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エンレイソウ(延齢草:Trillium smallii)

先日、福島民報のWEBニュースにて、水辺の妖精”ミズバショウ”が見頃を迎え、5月29日に尾瀬の山開きがされたというニュースが発表されていました。一部残雪が残る中、ミズバショウの見頃は1週間ほど続くそうです。
また、福島県の尾瀬桧枝岐温泉観光協会によると、夏に咲くニッコウキスゲの見頃は7月20日前後になるということでした。
弊社ツアー「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」は、ニッコウキスゲの花咲く季節に合わせて7月17日出発に設定しており、尾瀬桧枝岐温泉観光協会の発表にぴったりの日付です。是非ご検討ください。

 

本日は「エンレイソウ(延齢草:Trillium smallii)」をご紹介します。

 

エンレイソウ(延齢草:Trillium smallii)

 

被子植物 単子葉類
学名:Trillium smallii
科名:シュロソウ科(Melanthiaceae)
属名:エンレイソウ属(Trillium)

 

エンレイソウ(延齢草)は、シュロソウ科エンレイソウ属の多年草で、北海道、本州、四国、九州に分布し、低地や林床などの湿った場所に自生します。海外では、サハリン(樺太)、南千島などに分布します。

 

草丈は20~50㎝、やや太めの茎で直立します。葉は茎頂に3枚輪生し、形状は菱状卵形で10~15㎝のやや大きめ、葉の先端が尖り、基部が広めな形状をしています。

花被片が褐紫色のエンレイソウ(延齢草)

花期は4~5月。輪生する3枚の葉の中央から花柄を伸ばし、花柄の頂に花を1つ咲かせます。
エンレイソウ(延齢草)は、花弁(内花被片)はなく、花弁のように見えるのは全て萼(外花被片)です。
萼は1.5~2㎝ほどの長さの長楕円形で緑色または褐紫色。雄しべは6本で、葯は花糸より短く褐色、上の写真をご覧いただくと褐色の葯がよく判ります。また、花柱は花の中央に球形の子房の上で基部から短く3裂しており、上の写真で褐色の花柱がはっきりと判ります。
果実は「球形で黒色」という認識でしたが、エンレイソウの果実は通常は緑とのことです。黒色の果実をつける品種はクロミノエンレイソウと呼ばれるそうです。

 

エンレイソウは大きな葉に小さな花を1輪だけ咲かせるため、特に外花被片(緑)が緑の花だと見落としてしまいがちですが、5月に信州でキレイに咲くエンレイソウを見つけた際には歓声が挙がりました。
次回、飯綱町・むれ水芭蕉園で見つけたシロバナエンレイソウをご紹介します。

 

花被片が緑色のエンレイソウ(延齢草)

 

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ミヤマキケマン(深山黄華鬘:Corydalis pallida var. tenuis)

先日、「清流の国・岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング」を造成しました。
「岐阜の宝もの」と称される3つの景勝地で自然探勝ハイキングを楽しみ、その後、名勝・上高地へ訪れる5日間ツアーです。
8月は天生湿原にシラヒゲソウの花、9月はリンドウが咲き、10月は紅葉シーズンに合わせたツアーです。是非ご検討ください。
また、来週には長野県で伝統工芸品の和紙で御朱印帳作り体験をし、ご自身で作った御朱印帳を持って小菅神社や戸隠神社五社を巡る参拝ツアーを造成しております。こちらも乞うご期待!

 

本日は、白馬村の姫川源流自然探勝園にて観察した「ミヤマキケマン(深山黄華鬘:Corydalis pallida var. tenuis)」をご紹介します。

 

ミヤマキケマン(深山黄華鬘:Corydalis pallida var. tenuis)

 

被子植物 双子葉類
学名:Corydalis pallida var. tenuis
科名:ケシ科(Papaveraceae)
属名:キケマン属(Corydalis)

 

ミヤマキケマン(深山黄華鬘)は、先日ご紹介したヤマエンゴサク(山延胡索)と同じくケシ科キケマン属の多年草で、本州の近畿以北に分布します。
同じ黄色いエンゴサクであるフウロケマン(風露華鬘)の変種と言われており、山地や低地の日当たりの良い場所に自生します。

