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全5回に渡ってお送りする、「インドの階段井戸特集」、2回目の今回は、世界遺産にも登録されているグジャラート州の階段井戸「ラニ・キ・ヴァヴ」についてご紹介します。
インドの階段井戸①階段井戸とは?
インドの階段井戸②世界遺産 ラニ・キ・ヴァヴ – 女王の階段井戸
インドの階段井戸③「最も美しい階段井戸」アダラジ・ヴァヴ
インドの階段井戸④「インド最大の階段井戸」チャンド・バオリ
インドの階段井戸⑤デリーの階段井戸 アグラーセン・キ・バオリ
ラニ・キ・ヴァヴ(Rani ki Vav)は、グジャラーティー語で「女王の井戸」を意味します。インド北西部、パタンの町のサラスヴァティ川の川岸に築かれた地下7階建ての巨大な階段井戸です。1050年に建造された、グジャラート州最古の階段井戸であり、その希少性や建築技術・彫刻群の完成度の高さから2014年に世界遺産へ登録されています。
階段井戸全体の構造は西から東へ潜り込むように広がっており、東西方向の奥行き64m、南北の幅20m。最も西に位置する実際の井戸の竪穴部分は、地表面から30mの深さがあります。全体で7層構造をとっています。
ラニ・キ・ヴァヴの巨大さ、壮麗さを目にするとお分かり頂けるように、階段井戸は寺院としての側面も持っています。一般的な寺院が地上から上へ向かって建造されるのとは対照的に、ラニ・キ・ヴァヴでは地下方向へ向かって寺院が展開し、最深部には竜王の上に横たわったヴィシュヌの神像が配されています。この最深部のヴィシュヌ像は、春分と秋分の日にのみ太陽の光が差し込むようになっており、建造当時の精巧な建設計画と、建設にかける情熱を感じます。
階段井戸の内部には主要な彫刻だけで500以上、副次的な彫刻でも1000以上の彫刻があり、ヴィシュヌの10の化身(アヴァターラ)や、ラーマーヤナ、マハーバーラタの物語に関係する神々の彫刻が施されています。また近郊のパタンの町は当時のチャウルキヤ朝(ソーランキー朝)の王都であり、このパタンの伝統のテキスタイルであるパトラ織りのモチーフにも通じる格子状や幾何学図形のレリーフも各所に点在しています。
「Rani」はグジャラーティー語で女王・王妃・王女等を意味する言葉であり、ラニ・キ・ヴァヴはその名の通り女王によって建設されています。ラージプート王朝の一つであるチャウルキヤ(ソーランキー)朝の王:ビーマ1世(在位1022年~1064年)の死後、遺された王妃ウダヤマティとその子カルナによって、王を偲んで建設されました。
そしてこのラニ・キ・ヴァヴの最大の特徴は、その保存状態にあります。ラニ・キ・ヴァヴは本来は風化しやすい砂岩を利用して建設されていますが、13世紀にサラスヴァティ川の氾濫によって泥と土に覆われたため、その後発掘までのあいだ泥土によって風化から保護され、素晴らしい彫刻群が状態良く残されたのです。
井戸は1890年代、イギリスの考古学者ジェームズ・バージェスによって発見され、その後1940年代に本格的な発掘調査でラニ・キ・ヴァヴの存在が明らかになりました。1986年にはインド考古学調査団による大規模調査と修復作業が行われ、この際にこのラニ・キ・ヴァヴの建造者であるウダヤマティの像も出土しています。
グジャラート州では水と結びついた女神信仰が盛んであったため、このラニ・キ・ヴァヴ以外にも王族や貴族の女性が建設した階段井戸が多く残っています。次回は同じくグジャラート州に存在し、「最も美しい階段井戸」と謳われるアダラジ・ヴァヴ(Adalaj Vav)をご紹介します。
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