ谷へと入ります。

 

3つの谷を抜けていくルートには、道中、大翻訳官リンチェン・サンポ創建、又は由来のある寺院(ゴンパ)が複数あります。

そのうちの一つ、標高3,600M程のナコゴンパへと立ち寄ります。

 

この日はタボでの宿泊。

デリーから陸路で移動する場合、時間をかけ徐々に高度を上げていくのも高山病対策の一つです。

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天空のチベット ラダック第8弾:祭り・チベット仏教の用語とマナー・お土産など

ジュレー! 西遊インディアです。

散策や観光の際には、その土地のマナーや専門用語に触れておくと、より訪問を楽しめます。また、ラダックだからこそ手に入るお勧めのお土産なども紹介しますので、出発前にぜひご一読ください。

 

■お祭りを楽しむ

折角行くなら僧院で行われるお祭りに日付を合わせるのもひとつです。各僧院、一年に一度お祭りを催します。すべての仏教関連の年中行事はチベット暦に合わせて行いますので、各地の僧院の祭りは毎年日程が変わります。お祭りを見に行く場合は開催日の確認をお忘れなく。

 

ラダックで行われるお祭りについて、一部ご紹介します。

 

▮ヘミス僧院のツェチュ祭

規模の大きさから全チベット文化圏から巡礼者が訪れるツェチュ祭は、ヘミス僧院で3日間にわたって行われるラダック最大の祭りです。開祖であるグル・リンポチェを再び目の前に拝み、法要を行う、一年のうちでも大切な日です。掛仏・タンカの開帳や数十の僧侶が仮面を被り舞う仮面舞踊チャムなど、魅力と迫力満点です。

 

ツェチュ祭の様子

 

▮ラマユル僧院のカブギャット祭

カブギャット祭は、チベットカレンダーで8のつく第四の月に行われます。広場ではタンカが掲げられ、ドゥンという大きなチベットホルンの音に合わせて、チャム(仮面舞踊)が行われます。
チャムでは、シャワ(鹿)やマヘ(スイギュウ)、ヤマ(雄牛)、そしてメインの大黒天とその化身たちが登場し、手に持った武器や法具で仏法の敵と戦います。
また後半には、ダオ(ツァンパで作られた人形)を黒帽の僧侶たちが刀や弓などで破壊します。ダオには人々の良くないものや感情が込められており、これを破壊することでそれらを取り除きます。最後に、トルマ(バターとツァンパで作ったお供え物)を燃やし、閉会となります。カブギャット祭りには、周辺各地で修行をしている行者や、ダー・ハヌーからの巡礼者もたくさん押し寄せ、会場はかなりの熱気に包まれます。

 

お祭りの後半・ダオの破壊の場面

 

▮グストール祭

ザンスカールのカルーシャ僧院や、ツォ・モリリ湖畔のコルゾック僧院などで催されています。「グ」とは9や19、29の「9」の付く日を表し、「ストール」とは「トルマ=麦粉やツァンパ、バターなどで作った立体的なお供え物」のことです。「9の付く日にトルマを壊すお祭り」となり、例えばコルゾック僧院では毎年チベット暦の7月29日にあたる日に合わせてこのお祭りが開かれます。
このグストール祭で行われる儀式や踊りには、「善(釈迦の教え)」が「悪(悪魔や悪い心)」に打ち勝つという意味が込められていると共に、釈迦の教えを分かりやすく民衆に伝えるという目的も併せ持ちます。 仮面舞踊で僧侶が被る仮面は神や女神、護法神などを表わしていて、人々にとってはこれらの踊りを見るだけで徳を積む事ができるのです。

 

グストール祭の様子

 

 

■チベット仏教の用語を知る

 

▮マンダラ

仏様の悟りの境地を視覚的・象徴的に表した図像です。サンスクリット語で「円・輪及び中心との関係」という意味で、円は完全なものと考えられています。
マンダラに関してはこちらにも紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
ラダック第4弾: チベット仏教の世界とマンダラ

 

壁画の曼荼羅(ツァツァプリ僧院)

 

▮マニ車・マニ石

筒の中に経典を入れたもの。1回転させると1回お経を読んだことになります。マニ車の大きさは様々で、人より大きい巨大なものから、巡礼者が手に持ってくるくる回せる小さなものまであります。