 

草丈は20~50㎝、茎は赤褐色で太くしっかりしており、茎や葉柄などは無毛です。
葉は、1~2回羽状複葉で深裂し、小葉は広卵形で欠刻(葉の縁にある大きな切れこみ)があります。今回観察した際には、葉の縁の色合いが紫褐色を帯びていました。

 

花期は4~6月。茎頂に長さ2㎝ほど黄色い花を多数、密集して花を咲かせます(総状花序)。
ヤマエンゴサク(山延胡索)と同様、花弁は上下に広がる2枚の外花弁と内側に隠れる2枚の内花弁の計4枚です。
外花弁は、上の花弁の後方に蜜の入った距(きょ:花弁や萼が変化したもの)が伸びており、距の部分も含めて全体的に黄色となります。
ある資料には、外花弁の先端は緑色で、時間の経過とともに褐色を帯びて反り返るとありました。
内花弁は、横向きに半球形に膨れている部分ですが、花の色合いに比べて少し黄緑色に近い色合いのため、判りやすいです。
※下写真は、目一杯アップにしてみましたが、外花弁と内花弁の違いは判りますでしょうか。

 

非常に色鮮やかな花を付け、ヤマエンゴサクに比べて1つの株につける花の数が多かったこともあり、非常に印象に残る花でした。
前回より2回に分けて、エンゴサクの仲間をご紹介しましたが、来春に観察する際には、是非外花弁と内花弁など、花の形状にも注目して観察してみてください。

 

外花弁と内花弁(横向きに半球形に膨れている部分)の違いは判りますか?

 

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ヤマエンゴサク(山延胡索:Corydalis lineariloba)

本日も春の花、スプリング・エフェメラルの1つである「ヤマエンゴサク(山延胡索:Corydalis lineariloba)」をご紹介します。

 

ヤマエンゴサク(山延胡索:Corydalis lineariloba)

 

被子植物 双子葉類
学名:Corydalis lineariloba
別名:ヤブエンゴサク
科名:ケシ科(Papaveraceae)
属名:キケマン属(Corydalis)

 

ヤマエンゴサク(山延胡索)は、本州、四国、九州に分布する日本固有の多年草。山野の林床などに自生します。地中の塊茎が漢方薬の「延胡索」に似ていることから名付けられたとされています。

 

草丈は10~20㎝ほどで、地中に塊茎をもち、茎を1つ出します。
葉は柄をもち、2-3回3出複葉。長さ1~3cmの小葉は通常2~3裂するとされていますが、実際は葉の形状や枚数には変異があり、形状は線形、披針形、卵円形など様々です。
私が観察した際には楕円形の葉でしたが、私が持つ花図鑑には円形の小葉の写真も掲載されていました。この点は選別の際に頭を悩ましてしまいそうな部分です。

 

花期は4~5月。茎頂に長さ1.5~2.5㎝ほどの小さな花を5~10個ほど総状につけます(総状花序)。上写真では青紫色の花を咲かせていますが、色の変化が多く、青紫~赤紫色があります。
花弁は上下に広がる2枚の外花弁と内側に隠れる2枚の内花弁の計4枚となります。
上写真をご覧いただくと、上下に唇状に広がる部分が外花弁、真ん中に横向きに白く半球形に膨れている部分が内花弁です。

 

外花弁は2枚が上下から合わさり、上の方の花弁の後方に蜜の入った距(きょ:花弁や萼が変化したもの)が伸びており、花弁に比べて淡い色合いとなっています。

 

内花弁は内側に空洞を作り、この内部に雄しべと雌しべが収まっており、花粉や花柱を風雨から保護するための工夫とされています。また、ある資料には、雄しべと雌しべを包む左右の合着した花弁に吸蜜のために虫がとまると、その重みで下と横の3花弁が下がり、雄しべと雌しべが露出するとのことでした。

 

花の基部にある苞葉は3~5裂しており、同じエンゴサクの仲間であるエゾエンゴサク(蝦夷延胡索:Corydalis fukuharae)との見分け方のポイントとなります。上写真にほんの少しだけ苞葉が確認できます。

 

