142

シラタマノキ(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

先日、「屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング」に同行させていただき、屋久島の亜熱帯植物や照葉樹林の植生を楽しみ、黒味岳の1泊2日の登山では屋久島固有の矮小化した高山植物や様々な苔類の観察を楽しむことができました。

 

以前、シラタマノキの実をご紹介しましたが、本日は「シラタマノキの花(白玉の木:Gaultheria pyroloides)」をご紹介します。

 

シラタマノキの花(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gaultheria pyroloides
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:シラタマノキ属(Gaultheria)

 

ツツジ科の常緑小低木であるシラタマノキ(白玉の木)は、本州・中部地方の以北から北海道にかけて分布し、海外でも東北アジアからアラスカにかけて広く分布します。亜高山帯~高山帯にかけて、比較的乾燥した岩石地、林縁 草地などに自生します。

 

茎は地を匍い、草丈が10~20cmほどになります。葉は1.5~2.5cmの楕円形で少し厚みもあり、少し光沢も確認できます。葉の縁の鋸歯、葉の表裏にくっきりとした葉脈があるのが特徴です。

 

花は枝分かれした茎の上部に花柄を伸ばし、2~5個ほどの花が垂れ下がるように付いています。大きさは0.5cmほどと小さく、丸みのある壺型で花の先端がキュっとしぼんだ形状が何とも言えない愛らしさを感じます。よく観察すると、キュッとしぼんだ先端部分が浅く5裂していることも判ります。

 

シラタマノキは、9月を過ぎると1cm弱の小さく、白い球状の実を付けます。この事が和名「シラタマノキ」の名の由来であり、別名を「シロモノ」とも言います。
因みに、同じツツジ科でアカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)という花もあり、白い花を咲かせますが、赤い実を付けることから「アカモノ」と呼ばれます。
上の写真は、6月に群馬県中之条町のチャツボミゴケ公園を散策している際に観察したものですが、遊歩道を挟んで向かい側にアカモノの花も咲いており、振り返りながら2つの花を見比べることができました。

 

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)

 

シラタマノキの実は、筋肉疲労などの塗り薬でも使われる「サロメチール(サリチル酸)」の匂いがすることで有名ですが、一粒摘み採り口に入れると、わずかな甘味と清涼感が口に広がるそうですが、生食より果実酒に利用されるそうです。ある資料に焼酎に漬け込み、3ヶ月後に実を出して熟成させるとあり、花以上に興味のある情報でした。

 

シラタマノキの実(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

 

<おすすめ!! 紅葉シーズンに自然を楽しむツアー>
※10月18日出発:まもなく催行!
「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
“岐阜の宝もの”小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。

 

※10月18日出発:まもなく催行!
北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。また、自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

 

※9月19日出発:催行決定!
日本で最も早い紅葉を観る!大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草
黒岳、旭岳、十勝岳、三国峠など大雪山山系の原生林と紅葉の名所を巡る5日間。
※エゾオヤマリンドウに出会えるかもしれません。

 

※10月5日出発:催行決定!/10月10日出発:まもなく催行!
秋の千畳敷カール・乗鞍・上高地を撮る
傑出した山岳景観を誇る中央アルプスから中部山岳国立公園を巡る4日間。撮影目的でなくても、自然、風景を満喫できます。

 

※10月9日出発:まもなく催行!
秋色に染まる尾瀬・奥日光・谷川連峰を撮る
美しい紅葉や山岳風景の撮影をご堪能いただく日程。尾瀬は2泊3日でゆっくりと巡り、秋色に染まる尾瀬を堪能いただけます。

112

コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)

先日、出勤途中に桜の木に数輪の花を咲かせているのを見つけました。ネットニュースなどでは、今年は桜などの開花が早まる可能性があるとのことでした。
また、三重県松阪市の湿原では、春の訪れを告げる「ザゼンソウ」が例年より1週間ほど早く見頃を迎えたというニュースがありました。

 

本日は「コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)」をご紹介します。

 

コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)

 

被子植物 双子葉類
学名:Vaccinium vitis-idaea
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:スノキ属(Vaccinium)

 

コケモモ(苔桃)は、ツツジ科スノキ属に属する常緑小低木です。
日本では、北海道から九州まで幅広く分布し、海外ではユーラシア大陸北部や北アメリカの森林など温帯から北極圏に近い地域まで分布します。
亜高山帯~高山帯のハイマツ帯や草地、岩場、砂礫地などに自生し、酸性の土壌を好みます。多くのツツジ科の植物と同じく、栄養分の少ない土地でも耐えることができ、-40℃以下という極寒地でも耐えることができる耐寒性をもちます。

 

樹高は5~30㎝ほど、直立した幹は密集しています。地中の根茎を広げることで株を増やします。
葉は楕円形で互生し、1~2㎝ほどの小さな葉は少し硬く(革質と表記される資料もあります)、光沢が目立ちます。
葉の縁に鋸歯はあるのですが、ほとんど確認できないくらい僅かなものです。
寒冷地に自生する広葉樹ですが、冬でも葉は落としません。

