175

フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus)

本日は、先日ご紹介したヒトリシズカ(一人静:Chloranthus quadrifolius) の近縁種である「フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus) 」をご紹介します。

 

フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus)

 

被子植物 双子葉類
学名:Chloranthus serratus
科名:センリョウ科(Chloranthaceae)
属名:チャラン属(Chloranthus)

 

フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus) は、ヒトリシズカ(一人静)と同様にセンリョウ科チャラン属に属する多年草です。
日本では北海道から九州、海外でも東アジアに分布し、山野の林床に自生します。
今回掲載した写真は5月に屋久島を訪れた際、黒味岳を目指す淀川登山口で観察したものです。

 

ヒトリシズカ(一人静)は、花を静御前の美しい舞姿に例えられ、名付けられたものですが、フタリシズカ(二人静)は2本の花序を源義経を愛した静御前の亡霊が舞う能楽『二人静』における静御前とその亡霊の舞姿にたとえたものに由来します。

 

草丈は30~60cmで直立し、茎はヒトリシズカのような紫褐色の部分も確認はできる個体もありましたが、全体的に葉と同様に緑色です。
葉は茎の上部に2~3対がほんの少し間隔をあけて対生します。
ヒトリシズカは葉が2対の葉が十字対生するのに対し、少し間隔をあけて対生する点が違いの1つです。

 

葉は5~15cmの楕円形~卵状楕円形で縁全体に鋸歯が確認でき、葉に光沢はありません。上の写真は光沢があるように見えますが、雨天だったことで雨に濡れて輝いているだけです。
葉に光沢があるのがヒトリシズカ、光沢が無いのがフタリシズカとなり、この点も違いの1つです。

 

花期は4~6月。茎頂に長さ5cm前後の穂状花序を1~5本つけます。長さ5cm前後の花序には直径2~4mmの真っ白な花を幾つも付けていますが、実は、ヒトリシズカと同様、フタリシズカの花にも花弁、萼がありません。
真っ白な花のように見えるものは、雄しべの花糸の部分。3つの花糸がくっついて椀状(野球のグローブの様)になっています。
色々と調べてみると、内側に雌しべ(子房、柱頭)があり、外側の花糸に葯が付いているそうですが、直径2~4mmの形状からこれらを観察するにはルーペが必要ですが、次回はこの点は観察したい、宿題です。

 

あるブログ記事に、ヒトリシズカ(一人静)とフタリシズカ(二人静)の違いを判りやすくまとめていたものがありましたので、ここでご紹介します。

 

<ヒトリシズカとフタリシズカの違い>
■花序の数
ヒトリシズカは1~2つ、フタリシズカは1~5つ
■花の形(花弁は無い)
ヒトリシズカは細長い雄しべ、フタリシズカは丸い雄しべ
※この点が見た目に違いが明確です。
■葉の光沢
ヒトリシズカは光沢があり、フタリシズカは光沢がない
■草丈
ヒトリシズカは10~30cm、フタリシズカは30~60cm

 

上記「花の形」の違いから一目瞭然のため、イチリンソウとニリンソウの違いほどややこしくはありませんが、観察の機会がありましたら、是非見比べてみて下さい。

 

ヒトリシズカ (一人静:Chloranthus quadrifolius)
フタリシズカ (二人静:Chloranthus serratus)
※葉は雨に濡れているだけです