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アキチョウジ(秋丁字:sodon longitubus)

本日は「屋久島・黒味岳の魅力をご紹介」の予定でした、先に11月初旬に観察した花「アキチョウジ(秋丁字:sodon longitubus)」をご紹介します。

 

アキチョウジ(秋丁字:sodon longitubus)

 

被子植物 双子葉類
学名:Sodon longitubus
別名:キリツボ
科名:シソ科(Lamiaceae)
属名:ヤマハッカ属(Isodon)

 

アキチョウジ(秋丁字)は、11月初旬に同行させていただいた「原生林・芦生の森と京都の奥座敷・鞍馬と貴船」で京都大学・芦生研究林(芦生の森)へ訪れた際に観察したのですが、最初に見た際は形状からタツナミソウ(シソ科タツナミソウ属)の仲間か、屋久島で観察したヤクシマママコナ(ハマウツボ科ママコナ属)の仲間と思っていました。
現地ガイドさんより「アキチョウジ(秋丁字)」という名を教えていただき、初めて聞く名前の花だったので、後々調べてみると非常に興味深い花でした。

 

アキチョウジ(秋丁字)は、シソ科ヤマハッカ属の多年草で、本州では岐阜県以西、さらには四国、九州に分布し、主に山地の半日陰の自生する日本固有の花です。
草丈は比較的大きく70~100cmで直立し、茎には非常に短い細毛が確認できます。
葉は長さ10cmほどの狭卵形で対生し、少し長めの葉柄があり、先端が尖り、縁には浅い鋸歯も確認できる形状です。また、葉の裏面には若干の細毛も確認できます。

 

花期は9~10月。茎先や上部の葉腋から集散花序(しゅうさん:主軸の先端に花がつき、少し下から横枝が出てその先に花がつく花序)で花を付け、花柄の先に青紫色の花を多数咲かせます。
花の付き方がユニークで、上の写真でもご覧いただけるとおり、同じ方向に偏った花穂を作ります。
花の長さは2cm弱、筒状の部分が長いのが特徴です。先端部は上唇部と下唇部に分かれ、上唇は浅く4裂、下唇は先をキュッと摘まんだような形状(舟形、ボート形と表記する資料もあり)をして前に突き出た印象です。
花冠の中の雄しべと雌しべを包んだ焼売(しゅうまい)のようなイメージの形状です。
和名の「秋丁字」は、秋に「丁」の字のような形の花を咲かせることが由来のようです。

 

非常に興味深かった点は、アキチョウジは「霜柱をつくる植物」として紹介されていた点です。
いつも花のことを色々と調べる際の参考資料『山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花』(山と渓谷社)にて紹介されていましたので、ご紹介します。

 

<霜柱をつくる植物>
初冬のころ、枯れ始めた茎の根元から霜柱のような氷柱が立つ植物があり、その代表的なものが「シモバシラ(Keiskea japonica)」です。
シモバシラ(シソ科シモバシラ属)以外にも、氷の花を咲かせるものがいくつかあり、シソ科のものが多いようですが、キク科にも氷の花ができるものがあるようです。

 

<氷の花が咲くメカニズム>(原文のママ)
冬になって外気が氷点下になり、地上部が枯れても、地中はまだ暖かく、根は生きている。そこで、水を吸い上げる力の強いものはまだまだ水を吸い上げる。茎の中の導管を上がってきた水は、茎の途中などから染み出し、これが外気に触れて凍り始める。そして、茎がどんどん破れ広がるとともに、氷の花も次第に大きくなる。最後は導管も破れてしまい、また地中も凍って水を上げることができなくなり、氷の花(霜柱)は見られなくなってしまう。

 