よく、エゾエンゴサクとカタクリは同じ場所、同時期に群生すると聞き、私もその場面に出会ったことはありますが、今回観察した信州(白馬村、鬼無里など)では同じ場所にカタクリはなく、単独で咲いていることが多かったですが、その分ヤマエンゴサクの淡い色合いが周りの緑とマッチし、興奮し過ぎず、心癒される花としてゆっくり観察することができました。

 

ヤマエンゴサク(山延胡索:Corydalis lineariloba)

 

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アズマイチゲ(東一華:Anemone raddeana)

2021年の桜の開花は、観測史上最も早い開花日を更新する地域が多かった中、早くも梅雨入りのニュースが報道され始めました。私の住む近畿地方も、1951年の統計開始以来最も早い梅雨入りとなったそうです。早く梅雨入りしても良いですが、その分早く湿気の多い梅雨が終わってほしいものです。

 

前回に引き続き、この春に観察した花々を、この日は「アズマイチゲ(東一華:Anemone raddeana)」をご紹介します。前回ご紹介したキクザキイチゲ(菊咲一華)と見た目にもよく似ており、見分けが非常に難しい花ですが、違いなどを含めてご紹介します。

 

アズマイチゲ(東一華:Anemone raddeana):花弁状の基部が紫色

 

被子植物 双子葉類
学名:Anemone raddeana
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:イチリンソウ属(Anemone)

 

アズマイチゲ(東一華)は、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、春先に花を咲かせ、夏には地上部は枯れてなくなり、翌春まで地中の地下茎で過ごすスプリング・エフェメラルの一種です。

 

アズマイチゲ(東一華)は、北海道から本州、四国、九州に分布し、山麓の日当たりの良い場所や落葉樹林の林床などに自生します。海外では、サハリンなどにも分布します。キクザキイチゲ(近畿以北~北海道)に比べ、分布域の広さに違いがあります。

 

「東一華」という和名の由来は、キクザキイチゲ(菊咲一華)と同様、茎頂に1輪の花をつけることに由来しますが、東日本で発見されたことから「東(あずま)」という名が付いたそうですが、その後に西日本でも発見されたそうです。

 

草丈は15~30cm、長さ2~3cmほどの茎葉をつけ、3輪生し3出複葉で小葉の先端には若干の鋸歯があります。葉も若干垂れ下がっているのも特徴です。
キクザキイチゲ(菊咲一華)に比べ、アズマイチゲ(東一華)の葉は切れ込みは浅く(非常に浅い)、楕円形に近い印象です。
根生葉も3出複葉ですが、小葉は茎葉に比べて深く切れ込んでいるため、この点がキクザキイチゲ(菊咲一華)と混同してしまう要因なのかもしれません。

 

花期は3~5月。茎頂に3~4cmほどの花を一輪咲かせ、キクザキイチゲ(菊咲一華)と同様に花弁に見える部分は「花弁上の萼片」で8~13枚です。花の色は白、キクザキイチゲ(菊咲一華)のように色に多様性はありません。
アズマイチゲ(東一華)を見分けるポイントとして花弁上の萼片の基部(花の中心部分)と裏面が少し紫色を帯びている点です。上の写真では少し判りづらいですが、よく見ると雄しべと雌しべが密集している基部の部分に紫色が少し確認できます。

 

アズマイチゲ(東一華)の花茎には毛はなく、花茎には短い軟毛があるのがキクザキイチゲ(菊咲一華)と良く紹介されます。
色々と調べていると、アズマイチゲ(東一華)にも開花前には軟毛があり、開花する頃にはなくなっているそうです。時折、残っていたりすることもあり、その場合は軟毛が長いとアズマイチゲ(東一華)、短いとキクザキイチゲ(菊咲一華)となるようです。

 

2種を見分けるポイントをまとめると、以下のとおりです。
<葉の違い>
◇「アズマイチゲ(東一華)」の葉は、垂れ下がり、切れ込みが非常に浅く楕円形に近い印象
◇「キクザキイチゲ(菊咲一華)」の葉は、横に広がり羽状に深裂し、先が尖っている

 