 

僧院の入り口に置かれていることが多い大きなマニ車
僧院内のマニ車

 

▮チャム

お祭り(法要)のときに僧侶が舞う仮面舞踊のことです。この舞踊を観ることで、仏教の教えや教訓が分かりやすく理解できるよう、物語になっていることが多いです。

 

チャム(ピヤン僧院のドゥップ祭)
僧院の中庭を広く使って行われます (ピヤン僧院のドゥップ祭)

 

▮タンカ

掛け軸に描かれた仏画のことです。チベット仏教のお祭りでは、僧院に保存された巨大なタンカの御開帳がメインイベントとなります。

 

ピヤン僧院のタンカ

 

▮チョルテン

仏塔のこと、ストゥーパともいいます。その土地の神や高僧を祀るために建てられます。巨大なチョルテンは、内部を時計回りに頂上まで上がることができます。

 

チョルテン

 

▮タルチョ

家の屋根や僧院、山頂など風の吹く場所に結び付けられている5色の旗のことです。青が空、白が風、赤が火、緑が水、黄色が大地を表します。マントラ(真言)が印字され、風に乗って仏法が広く行き渡るように、との思いが込められています。

 

風になびくタルチョ

 

▮マントラ

尊格(神様)ごとに決まっている祈りの言葉、真言のことです。 一番有名なものは観音菩薩のマントラで、「オム・マニ・ペメ・フム(Om・Mani・Padme・Hum)」です。ラダック滞在中、必ずと言っていいほど耳にする言葉です。

 

マントラか彫られた石

■僧院巡りのマナー

どの宗教にもあるように、チベット仏教の参拝にもいくつかルールがあります。仏教徒にとっても、観光客にとっても気持ちよく参拝をするために守りたいルールを紹介します。

 

  • ゴンパ(僧院)の周囲や堂内では時計回りで歩く(コルラ)
  • 勤行中の僧侶の邪魔をしない
  • ゴンパの中では靴を脱ぎ、脱帽する
  • 静粛にする
  • 訪問の際は肌の露出を避ける
  • ゴンパ内・敷地内で飲食や喫煙をしない
  • ゴンパ内の物に手を触れない

 

 

チベット仏教では、お祈りをしながら、時計回りに回ることは「コルラ」と言われ、チベット文化圏でも参拝の際には時計回りが基本です。寺院の周りを歩くとき、マニ車を回すときなどもすべて時計回りに回すというのは覚えておきたいマナーです。

 

■ラダックのお土産

夏の間、レーの中心地は土産屋をはじめ、食料品店や日用雑貨屋、ホテル、ツアー会社、本屋などが道の両サイドにずらっと並び、人通りも多く活気に満ちています。

 

レーの街かど
春頃は、生のアンズの露店が並びます
野菜の露店も多いです

レーに到着しましたら、高度順応もかねてぜひレーの街へお散歩へ繰り出しましょう。大小様々なお店があり、見るだけでも楽しいですし、何か掘り出し物が見つかるかもしれません!

 

 

最後に、ラダック地方に訪れたら購入したいお土産4選をご紹介!

 

1.あんず

あんずが特産品のラダックでは、あんず商品がたくさんあります。乾燥させてそのまま食べる乾燥あんず、種のバター、あんずジャム、オイルやクリームなどの美容商品も人気です。

 

路面で売られている乾燥あんず
アンズのジャムなど加工製品も人気です

 

2.カシミヤ、パシュミナ

カシミヤやパシュミナは、チャンタン高原でチベット系遊牧民がカシミヤ山羊を飼っていたことから始まったといわれています。このエリアのカシミヤやパシュミナは一般的なカシミヤ繊維よりも細いため、より柔らかく、暖かく、軽い、世界でもトップクラスの品質と言われます。

 

 

3.トルコ石

トルコ石は、古くからチベット圏で採掘され、珊瑚や琥珀と並び、欠かせない装飾品の一つです。ラダックにもその文化は受け継がれ、伝統的な女性の頭飾り「ペラック」にはトルコ石がふんだんに使われています。前頭部から背中まで伸びる1mほどの帯状布地(ウール製)に、大小多くのトルコ石を縫い付けたもので、嫁入りの際に代々母から娘へと受け継がれます。お土産屋でも、トルコ石をあしらった小物がたくさん売っています。