山渓ハンディ図鑑で紹介されていた霜柱をつくる植物には、シモバシラ(シソ科シモバシラ属)、アキチョウジ(シソ科ヤマハッカ属)以外にもアズマヤマアザミ(キク科アザミ属)、カシワバハグマ(キク科コウヤボウキ属)、カメバヒキオコシ(シソ科シモバシラ属)、シロヨメナ(キク科シオン属)が紹介されていました。
別の資料では、何度も氷結を繰り返すと茎が裂けてボロボロになり、小さいものしかできなくなるとあり、大きめの氷の花(霜柱)を観察できる期間はわずかのようです。

是非一度、氷の花の観察も楽しんでみたいものです。

 

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ムシャリンドウ(武者竜胆・武佐竜胆:Dracocephalum argunense)

我が家の近所で春になると咲くツルニチニチソウがたくさん咲き始めました。我が家の近所も本格的に春の到来です。
現在、7月末~8月にかけて、屋久島の植生の垂直分布を知る旅、屋久島の高山植物観察ツアーを造成しております。まもなく発表する予定にしておりますので、お楽しみに。

 

本日は「ムシャリンドウ(武者竜胆・武佐竜胆:Dracocephalum argunense)」をご紹介します。

 

ムシャリンドウ(武者竜胆・武佐竜胆:Dracocephalum argunense)

 

被子植物 双子葉類
学名:Dracocephalum argunense
科名:シソ科(Lamiaceae)
属名:ムシャリンドウ属(Dracocephalum)

 

ムシャリンドウ(武者竜胆・武佐竜胆)という名ですが、リンドウらしくない形状をしていると思われた方もいるのではないでしょうか。
ムシャリンドウはリンドウ科ではなく、シソ科ムシャリンドウ属に属する多年草です。
和名の「武佐竜胆」という名から、滋賀県近江八幡市武佐町で発見された種である説もありますが、西日本には自生しておらず、国内では中部地方以北、山地の日当たりのよい草原に自生し、北海道では海岸線などでも観察することができます。
もう1つの和名「武者竜胆」は、造園用語で「根元から数本の幹が立っている状態」を「武者立ち」といい、この言葉が和名の由来という説もあります。
海外では東北アジアにも広く分布します。

 

草丈は15~40㎝で直立し、茎が赤褐色で4稜形(四角と表記する資料もあります)、白い細毛が下向きに生えており、数本が株立ちします。まさに「武者立ち」と言えます。
葉は2-5cmの広線形で、1-3mmのごく短い柄が確認できる部分もありますが、無柄な部分もあります。少し厚みがあり、光沢も少し確認することができ、葉の縁が裏側に向けて巻いているのが特徴的です。

 

花期は6~7月。茎頂に短い花序を作り、青紫色の唇状の長さ3~3.5㎝の花を横向きに数個咲かせます。
花の基部は細い印象ですが、筒状の先端の方で急に膨らんでいる形状です。花の外側全体に毛が生えているのも確認できます。
花の先端は2唇形で、上唇は先端が下向きに曲がり浅く2裂します(先端が凹むという資料もあります)。
下唇部分は3裂し、中央の裂片が大きく、斑があって前に伸びます。中央部分が大きく、側裂片は小さく襟状のため、3裂している点はルーペを片手にしっかりと観察する必要があります。
花を支える長さ1.2-1.5cmの萼片は淡赤紫色で先が鋭く尖っているのが特徴です。

 

同じシソ科のラショウモンカズラ(ラショウモンカズラ属)とそっくりな形状、色合いをしていますが、ラショウモンカズラの花は、特に下唇部分が青紫色ではなく、全体的に白色に近い色をしており、より一層斑点部分が目立つ印象です。

 

群生すると草原を青紫色に染め、見事な風景が広がります。また、北海道の海岸線沿いに群生しても印象的な風景が広がります。
花の先端の2唇形部分、特に下唇部分に注目して観察しても興味深い花なので、是非次回は1つの花を注目して観察してみてください。

 

ムシャリンドウ(武者竜胆・武佐竜胆:Dracocephalum argunense)

 

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