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フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus)

本日は、先日ご紹介したヒトリシズカ(一人静:Chloranthus quadrifolius) の近縁種である「フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus) 」をご紹介します。

 

フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus)

 

被子植物 双子葉類
学名:Chloranthus serratus
科名:センリョウ科(Chloranthaceae)
属名:チャラン属(Chloranthus)

 

フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus) は、ヒトリシズカ(一人静)と同様にセンリョウ科チャラン属に属する多年草です。
日本では北海道から九州、海外でも東アジアに分布し、山野の林床に自生します。
今回掲載した写真は5月に屋久島を訪れた際、黒味岳を目指す淀川登山口で観察したものです。

 

ヒトリシズカ(一人静)は、花を静御前の美しい舞姿に例えられ、名付けられたものですが、フタリシズカ(二人静)は2本の花序を源義経を愛した静御前の亡霊が舞う能楽『二人静』における静御前とその亡霊の舞姿にたとえたものに由来します。

 

草丈は30~60cmで直立し、茎はヒトリシズカのような紫褐色の部分も確認はできる個体もありましたが、全体的に葉と同様に緑色です。
葉は茎の上部に2~3対がほんの少し間隔をあけて対生します。
ヒトリシズカは葉が2対の葉が十字対生するのに対し、少し間隔をあけて対生する点が違いの1つです。

 

葉は5~15cmの楕円形~卵状楕円形で縁全体に鋸歯が確認でき、葉に光沢はありません。上の写真は光沢があるように見えますが、雨天だったことで雨に濡れて輝いているだけです。
葉に光沢があるのがヒトリシズカ、光沢が無いのがフタリシズカとなり、この点も違いの1つです。

 

花期は4~6月。茎頂に長さ5cm前後の穂状花序を1~5本つけます。長さ5cm前後の花序には直径2~4mmの真っ白な花を幾つも付けていますが、実は、ヒトリシズカと同様、フタリシズカの花にも花弁、萼がありません。
真っ白な花のように見えるものは、雄しべの花糸の部分。3つの花糸がくっついて椀状(野球のグローブの様)になっています。
色々と調べてみると、内側に雌しべ(子房、柱頭)があり、外側の花糸に葯が付いているそうですが、直径2~4mmの形状からこれらを観察するにはルーペが必要ですが、次回はこの点は観察したい、宿題です。

 

あるブログ記事に、ヒトリシズカ(一人静)とフタリシズカ(二人静)の違いを判りやすくまとめていたものがありましたので、ここでご紹介します。

 

<ヒトリシズカとフタリシズカの違い>
■花序の数
ヒトリシズカは1~2つ、フタリシズカは1~5つ
■花の形(花弁は無い)
ヒトリシズカは細長い雄しべ、フタリシズカは丸い雄しべ
※この点が見た目に違いが明確です。
■葉の光沢
ヒトリシズカは光沢があり、フタリシズカは光沢がない
■草丈
ヒトリシズカは10~30cm、フタリシズカは30~60cm

 

上記「花の形」の違いから一目瞭然のため、イチリンソウとニリンソウの違いほどややこしくはありませんが、観察の機会がありましたら、是非見比べてみて下さい。

 

ヒトリシズカ (一人静:Chloranthus quadrifolius)
フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus)
※葉は雨に濡れているだけです
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屋久島・黒味岳フラワートレッキングの魅力

昨年7月頃から日本各地で観察した花をご紹介してきましたが、本日からは少し趣向を変え、実際に私がツアーに同行させていただき、花の観察を楽しんだ場所、おすすめしたい場所をご紹介したいと思います。
本日は、2021年8月にツアーを実施した際の情報をもとに「黒味岳フラワートレッキングの魅力」をご紹介します。

 

■関連ツアー
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング

 

■ブログ『世界の花だより』
屋久島の花

 

私が植生観察ツアーを造成する際に注意することは「時間的に十分な余裕を確保する」ことです。
屋久島最高峰・宮之浦岳まで足を伸ばすと、投石平周辺などで高山植物を楽しむことはできますが、「距離&歩行時間が長くなってしまう?」と感じてしまい、日程と理想がなかなか合致することがありませんでした。
そこで、あえて欲張らずに「高地植物の宝庫」と紹介される黒味岳に着目してみると、ちょうど良い距離感、山頂からの好展望、さらには森林限界を越えて黒味岳山頂周辺で観察できる花々を見て、登る前から魅了され、ツアー造成に至りました。

 