<花弁状の萼片の違い>
◇アズマイチゲ(東一華)は白色、白以外(紫、淡紫)はキクザキイチゲ(菊咲一華)
→ただ、キクザキイチゲ(菊咲一華)には白花もある
◇アズマイチゲ(東一華)は、花弁上の萼片の基部が紫色…これが最大の特徴。

 

<花茎の軟毛の有無>
◇アズマイチゲ(東一華)は軟毛はなく、キクザキイチゲ(菊咲一華)は短い軟毛がある
→アズマイチゲ(東一華)にも長い軟毛が残っているものもある
・軟毛が長いものがアズマイチゲ(東一華)
・軟毛が短いものがキクザキイチゲ(菊咲一華)

 

もう少し細かな見分け方もあるようですが、特に葉の違いと花弁状の萼片の基部が見分け方のコツではないでしょうか。皆さんも以前に観察・撮影したもので見比べてみてください。

 

アズマイチゲ(東一華):花茎に軟毛がなく、葉も垂れ下がる
キクザキイチゲ(菊咲一華):葉に切れ込みがあり、花茎に毛が確認できます

 

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キクザキイチゲ(菊咲一華:Anemone pseudoaltaica var. pseudoaltaica)

先日、信州・長野県の大町市、白馬村、鬼無里、戸隠を巡り、各所で水芭蕉やカタクリの群生を観察することができ、その他フクジュソウやニリンソウなど春の花の観察を満喫させていただきました。

 

本日から少しずつ春の花をご紹介していきます。
本日は「キクザキイチゲ(菊咲一華:Anemone pseudoaltaica var. pseudoaltaica)」をご紹介します。

 

キクザキイチゲ(菊咲一華:Anemone pseudoaltaica var. pseudoaltaica)

 

被子植物 双子葉類
学名:Anemone pseudoaltaica var. pseudoaltaica
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:イチリンソウ属(Anemone)

 

スプリング・エフェメラルとは、落葉樹林で木々が芽吹く前の春先に花を咲かせ、夏までの間に光合成を行い、木々に葉が生い茂り林床が暗くなる夏には地上部を枯らして地中で過ごす草花の総称のことを言います。
本日ご紹介する「キクザキイチゲ(菊咲一華)」は、カタクリやフクジュソウと合わせて、スプリング・エフェメラルと称される花の代表的な花として紹介される花の1つです。

 

キクザキイチゲ(菊咲一華)は、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。
菊のような形で花を咲かせ、茎頂に1輪の花をつけるため「菊咲一華」と呼ばれます。
「一華」は一茎に一輪の花を咲かせるという意味で、イチリンソウ属の花には「イチゲ」と名のついた花が多くあります。私も知りませんでしたが、キクザキイチゲは別名を「菊咲一輪草(キクザキイチリンソウ)」とも呼ばれるそうです。
因みに、イチリンソウ属の属名「Anemone」とは、ギリシャ語で「風=anemos」が語源と言われています。

 

近畿以北から北海道まで分布し、ブナ帯などの落葉樹林の林床などに自生します。ある資料には「日本固有種ではないが、国外分布については情報がない」とありました。

 

草丈は10~20㎝で直立し、茎葉は3枚で輪生し、3出複葉。小葉は羽状に深裂し、先が尖っているのが特徴です。
葉と花は同時に展開しますが、花の咲き始め(葉が伸びきっていない時)は葉の色に褐緑色が帯びており、成長・展開をすると葉は鮮やかな緑色となっていきます。
※上の写真は、葉に褐緑色が帯びているのが確認できるため、花の咲き始めのようです。

 

花期は3~5月。茎頂に直径3cmほどの花を1輪咲かせます。キクザキイチゲには花弁がなく、花弁に見えるのは「花弁状の萼片」で、8~13枚で、白色、淡い紫色、濃青紫色などバリエーションが豊かな花です。上の写真と下の写真では、色に差がありますが、同じキクザキイチゲです。
花の中央には雄しべ、雌しべをそれぞれ多数付け、葯(花粉のたまる部分)は白色をしています。

 

キクザキイチゲの花茎には毛が確認でき、よく似た花である「アズマイチゲ」との見分け方として、①葉の形状と②花茎の毛の有無があります。次回、アズマイチゲの紹介と2種の見分け方をご紹介しますので、お楽しみに。

 

