長らくブログの更新が途絶えてしまい、申し訳ありません。
久々のブログ更新となりましたが、本日は大分県の国東半島にある国の重要文化財である熊野摩崖仏の見学の際に観察した「ユキノシタ(雪の下:Saxifraga stolonifera)」をご紹介します。
被子植物 双子葉類
学名:Saxifraga stolonifera
英名:マザー・オブ・サウザンス(子宝草)
ドイツ名:ユーデンバールト(ユダヤ人のひげの意)
中国名:虎耳草(こじそう)
科名:ユキノシタ科(Saxifragaceae)
属名:ユキノシタ属(Saxifraga)
ユキノシタ(雪の下:Saxifraga stolonifera)は、ユキノシタ科ユキノシタ属に属し、日本の本州、四国、九州に分布し、海外では中国にも分布する多年草です。
陰湿な岩場や沢沿いの石垣などに自生し、鑑賞用の花として植えられることもあります。
草丈は20~50㎝で直立し、根元から5~10㎝弱の葉柄を持つ根出葉を出し、ロゼット状に密集します。少し丸みを帯びた団扇を広げたような形状をしており、暗緑色で白色の粗い斑が入り、葉柄と葉には毛が確認できます。
種子による繁殖だけでなく、親株から地上茎である赤紫色の匍匐枝(ほふくし:走出枝とも呼ぶ)を出し、先端に新しい苗が生えて栄養繁殖も行います。
花期は5~7月(今回は大分県で11月に観察しました)、草丈20~50㎝の花茎の上部に多数の花を咲かせます。
ユキノシタは小さな花ですが、形状が非常に印象的な花であります。
花弁は5枚ですが、上部3枚の花弁は心形で上向きの先端が少し尖っており、基部が丸みのある可愛らしい花弁です。心形の葉は白色から薄ピンク色をしており(基部だけが白いものも)、中央には濃紅色の斑が印象的な色合いをしています。
さらに印象的なのは、下部2枚の花弁です。上部3枚の花弁に比べて長く、長さが1㎝ほどあります。真っ白な披針形の花弁が下向きに真っすぐ伸びていることで、全体の印象が”ハサミを広げたような形状”に見えます。
掲載した写真は、下部2枚の花弁が重なっているため”ハサミが閉じたような形状”に見えます。
色合いの印象をより強くするのが、中央にある子房です。鮮やかな黄色が印象的ですが、この色合いがより真っ白な花弁を引き立てているように感じます。
5枚の花弁の合間から5㎜ほどの雄しべが伸び、放射状に広がっています。雌しべは中央に短く延びています。
ユキノシタの名の由来は、諸説様々です。
雪が積もっても、雪の下では枯れずに緑の葉が残ることに由来する説、白い花を雪(雪虫)に見立てて、その下に緑の葉があることに由来する説、葉の白い斑を雪に見立てた説などあります。以前、下部の真っ白な2枚の花弁が舌のように見えるから「雪の舌」という名になったと聞いたこともあります。
上記に外国名も記載させていただきました。
ドイツではユダヤ人の髭を意味する「ユーデンバールト」、英名ではマザー・オブ・サウザンス(子宝草)、中国名では葉がトラの耳のように見えることから「虎耳草(こじそう)」とも呼ばれているそうです。
花の形状から、ドイツ名が一番しっくりくるように思うのは、私だけでしょうか。
今回は季節外れのような時期に咲くユキノシタを大分県の国東半島で観察することができました。
出発間際に見つけたため、ゆっくりと撮影はできませんでしたが、見事な群生でした。根生葉の撮影を忘れたのが心残りです。
群生するユキノシタもキレイでしたが、この花は是非1つ1つをじっくりと観察し、形状も楽しんでいただきたい花の1つです。