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マウンテン・レディース・スリッパー(Cypripedium montanum)

8月3日、大阪の『なにわ淀川花火大会』が行われました。
今シーズンも嫁さんと我が家のベランダから次々と上がる花火を鑑賞することができました。ベランダや廊下から同じマンションの住民の方々が鑑賞しており、最後の大花火が終わった時、マンション中に拍手喝采が広がったのが印象的で、1つの夏の風物詩が終わったと感じた瞬間でもありました。

 

本日は『マウンテン・レディース・スリッパー』(Cypripedium montanum)をご紹介します。6月に同行させていただいたカナディアンロッキー・ハイキングにおいて、黄色いアツモリソウ『イエロー・レディース・スリッパー』の観察を楽しんでいた際にその傍らに咲いていた、個人的に最も衝撃を受けた花の1つでした。

 

マウンテン・レディース・スリッパー(Cypripedium montanum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium montanum
英名:マウンテン・レディース・スリッパー(Mountain Lady’s Slipper)
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

今回ご紹介する『マウンテン・レディース・スリッパー』(Cypripedium montanum)は、カナダでは、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州、サスカチュワン州、アメリカ合衆国ではアラスカ州やカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州、アイダホ州、モンタナ州などに分布します。
ただ、先日ご紹介したイエロー・レディース・スリッパー(Cypripedium parviflorum)に比べて個体数は少ないそうです。私が6月に訪れたアルバータ州やブリティッシュ・コロンビア州でも絶滅を危惧されている花の1つで個体の保全活動に努めているという資料もありました。

 

マウンテン・レディース・スリッパーは、林床内の湿った場所に自生し、草丈は10~40cmほど。イエロー・レディース・スリッパーに比べて大きな大差はありませんが、ほんの少し草丈が高かった印象です(観察した個体に限ったことかな?)。

 

葉はイエロー・レディース・スリッパー同様、披針形の葉が4~5枚の互生して付けています。

 

花期はカナディアンロッキー周辺では標高によって差はありますが、7月頃。茎の頂部に1~3つほど花をつけるという資料が多かったですが、私たちが観察した個体は花を1つ付けたものだけでした。

 

袋状の唇弁は3cm弱、白く淡い色合いの唇弁と帽子のひさしのように垂れ下がる鮮やかな黄色の背萼片との色の組み合わせが何とも言えない魅力を感じさせるものでした。袋状の唇弁をよく見ると「赤い斑点」が・・・これも酋長の娘のやさしさの跡(血の跡)なのかな?

 

袋状の唇弁の両脇に垂れ下がるように伸びる部分は側花弁は、イエロー・レディース・スリッパーと同じくひねりが入る特徴的なものでした。

 

6月に実施した『花咲くカナディアンロッキー・ハイキング 黄色いグレーシャー・リリーをもとめて』のツアー造成をするにあたり、グレーシャー・リリーを観察したいという想いと同時に「白いアツモリソウ=マウンテン・レディース・スリッパー」を観察したいという想いもありました。ただ、どの資料をみても「個体数が少ない」という文言が多く、ツアーページ内で紹介することを断念・・・いつしかその想いを胸にしまい込んでいました。
それだけに今回のマウンテン・レディース・スリッパーを見つけた時の衝撃と感動・・・添乗員という立場を忘れ、夢中になって観察・撮影を楽しませていただきました。

 

そう言えば『レディース・スリッパー』って名のついた花・・・どこかで聞いたことがある方もいらっしゃるのでは??
私の大好きな『最果ての地』にも・・・。そろそろお時間が来たようなので、この続きは次回。

 

マウンテン・レディース・スリッパ―(ラン科アツモリソウ属)
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イエロー・レディース・スリッパー(Cypripedium parviflorum)

気付けばパリ・オリンピックが開幕しました。東京オリンピックか3年(延期になったため)が経過していたのかと思うと、時が過ぎるのが早い、早すぎる気もします。

 

本日は、カナディアンロッキーで観察した黄色いアツモリソウ『イエロー・レディース・スリッパー』(Cypripedium parviflorum)をご紹介します。

 

イエロー・レディース・スリッパー(Cypripedium parviflorum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium parviflorum
英名:イエロー・レディース・スリッパー(Yellow Lady’s Slipper)
現地名:婦人のスリッパ―、モカシン
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

みなさん、「アツモリソウ」と言えば何色をイメージされるでしょうか。
ブログにてこれまで紹介したアツモリソウは白色の『レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)』と紅色の『ホテイアツモリソウ(布袋敦盛草)』の2種、今回は3種目の黄色いアツモリソウをご紹介します。

 

