チャンディーガル建築さんぽ③ ル・コルビュジエ・センターと政府博物館・美術館

チャンディーガル政府博物館・美術館の展示室

ナマステ!西遊インディアです。
 
チャンディーガル建築さんぽ、その3。
今回は、コルビュジエによる都市計画の軌跡を中心に展示するル・コルビュジエ・センター、パンジャーブ州やハリヤナ州の出土品や彫刻、細密画などを展示する政府博物館・美術館をご紹介します。

 
■もくじ
1.ル・コルビュジエ・センター
2.チャンディーガル政府博物館・美術館

1. ル・コルビュジエ・センター Le Corbusier Centre

コルビュジエのチャンディーガルに関連する資料などを展示した、いわばチャンディーガル版コルビュジエ・ミュージアム。建築博物館、展示ホール、アート・ギャラリーの3つで構成されていますが、ボリュームはそこまで多くないので、じっくり見学するのでなければ30分~1時間くらいですべて見てまわることができます。
 

コルビュジエ・センターの入口

場所はキャピトル・コンプレックスのあるセクター1から車で約10分の、セクター19にあります。歩くのには距離があるので、車での訪問がおすすめです。
 
程よく日差しの差し込む廊下の左右に、展示室があります

設計もコルビュジエ自身によってなされたもので、デザイン哲学の特徴であるシンプルさ、機能性、ミニマリズムの原則が反映されています。
 



コルビュジエが描いたスケッチや、設計プロセスを示した図面、写真、模型などの展示に加え、街の歴史と文化的な背景を解説する資料を見ることもできます。
 
コルビュジエは東西南北にまっすぐに並んだ街路をもつインダス文明の都市計画パターンにインスピレーションを受けたともいわれますが、実際にセクター17の商業施設の地下には5000年前のハラッパ期の集落の遺跡が眠っているそうです。地下4m前後からその遺物が発見されたので、発掘作業が行われました。
都市計画の工事のときに見つかったハラッパ期の遺物の展示

当時撮影されたコルビュジエの写真なども展示されています

都市計画に携わった経緯などの背景も含めて、当時のコルビュジエの仕事ぶりを垣間見ることができる場所。
コルビュジエはもちろん、建築やチャンディーガルの街の歴史に興味がある方にはおすすめです。
 
中庭にはモデュロールの模型が

2. 政府博物館・美術館 Government Museum and Art Gallery

チャンディーガル政府博物館・美術館 外観

街の中心部セクター10に位置する博物館&美術館。
既視感を覚える方もいらっしゃるかと思いますが、東京、上野の国立西洋美術館と同様、この建物はル・コルビュジエ(こちらはピエール・ジャンヌレも一緒に)によって設計され、1968年に完成しました。
コルビジェが設計した3つの美術館のうちの1つで、他の2つはアーメダバードのサンスカル・ケンドラ美術館と東京の国立西洋美術館です。
 
キャピトル・コンプレックスのあるセクター1から車で5分、ル・コルビュジエ・センターからは8分ほど。同じ敷地内に、前回ご紹介した建築博物館があります。※建築博物館については「チャンディーガル建築さんぽ【番外編】ピエール・ジャンヌレ」をご覧ください。
 
1階はピロティ、中に入り受付を済ませるとスロープがあり、コルビュジエの5原則がここにもしっかり反映されています。モダニズム建築の建物自体を含めて、丸ごと博物館!といった感じです。
 


館内では、古代インダス文明から現代まで幅広い時代の芸術作品、彫刻、工芸品を見ることができます。
展示内容をざっくり分けると、インド国内やネパール、チベットで見つかった仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の銅像、芸術作品のコレクション(細密画、現代美術)、考古学的遺物(ハリヤナ州・パンジャーブ州で発掘された彫刻など)の3つが主体となっています。
 
また、インド・パキスタン分離独立の際にラホール博物館から寄贈された600点以上のガンダーラ彫刻が収蔵されていて、コルカタのインド博物館に次いで国内で2番目に多くのガンダーラ彫刻コレクションを所有しているのも特徴です。
展示物が多くそこそこボリュームもあるので、1時間~1時間半ほどあると落ち着いて見学できます。
 

銅像展示セクション

16世紀の弥勒菩薩像(チベット)

ハリヤナ州Jagadhari近郊のSugh村で見つかったテラコッタ。ここにはアショーカ王が建てた仏教僧院があったと伝えられており、紀元前600年頃~紀元後300年頃までとみられる遺跡が発掘されています。貨幣とテラコッタが豊富で、テラコッタはそのほとんどが人間を形どったものだそう。
紀元前2世紀、ハリヤナ州Jagadhari近郊で見つかったもの

女神と見られるテラコッタ。細かなあしらいに目を奪われます

順路にしたがって進んでいくと、ガンダーラ様式の仏像などを展示するセクションへ。
ガンダーラ様式の仏像セクション

Lower Monastery, Nathuの2世紀頃の弥勒菩薩。ガンダーラ様式で、上のチベットの弥勒菩薩との違いは歴然です

同じフロアの奥には、細密画と現代アートのセクションがあります。
細密画セクション

ここは絵画だけでなく、カシミールの19世紀の写本や、小さな紙に書かれたジャイナ教のマンダラなども展示されています。
こちらは、ジャイナ教における24人の救済者・祖師ティルータンカラを描いたもの。500円玉くらいの大きさに、24人目のティルータンカラであるChauvisa(ヴァルダマーナ/マハーヴィーラ)を中心に描かれています。
24人のティルータンカラ

この18世紀初頭の細密画は、ジャイプルの王ジャイ・シン1世の宮廷詩人ビハーリー・ラール(Bihari Lal)がまとめた700句の恋愛詩集のサタサイ(SatSai、ササイ、サトサイ)の一場面。ヴィシュヌ信仰からクリシュナ信仰へと通じ、詩集の大部分はクリシュナとラーダーの恋愛を表現したものです。
18世紀初頭の細密画

他にも、18世紀に描かれたヒンドゥー教の神様の絵や、パンジャーブの日常を切り取ったものなどがありおもしろいです。
ハリハラ(ヴィシュヌ神とシヴァ神の合体神)と、それぞれの妻であるラクシュミー、パールヴァティ

1875年にパンジャーブで描かれた、ブロックプリントをする人

コルビュジエによってデザインされたチャンディーガルの都市。
コルビュジエ・センターだけでなく政府博物館の建物自体もそのデザインの一部で、さらにそこにはチャンディーガルおよびインドの歴史を物語る遺物があり…。街全体がミュージアムのようだなとも感じます。
 
※2024年2月訪問時の情報です。ご訪問の際は最新の情報をご確認ください。
 
参考:チャンディーガル州政府公式サイト、チャンディーガル観光局公式サイトなど
 
Photo & Text: Kondo
 


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