天空のチベット ラダック第4弾: チベット仏教の世界とマンダラ

ジュレー! 西遊インディアです。

 

チェムレ僧院。山頂には僧院、山腹には僧房が立ち並んでいます

前回、ラダックの信仰に絡めて仏教美術のお話をいたしました。ラダックでは、美しい壁画、また僧院そのものなど、まだ現存しており今も行けば直接見ることが叶います。ですが、チベット仏教の本流の地である中国側チベットでは、中華人民共和国による文化大革命で僧院などの大半が破壊されてしまいました。ラダックは、ラダック王国という独立した仏教国であったことと、インドに帰属した後しばらくは外国人の立ち入りが禁止されていたため、チベット本土よりも建造物や仏教美術において、伝統的なチベット文化が色濃く残っています。
チベット仏教の中心地の一つとされるラダックは「小チベット」と称され、特に曼荼羅美術の集積が素晴らしいことで有名で、チベットを凌ぐとも言われています。

 

ぜひ、ラダックに訪問の際は僧院も訪問してみてください。何かの行事の際や、時に鍵番が不在で小さなお堂だと中に入れないこともありますが、だいたいは、快く迎えてくれます。

 

お勉強の時間を覗かせてくれました(カルーシャ僧院にて)
勤行の時間。見学させてもらえます。
こちらはティクセ僧院での早朝の勤行の様子

 

チベット仏教の僧院へ行くと、堂内にて壁に描かれた曼荼羅(マンダラ)や仏に目がいくと思います。

 

マンダラとは、仏教の中でも特に密教で考えられている世界や宇宙の構造を、絵柄で表したもので、真理に近づくための道しるべです。

 

金剛界曼荼羅(ツァツァプリ僧院)

金剛界曼荼羅の「金剛」とはダイヤモンドのことです。中央に座す、大日如来の智慧(ちえ)がダイヤモンドのように固く、何ものにも屈しないということを表しています。大日如来の周囲には4人の如来が位置しています。そして金剛杵が周囲を囲み、教えを守っています。

 

 


如来とは…

如来とは、一度悟りをひらいた存在を意味しています。
代表的な如来は「釈迦如来」と金剛界曼荼羅に描かれる「五仏」、そのほかお薬の壺をもった薬師如来などです。

 

<五仏>

大日(だいにち)如来   中央に配置/身体は白色
法を説くことを象徴する「転法輪印」を組む
阿閦(あしゅく)如来  東に配置/身体は青色
地に右手をつけた「触地印」を組む
宝生(ほうしょう)如来 南に配置/身体は黄色
掌を見せた「与願印」を組む
阿弥陀(あみだ)如来   西に配置/身体は赤色
深い瞑想の状態を表現する「禅定印」を組む
不空成就(ふくうじょうじゅ)如来  北に配置/身体は緑色
全ての恐れを取り除く象徴「施無畏印」を組む

 


 

僧は、頭のなかで曼荼羅を想像し、教えを自分のなかに授けていきます。

 

曼荼羅は、壁や紙に描かれたものや刺繍など手法は様々です。チベットで作られる曼荼羅は、大きく分けて砂で描く砂曼荼羅(ドゥルツォン)、布に描く絵曼荼羅(レーディ)、木や宝石で作られる立体曼荼羅(ローラン)の三種類に分類されます。

 

金剛界五仏の立体曼荼羅(ラマユル僧院)

なかでも砂曼荼羅は、寺院や団体が何らかの発願をし、その成就を願って執り行なう儀式の中で作成されます(お祭りに合わせて制作されることも多いです)。製作期間はおよそ1週間で、僧侶たちが鮮やかな色彩に着色した砂を用い、木製の壇上に描いていきます。

 

完成した砂曼荼羅
砂曼荼羅の作成の様子

銅でできた細長い漏斗に色のついた砂を入れ、その漏斗をこする振動で砂を壇上に落としていきます。以前は色のついた宝石などを使っていたましたが、現在は着色した大理石を粉にして使用するそうです。砂曼荼羅を描けるようになるまでには、約5年もの訓練が必要とのことです。

 

精魂込めて作成した美しい砂曼荼羅ですが、完成後はすぐに壊されてしまいます。砂に戻った曼荼羅の祈りは、川に流れ世界にその祈りを広げることになるのです。曼荼羅を作ることが目的なのではなく、川に流すまでの一連の流れには、永久不変なものなどないという諸行無常の教えが根底にあります。

 

 

ラダックシリーズ第5弾へと続きます。
第5弾:上ラダックの観光