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タチツボスミレ(立坪菫:Viola grypoceras)

先日「飛鳥の里から奈良最深部へ」のツアーへ同行させていただきました。各所で歴史、文化、自然に触れることができ、私も大阪に住んでいますが、これだけゆっくりと奈良を巡ったのは初めてで、新たな発見、再発見が多く、非常に充実したツアーでした。11月の紅葉シーズンにも設定しましたので、是非ご検討ください。

 

本日は、奈良県十津川村に位置する「玉置神社」をはじめ、各所で観察することができた「タチツボスミレ(立坪菫、学名:Viola grypoceras)」をご紹介します。

 

タチツボスミレ(立坪菫、学名:Viola grypoceras)

 

被子植物 双子葉類
学名:Viola grypoceras
科名:スミレ科(Violaceae)
属名:スミレ属(Viola)

 

日本にはスミレ属の種類は多く、タタチツボスミレ(立坪菫)も、スミレ科スミレ属のなかで身近に観察することのできるものの1つです。日本全国に分布し、海岸線や低山、亜高山帯の草地や落葉樹林の林床など、日当たりの良い場所に自生します。

草丈は10~30㎝で直立し、根生葉には細い葉柄があり、葉の形は心形で先が尖っているのが特徴です。葉には光沢は見られません。托葉(葉を包んでいたもので付け根の茎にあるもの)は櫛形となっています。

花期は3~5月。花弁が5枚で左右対称となり、上弁が2枚、側弁が2枚、唇弁が1枚からなります。直径1.5~2㎝ほどで、花の色は淡青~淡青紫色で、花弁の基部(花の中央部分)は白くなり、直立した茎が若干うつむき加減となり、その茎頂に花を1つ付けます。
距(花の後ろに突き出した中空の角状のもの:花弁や萼が変化したもの)は花色と同色で、タチツボスミレを見分ける時の目安となります。オオタチツボスミレは距の部分が白くなります。

 

各地で様々な種類が観察できます。また、それらが同時期に花を咲かせるので、見分けるのに一苦労し、総称して「スミレです」と案内してしまうことがどうしても多くなります。
花の色は淡青~淡青紫が一般的ですが、タチツボスミレは非常に変化が多く、私が花の事を調べる際に、拝見させてもらっている「野山の花たち -東北と関東甲信越の花-」のサイトでは、以下の品種の見分け方が紹介されていました。
■花色の白い・・シロバナタチツボスミレ
■花弁だけ白い・・オトメスミレ
■花弁がピンク・・サクラタチツボスミレ
■葉に赤い斑が入る・・アカフタチツボスミレ
■花柄等に毛がある・・・ケタチツボスミレ
■海岸性・・・シチトウスミレ
■渓流対応・・・ケイリュウタチツボスミレ
■豪雪地対応(亜高山)・・・ツルタチツボスミレ
■豪雪地対応(低山)・・・テリハタチツボスミレ
※これらすべてを見分けることができれば、花の観察も楽しくなるかも。

 

スミレやカタクリなどの植物の種子には、脂肪酸、アミノ酸、糖からなる化学物質を含むエライオソームという物質が付着しています。このエライオソームの誘引された蟻は、餌として種子を巣へ持ち帰り、エライオソームのみを食べ、種子は巣の近くに残します。スミレはこのようにして自生エリアを広げます。蟻とスミレの関係は切っても切れない関係です。
次回スミレの花を見つけた際、周辺で蟻が種子を運ぶ姿を探してみてください。

 

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カタクリ(片栗:Erythronium japonicum)

新年あけましておめでとうございます。
2021年も日本各地、世界各地の花をご紹介させていただきます。
一日でも早く安心して旅行が満喫できる日が、各地で花々の観察が楽しめる日が訪れることを願うばかりです。

 

2021年、最初の投稿は代表的な春の花の1つである「カタクリ(片栗:Erythronium japonicum)」をご紹介します。

 

カタクリ(片栗:Erythronium japonicum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Erythronium japonicum
古名:堅香子(カタカゴ)
(万葉集では、大伴家持がカタクリの花を「堅香子」と詠んでいます)
科名:ユリ科(Liliaceae)
属名:カタクリ属(Erythronium)

 

カタクリの花は、雪解けを迎えた落葉樹林の林床でニリンソウなどと共に真っ先に花を咲かせることから、春の花の代表格として紹介されます。
日本では、北海道から九州まで、特に中部地方以北に多く分布します。海外では、北東アジア(朝鮮半島、サハリン、千島列島)い分布します。
私もしばらくの間、カタクリの花は観察していませんが、三重県・鈴鹿山脈の藤原岳で観察したことを覚えています。
今回の写真は、弊社東京本社の堤が福島県三春にて観察したものです。

 

カタクリの鱗茎は長さ5~6㎝あり、毎年更新を続け、開花株では鱗茎は地中深くにもぐります。
カタクリの名の由来は、かつて鱗茎が栗の片割れに姿が似ていることから「片栗」と名付けられたといわれ、カタクリの鱗茎から抽出した澱粉が「片栗粉」です。

 

草丈は20~30㎝で直立しますが、花の大きさ(重さ)で前屈みのような状態のイメージです。
カタクリは淡い紫色の花弁の色合いが印象的ですが、葉の色合いも特徴的です。
葉は茎の根元に通常2枚(若い株は1枚のものも)つけ、長い柄を持ち、長楕円形で長さは6~10㎝と大きめです。
やや厚みを感、淡い緑色の葉には紫褐色のまだら模様が葉の色合いの印象を強いものにします。

 

カタクリは、種子で繁殖しますが、発芽から開花までは10年近くを要します。
花期は4~6月。茎頂に直径5㎝ほどの薄紫、淡いピンク色の花を1つ下向きに咲かせ、稀に白い花を咲かせる個体もあり、シロバナカタクリ(Erythronium japonicum f. leucanthum)と呼ばれます。
花弁は非常に細長い5㎝ほどで6枚、大きく反り返った花弁がカタクリの花の最大の特徴とも言えますが、是非注目してもらいたいのが花弁の基部です。
葉と同じく濃紫色のまだら模様(W字型と表現する資料も)があり、三重県で観察していた際、このまだら模様がハートの形に見えると盛り上がったことを覚えています。

 

カタクリの花は晴天時に朝日を浴びると開花し、夕暮れには閉じてしまいます。
また、1年のうちで地上に出ているのは春先の2ヶ月足らずで、開花の期間は2週間ほどと短い間だけとなります。その短い間に光合成をし、栄養分を鱗茎に蓄えます。その後、葉を枯らし、次の春を迎えるまで土中の鱗茎は休眠して過ごします。
カタクリの花が「春の妖精」や「スプリング・エフェメラル」と呼ばれる植物の1つと紹介される所以、エフェラルは「はかない命」という意味です。

 

様々調べていると、種子の散布に「蟻」が強く関係しているそうです。
種子にはエライオソームという蟻が好む物質が付着しているため、蟻が種子を運ぶことによって生息地を広げているそうです。
これは、スミレにも見られるため、「蟻は紫色の花が好きなのかな?」と思ってしまいました。

 

万葉集(大伴家持の一首)にも読まれていたカタクリの花、群生した風景は驚きと共に、心癒される素晴らしい風景です。

 

<おすすめ!! 春の花、カタクリが観察できるツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
※春の花咲くシーズンの佐渡の山旅。絶景ロッジ・ドンデン山荘に宿泊し、佐渡の最高峰金北山を目指し、花咲く楽園・アオネバ渓谷のハイキングも楽しみます。

 

カタクリ(片栗:Erythronium japonicum)②