 

トルコ石のアクセサリー

 

 

4.仏具

仏教関連のお香や仏具もラダック地方でよく見かけるお土産です。レーのメインバザールでも、お土産用のマニ車のキーホルダーや、小さなタルチョがいたるところで売られています。

 

土産屋の仏具

 

せっかく訪問するならば、お祭りや観光マナーなど、しっかりと知識をつけてから訪問したいところです。ぜひ皆さんの旅の準備に役立てください。

 

 

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天空のチベット ラダック第7弾: 紺碧の湖パンゴン・ツォとヌブラ谷

ジュレー! 西遊インディアです。
前回は、下ラダックの見どころを紹介いたしました。
ラダック第6弾:下ラダックの観光

 

今回は、レーから少し足を延ばし、ラダック郊外にある2箇所の外せない見どころについてご紹介いたします!

 

■パンゴン・ツォ(Pangong Tso)

ラダックの東部からチベットにかけて横たわる、全長約130kmに及ぶ細長い湖がパンゴン・ツォ(湖)です。ラダック語で「パン」は「草」、「ゴン」は「塊」を意味します。標高4300mに位置し、1962年以前は全てインド領でしたが、現在は25%がインド領、75%が中国領になっています。インド側では塩湖と言われ、中国側は淡水です。冬はすべて凍り、軍隊のジープなどが湖の上を走ることができるのだそうです。湖に魚はいませんが、小さな虫や貝類が生息しています。

かつては、越冬地としてたくさんの鳥が来ていましたが、ここ数年の観光客増加により、環境が変化した為に鳥の数は激減してしまったそうです。

この美しい景色は、2009年公開のインド映画「きっとうまくいく(3idiots)」を始めとする、インド映画やミュージックビデオのロケ地としても有名です。

 

パンゴンツォは、その日の天候や時期によって少しずつ湖の色合いや見え方が変わります。雲や風のある・なしでも結構雰囲気が変わりますので、朝から晩まで湖を眺めていたい気持ちになります。

ちなみに湖の周辺には簡易宿泊施設もあり、パンゴンツォで1泊することも可能です!

 

パンゴン・ツォ付近には、人懐こいヒマラヤン・マーモットがいるエリアがあります。観光客が増え、食べ物を与えるため餌付けされ、その丸々と太った体と少し間の抜けたようなその顔が愛らしく人気です。

 

ヒマラヤン・マーモット
巣穴からちょうどこんにちは…

なお、パンゴン・ツォへの訪問には、入域許可書の事前取得が必要ですので、詳しくはお問い合わせください。

 

 

■ヌブラ渓谷(Nubla Vallery)

ラダックの北部、ヌブラ川とその支流に流域に広がる渓谷地帯がヌブラ渓谷。標高は3500mほどで、レーとほぼ同じです。川に挟まれて水が豊かなために緑に恵まれ、その名「ヌブラ」も「緑の園」を意味します。

レーからの陸路移動は片道4ー5時間程かかります。途中5000m級の峠カルドゥン・ラを越える必要があり、峠でのダイナミックな景色も魅力です。この峠は自動車道世界最高地点の標高で、正確な標高については諸説あり、5,359mという説が有力だとか。

 

カルドゥン・ラ
ヌブラ渓谷
バクトリアンキャメル

なんとヌブラ谷にはバクトリアンキャメル(フタコブラクダ)がいます。観光用に飼育されているラクダで、ラクダに乗って砂丘サファリができます(ちなみにラクダは、野生のものは今は中国とモンゴルにいるだけだそうです)。

 

 

デスキット僧院

ヌブラ谷の中心地・デスキット村の南東にある岩山の上に建つ大僧院です。ゲルク派の高僧チャンセム・シェラブ・サンボによって15世紀ごろに建立。ドゥカン(勤行堂)は比較的新しく、本尊は釈迦牟尼です。ゴンカン(護法堂)には恐ろしいほどの迫力ある守護尊・護法神の像がずらりと並び、見ごたえありです。また、僧院のとなりの丘の上には2010年に完成したという巨大なチャンバ(弥勒菩薩)像があります。

 

