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イッスンキンカ(一寸金花:Solidago minutissima)

本日は「イッスンキンカ(一寸金花:Solidago minutissima)」をご紹介します。

 

イッスンキンカ(一寸金花:Solidago minutissima)

 

被子植物 双子葉類
学名:Solidago minutissima
別名:屋久島一寸金花
科名:キク科(Asteraceae)
属名:アキノキリンソウ属(Solidago)

 

イッスンキンカ(一寸金花)は、屋久島のみに自生するアキノキリンソウ(秋の麒麟草:Solidago virgaurea subsp. asiatica)の近縁種です。
森林限界を越える標高1,600m以上、岩場で少し湿った場所で自生します。私も花之江河を越え、黒味岳山頂を目指して森林限界を越えたあたり、さらには黒味岳山頂でも観察することができました。

 

草丈は3~5cmと低く、和名の「一寸(=3.03cm)」はこの草丈の小ささが由来とされています。茎には短毛が確認でき、茎の上部で分枝します。
アキノキリンソウ(秋の麒麟草)は草丈が30~100cmとなりますが、近縁種という割に草丈には大きな差があります。そのため、イッスンキンカはアキノキリンソウの極小型種と紹介されています。これまでも何度かご紹介してきた屋久島の植生の矮小化を表す例ですが、それにしても10~30倍という大きさの違いがあるのは驚きです。
葉は長楕円状披針形で長さは1~2cmほどと小さく、ほんの少し光沢が確認できるものもあります。

 

花期は8~9月。茎の先端に直径1cm弱の鮮やかな黄色い頭花を1~5輪を咲かせる頭状花序です。1つ1つの頭花をご覧いただくと、中央部に筒状花(つつじょうか:花弁が筒状になったもののこと)が密集しており、花弁のように広がっている舌状花(ぜつじょうか:基部の構造は筒状花と同じで、花弁の先端が片方に大きく伸びて広がっているもの)が確認できます。
上写真の下部に花が開く前の状態のものが確認できますが、筒状花が密集している構造が判りやすいかと思います。

 

■頭状花序(とうじょうかじょ)
タンポポをはじめとするキク科の花序は多数の花が集まってまるで1個の花のように見える花序。頭状花序を構成する一つ一つの花のことを「小花」、一つの花のように見える花序のことを「頭花」とも呼びます。
キク科の小花には、花弁が筒状に融合した筒状花(管状花)と舌状に広がった舌状花の2種類があります。

 

ここ1ヶ月、8月の屋久島・黒味岳フラワートレッキングで観察した高山植物、花をご紹介してきました。屋久島の花の矮小化も非常に興味深いものですが、植生全体も非常に興味深いものです。季節を変えて黒味岳へ訪れると違った高山植物、花に出会えます。
是非一度、屋久島・黒味岳を訪れてみてください。
次回、少し花のご紹介から外れ、屋久島・黒味岳の魅力をご紹介します。

 

<冬から春 オススメのツアー>
12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン

 

2月14日出発は催行間近!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

※間もなく催行!!
冬の八甲田山の樹氷・奥入瀬渓流の氷瀑・男鹿の夕景を撮る
※東北の冬景色の撮影と秘湯の湯を楽しむ旅
※撮影をされない方も、東北の冬風景と名湯を楽しめます

 

静岡の美景めぐり 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ
※伊豆半島ジオパークから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る
※干潮時には象島まで砂州が出現する「堂ヶ島トンボロ現象」

 

<春の花の観察ツアー>
花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間
※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

※5月1日出発 まもなく催行!
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

※4月29日出発 まもなく催行!
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

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ツクシゼリ(筑紫芹:Angelica longeradiata)

ここ1ヶ月、春の花の観察ツアーの造成に励んでいたため、花の写真をたくさん見る機会がありました。そのため、春の花がとても恋しくなってきました。少々気が早いかもしれませんが、早く暖かくなってくれないかと思う日々が続いています。

 

本日は「ツクシゼリ(筑紫芹:Angelica longeradiata)」をご紹介します。

 

ツクシゼリ(筑紫芹:Angelica longeradiata)

 

被子植物 双子葉類
学名:Angelica longeradiata
科名:セリ科(Apiaceae)
属名:シシウド属(Angelica)

