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イワブクロ(岩袋:Pennellianthus frutescens)

ここ数日、急に肌寒くなってきたため、我が家では電気毛布を購入するかどうか検討中です。
週末、植物の越冬について調べていると、面白い情報を知ることができました。
春先に花を咲かせる「ザゼンソウ(座禅草)」は、氷点下になる外気温でも自ら発熱して約20℃に保つことができるそうです。発熱する部分がどこか気になり、調べていると赤紫の苞葉部分ではなく、苞葉の中心部の肉穂花序の部分だそうです。さらに驚いたことに、温度が下がると、それに合わせて0.03℃の精度で制御しているとのことでした。確かに、残雪の残る時期にザゼンソウを観察していたら、ザゼンソウの周りだけ、円形に雪が解けていたような気もします。
電気毛布に頼る人間より、ザゼンソウの方が優れた生態なのかと感じた週末でした。

 

本日はザゼンソウの紹介ではなく、北海道で観察した「イワブクロ(岩袋:Pennellianthus frutescens)」をご紹介します。

 

イワブクロ(岩袋:Pennellianthus frutescens)

 

被子植物 双子葉類
学名:Pennellianthus frutescens
和名:イワブクロ(岩袋)/別名:タルマイソウ(樽前草)
科名:オオバコ科(Plantaginaceae)
属名:イワブクロ属(Pennellianthus)

 

イワブクロ(岩袋)は、北海道と東北地方に分布し、火山性の山の高山帯の砂礫などに自生します。海外では、シベリアやカムチャッカにも分布します。
イワブクロは、別名を「タルマイソウ(樽前草)」と言います。北海道の樽前山(たるまえざん)の7合目以上で群生する斜面が多いことが別名の由来だそうです。
私も樽前山には登ったのですが、時期が異なっていたため、観察はできませんでした。
掲載した写真は、北海道の大雪山・旭岳の麓で観察したものです。

 

オオバコ科イワブクロ属に属する多年草で、ある資料には「パイオニアプラントの1つ」と紹介されていました。あまり聞き慣れないパイオニアプラントという言葉でしたが、伐採地や崩壊地などの裸地に真っ先に生える植物の総称、 先駆植物とも言われるそうです。
イワブクロは岩場や火山砂礫にいち早く侵入、群生するパイオニアプラント(先駆植物)で、根茎が長く地中で広がるそうです。

 

草丈は10~20㎝で直立し、長さ5cm強、幅が1㎝強で長楕円形の葉が対生します。葉は少し厚みがあり、縁が浅めの鋸歯となっています。葉の表裏には毛は確認できませんが、浅い鋸歯の先端は刺々しくなっているのが確認できます。
葉の基部は茎を包むように丸まっており、葉の先端へ向かうにつれて外側に反り返るように生えています。
茎は赤褐色で、短い毛が生えていることが確認できます。
ある資料で「茎の断面は4稜形(4角柱)」と紹介されていました。
日頃、茎の形状は注目したことがなく、花図鑑などでも記載しているものは見たことがありませんでした。私が見落としているだけかもしれませんが、茎の形(断面)は円形が数多く、その他に2稜形、3稜形(3角柱)、4稜形(4角柱)、6稜形などがあるそうです。

 

桐の花に似ているイワブクロの花期は6~8月。茎頂に長さ3cm前後で筒形の唇形花を横向きに密集して咲かせます。
花の色は淡紫色で、上唇の部分が2裂、下唇の部分が3裂しています。
長さ1㎝弱の太くて短い花柄や長さ1㎝ほどの萼には、それぞれ腺毛が確認でき、花弁の外側にも同様に軟毛が確認できます。
雄しべは筒状の内部に4つあり、昆虫が花に潜り込む際に邪魔をして、昆虫の背が葯や柱頭に振れやすくする構造と考えられています。

 

花後は、花が抜け落ち、長さ1㎝ほどの蒴果が萼に包まれて残ります。

 

イワブクロ属(Pennellianthus)は、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)に分類されていましたが、APG分類体系ではオオバコ科に分類されることとなりました。

 

今回のブログ作成では、ザゼンソウの越冬の不思議や、茎の断面の形状など、イワブクロの事以外でも様々な点を知ることができました。今後も勉強が必要なようです。

 

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イワブクロ(岩袋:Pennellianthus frutescens)②