023

テイデ・エニシダ(Cytisus supranubius)

先日「花のカナリア諸島自然紀行」のツアーへ同行させていただき、お客様と一緒にエキウムをはじめとするカナリア諸島の様々な花の観察を楽しませていただきました。今回は、先日カナリア諸島で観察した花を1つ紹介させていただきます。

 

皆様は「エニシダ」と言えば、何色を思い浮かべるでしょうか?
最初に思い描くエニシダの花と言えば「黄色」ではないでしょうか。

 

今回ご紹介する花はそのエニシダですが、色合いが白色の、カナリア諸島原産のエニシダである「テイデ・エニシダ(Cytisus supranubius)」です。

テイデ・エニシダ(Cytisus supranubius)

被子植物 双子葉類
学名:Cytisus supranubius
現地名:レタマ・デル・テイデ(Retama del Teide)
科名:マメ科(Fabaceae) 属名:エニシダ属(Cytisus)

 

マメ科の一種であるエニシダは、ヨーロッパでは昔からエニシダの枝から箒(ほうき)を作っており、絵本などで魔女がまたがる箒(ほうき)はエニシダの枝から作ったというお話もあります。

 

アジア西部からヨーロッパ、アフリカなどの温暖な地方に約30種ほどが分布していると言われています。落葉または常緑の低木で高さは2~4mほどになります。葉は非常に細いものが多く、単葉または3裂に分かれるものがあります。花は分枝した枝の葉腋(ようえき:葉と葉のついている茎とのまたになった部分)に多数の花が開花します。

 

私たちが思い描くエニシダと言えば黄色、それ以外にも今回ご紹介する「テイデ・エニシダ」のような白色、私はまだ観察したことはありませんが、交配種には赤やピンクの花もあるそうです。

 

エニシダの花は、春から秋まで日が良く当たり、排水のよいやや乾燥気味の、弱アルカリ性の土壌で自生すると言われています。
大陸から離れたカナリア諸島では、太古の時代から独自の生態系が育まれてきましたが、今回テイデ・エニシダを観察したのは、テネリフェ島の標高約2,000mの高地で、森林限界を通過したテイデ山の展望ポイントでした。
植物にとっては厳しい環境のように感じた場所でしたが、このテイデ・エニシダは現地のガイドブックによると、葉から蒸発をなるべく減らすために葉を退化させているそうです。

 

テイデ・エニシダはカナリア諸島のテネリフェ島やラ・パルマ島などで観察できます。2019年シーズンのカナリア諸島ツアーは終了してしまいましたが、エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)シネラリア(Cineraria)など印象深い花も多く、同じエニシダも黄色の花が群生している場所など、花の観察の見どころの多いツアーです。
来シーズン、是非「白いエニシダ(テイデ・エニシダ)」に出会うため、カナリア諸島へ訪れてみてください。

テイデ・エニシダとスペイン最高峰テイデ山

 

 

018

カナリナ・カナリエンシス(Canarina canariensis)

2019年もまもなく4月。ここ最近、桜の開花宣言のニュースを目にするようになりました。皆さんのご近所の桜はいかがでしょうか。
今年こそは、奥さんと一緒に花見に出かけたいと思っています。

 

本日はカナリア諸島の固有種「カナリナ・カナリエンシス(Canarina canariensis)」をご紹介させていただきます。

カナリナ・カナリエンシス(Canarina canariensis)

被子植物 双子葉類
学名:Canarina canariensis
英名:Canary Island Bellflower 現地名:ビカカロ(bicacaro)
科名:キキョウ科(Campanulaceae) 属名:カナリナ属(Canarina)

 

カナリナ・カナリエンシス(Canarina canariensis)は、現地名が「ビカカロ(bicacaro)」と呼ばれるキキョウ科カナリア属、釣鐘状で印象的なオレンジ色の花を咲かせるカナリア諸島原産の花です。

 

同じキキョウ科「ホタルブクロ」とは近縁のようですが、茎葉に違いがあります。
ホタルブクロは、1つの節に茎をはさむように2枚の葉がつく対生(たいせい)なのに対し、カナリア・カナリエンシスは、1つの節には1枚の葉しかつかない互生(ごせい)となります。
約3~5㎝の花を釣鐘状の花を咲かせ、果実はオレンジ色の大きな多肉質の実をつけ、食べられると聞いたことがありますが・・・実は観察したことがありません。

 

カナリア諸島の森林ハイキングなどを楽しんでいると、その色合いからすぐに観つけることができ、その可憐な花は印象深い思い出となります。

5月18日出発「花のカナリア諸島自然紀行」へ同行させていただくこととなりました。久しぶりのカナリア諸島での花の観察が非常に楽しみです。
このブログで紹介できるよう、たくさんの花の撮影に励みたいと思います。

 

<カナリナ・カナリエンシスが観察できるツアー>
花のカナリア諸島自然紀行
スペイン最高峰テイデ山登頂と花のカナリア諸島

017

シネラリア(Cineraria)

