先日「日本で最も早い紅葉を観る!大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草」に同行させていただき、私自身も数十年ぶりに訪れた大雪山国立公園の大自然をお客様と共に満喫してきました。
本日は、能取湖やサロマ湖で観察した「アッケシソウ(サンゴソウ)」をご紹介します。
被子植物 双子葉類
学名:Salicornia europea
科名:ヒユ科(Amaranthaceae)/アカザ科(Chenopodiaceae)
属名:アッケシソウ属(Salicornia)
別名:サンゴソウ
海外名:シーアスパラガス(Sea Asparagus)、シービーンズ(Sea beans)、
シーピクルス(Sea pickles)、サムファイアー(Samphire)、
パスピエール(仏:Passe Pierre)
アッケシソウ(Salicornia europea)は、1891年(明治24年)、厚岸湖の牡蠣島で初めて発見・採取され、その後、発見・採取された厚岸湖の名をとり「アッケシソウ」と名付けられました。
北海道を代表する塩生植物の1つ。北海道東部に分布し、本州では瀬戸内海沿岸や東京の埋め立て地、岩手県や宮城県での発見例もあります。
アッケシソウ(Salicornia europea)は、ヒユ科の一年草。資料によってはアガサ科と表記されているものもあります。アガサ科は独立の科として扱っている資料も多いようですが、APG植物分類体系ではヒユ科の中に含まれ、ヒユ科のアカザ亜科が設けられているものもあるようです。
皆さんは「塩性植物」というもの、言葉をご存知でしょうか?
塩性植物とは、一言で言えば「高塩濃度に耐えうる種子植物」です。
海潮の満ち引きによって定期的に冠水する湿地帯や干潟、河口や湖口の汽水帯など、水の影響がある地域で生育します。海外では、塩湖、砂漠の湿地などでも生育し、塩害で放棄された耕作地にも生育するという資料もありました。
通常、植物は台風の影響などで海水が吹き込んでしまうと植物が枯れるという印象、塩害と考えてしまいますが、塩性植物という高濃度の海水にも負けず生育する植物もあるという点は非常に興味深いものです。ちなみに、マングローブも塩生植物に分類されます。
アッケシソウの学名「Salicornia europea」は、ラテン語の「Sal(塩)」と「cornu(角笛)」の組み合わせのようです。
草丈は10~30㎝で多肉質、茎は円柱型で直立します。
真っ赤に群生するアッケシソウの群落地の写真だけでは想像は付かないかもしれませんが、しっかり観察すると円柱状の茎には節があり、その節から茎と同じような円柱形の枝が対生します。
アッケシソウと言えば、真っ赤な色合いのイメージが強いですが、アッケシソウの茎は濃緑色。
5月頃から緑色の芽を発芽し、夏~秋の間に20~30㎝までに成長し、秋になると茎全体が徐々に赤く色付いてきます。アッケシソウの色素は、同じヒユ科に属するテンサイ(サトウダイコン、ビートのこと)の根で合成される色素と同種のベタシアニンとのことです。
茎と枝が多肉質で節があり、秋になると赤く色付く、その姿が宝石サンゴを思わせることが「サンゴソウ」と呼ばれる所以です。
アッケシソウは花も咲かせます・
花期は真っ赤に色付く前、8~9月。節の境目に3個ずつ、非常に小さな白い花を咲かせます。私も写真でしか見たことがありませんが、言われなければ判らないくらい小さく、咲いているというより「数㎜の粒が飛び出している」ような見た目でしたが、一度、虫メガネを持参して観察してみたいものです。
ヨーロッパなどでは野菜として販売されており、私もフランス・パリのマーケットで見たことがあります。さっと塩ゆでしてサラダとして食することが多いようで、最近では日本でも販売されているそうです。海外では、シーアスパラガス(Sea Asparagus)、シービーンズ(Sea beans)、シーピクルス(Sea pickles)、サムファイアー(Samphire)、パスピエール(仏:Passe Pierre)など、呼び名は様々です。
アッケシソウは、環境庁のレッドデータブックでは絶滅危惧IB類に分類されています。
環境庁のレッドデータブックのHPによると、かつて本州の宮城県、四国の愛媛県や徳島県にも生育が確認されていたが、海岸開発が主原因で減少、絶滅してしまったとのことです。
初めて発見・採取された厚岸湖・牡蠣島でも地形が変化し、干潮時でも水没している状況になり、回復が見込めないことから平成6年に天然記念物指定が解除されたそうです。
そのようなアッケシソウを後世に残そうと厚岸町教育委員会文化財係が中心となり試験栽培地の造成を実施したり保護・増殖に取り組んできたそうです。
2016年からは、厚岸町海事記念館の前庭のプランターで土質や肥料などの条件を変えて試験栽培を行っているそうです。
厚岸町海事記念館のHPに保護育成活動が随時更新されており、観察日記のようで非常に面白いので、是非ご覧ください。