今回ご紹介する『イエロー・レディース・スリッパー』(Cypripedium parviflorum)は、カナダのユーコン州~ブリティッシュコロンビアを経て東部海岸地帯~ニューファンドランドまで、アメリカはアラスカ南東部~ワシントン州、オレゴン州を経て東部海岸まで、南はルイジアナ州~テキサス州、ニューメキシコ州まで、アリゾナ州にも分布しているようで、かなり広範囲に分布します。また、分布が広いため個体差が幅広く、草丈や花色、形に様々な変化がでるようです。
今回はカナダ・アルバータ州のバンフ国立公園、ブリティッシュ・コロンビア州のヨーホー国立公園で観察することができました。

 

一般的に花期は5~7月。林床内の湿った場所などを好み自生し、草丈は10~30cmほど。ある資料には茎や葉に微毛が確認できるとありましたが、花の撮影に夢中になり過ぎて確認することができませんでした。来シーズンの宿題です。

 

その微毛が確認できるという葉の長さ5~10cmほどの披針形、4枚前後の葉を互生して付けていましたが、日本で観察したレブンアツモリソウ、サハリン南部で観察したホテイアツモリソウの若干丸みのある楕円形の葉に比べて、シュッとした印象を持ちました。また、花のすぐ後ろに苞葉が1枚付いています。

 

茎の頂部にアツモリソウの特徴である袋状(唇弁)の花を1つ付けます。
この種の資料にも「稀に2つ付ける」とありましたが、今回観察したバンフ国立公園やヨーホー国立公園では、2つ付けた個体は確認できませんでした。

 

アツモリソウ最大の特徴である花の袋状の部分(唇弁)は3cm弱とレブンアツモリソウに比べて一回りも二回りも小さい印象。ここまで「黄色いアツモリソウ」と紹介していましたが、色合いは先日紹介した『グレーシャー・リリー』と同様、レモンイエローという表現がぴったりの色合いです。

 

袋状の唇弁の両脇に垂れ下がるように伸びる部分は側花弁、2枚の側花弁の真ん中から帽子のひさしのように垂れ下がるのが背萼片。レブンアツモリソウやホテイアツモリソウの側花弁や背萼片は袋状の唇弁とほぼ同色ですが、このイエロー・レディース・スリッパーの側花弁は唇弁と全く色合いが異なり、薄黄緑色~赤茶~茶色の色合いとなり、色合い以上にユニークだったのが、側花弁がらせん状に捻りが入っていたことです。

 

もう一度イエロー・レディース・スリッパーの写真をご覧ください。
袋状の唇弁に『赤い斑点』があるのが確認できませんか?この赤い斑点、現地では面白い言い伝えが残っていましたので、最後にご紹介します。

 

昔、ある先住民の酋長の娘が森で遊んでいたら、1匹のウサギが足に怪我を負い、涙を流して泣いていたそうです。
可愛そうに思った娘は、ウサギがこれ以上足を痛めないように彼女の穿いていた『モカシン』(バッファローの皮で作った靴)をあげたそうです。
その後、ウサギと別れた娘は集落へ戻ったのですが、ウサギにモカシンをあげて裸足になった娘の足の裏には擦り傷ができ、それでも集落を目指して森を歩き続ける中、あまりの痛さと疲労で森の中で倒れ、そのまま気を失ってしまいました。
しばらくして、小鳥がこの娘を見つけ、この心優しい娘を助けてくれるよう、偉大な森の精霊にお願いしました。
娘が目を覚ますと、木の幹に美しい黄色いモカシンが吊るされており、娘は血が出ている足にこのモカシンを履き、無事に集落へ戻ることができたそうです。
もうお気づきかと思いますが、イエロー・レディース・スリッパーの赤い斑点は、森の精霊からプレゼントされたモカシンを履いた心優しい娘の血の跡と言われています。

 

今回、ツアー前半のバンフ国立公園で観察でき、後半のヨーホー国立公園でも観察できました。後半のヨーホー国立公園でイエロー・レディース・スリッパーの観察に夢中になっていると、その傍らに! 何と・・・!?
そろそろお時間のようなので、この続きはまた次回。

 

イエロー・レディース・スリッパー(ラン科アツモリソウ属)
イエロー・レディース・スリッパー(ラン科アツモリソウ属)
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ユニフローラ・カルセオラリア(Calceolaria uniflora)

新年あけましておめでとうございます。
2019年も「世界の花だより」の更新を続けさせていただき、1つでも多く花の魅力を伝えられるよう、頑張っていきたいと思っております。
本年もよろしくお願いいたします。

 

2019年最初に紹介させていただくのは、私の大好きなパタゴニアの花、前回紹介させていただきました「ビフローラ・カルセオラリア(Calceolaria biflora)」と同じ仲間の「ユニフローラ・カルセオラリア(Calceolaria uniflora)」です。