デスキット僧院遠望
腰掛けスタイルのチャンバ(弥勒菩薩)像

これまでラダックエリアの見どころを紹介してきましたが、まだまだラダックには見るべきものがたくさんあります! 荒涼たる茶褐色の大地、要塞を思わせる岩山に築かれた寺院、そしてラダックの人々も穏やかでフレンドリー。いつでも暖かく迎えてくれます。ラダックへのご旅行を何度もリピートする方が多いのも納得です。

 

 

次回は、ラダックエリアを訪問するにあたっての知っておくと役に立つ仏教用語や、お土産等ご紹介します。

 

 

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天空のチベット ラダック第6弾:下ラダックの観光

ジュレー! 西遊インディアです。

ラダックエリアの見どころ、続いて下ラダック側を紹介いたします!
前回: ラダック第5弾:上ラダックの観光

 

■下ラダック(シャム)

アルチ僧院やラマユル僧院など、ラダックエリアでは見逃せない僧院が点在しています。また、上ラダックよりも標高が低いため、農作に適しており、夏は緑、秋には黄金色の畑を見ることができます。上ラダック側より標高が低いので、高度順応も兼ねてラダック観光の序盤で訪問するのにおすすめです。

 

 

▮アルチ僧院(Alchi  Gompa)

アルチ僧院は小さな集落であるアルチ村に建つ僧院で、仏教美術の宝庫ともいわれています(アルチ僧院はこちらでもご紹介しました>>ラダック第3弾)。

10世紀末にリンチェン・サンポによって建てられたと伝えられるこの僧院には、現在「僧院」としての機能はほとんどありませんが、内部には、創建当時の壁画が残り、その内容はラダック随一です。

 

アルチ僧院
アルチ僧院 三層堂入り口
三層堂のポーチ部分

11 世紀半ばに建てられたという三層堂(スムツェク)は、名前のとおり三階建てで上層になるにつれ面積が小さくなる先細りの建築物です。独特の様式を模したファザード(建物の正面部分)は、柱は溝彫り式でうずまき模様が施されており、ギリシャ風の建造物を思わせる建築。また三角形の枠組みの中にそれぞれに尊格の木像が施されており、これらはどれもカシミール様式の特徴を表したものとなっています。

 

アルチ僧院仏塔内部 描かれているのは「飛天」

前述のとおり、カシミールや中央アジア美術の系統をひいてるチベット仏教美術における「リンチェン・サンポ様式」は、壁画の着色に「青(群青)」を多用していることが特徴として挙げられます。三層堂の壁面には所狭しと「青を基調とした千体仏」が描かれていますし、また仏塔内部には、チベット仏教寺院としては非常に珍しく、「飛天」や「白鳥」が装飾として描かれています。まさにカシミール様式の代表的な僧院であり、「インド・チベット仏教の至宝」と呼ぶに相応しいものです。

アルチ僧院は、ぜひとも訪問時間をゆっくりとって、訪問ください。

 

 

▮ラマユル僧院(Lamayuru Gompa)

「月世界」と呼ばれる独特の地形を通り過ぎつつ走ると、岩山の中腹に建つラマユル僧院が見えてきます。「ユンドゥン・タルパリン」という名前を持つ、カルギル地区のディグン・カギュ派の総本山の僧院です。

 

ラマユル僧院とラマユル村、奥に月世界

11世紀にこの地でカギュ派の開祖マルパの師匠である、ナローパがこの場所で瞑想したのがはじまりと言われ、現在でも200名の僧侶がこの僧院で修行を行っています。毎年チベット暦の5 月には「ユンドゥン・カブギェ」というお祭りが催されており、周辺の村々から多くの人が訪れます。

 

ナローパが瞑想した石窟。現在はティローパ、ナローパ、ミラレパ像が安置されています。

注目ポイントは、ドゥカン(勤行堂)内部にある「ナローパの瞑想石窟」。ドゥカンの片隅にある石窟内は、チベット仏教の宗派の1つであるカギュ派の創始者ナローパが瞑想を行ったと言われており、洞内にはナローパと、彼の師であるティローパ、彼の孫弟子であるミラレパの像が祀られています。

 