 

ツクシゼリ(筑紫芹)は、本州の岡山以南から九州にかけて分布し、屋久島が南限と言われています。山地の岩礫地に自生する多年草です。私も8月に屋久島・黒味岳の山頂の岩場にて観察しました。

 

草丈は5~40cmと記載される資料があり、本州や九州本土では高さが20~40cmと背丈は高くなりますが、屋久島の植生は矮小化しているものが多く、背丈が本州や九州本土のものに比べてコンパクトになることが多いため、草丈の表記に差が生じる要因なのかもしれません。

 

葉は、草丈の下部に付け、2~3回3出羽状複葉、小葉は細裂します。葉は少し厚みがあり、若干の光沢も確認できます。葉柄は鞘状にふくらみが確認できるとのことでしたが・・・この点は次回の観察の際の宿題としたいと思います。

 

■羽状複葉:小葉が葉軸の左右に鳥の羽のように並んだもの
■2~3回三出羽状複葉:羽状複葉が集まって大きな羽状複葉を構成している場合、複葉の回数に合わせて 2回羽状複葉 、3回羽状複葉となる

 

花期は8~9月。複散形花序で小さな白い花を多数密集して咲きます。
花弁は5枚、ハート型のように見えますが、花弁の先端部だけが手前に反り返っているような不思議な形状です(先端だけ摘まんで手前にキュッと引っ張ったような)。また、花弁の中央部が淡いピンク色が帯びている個体も多く確認できました。
果実は楕円形で4~5mmほど。シシウド属は羽根の付いた種子が風で飛散される特徴がありますが、ツクシセリの両翼は少し狭いとされています。

 

■複散形花序:花序軸の頂端に,ほぼ同じ長さの花柄をもつ多数の花が放射状についている花序

 

屋久島では、ツクシゼリの屋久島固有変種であるヤクシマツクシゼリ(屋久島筑紫芹)があり、標準和名をヒナボウフウ(雛防風)といいます。ただ、屋久島の高地に生えるツクシゼリの矮小化したものとして、同一とする考え方もあるようです。
屋久杉や苔類が大きく取り上げられる屋久島ですが、花・高山植物も本当に興味深いものが多い島です。

 

<冬から春 オススメのツアー>
12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン

 

2月21日出発は満席! 2月14日出発は催行間近!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
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冬の八甲田山の樹氷・奥入瀬渓流の氷瀑・男鹿の夕景を撮る
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静岡の美景めぐり 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ
※伊豆半島ジオパークから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る
※干潮時には象島まで砂州が出現する「堂ヶ島トンボロ現象」

 

<春の花の観察ツアー>
花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間
※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

※5月1日出発 まもなく催行!
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

※4月29日出発 まもなく催行!
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花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

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ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅:Tripetaleia paniculata f. paniculata)

先日、春の花の観察ツアーを3つの発表させていただき、さらに1つ追加で発表させていただきました。おかげさまでそれぞれのツアーをご検討いただけている方から問合せ、さらにはお申し込みもいただき、嬉しい限りです。
まだご覧いただいていない方は、このブログの最後に掲載しておりますので、是非ご覧ください。

 

本日は「ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅:Tripetaleia paniculata f. paniculata)」をご紹介します。

 

ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅:Tripetaleia paniculata f. paniculata)

 

被子植物 双子葉類
学名:Tripetaleia paniculata f. paniculata
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ホツツジ属(Elliottia)

 

ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅)は屋久島と名の付く花ですが、屋久島の固有種ではなく、四国、九州にも分布し、屋久島が南限となります。様々な資料を確認しましたが、ヤクシマと名の付く由来などを記載する資料はありませんでした。
比較的標高が高く、日当たりの良い岩場などに自生し、屋久島では標高1,500mを越えるエリアに自生します。私も黒味岳山頂の岩場でのんびりと景観を楽しんでいた際、足を踏み出すには躊躇するような場所に咲いているのを観察することができました。

 

ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅)は、高さ1~2mになるツツジ科の落葉低木。根元に近い下部から分枝し、上部で生い茂ります。
葉は赤褐色の枝先に輪生状(互生と記載する資料もあり)に4~5枚に付け、4~5cmほどの大きさの葉には光沢は確認できません。

 