 

花期は5~7月。枝先に白色~淡いピンク色(淡紅色)で5㎜ほどの鐘型の花を3~8個ほど総状に付け、花は下向きに咲かせます。
花弁の先端は浅く4裂、少し外に開いている印象です。また、萼も4裂し、先が尖った三角形をしています。
雄しべは鐘型の花の中に確認ができ、上の写真では少し判りづらいですが、雌しべ(花柱)は花の中央から少し花柱の先端が顔を出しています。

 

果実は5㎜ほどの球体で、真っ赤に熟します。
コケモモの実は、酸味が強く、生のまま食すより、ジャムやコンポート(砂糖煮)、果実酒が有名です。また、日本ではあまり見かけませんが、海外へ行くとビタミンC、βカロチンなどが豊富なため、ジュースで販売されているのをよく見かけます。また、コケモモの葉は、利尿効果や尿路殺菌作用もあるそうです。

 

「苔桃」という和名の由来は、地面を這うように自生する様子が「苔」に例えられ、「モモ」は方言で「木の実」を意味します。また、種小名の vitis-idaea はギリシャ神話に出てくる「クレタ島のIda山のブドウ」という意味です。

アカモノシラタマノキエゾノツガザクラアオノツガザクラなど、ツツジ科で鐘型の小さな花を咲かせる植物はいくつかあり、花の色以外で見分けが難しいものもあります。ただ、ゆっくりと特徴を確認しながら観察を楽しんでいると、それぞれの良さを見つけることができます。
コケモモは、白色~淡紅色の色合いが色鮮やかで光沢のある葉と非常にマッチし、葉の光沢と色合いが花の可憐さがより際立っているように感じます。
コケモモの実に手を伸ばすのも楽しいかもしれませんが、花咲くコケモモの前でも是非足を止めてみてください。

 

コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)②

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
※春の花咲くシーズンの佐渡の山旅。絶景ロッジ・ドンデン山荘に宿泊し、佐渡の最高峰金北山を目指し、花咲く楽園・アオネバ渓谷のハイキングも楽しみます。

 

花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
※6月から7月にかけて高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドの案内で、フラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※5月下旬から高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ旅。

 

花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※専門ガイドとのんびりと花の観察を楽しみながら、尾瀬ヶ原から尾瀬沼へのフラワートレッキング。花咲く尾瀬を訪れる季節、8名様限定のツアーです。

 

花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く
※高山植物の宝庫として知られる千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキング。旅の後半は、専門ガイドと共に静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

日本各地で高山植物などの花々を楽しむツアーも続々と発表しております。ご興味のあるコースがありましたら、是非お問い合わせください。
「花の季節」に訪れるツアー 一覧へ

092

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)

朝の出勤時も寒くなってきており、コートを着て出勤されている方の姿が多くなってきました。皆さんもコロナウイルスの感染症対策も大事ですが、風邪対策にも十分お気を付けください。

 

本日は「アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)」という名の花をご紹介します。
今回の花の写真は弊社東京本社・島田が裏磐梯の方で撮影したものです。私も観察したことがあるのですが、日本のどこだったかな~、思い出したらお知らせします。

 

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gaultheria adenothrix
別名:イワハゼ(岩黄櫨)
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:シラタマノキ属 (Gaultheria)

 

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)は、ツツジ科の常緑小低木、先日ご紹介したシラタマノキの実と同じシラタマノキ属に属します。
アカモノ(赤物)は日本固有の植物で、本州では近畿以北の日本海側に分布し、その他、北海道や四国にも分布し、低山帯から亜高山帯に自生します。

 

上の写真の花は白いですが、和名はアカモノ(赤物)。少々可笑しなネーミングですが、名の由来は赤い実をつけることから「アカモモ」から転じたものと言われています。色々と調べていると、実が白いものもあるそうで、それは「シロミノアカモノ」と言われるそうです。頭が混乱しそうです。
また、別名「イワハゼ(岩黄櫨)」とも呼ばれ、実が蝋を取るハゼの実に似ている事が由来です。

 

草丈は10~20㎝、葉は2~5㎝弱の卵型、楕円形の葉が互生し、茎と若枝には短い腺毛が確認でき、ほんの少し葉の光沢も確認できます。

 

花期は5~7月。直径5~7mmの小さな釣鐘型の花を下向きに咲かせ、縁が浅く5裂しており、ほんの少しだけカールしていることが確認できます。
花を支える萼は非常に鮮やかな赤色をしており、花全体の色合いのアクセントになっています。この萼にも茎や若枝と同様、腺毛が密生していることが確認でき、萼の部分の腺毛は短いものと長いものが混在しています。

 