現存するラマユルのお堂の中で最古の建物であるのが、センゲカン(獅子堂)です。センゲカンは11 世紀、リンチェンサンポが創建したといわれています。
内部にはナンパ・ナンツァ(大日如来)像を中心とした金剛界五仏の塑像が残っています。インドで大乗仏教が発展していくにつれ「聖なる存在の仏」としての要素が強まってきた「五仏」。この五仏の塑像とそれを取り巻く装飾は、アルチと並ぶ秀作と言われています。

 

ラマユル僧院の大日如来

中央に大日如来、その周りを、阿閦如来(あしゅく)、宝生如来(ほうしょう)、阿弥陀如来(あみだ)、不空成就如来(ふくうじょうじゅ)の四仏が取り囲んでいます。

 

センゲカンには、他にも護法尊のマハカーラ(大黒天)や、ユニークな骸骨の壁画「チティパティ(屍陀林王)」などが描かれています。「チティパティ」とは墓場の主という意味であり、チベットの伝説によればもともとは苦行僧であったとされています。あるとき深い瞑想に入りましたが、その深さときたら、その隙を狙って泥棒が彼らの頭をはね、泥の中に身体を捨てたことに気づかないくらいだったとか。その時以来、彼ら(夫婦で描かれていることが多い)は泥棒の宿敵になり永遠の復讐を誓ったと言われています。

 

チティパティ。なんとなく可愛らしい見た目

 

▮月の谷 

ラマユル僧院の麓に広がるのが「月の谷」と呼ばれるポイント。この場所には、次のような伝説が残されています‥‥「数万年前、この地には大きな湖がありました。紀元前15 世紀頃、聖者ニマグンがこの湖に住む龍神(ル)の供養を行うため湖上に麦の種を撒いたところ、その種が「卍(ユンドゥン)」の形を示し、その事がラマユルの古名「ユンドゥン」の由来となりました」 ‥‥現代になり、地質調査を行ったところ、この地は本当に湖が存在していることが判っており、月の世界を思わせるこれらの地層は湖の底に積もった堆積物による地層であることも判明しています。

 

月面のような地層 なかなかの迫力です!
「月の谷」遠景。ここだけがこのような地層というのがすごい

 

▮ニダプク石窟(Nyidaphunk)

サスポールという村のメインの車道から砂利道を15分ほど登った先にあるニダプク石窟は、15~16世紀に開かれたとされています。「ニダ=太陽と月」、「プク=お堂」つまり「太陽と月のお堂(日月堂)」という意味です。朝から晩まで外の太陽と月を眺めて修行したことから名付けられました。かつては修行地として栄え、岩山の中腹に彫られた100以上の洞窟の中で修行や瞑想をしていたとされています。

 

ニダプク石窟までの道のり。 やや急な道を上ります

いくつかの洞窟のなかには、現在も壁一面に描かれた壁画が残っています。ですが、洞窟までの足場が危険な個所が多く、現在見学できるもので壁画が綺麗に残るのは一か所のみです。

 

ニダプク洞内部の壁画

 

当時、僧は石窟内で瞑想だけを行っていたのではなく、修行の一環として仏画を描いていたといわれています。石窟の内部は所狭しと仏画が描かれており、一切の余白がなく見ごたえがあります。壁画はポストリンチェンサンポ様式のもので、赤色を多用しています。

 

 

▮リキール僧院(Likir Gompa)

ゲルグ派の総本山で、ラダックではヘミス僧院に次ぐ権威を有している僧院です。11世紀頃の創建と伝えられていますが、詳細は不明とされています。現在見ることのできる建物は、火災による焼失後の18世紀に再建された建物です。僧院のすぐ隣には1997年に完成した高さ20mほどの金色の弥勒菩薩像が建っており、その姿は遠くからでも望むことが出来ます。

チベット歴の12月末、この僧院でリキール・グストルというお祭りが開かれます。その際にご開帳されるツォンカパのトンドルは全ラダックで最大の大きさです。

 

リキール僧院を遠望
お堂は全て再建されたもので、内部の壁画も新しいです
金色の弥勒菩薩像

僧院のすぐ隣には1997年に完成した高さ20mほどの金色の弥勒菩薩像が建っています。衆生をすぐに救いに立ち上がれるよう、腰かけスタイルです。

 

 

次回は、郊外の見どころであるパンゴン・ツォとヌブラ谷を紹介します!

 

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