キクザキイチゲ(菊咲一華:Anemone pseudoaltaica var. pseudoaltaica)

 

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ギンリョウソウ(銀竜草:Monotropastrum humile)

先日、中日新聞のサイトにて「金沢市内各地でヒメリュウキンカ駆除の動き」というニュースを見ました。ヒメリュウキンカは欧州原産で観賞用として日本に持ち込まれ、野生化し、日本各地に分布した花ですが、非常に繁殖力が強いため、金沢城公園の二の丸広場 などで金沢城・兼六園管理事務所の職員数名が駆除作業を行っているそうです。昨年から鈴木大拙館(同市本多町)横の散策路では駆除作業を始めていたそうですが、駆除後には在来種のショウジョウバカマ、カタクリなどが再び姿を見せたそうです。
花そのものはキレイなヒメリュウキンカですが、在来種の保護のためには仕方がない措置なのかもしれません。

 

本日は「ギンリョウソウ(銀竜草:Monotropastrum humile)」をご紹介します。以前より、この「世界の花だより」で紹介したいと思っていたのですが、なかなか観察する機会に恵まれずにいましたが、数年前に嫁さんと訪れた屋久島旅行の際の写真を整理していたら、今回掲載する写真が出てきたので、紹介することができました。

 

ギンリョウソウ(銀竜草、学名:Monotropastrum humile)

 

被子植物 双子葉類
学名:Monotropastrum humile
別名:ユウレイダケ
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ギンリョウソウ属(Monotropastrum)

 

ギンリョウソウ(銀竜草)は、日本全土に分布し、海外では千島列島、樺太、中国、ヒマラヤなどに分布し、薄暗い湿り気のある林床に自生します。今回掲載した写真は、屋久島の苔むす森でおなじみの「白谷雲水峡」にて観察したものです。

 

ギンリョウソウはツツジ科ギンリョウソウ属の多年草で、腐生植物として知られています。
菌類に依存して栄養を得ている植物を腐生植物といい、キノコ類の菌が本種の根に侵入しつつ腐敗物を分解し、それを本種が栄養にしています。直接的には菌類に寄生し、間接的には菌類と共生する樹木が光合成により作り出している有機物を菌経由で得て自生している植物です。
※古い資料などでは「腐葉土から栄養を得る」と記載がされていますが、腐葉土から栄養を得る能力は持っていないようです。確かに過去「腐葉土で生育する」と解説を聞いたことがあるような気がします。

 

草丈は10~20㎝で直立していますが、花が咲く時期以外は地上では姿は見られず、4~8月頃に地下から花茎を伸ばします。葉は、茎に葉が退化したものとされる長楕円形の鱗片葉が多数互生してつけます。

 

枝分かれせず直立した茎頂に若干下向きに花を1つ咲かせます。
形状は円筒状で先端がやや広がっており、花弁も萼片も3~5枚、花弁の方が少しだけ長く先端が少し広がり、ほんの少しだけ毛も確認ができるのが特徴です。
雄しべは10本前後あり、上写真をご覧いただくと花の内部にオレンジ色の部分が確認できますが、これが雄しべの葯(花粉を入れる部分)となります。写真では判りづらいですが、雄しべの花糸部分にも若干の毛が確認できます。
雌しべの柱頭は先端が円盤の様に広がっており、濃紫色(黒色に見えることも)。下向きに咲く花を覗き込むと、目玉が花の外を覗いているように見える(目が合ったような錯覚も)部分です。

 

ギンリョウソウ(銀竜草)は、全体が白色で葉緑体を持たない植物です。
「銀竜草」という漢字名は、下向きに咲く花と鱗片に包まれた姿を竜に見立てたことが由来とされ、また別名の「ユウレイダケ」は、林床の薄暗い場所に真っ白な姿で自生する姿から幽霊に見立てたと言われています。
花の姿と合わせて、内部を覗き込んだ際、円盤状の雌しべの柱頭が「目玉」に見え、恐怖におののくから「幽霊」という名が付いたという話も聞いたことがあります。

 

形状なども非常に似ている「ギンリョウソウモドキ(Monotropa uniflora:ツツジ科)」という花もありますが、花の咲く時期がことなり、ギンリョウソウモドキは夏の終わりから秋にかけて花を咲かせます。

