137

ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)

本日も尾瀬で観察した「ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)」をご紹介します。
ツルコケモモ(蔓苔桃)も、前回ご紹介したヒメシャクナゲ(姫石楠花)と同様に「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」を造成する際、尾瀬を訪れて観察したいと強く思った花の1つです。

 

ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)

 

被子植物 双子葉類
学名:Vaccinium oxycoccos
英名:Common Cranberry、Northern Cranberry(クランベリー)
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:スノキ属(Vaccinium)

 

ツルコケモモ(蔓苔桃)は、本州の中部地方以北から北海道にかけて、海外では北欧、北アジア、北米など、北半球の寒い地域に広く分布し、亜高山帯~高山帯の高層湿原でミズゴケ類の中に自生する常緑低木です。

 

草丈は10cmほどで細い濃赤紫色の茎を伸ばしますが、茎は所々で根を出し、ミズゴケの上を這うように広がり、先端部が立ち上がる形状です。葉は互生し、1cm前後で狭披針形~楕円形、葉の先端はそれほど鋭さは感じない程度に尖っているという印象です。葉の縁はほんの少し裏側の方へ反り返っており、葉裏は白みを帯びています。葉は秋には赤褐色に紅葉します。

 

花期は6~7月。細く伸びた濃赤紫色の茎から同色で短毛が確認できる花柄を1~4本伸ばし、その先端に直径1~2cmほどの淡いピンク色の小さな花を1つずつ咲かせます。
花冠は基部から4裂し、長さ7~9mmほどの裂片はカタクリの花のように外側に反り返るのが最大の特徴です、
特徴的な反り返った花弁も面白い形状ですが、その中央から突き出た部分にも注目です。
根元の濃赤紫色(花柄より少し濃い印象)の部分が子房で白い(花弁の淡いピンクに近い色)筋が入っているのが確認できます。また、子房の先端にオレンジ色の部分が束になった雄しべ、さらにその先端から雌しべが1本伸びており、まるで「芯が飛び出したシャーペン」のような形状が非常にユニークです。ただ、ツルコケモモは想像より小さな花のため、細かな形状を確認するには腹這いになって観察するか、ルーペが必要かもしれません。

 

ツルコケモモは9~10月に花の大きさでは想像できない直径1cmほどの赤く球体の実を付けます。ツルコケモモの実はその近縁種と共に「クランベリー」としておなじみで、花の大きさでは想像できない直径1cmほどの赤く球体の実を付けます。ジャムやジュースなどとして利用されます。
ある資料には、湿原は栄養分が少ないこともあり「全ての個体で花や果実を付けるわけではない」とありました。

 

ミズコケの生える湿原に咲く淡いピンク色、さらに想像より小さな花であるため、尾瀬フラワートレッキングの際にも危うく見逃してしまいそうな場面もありましたが、ツルコケモモの花を見つけるとその形状や花の美しさに魅了され、思わず撮影に夢中になってしまう花でした。

 

ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)②

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
8月23日出発が催行決定!まだ間に合います!!
屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング
亜熱帯植物や照葉樹林の植生観察と1泊2日プラン「黒味岳フラワートレッキング」へご案内。屋久島の垂直分布を深く知ることのできる季節限定企画。
※私(大阪支社 高橋)が同行させていただきます。

 

<おすすめ!! 自然探勝を楽しむツアー>
8月11日出発が催行決定!残席わずかです!!
支笏湖カヌーとネイチャーウォーク 北海道自然満喫の旅

支笏湖カヌー体験、美瑛の丘やニセコ山麓で専門ガイドと共にネイチャーウォークを楽しむ5日間。

 

「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
“岐阜の宝もの”小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。

 

北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。また、自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

112

コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)

先日、出勤途中に桜の木に数輪の花を咲かせているのを見つけました。ネットニュースなどでは、今年は桜などの開花が早まる可能性があるとのことでした。
また、三重県松阪市の湿原では、春の訪れを告げる「ザゼンソウ」が例年より1週間ほど早く見頃を迎えたというニュースがありました。

