以前、カナディアンロッキーに咲く『レディース・スリッパー』、さらには『北米と南米に咲くレディース・スリッパー』についてご紹介しました。
それらの花々の紹介ブログを作成する中、「そういえば、カナディアンロッキーでもう1つスリッパーと紹介のあったな~」と思い出し、今回は『ヴィーナス・スリッパー』(Calypso bulbosa)という花をご紹介します。
被子植物 単子葉類
学名:Calypso bulbosa
英名:ヴィーナス・スリッパー(Calypso bulbosa)
フェアリー・スリッパー(Fairy slipper)
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:ホテイラン属(Calypso)
『ヴィーナス・スリッパー』(Calypso bulbosa)は、日本でいうところの『ホテイラン』(布袋蘭)。色々と調べてみると、日本のホテイラン(ヒメホテイラン)の変種(近縁種)のようです。
北米大陸のカナダではブリティッシュ・コロンビア州やアルバータ州からニューファンドランド州まで比較的広範囲に分布し、アメリカ合衆国でもアラスカ、カルフォルニア州など北西部に分布します。また、ユーラシア大陸にも自生するという資料もありました。
カナダでは『ヴィーナス・スリッパー』と呼ばれており、ローマ神話の愛と美の女神『ヴィーナス』の名が付く花です。属名『Calypso』はギリシャ神話に出てくる蒼穹を支える巨人アトラースの娘で海の女神。『隠す』という意味があります。
その他、『妖精のスリッパー』(Fairy slipper)とも呼ばれています。
一般的に花期は5~6月。針葉樹林の林床、日陰を好んで自生・群生し、カナディアンロッキーの中で最初に咲くランの1つと紹介されています。
草丈は10~20cmほど。根元に濃い色合いで3~5cmほどの楕円形の葉をつけています。単子葉類・ラン科らしく、平行に伸びる葉脈がはっきりと見て取れます(写真には写っていませんが・・・)
花弁に近い色~濃紅色の花茎を伸ばし、花茎の頂部に垂れ下がるように1つの花を咲かせます。
長さ1~2cmほどの萼片(中3枚)と側花弁(両脇2枚)はピンク色~紫色、日本のホテイランより若干濃い印象の色合いです。
また、中央に同じ色合いで帽子のひさしのようになって花弁状に見える部分は雌しべと雄しべが合体したずい柱です。袋状になっている唇弁のフタのような構造になっており、ずい柱の内側に花粉の塊がついています。
特徴的な唇弁は1~3cm、萼片や側額弁とほぼ同じ長さで大きく下に垂れ下がっています。唇というより『舌』と表現したほうが良い気もします。
唇弁は先端部(下部)は白色(薄いピンク色のものの)ですが、基部の部分は線状で濃い紫色の斑紋があるのが特徴です。この線状の斑紋も日本のホテイランに比べて濃い印象ですが・・・個体差かな?
唇弁の中央に3列の黄色毛(花粉塊かな?)があり、これがこの花の色合い(見た目)を印象的なものにしてくれています。
ヴィーナス・スリッパー(Calypso bulbosa)には、日本のホテイランも含め、様々な品種(変種、自然交雑種など)があるそうです。
日本でも観察できるホテイランと同系種ですが、遠く離れたカナディアンロッキーで観察すると、一味違って見えるのが不思議です。