 

ギンリョウソウを実際に観察すると、本当に驚きの一言です。
葉緑体を持たず、真っ白で光沢こそありませんが、その姿は非常に魅力ある姿をしており、覗き込んだときの「目玉」など、非常に興味を引く花であります。
次回は是非、柱頭の目玉の部分以外にも花弁や萼片、鱗片葉、オレンジ色の雌しべなどにも注目して観察してみてください。

 

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※高山植物の宝庫・千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキングと静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

ご好評につき、追加設定!!
花の北海道フラワーハイキング
※チングルマ、ミヤマキンバイ、エゾコザクラの観察、また銀泉台のコマクサ平では高山植物の女王『コマクサ』が観察できる季節限定ツアーです。

 

続々と催行決定コースも!是非ご検討を!!
花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
※6~7月は高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドと共にフラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

続々と催行決定コースも!是非ご検討を!!
花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ5日間。

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シャガ(射干:Iris japonica)

弊社では、現在夏から秋にかけて実施する国内ツアーの造成に励んでおり、随時ホームページ上で発表しております。3度目の緊急事態宣言が発令され、旅行しづらい日々が続いていますが、気分転換で「世界の花だより」のブログと共に、ツアーページも是非ご覧ください。

 

この日は「シャガ(射干:Iris japonica)」をご紹介します。

 

シャガ(射干:Iris japonica)

 

被子植物 単子葉類
学名:Iris japonica
科名:アヤメ科(Iridaceae)
属名:アヤメ属(Iris)

 

シャガ(射干)は、アヤメ科アヤメ属の多年草です。5月以降に咲くイメージのあるアヤメ科の花ですが、その中でも先陣を切って花を咲かせるのが「シャガ(射干)」の花です。

 

北海道、沖縄以外の本州全体に分布し、森林周辺の木陰や山地など、やや湿ったところに自生、群生します。学名の種小名に「japonica(日本の)」とついていますが、実際は中国原産で帰化植物です。
実は、我が家のマンションの敷地内では、春になるとツツジが満開となる前にシャガの花をたくさん咲かせ、春の訪れの目安となり、毎年の楽しみの1つになっています。

 

草丈は30~60㎝で直立し、葉は少し厚みがあり、光沢も確認できます。
葉の幅は2~3cm、長さが30~50㎝となり、アヤメ科では珍しく常緑で越冬性をもちます。形状は剣形で、葉が中央で2つに折りたたまれ、両面葉裏となる葉の形状である「単面葉(たんめんよう:葉身が普通の葉(両面葉)の裏側に相当する組織しかもたない葉)」となります。

 

花期は4~5月。茎に5~10つほどの花をつける総状花序で、直径5㎝ほどの花を咲かせます。
上写真は、極限まで拡大していますので、花の構造を確認してみてください。
花弁は、ユリの仲間と同じく、3枚の花弁と3枚の萼片に分かれています。
外花被(萼)は、全体的には白~淡紫青色をしており、紫色の斑とオレンジ色の斑がついており、シャガの花を印象付ける色合いです。中央のオレンジ色の斑の上部のオレンジ色が斑より濃くなっているのが確認できます。これもシャガの外花被片の特徴でとさか状の突起が付いています。
花弁(内花被)も全体的には白~淡紫青色をしていますが、外花被片のように斑はありません。

外花被(萼)、花弁(内花被)ともに縁が細かく切れ込みが入っている点は同じですが、斑の有無が外花被(萼)と花弁(内花被)の見分け方となります。

 

花の中央にも注目してみてください。
花の中央に3本、イソギンチャクのような形状のものが伸びていますが、これが雌しべです。
3本伸びているように見えますが、1本の雌しべが3つに分かれ、さらに先端部分が花被と同様に細かく切れ込みが入っている形状となります。内部で分かれるため、観察すると3本の雌しべに見えるのです。
雌しべの切れ込みが入っていない部分の下(背面)に雄しべが隠れています。

 

シャガの花は群生して見られることが多いですが、種子で増やすのではなく、横に長く伸びる地下茎から匍匐枝を出し、その先端に新芽を作って増えるそうです。

 