3月に入り、私も新居へ引っ越しをしました。
毎年楽しみにしていた近所のこぶしの花などの花々が見られなくなるのは寂しいのですが、新たな住まいの大阪市福島区は「のだふじ(野田藤)」の発祥の地と言われており、大阪市福島区の区の花にも指定されています。
4月中旬ごろに見頃を迎えるそうなので、新居でも新たな楽しみができました。

 

本日は、先日に引き続きカナリア諸島の花の1つ「シネラリア(Cineraria)」を紹介させていただきます。

シネラリア(Cineraria)

被子植物 双子葉類
学名:Cineraria 英名:Florist’s Cineraria
科名:キク科 (Asteraceae )属名:ペリカルリス属(Pericallis)

 

シネラリア(Cineraria)は、カナリア諸島が原産のキク科の花の1つです。
春から初夏にかけて、くす玉のように枝分かれし、多数の花を咲かせます。1つ1つの花の大きさは直径3~4㎝ほどです。
花の色は、紅,紫,濃紫,赤紫,白などがあり、葉は大きなハートの形をしており、縁が波状になっています。

 

原産地は北アフリカ、カナリア諸島、マデイラ諸島に14種が自生し、その中でも園芸で親しまれている品種は、18世紀にイギリスで作出された交雑種が元となっています。
日本では、古くはフウキギク(富貴菊)、フウキザクラ(富貴桜)などとも呼ばれた事もあるそうですが、今は使われていないそうです。

 

シネラリア(Cineraria)は花の色合いや、密集した花の咲き方などがとても印象的な、エキウムに負けない印象を与えてくれる可憐な花です。

 

<シネラリアが観察できるツアー>
花のカナリア諸島自然紀行
スペイン最高峰テイデ山登頂と花のカナリア諸島

 

016

エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)

早いもので2019年も3月を迎え、春の訪れを知らせてくれる花々もまもなく開花を迎える時季となってきました。皆さんのご近所に咲く「春の訪れを知らせる花」の開花状況はいかがでしょうか。

 

長らく「パタゴニアの花」の紹介を続けておりましたが、パタゴニアの観光シーズンもひと段落したので、まだまだご紹介したい花はたくさんありますが、続きは次の観光シーズンが始まる前にさせていただきます。
パタゴニアのパンフレット造成も少しずつ初めており、6月ごろに発表予定です。

 

本日は5月に花の季節が到来する、アフリカ大陸の北西沿岸に近い大西洋上にある7つの島からなるスペイン領の群島「カナリア諸島」の花をご紹介させていただきます。
カナリア諸島と言えば、やはりムラサキ科の「エキウム」です!!
この日紹介させていただくのは「エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)」です。

エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)

被子植物 双子葉類
学名:Echium wildpretii 英名:Tower of Jewels(宝石の塔)
現地名:タヒナステ・ロホ(Tajinaste rojo)
科名:ムラサキ科 (Boraginaceae) 属名:エキウム(シャゼンムラサキ)属(Echium)

 

大陸から離れたカナリア諸島では、太古の時代から独自の生態系が育まれて、カナリア諸島には700種以上もの固有植物が存在します。

 

カナリア諸島を代表する植物の1つである「エキウム(Echium)」は、ムラサキ科エキウム属の半耐寒性2~3年草です。
種類も多種多様で、赤、青、紫、白など様々な色のエキウムが生息します。
日本では京都府立植物園で初めて栽培開花させ、現在では東京ディズニーシーでも見られるという話を聞いたことがあります。

 

その中でも「エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)」はカナリア諸島固有植物として世界的にも知られています。
高さ3mを超えて育ち、淡紅色の花穂の長さも1m超すことがあります。
根元から15~20㎝の灰緑色をした細長い葉が下向きに生えています。よく観察してみると白い毛が生えているため、そのような色合いに見えるのです。
多くの日照時間を必要とし、乾燥条件でも育ち、霜に対しても耐性があり、摂氏-5度までは耐性があると言われています。
カナリア諸島の1つテネリフェ島のテイデ山(スペイン最高峰)の亜高山帯針葉樹林にも生育しています。

 

その姿から「宝石の塔(Tower of Jewels)」とも呼ばれ、5月中旬から6月上旬にかけて見頃を迎えます。

 

エキウムをゆっくりと観察していると、その草丈に驚かされますが、花の数にも驚かされます。
1mを超す花穂に、赤~薄紅色の小さな花がなんと10,000~15,000個(資料によっては20,000個というものもあります)の円錐状の花が、らせん状に花を付けています。
1つ1つの花を観察すると、ムラサキ科の花であることがすぐに判ります。
ミツバチも、このエキウム・ウィルドプレッティの蜜が好きなのでしょうか、観察していると、ミツバチがエキウムの小さな花に顔を突っ込んでいる姿も観察できます。

カナリア諸島へ訪れ、エキウムを観察する際には、周りの風景やエキウムの大きさだけではなく、小さな花の1つ1つもゆっくりと観察してみてください。

エキウム・ウィルドプレッティの花

<エキウム・ウィルドプレッティが観察できるツアー>
花のカナリア諸島自然紀行
スペイン最高峰テイデ山登頂と花のカナリア諸島