花期は7~8月。花は葉の付いた枝先から赤褐色の枝が伸び、総状花序で5~10個の花を付けます。
3枚の花弁に見える花冠は深く3裂し、1cmほどの裂片が外に向けて反り返っている(丸まっている)のが印象的です。写真では少し判りづらいですが、裂片の先端が淡いピンク色であるのが、より花を可憐に見せる印象です。

 

さらに特徴的なのが中央から突き出す雌しべの花柱です。長さは反り返った裂片と同じく1cmほど、写真では全体が白色の花柱ですが、個体によっては根元の部分が淡いピンク色のものもありました。花柱の根元にはクリーム色の子房も確認できます。雄しべは子房の脇から花糸から数本伸びているのが確認できます。

 

ヤクシマの名を付けないホツツジ(穂躑躅)がありますが裂片の先端は尖っておらず、裂片の先端が若干尖っている印象のヤクシマホツツジと区別する資料も多いですが、2つを区別しない見解、図鑑などもあるようです。

 

今回は屋久島の黒味岳の山頂から一歩踏み出すには恐怖を感じる場所に咲いていたので、細かな部分を観察できませんでしたが、次に観察する機会があれば、反り返った裂片の先端部も確認してみたいと思います。

 

<冬から春 オススメのツアー>
12月コースは催行間近!
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2月21日出発は満席! 2月14日出発は催行間近!
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冬の八甲田山の樹氷・奥入瀬渓流の氷瀑・男鹿の夕景を撮る
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花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる
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ヤクシマノギラン(屋久島芒蘭:Metanarthecium luteoviride Maxim. var. nutans Masam)

海外ツアーの再開に向けて準備を進める中、国内ツアーの造成にも励んでいます。
私も春の花の観察を楽しむツアーをいくつか造成し、発表させていただきました。最後にツアーもご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

 

本日はヤクシマノギラン(屋久島芒蘭:Metanarthecium luteoviride Maxim. var. nutans Masam)をご紹介します。

 

ヤクシマノギラン(屋久島芒蘭:Metanarthecium luteoviride Maxim. var. nutans Masam)

 

被子植物 単子葉類
学名:Metanarthecium luteoviride Maxim. var. nutans Masam
科名:キンコウカ科(Nartheciaceae)
属名:ノギラン属(Metanarthecium)

 

ヤクシマノギラン(屋久島芒蘭)は、北海道から九州にかけて分布するノギラン(芒蘭)の屋久島固有変種で、鹿児島県絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
標高1,400mから森林限界を越えた登山道の脇や日当たりの良い岩場の割れ目などに自生します。私も黒味岳直下の岩場に張り付くように咲くヤクシマノギランを見つけましたが、手の届かない上の方に咲いていたので、目一杯カメラをズームし撮影しました。

 

以前はユリ科に含められていましたが、近年のAPG植物分類体系ではヤマノイモ目に置かれ、あまり聞き慣れないキンコウカ科(日本にはキンコウカ、ノギラン、ソクシンランなど)に分類されています。

 

草丈は10cmほど。屋久島以外に自生するノギランは草丈30cmほどに成長しますが、屋久島は日照時間が短く、雨風も強い厳しい環境であるため矮小化しています。
根出葉は倒披針形で10cm前後、少し光沢が見られ、手の届かない場所に咲いていたため確認はできませんでしたが、葉にさほど厚みはないように感じます。

 

花期は6~8月。花柄は長く総状花序となり、花茎の先端に淡い黄緑色で長さ6~8mm程度の花を咲かせます。
ある資料にノギランと同一とする考えもある中、花柄が短くて花序が穂状でなく総状になることでヤクシマノギランと分けるとありました。

 

今回は花のピークを過ぎてしまっていましたが、いつの日かキレイに咲くヤクシマノギランを観察してみたいものです。その際は手の届く場所に咲いていることを願います。

 

<冬から春 オススメのツアー>
※12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン
※活火山・桜島の徹底探求と大隅半島・薩摩半島から名峰・開聞岳を望む

 

※2月21日出発は満席! 2月14日出発は催行間近!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

干潮時には象島まで砂州が出現する「堂ヶ島トンボロ現象」
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※伊豆半島ジオパークから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る

 

<春の花の観察ツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる

※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感