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ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切:Hypericum kiusianum var. yakusimense)

本日も屋久島の高山植物の1つ「ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切:Hypericum kiusianum var. yakusimense)」をご紹介します。

 

ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切:Hypericum kiusianum var. yakusimense)

 

被子植物 双子葉類
学名:Hypericum kiusianum var. yakusimense
科名:オトギリソウ科(Guttiferae)
属名:オトギリソウ属(Hypericum)

 

ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切)は、屋久島の標高1,200m以上の高地、高層湿原などに自生する屋久島の固有変種で、鹿児島県指定の絶滅危惧種に指定されています。私も8月に屋久島の黒味岳を目指す道中にある花之江河(標高1,630m)で観察することができました。
資料によっては九州や四国にも自生するとありましたが、ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切)は、基本種のナガサキオトギリ(長崎弟切:四国と九州の山地に自生)が矮小化した種とされています。

 

詳細をご紹介する前に、葉や花弁に見られる「明点」「黒点」について、先にご紹介します。
◇黒点:黒く見える点。他の植物にも見られます。
◇明点:葉を透かすと光が透けて見える点。色素が抜けている部分。

 

草丈は茎が倒伏していることもあり3~10cmと低く、葉は狭長楕円形で長さは0.5cmほどで光沢などは見られません。
0.5cmと小さな葉には明点と黒点が確認できます。上写真の右上にある葉で明点は確認できます。また、黒点は判りずらいですが、よく見ると縁に黒点が確認できます。

 

花期は6~9月(私も8月末に観察)。茎の先端部に鮮やかな黄色い花を1~3個ほど咲かせます。花弁は倒披針形で5枚で、大きさは直径で1cmほどと小さく非常に可愛らしい印象の花です。花弁にも葉と同様に明線と黒点が確認できます。
ただ、葉の明点と黒点、花弁の明線と黒点・・・花が小さすぎて確認するにはルーペが必要です。
花の中央から花弁とほぼ同じ長さ、同色の雄しべが多数伸びており、先端の葯も花弁や雄しべと同色でした。さらに中央には0.1~0.2cmほどの大きさの子房が確認でき、先端が少し赤みを帯びた柱頭も数本確認できます。

 

オトギリソウ科の花は昔から薬草として使われており、葉や茎葉止血薬として使われ、生薬として知られる小連翹(しょうれんぎょう)は花や実がついたままの茎葉は刈り取って日干し乾燥させたものを言います。

 

和名につく「弟切草」。恐ろしい和名ですが、これには言い伝え(諸説あり)が残されています。
平安時代の頃、オトギリソウを原料とした秘伝の薬(鷹の傷の妙薬という説もあります)があったそうですが、その秘伝の薬の秘密を弟が恋人に漏らしたため、兄が激怒して弟を切り殺したという伝説が和名の由来とされています。因みに、弟を切り殺した際に飛び散った血がオトギリソウに見られる黒点と言われています。
そんなオトギリソウに付けれた花言葉は「怨念」「迷信」です。

 

オトギリソウの和名の由来は恐ろしいものですが、実際に花を観察すると、そのような言い伝えは俄に信じがたい非常に可憐で美しく咲く花です。
上の写真は可能な限り大きくトリミングした写真ですが、下の写真(上と同じ花の写真)をご覧いただくと、周囲にミズゴケ(オオミズゴケ)が自生しているのが判るかと思いますが、大きさはさほど変わらず・・・どれだけ小さな花だったのか想像いただけると思います。
夏に屋久島で登山を楽しまれる際、足元に注意しながらヤクシマコオトギリの花を探してみてください。

 

ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切)と周りのミズゴケ、大きさを比較してみてください

 

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