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マタ・グアナコ(Mata Guanaco)

2020年に入り、2ヶ月続けて南米パタゴニアのツアーへ同行させていただきました。
私自身が世界各地の中で最も大好きな地域であるパタゴニアは、氷河などによる浸食で長い年月をかけて形成された素晴らしい大自然を楽しむことのできる素晴らしい場所です。

パタゴニアではクッション状に生息する灌木のことを「マタ(Mata)」と呼び、その中の一種「マタ・グアナコ(Mata Guanaco)」を本日はご紹介します。

 

クッション状で自生するマタ・グアナコ(Mata Guanaco)

被子植物 双子葉類
学名:アナラトロフィルム・デシデラツム(Anarathrophyllum desideratum)
科名:マメ科(Fabaceae)
属名:アナルツロフィルム属(Anarthrophyllum)
現地名:マタ・グアナコ(Mata Guanaco)、ネネオ・マチョ(Neneo macho)

 

マタ・グアナコ(Mata Guanaco)は、パタゴニアの草原やアンデス地方の低い丘の斜面などに自生し、その姿がまるで巨大なクッションのように見える灌木です。

 

高さ10~60cm、直径は30~60cmとなり、茎に向かって枝分かれした葉が多く、葉の大きさは15mmほど。クッション状に広がる茎には棘を持ち、触れてみると非常に硬く、鋭い棘であることが判り、思わず飛びあがってしまう痛みを感じるほどです。

 

初夏11月~12月上旬に真紅~オレンジ色の花を咲かし、以前ご紹介したパタゴニアの象徴的な花であるノトロ(Embothrium coccineum)と同じく氷河が後退した荒地に最初に生える植物とも言われ、棘に注意しながら観察するとマメ科のエニシダの様な可愛らしい花を咲かせています。
※アナルツロフィルム属(Anarthrophyllum)を調べていると「エニシダ連 (Genisteae )」という分類に入るようです。

 

マタ・グアナコ(Mata Guanaco)の花

初夏の11~12月上旬、パタゴニアの大草原・パンパを走行していると突然車窓から真紅のクッションが姿を見せることがあります。私がこのマタ・グアナコの真紅の花を初めて観察したのがパタゴニアの名峰フィッツ・ロイの麓・チャルテン村からカラファテの街を目指している道中でした。

あまりにキレイな真紅のクッションを車窓から見た時、大声でドライバーさんとガイドさんに声を掛け、無理を言ってバスを停めてもらい、観察したことを今でも覚えています。

 

クッション状の「マタ(Mata)」と呼ばれる植物の中には黄色い花を咲かせる別の種類もありますが、そちらはいつの日かご紹介したいと思います。

 

南米パタゴニアへ添乗へ行かせていただくと、カメラと花図鑑だけを持って長期間滞在し、自然が作り出したパタゴニアの雄大な山々やグレーシャーブルーに輝く氷河の撮影と共にパタゴニアに咲く美しい花々の観察を楽しみたいと感じることがあります。いつの日か「パタゴニアへ半年滞在」というツアーを実現できないものでしょうか?ご参加いただけますか?

パタゴニアの名峰フィッツ・ロイ

 

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テイデ・エニシダ(Cytisus supranubius)

先日「花のカナリア諸島自然紀行」のツアーへ同行させていただき、お客様と一緒にエキウムをはじめとするカナリア諸島の様々な花の観察を楽しませていただきました。今回は、先日カナリア諸島で観察した花を1つ紹介させていただきます。

 

皆様は「エニシダ」と言えば、何色を思い浮かべるでしょうか?
最初に思い描くエニシダの花と言えば「黄色」ではないでしょうか。

 

今回ご紹介する花はそのエニシダですが、色合いが白色の、カナリア諸島原産のエニシダである「テイデ・エニシダ(Cytisus supranubius)」です。

テイデ・エニシダ(Cytisus supranubius)

被子植物 双子葉類
学名:Cytisus supranubius
現地名:レタマ・デル・テイデ(Retama del Teide)
科名:マメ科(Fabaceae) 属名:エニシダ属(Cytisus)

 

マメ科の一種であるエニシダは、ヨーロッパでは昔からエニシダの枝から箒(ほうき)を作っており、絵本などで魔女がまたがる箒(ほうき)はエニシダの枝から作ったというお話もあります。

 

アジア西部からヨーロッパ、アフリカなどの温暖な地方に約30種ほどが分布していると言われています。落葉または常緑の低木で高さは2~4mほどになります。葉は非常に細いものが多く、単葉または3裂に分かれるものがあります。花は分枝した枝の葉腋(ようえき:葉と葉のついている茎とのまたになった部分)に多数の花が開花します。

 

私たちが思い描くエニシダと言えば黄色、それ以外にも今回ご紹介する「テイデ・エニシダ」のような白色、私はまだ観察したことはありませんが、交配種には赤やピンクの花もあるそうです。

 

エニシダの花は、春から秋まで日が良く当たり、排水のよいやや乾燥気味の、弱アルカリ性の土壌で自生すると言われています。
大陸から離れたカナリア諸島では、太古の時代から独自の生態系が育まれてきましたが、今回テイデ・エニシダを観察したのは、テネリフェ島の標高約2,000mの高地で、森林限界を通過したテイデ山の展望ポイントでした。
植物にとっては厳しい環境のように感じた場所でしたが、このテイデ・エニシダは現地のガイドブックによると、葉から蒸発をなるべく減らすために葉を退化させているそうです。

 

テイデ・エニシダはカナリア諸島のテネリフェ島やラ・パルマ島などで観察できます。2019年シーズンのカナリア諸島ツアーは終了してしまいましたが、エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)シネラリア(Cineraria)など印象深い花も多く、同じエニシダも黄色の花が群生している場所など、花の観察の見どころの多いツアーです。
来シーズン、是非「白いエニシダ(テイデ・エニシダ)」に出会うため、カナリア諸島へ訪れてみてください。

テイデ・エニシダとスペイン最高峰テイデ山