 

本日は「コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)」をご紹介します。

 

コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)

 

被子植物 双子葉類
学名:Vaccinium vitis-idaea
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:スノキ属(Vaccinium)

 

コケモモ(苔桃)は、ツツジ科スノキ属に属する常緑小低木です。
日本では、北海道から九州まで幅広く分布し、海外ではユーラシア大陸北部や北アメリカの森林など温帯から北極圏に近い地域まで分布します。
亜高山帯~高山帯のハイマツ帯や草地、岩場、砂礫地などに自生し、酸性の土壌を好みます。多くのツツジ科の植物と同じく、栄養分の少ない土地でも耐えることができ、-40℃以下という極寒地でも耐えることができる耐寒性をもちます。

 

樹高は5~30㎝ほど、直立した幹は密集しています。地中の根茎を広げることで株を増やします。
葉は楕円形で互生し、1~2㎝ほどの小さな葉は少し硬く(革質と表記される資料もあります)、光沢が目立ちます。
葉の縁に鋸歯はあるのですが、ほとんど確認できないくらい僅かなものです。
寒冷地に自生する広葉樹ですが、冬でも葉は落としません。

 

花期は5~7月。枝先に白色~淡いピンク色(淡紅色)で5㎜ほどの鐘型の花を3~8個ほど総状に付け、花は下向きに咲かせます。
花弁の先端は浅く4裂、少し外に開いている印象です。また、萼も4裂し、先が尖った三角形をしています。
雄しべは鐘型の花の中に確認ができ、上の写真では少し判りづらいですが、雌しべ(花柱)は花の中央から少し花柱の先端が顔を出しています。

 

果実は5㎜ほどの球体で、真っ赤に熟します。
コケモモの実は、酸味が強く、生のまま食すより、ジャムやコンポート(砂糖煮)、果実酒が有名です。また、日本ではあまり見かけませんが、海外へ行くとビタミンC、βカロチンなどが豊富なため、ジュースで販売されているのをよく見かけます。また、コケモモの葉は、利尿効果や尿路殺菌作用もあるそうです。

 

「苔桃」という和名の由来は、地面を這うように自生する様子が「苔」に例えられ、「モモ」は方言で「木の実」を意味します。また、種小名の vitis-idaea はギリシャ神話に出てくる「クレタ島のIda山のブドウ」という意味です。

アカモノシラタマノキエゾノツガザクラアオノツガザクラなど、ツツジ科で鐘型の小さな花を咲かせる植物はいくつかあり、花の色以外で見分けが難しいものもあります。ただ、ゆっくりと特徴を確認しながら観察を楽しんでいると、それぞれの良さを見つけることができます。
コケモモは、白色~淡紅色の色合いが色鮮やかで光沢のある葉と非常にマッチし、葉の光沢と色合いが花の可憐さがより際立っているように感じます。
コケモモの実に手を伸ばすのも楽しいかもしれませんが、花咲くコケモモの前でも是非足を止めてみてください。

 

コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)②

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
※春の花咲くシーズンの佐渡の山旅。絶景ロッジ・ドンデン山荘に宿泊し、佐渡の最高峰金北山を目指し、花咲く楽園・アオネバ渓谷のハイキングも楽しみます。

 

花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
※6月から7月にかけて高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドの案内で、フラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※5月下旬から高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ旅。

 

花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※専門ガイドとのんびりと花の観察を楽しみながら、尾瀬ヶ原から尾瀬沼へのフラワートレッキング。花咲く尾瀬を訪れる季節、8名様限定のツアーです。

 

花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く
※高山植物の宝庫として知られる千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキング。旅の後半は、専門ガイドと共に静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

日本各地で高山植物などの花々を楽しむツアーも続々と発表しております。ご興味のあるコースがありましたら、是非お問い合わせください。
「花の季節」に訪れるツアー 一覧へ