花期が終わると、シラタマノキの実と同様、萼の部分が大きく肥大し、果実となります。ただ、シラタマノキの白い実とは違い、赤い身を上向きにつけます。

 

釣鐘型の真っ白な小さな花、花弁の表面にカールした縁の部分から萼の方に向かってうっすらと紅を引いたような線、色鮮やかな萼、本当に花の色合いのバランスが美しく、形状のバランスやカールした先端部分の可愛らしいさも含め、非常に魅力あふれる花の1つです。

 

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)

 

 

088

シラタマノキの実(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

本日は、9月に北海道・旭岳の麓で観察した「シラタマノキ(白玉の木:Gaultheria pyroloides)の実」をご紹介します。

 

シラタマノキの実(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gaultheria pyroloides
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:シラタマノキ属(Gaultheria)

 

シラタマノキ(白玉の木)はツツジ科の高さが10~30㎝程度の常緑小低木です。
日本では本州・中部地方の以北から北海道に分布し、海外では東北アジアからアラスカまで分布します。亜高山帯~高山帯にかけて、比較的日当たりの良い礫地などに自生します。

 

葉は楕円形をしており、ほんの少し厚みがあり、光沢も若干確認ができます。葉脈が表も裏もくっきりと出ており、葉の縁が少し鋸歯となっています。

 

この9月には観察できませんでしたが、花は長さが0.5㎝程度と小さく、丸みを帯びた壺型で下向きに垂れ下がるように咲き、花の先端(キュっとしぼんだ部分)が浅く5裂しています。
アオノツガザクラなどと花の形状は壺型でよく似ていますが、個人的にはシラタマノキの花の方が少し角ばっている印象があり、アオノツガザクラの方がより丸い形状をしている印象です。
また、南米パタゴニアで観察したチャウラも同じシラタマノキ属です。花の形状は似ていますが、実は真っ赤です。

 

花期が過ぎ、9月を過ぎると萼の部分が大きくなり、果実を覆います。1㎝弱の小さな果実が、上の写真のように真っ白な玉状の実をつけることから「シラタマノキ」という和名になったと言われています。別名で「シロモノ」ともよばれ、同じシラタマノキ属で「アカモノ」という花もあります(別名はイワハゼ)。

 

シラタマノキの実は、口にすると甘味はあるそうですが・・・実は筋肉疲労などの塗り薬でも使われる「サロメチール(サリチル酸)」の匂い、味がします。
私は口にしたことはありませんが、落ちていた実を割って匂いは確認したことがあります。皆さん、是非匂いを確認してみてください・・・と言いたいところですが、生っている実を採ってはいけませんよ。

 

今年はシラタマノキの花を観察することができなかったので、いつの日か観察した際に花の方も改めてご紹介します。

015

チャウラ Chura(Pernettya Mucronata)

先日、我が家の近所で白い水仙を栽培されているお宅の前を通り、思わず足を止めて観察してしまいました。関西では淡路島の灘黒岩水仙郷が有名ですが、すでに見頃は過ぎてしまっております。来年は水仙を見れる時期に淡路島に行ってみようと思います。

 

本日もパタゴニアの花「チャウラ(Pernettya Mucronata)」をご紹介させていただきます。

チャウラの花 (Pernettya Mucronata)

被子植物 双子葉類
学名:Pernettya Mucronata 現地名:チャウラ(Chura)
科名:ツツジ科(Ericaceae) 属名:シラタマノキ属(Gaultheria)

 

チャウラは、パタゴニアにある各地の展望台やハイキングルートで観察することができ、花は春から夏にかけて、夏から秋にかけて赤い実をつけます。
先日同行させていただいたパタゴニアの撮影ツアーでも、その実を摘み取りながらパタゴニアの風景とともに「チャウラの味」も楽しんできました。

 

チャウラはツツジ科の灌木で、葉は少し光沢があり、小さくて鋭く尖っており、花は白く丸みのある鐘形をして春から夏にかけて花を咲かせます。
花の形状からツガザクラかヒメシャクナゲか?と思わせる花です。

 

その後、直径で1㎝弱の大きさの鮮やかな赤い実をつけるのですが、実は少しリンゴのような食感と味。以前、パタゴニアへご一緒したお客様とチャウラの実を摘みながらハイキングを楽しんでいた際、空気が入ったような食感から「空気リンゴ」と名前を付けながら、何度も口に運んだことが思い出です。カラファテの実と違って、棘が無いので摘み取りやすいので、次から次へと手が伸びてしまいます。

 

現地では、夏から秋にかけてパタゴニアの草地にたくさんの実をつけるビタミンが豊富なチャウラは、年に2度ほど収穫され、ジャムにされています。
実は、そのジャムを食べたことがなく、いつかチャウラのジャムも食べてみたいと思っています。

 

以前紹介したカラファテの花の実や、今回紹介したチャウラの実を摘み取りながらのハイキングは、パタゴニアでの1つの楽しみでもあります。

チャウラ(Chura)の実