1.屋久島の植生を堪能できる理想的な距離感と歩行時間
※参考資料:屋久島観光協会HPより(http://yakukan.jp/doc/pdf/tozancourse2.pdf)
淀川登山口より1泊2日で往復する平均的なプランの場合、日本最南端の高層湿原・花之江河を経て黒味分岐(黒味分かれ)までは、宮之浦岳も黒味岳も同ルートを歩きます。
黒味分岐(黒味分かれ)から黒味岳へは1.4kmの往復、宮之浦岳へは栗生岳を経て往復6.0km往復があります。時間にすると、黒味分岐から黒味岳への往復は80分、宮之浦岳への往復は4時間30分を要します。
屋久島最高峰を目指すという魅力はありますが、屋久島の植生観察を楽しむためには、この約3時間の時間は非常に大きいです。その点、黒味岳は理想的な距離感と共に時間的に余裕があるため、ゆっくりと専門ガイドの解説を聞きながら屋久島の自然や植生を堪能できる点が魅力です。因みに、開花状況によって、黒味分岐から投石平(投石小屋)まで足を伸ばしても往復で1時間です。

 

※黒味岳の場合:合計13.4km(標高差:471m)
①日目 約5.5km(淀川登山口→淀川小屋→花之江河→石塚小屋)
②日目 約7.9km(石塚小屋→花之江河→黒味分岐→黒味岳→黒味分岐→花之江河→淀川小屋→淀川登山口)

 

※宮之浦岳の場合:約18km(標高差:576m)
①日目:約12.5km(淀川登山口→淀川小屋→花之江河→黒味分岐→宮之浦岳→黒味分岐→花之江河→石塚小屋)
②日目:約5.5km(石塚小屋→花之江河→淀川小屋→淀川登山口)
※白谷雲水峡へ縦走する1泊2日プランの歩行距離は約24kmです。

 

2.ゆっくりと歩き、植生の垂直分布を実感
スタート地点である淀川登山口の標高は1,365m。スタート直後から屋久杉やモミ・ツガなどの針葉樹の巨樹が分布し、それぞれの巨樹に苔がつき、苔の水分を得て樹木に着生する着生植物などを観察しながらのんびりと歩きます。因みに、8月は平均タイムが50分と表記される登山口~淀川小屋までの区間を1時間30分かけて観察を楽しみながら歩きました。

 

到着した淀川小屋ではリュックを降ろし、清らかな淀川の流れを見学し、淀川の森に自生する苔類などの観察を楽しみます。

 

淀川小屋以降は、針葉樹に着生する着生植物、火砕流の跡を示す地層、木々の合間から覗く展望を楽しみながら、のんびりと標高を上げていくと、森の中でも屋久島の花も徐々に姿を現し始めます。8月は屋久島の固有種など、様々な花を観察することができました。
時間の余裕ができるプランだからこそ、標高1,500m付近から森林限界、さらには標高1,700m以上に分布する高山植物など、植生分布を実感しながら植生を楽しむことができる点が黒味岳フラワートレッキングの魅力です。
平均タイムが登り110分とされる淀川小屋~花之江河の間でも2時間30分(昼食タイムを差し引いた時間)をかけて植生をのんびり楽しみながら歩きました。徐々に姿・形を変えていく高盤岳のトーフ岩の展望も楽しめます。

 

3.黒味岳山頂からは屋久島随一の絶景を望む
やはり最高峰登頂という言葉の魅力は絶大です。そういった点で言えば、屋久島第6の高峰である黒味岳は宮之浦岳に比べて見劣りしてしまいます。
ただ、黒味岳の山頂に立つと見劣りする部分は一掃されます。屋久島三岳と称される宮之浦岳、永田岳、栗生岳、さらには宮之浦岳へ続く主稜線も一望でき、眼下には日本最南端の高層湿原である花之江河もご覧いただけます。また、南側には遠く太平洋を望みます。
黒味岳は屋久島で最も美しい山岳風景が楽しめる場所と言っても過言ではありません。
黒味分岐から黒味岳山頂の平均タイムは往路45分、復路35分と表記されますが、高山植物の花々を楽しみながら、ゆっくりと歩き、8月の際は山頂でのんびり絶景と高山植物を楽しみながら30分ほど過ごしました。

 

現在、弊社では屋久島を周遊し亜熱帯植物や照葉樹林の植生を観察、苔類や屋久杉の巨樹を楽しむ白谷雲水峡、森林限界を目指す「黒味岳フラワートレッキング」へご案内する「花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング」を発表しており、4月は白谷雲水峡の太鼓岩からヤクシマオナガカエデの新緑とヤマザクラが咲く絶景をご覧いただける季節、5月は黒味岳周辺にヤクシマシャクナゲが花咲く季節に設定しております。
屋久島に興味がある方、植生に興味がある方、このブログを見て屋久島の植生に興味を持たれた方、一度屋久島に訪れた方がある方も、是非一度黒味岳フラワートレッキングを体感してみてください。