京都市右京区の「蓮の寺」として有名な法金剛院で蓮の花をめでる観蓮会(かんれんえ)が始まったというニュースがありました。
暦の上、7月12日から七十二候(しちじゅうにこう:二十四節気(にじゅうしせっき)は半月毎の季節の変化を示していますが、これをさらに約5日おきに分けて気象の動きや動植物の変化を知らせるのが七十二候)では「蓮始開(はすはじめてひらく)」の期間となり、7月中旬から8月中旬に蓮の花は見頃を迎えます。
蓮の花の命は4~5日と短いですが、泥の中から美しく成長するその姿に、昔の人々は極楽浄土を見たとされ、仏教では慈悲の象徴とされています。
法金剛院の観蓮会は8月2日まで開かれてようなので、是非訪れてみたいものです。
蓮の花のニュースをご紹介しましたが・・・本日は蓮の花のご紹介ではなく、前回に引き続き、本日日本の花である「コバイケイソウ(Veratrum stamineum)」をご紹介します。本日の写真も弊社東京本社に在籍する島田が霧ヶ峰で撮影した写真を拝借させてもらいました。
被子植物 単子葉類
学名:Veratrum stamineum
和名:小梅蕙草
科名:シュロソウ科(Melanthiaceae)またはメランチウム科
属名:シュロソウ属(Veratrum)
コバイケイソウは、ユリ科(Liliaceae)と記載しているもの、シュロソウ科(Melanthiaceae)と記載されているものと様々です。
現在、コバイケイソウはユリ目シュロソウ科(またはメランチウム科)シュロソウ属に分類される多年草です。以前はユリ目ユリ科(Liliaceae)に含められていましたが、新しい植物分類体系でシュロソウ科と分類されるようになりました。
本州の中部地方以北から北海道に分布し、本州では山地から亜高山帯の草地や湿地に生えるが、北海道では低地でも観察することができる日本固有の多年草です。
草丈は直立で50㎝から100㎝に及びます。
葉は互生(茎の一つの節に1枚ずつ方向をたがえてつくこと)し、広楕円形で長さが10~20㎝ほどの大型の葉を付けます。大型の葉に直接触れると固さを感じ、葉脈は平行脈ではっきりとしているのが印象的です。基部は大型の葉が茎を包むように生えています。
花期は6~8月、茎の上部に白く可憐な花が密集して円錐花序をつくります。
花の直径は1㎝ほどと小さく、花弁や萼などの花被片は6枚あり、中央の花穂には両性花(一つの花に雄しべと雌しべの両方が備わっている花:サクラ・アサガオなど)がつき、脇に枝分かれした花穂には雄花(おしべのみをもつ花)がつくそうです。
コバイケイソウの群生を初めて観察した時は、毎年同じ株が花を咲かせるかと思っていましたが、同じ株が毎年花を咲かせるのではなく、多数の花が揃って咲くのは数年に一度しかないそうです。
コバイケイソウは有毒です。全草に毒性をもち、誤って食べてしまうと嘔吐やけいれんを引き起こし、重篤な場合は死に至ることもあります。若芽が山菜のオオバギボウシなどに似ていることから、誤食による食中毒が毎年発生しているそうです。
名前の由来は、花が梅に似ている点、さらに葉が蕙蘭(けいらん:ラン科の紫蘭の古名)に似ていることから「梅蕙草(バイケイソウ)」と呼ばれるようになり、バイケイソウより小型な種ということでコバイケイソウと呼ばれるようになりました。
コバイケイソウは、私にとっては非常に思い出深い花の1つです。
私がまだ20代の頃(国内添乗員だった頃)、中央アルプスの木曽駒ケ岳へ訪れ、ロープウェイに乗って標高2,612mの千畳敷駅に到着したら、花畑一面に高山植物が咲き揃い、その中でコバイケイソウが群生していました。
現地ガイドさんが「今年はコバイケイソウの当たり年」とおっしゃっており、お客様と共に夢中になって観察したのを今でもはっきりと覚えています。
あの時の千畳敷カールでのコバイケイソウの群生は、今思えば私が高山植物に興味を持つきっかけになった風景の1つかもしれません。
※唯一の後悔は、当時はカメラ撮影に興味がなかったことです。