本日は「キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪:Viola biflora)」をご紹介します。
被子植物 双子葉類
学名:Viola biflora
科名:スミレ科(Violaceae)
属名:スミレ属(Viola)
キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪)は、北海道、本州(中部地方以北:資料によっては紀伊半島以北)、四国山地、屋久島に分布し、の亜高山帯から高山帯の礫地や岩場、湿った草地や沢沿いの林縁などに自生します。海外でも北半球の冷温帯の広範囲に分布します。
今回の写真は、7月に中央アルプス・宝剣岳の麓に広がる千畳敷カールにて観察・撮影したものです。
草丈は5~15cmほど、葉は2~3cmで円形~腎円形。葉の縁には鋸歯となっており、表面に毛が見られ、表面は少し光沢が感じられます。
キバナノコマノツメの葉は先端は尖らないのが特徴です(資料によって葉の先端がやや凹むものも多いと紹介されています)。
同じ千畳敷カールには、近縁種であるクモマスミレ(雲間菫:Viola crassa var. alpicola)も自生しており、見た目が同じ「黄色いスミレ」で見分けるのが難しいですが、葉の先端が尖る点が見分けるポイントです。今回は残念ながらクモマスミレ(雲間菫)は咲いていなかったので、比較する写真は掲載できませんが、またの機会に。
花期は6~8月。茎頂に1.5~2cmほどの黄色い花を1つ、1つの株で多数の花を咲かせます。
花弁は5枚。上弁と側弁の計4枚がそり返るように上を向き、他のスミレ科の花に比べて細長い印象です。下向きの唇弁も細長い印象で、それぞれの花弁の基部からはスミレ科の特徴である暗紫色の筋があり、唇弁の筋は上弁や側弁と比べるとハッキリと確認ができます。距、萼片には毛はなく、距の部分は非常に短いので見落としてしまうほどです。
花の中央には、薄い黄緑色の花柱が確認でき、二股に分かれて左右に広がっているような形状です。
和名は「黄花の駒の爪」と書き、非常に印象的な名称です。名の由来は、葉の形状が馬の蹄に似ており、黄色の花を咲かせることから名付けられたそうです。
また、スミレ科の中でも和名に「スミレ」とつかない数少ない種とも紹介されています。
バナノコマノツメ(黄花の駒の爪)の変種として、下記2種があります。
◇ジョウエツキバナノコマノツメ(上越黄花の駒の爪)
→谷川岳や尾瀬・至仏山の蛇紋岩地に自生。葉に厚みがある。
◇アカイシキバナノコマノツメ(赤石黄花の駒の爪)
→南アルプスに自生。果実に毛がある。長野県でレッドリストの絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定。
また、キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪)には稀に白花種もあり、唇弁の基部に黄色が淡く残り、写真でしか見たことありませんが、印象的な色合いです。
黄花で白花・・・名前は???
フラワーハイキングなどを楽しんでいる際にスミレが咲いていても、さっと観察するだけで通過してしまう事が多いですが、今回は黄花のスミレで花弁の細長い形状が印象的だったため、足を止めってゆっくりと観察を楽しみました。
スミレの花の観察の際、花の形状などゆっくりと観察すると新たな発見があるので、是非ゆっくり観察してみてください。