 

ユニフローラ・カルセオラリア(Calceolaria uniflora)

被子植物 双子葉類
学名:Calceolaria uniflora(ユニフローラ・カルセオラリア)
和名:キンチャクソウ等 英名:Calceolaria darwinii(ダーウィンのスリッパ)
科名:ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)
属名:キンチャクソウ属(Calceolaria)

 

前回ご紹介した「ビフローラ・カルセオラリア(Calceolaria biflora)」と同じゴマノハグサ科のキンチャクソウです。
学名の「カルセオラリア(Calceolaria)」という名前は、ラテン語で小さな靴(スリッパ)を意味する「カルセオルス」という言葉に由来します。

 

こちらも丘陵地帯や、明るい草原地帯、乾燥した岩場など、至るところで自生しており、草丈は10~15㎝程度です。
一見グロテスクな色合いですが、ゆっくり眺めると色鮮やかなオレンジの小ぶりの花は、とても印象的な花です。

 

現地では、ビフローラ・カルセオラリア(トパトパ)が「女王のスリッパ(Lady’s slipper)」と呼ばれているのに対し、このユニフローラ・カルセオラリア(Calceolaria uniflora)は「ダーウィンのスリッパ(Calceolaria darwinii)」と呼ばれています。ダーウィンが1831年から1836年の間に発見したと言われているそうです。

 

パタゴニアの大地を訪れ、2つのキンチャクソウに出会うことができたら、それぞれの違いを観察してみてください。
可愛さから言えば「ビフローラ・カルセオラリア(トパトパ)」かもしれませんが、撮影などの面で引き寄せられるのは「ユニフローラ・カルセオラリア(ダーウィンのスリッパ)」かもしれません。どちらの方が引き寄せられるか・・・是非パタゴニアの大地で確認してみてください。

ビフローラ・カルセオラリア(トパトパ)
ユニフローラ・カルセオラリア(ダーウィンのスリッパ)

<ユニフローラ・カルセオラリア(ダーウィンのスリッパ)に出会えるツアー>
蒼き氷河の国 パタゴニア 10日間
世界の最果てパタゴニア 13日間
パタゴニア完全走破
パタゴニアを撮る
蒼き氷河パタゴニアと雨季のウユニ塩湖
パイネ&フィッツロイ山群展望 ゆったりパタゴニアハイキング
究極のパタゴニアトレッキング パイネWサーキットとフィッツロイ山群大展望

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トパトパ(Calceolaria biflora:ビフローラ・カルセオラリア)

2018年最後の投稿となります。
前回に引き続き、パタゴニアの花を紹介させていただだきます。

本日は、現地では「トパトパ」という名で呼ばれたり、また「LADY’S SLIPPER(女王のスリッパ)」とも呼ばれる可憐な花である「ビフローラ・カルセオラリア(Calceolaria biflora)」を紹介させていただきます。

現地名「トパトパ」
ビフローラ・カルセオラリア(Calceolaria biflora)

被子植物 双子葉類
学名:Calceolaria biflora(ビフローラ・カルセオラリア)
英名:Lady’s slipper 現地名:トパトパ 和名:キンチャクソウ等
科名:ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)  属名:キンチャクソウ属(Calceolaria)

 

パタゴニアの丘陵地帯や、明るい草原地帯、乾燥した岩場など、至るところで自生しており、草原一面に群生しているという訳ではありませんが、その色合いからハイキングなどを楽しんでいると非常に目立つ花の1つです。

その色合いも心惹かれるポイントですが、花の形状も可愛く、思わずゆっくりと観察したくなる形状です。

 

花は、直径にして2~3㎝程度、草丈は20cm前後です。
丸みを帯びた蕾が割れると、属名のとおり、まさに「巾着袋」のような花を咲かせます。
花の時期は12~2月、パタゴニアのベストシーズンの間で観察できる花です。
私もパタゴニアを訪れると、このトパトパを探し、皆様と観察することが楽しみの1つになっています。

この花は、様々な呼び名がありますが、私個人的には「トパトパ」という名前で憶えていただきたいです。

風の大地・パタゴニアの地で可憐な花を咲かせる色鮮やかな花「トパトパ」が、皆様の訪れを待っているかもしれません。

 

<トパトパ(Calceolaria biflora)に出会えるツアー>
蒼き氷河の国 パタゴニア 10日間
世界の最果てパタゴニア 13日間
パタゴニア完全走破
パタゴニアを撮る
蒼き氷河パタゴニアと雨季のウユニ塩湖
パイネ&フィッツロイ山群展望 ゆったりパタゴニアハイキング
究極のパタゴニアトレッキング パイネWサーキットとフィッツロイ山群大展望