インド北西部ヒマラヤ山脈の西側に位置するヒマーチャル・プラデーシュ州。
(ヒム=雪、アチャル=山)「万年雪をいだく山々」という意味で、平らな土地がヒマラヤの高山へと姿を変える一帯で、州の最高峰はレオ・パルギャル山(6816m)です。
「ヒマーチャルは世界の花かご」と、言われるほど花があります。
古代この地はチベットや中央アジア、カシミールへの交易ルートの十字路で、ラージャ(藩主)やラナ(王)、タクル(貴族)が、ラフン族やタクライ族と対抗し、ヒマーチャルは小さな国々の寄せ集めのようなところでした。
カーングラー王国とクルー王国、そして後のチャンバ王国のみがささいな争いから脱却する力を持っていました。
植民地時代には、多くの藩主が英国軍と運命をともにしましたが、自らの王国も自立権も失うことになってしまいました。初めて訪れた西洋人は、伝説に残るプレスター・ジョンの王国を探しに来たイエズス会の宣教師たちです。
英国人がヒマーチャルを「発見」したのは、シク教徒とグルカ族の戦争の後で、19世紀後半にシムラー、ダルハウジー、ダラムサラーに小英国が造られました。20世紀初頭には狭軌鉄道が建設され、一本はシムラー方面へ、もう一本は、カーングラー渓谷を貫くように敷かれました。
1948年ヒマーチャル・プラデーシュ州が形成され、大勢の農民が封建制度から解放されました。州としての地位は1971年に確立されています。
手つかずの自然から、イギリス統治時代の趣を残す町並みまで、魅力沢山のヒマーチャル・プラデーシュ州。
今回ご紹介するのは、フラワーウォッチングにおすすめのサチ・パスです。
チャンバ渓谷からパンギ渓谷へ抜けるサチ・パス(4,420m)。このルートは、冬は深い雪に覆われるため6月末から10月頃までしかオープンしません。
3,000m以上の山の斜面では放牧キャンプで暮すグジャールの人々との出会いもあります。
3,500m付近からはブルーポピーをはじめとする高山植物の花が現れ始めます。
ここで通過するパンギ渓谷はピール・パンジャール山脈とザンスカール山脈に挟まれた谷で、ヒマーチャル・プラデーシュ州の中で最も“閉ざされた谷”です。積雪のため、1年の半分以上が他の地域から隔絶されます。
バイラガルから出発し、つづら折りの道をぐんぐん進んでいきます。
峠付近は7月でも雪が残ります。
途中、ブルーポピーをたくさん見つけることができました。
そして峠付近では一面のお花畑。
インド人観光客もおらず、まさに『手つかずの自然』というのにふさわしい場所です。
こんな道も通ります。
簡単には難しいですが、アドベンチャールートがお好きな方にはおすすめの場所です。