非常に色合いが印象的なアヤメ科の仲間の花ですが、是非花の構造にも注目して観察してみてください。

 

 

シャガ(射干:Iris japonica)②

 

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タチツボスミレ(立坪菫:Viola grypoceras)

先日「飛鳥の里から奈良最深部へ」のツアーへ同行させていただきました。各所で歴史、文化、自然に触れることができ、私も大阪に住んでいますが、これだけゆっくりと奈良を巡ったのは初めてで、新たな発見、再発見が多く、非常に充実したツアーでした。11月の紅葉シーズンにも設定しましたので、是非ご検討ください。

 

本日は、奈良県十津川村に位置する「玉置神社」をはじめ、各所で観察することができた「タチツボスミレ(立坪菫、学名:Viola grypoceras)」をご紹介します。

 

タチツボスミレ(立坪菫、学名:Viola grypoceras)

 

被子植物 双子葉類
学名:Viola grypoceras
科名:スミレ科(Violaceae)
属名:スミレ属(Viola)

 

日本にはスミレ属の種類は多く、タタチツボスミレ(立坪菫)も、スミレ科スミレ属のなかで身近に観察することのできるものの1つです。日本全国に分布し、海岸線や低山、亜高山帯の草地や落葉樹林の林床など、日当たりの良い場所に自生します。

草丈は10~30㎝で直立し、根生葉には細い葉柄があり、葉の形は心形で先が尖っているのが特徴です。葉には光沢は見られません。托葉(葉を包んでいたもので付け根の茎にあるもの)は櫛形となっています。

花期は3~5月。花弁が5枚で左右対称となり、上弁が2枚、側弁が2枚、唇弁が1枚からなります。直径1.5~2㎝ほどで、花の色は淡青~淡青紫色で、花弁の基部(花の中央部分)は白くなり、直立した茎が若干うつむき加減となり、その茎頂に花を1つ付けます。
距(花の後ろに突き出した中空の角状のもの:花弁や萼が変化したもの)は花色と同色で、タチツボスミレを見分ける時の目安となります。オオタチツボスミレは距の部分が白くなります。

 

各地で様々な種類が観察できます。また、それらが同時期に花を咲かせるので、見分けるのに一苦労し、総称して「スミレです」と案内してしまうことがどうしても多くなります。
花の色は淡青~淡青紫が一般的ですが、タチツボスミレは非常に変化が多く、私が花の事を調べる際に、拝見させてもらっている「野山の花たち -東北と関東甲信越の花-」のサイトでは、以下の品種の見分け方が紹介されていました。
■花色の白い・・シロバナタチツボスミレ
■花弁だけ白い・・オトメスミレ
■花弁がピンク・・サクラタチツボスミレ
■葉に赤い斑が入る・・アカフタチツボスミレ
■花柄等に毛がある・・・ケタチツボスミレ
■海岸性・・・シチトウスミレ
■渓流対応・・・ケイリュウタチツボスミレ
■豪雪地対応(亜高山)・・・ツルタチツボスミレ
■豪雪地対応(低山)・・・テリハタチツボスミレ
※これらすべてを見分けることができれば、花の観察も楽しくなるかも。

 

スミレやカタクリなどの植物の種子には、脂肪酸、アミノ酸、糖からなる化学物質を含むエライオソームという物質が付着しています。このエライオソームの誘引された蟻は、餌として種子を巣へ持ち帰り、エライオソームのみを食べ、種子は巣の近くに残します。スミレはこのようにして自生エリアを広げます。蟻とスミレの関係は切っても切れない関係です。
次回スミレの花を見つけた際、周辺で蟻が種子を運ぶ姿を探してみてください。

 

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※島内を周遊し亜熱帯植物や照葉樹林の植生を観察と1泊2日プランで森林限界を目指す「黒味岳フラワートレッキング」へご案内。屋久島の垂直分布を深く知ることのできる季節限定企画。

 

※ご好評につき、追加設定!!
花の北海道フラワーハイキング
※各所での高山植物の観察、ハイキングのために十分な時間を設けています。北海道ならではのチングルマ、ミヤマキンバイ、エゾコザクラなど、また銀泉台のコマクサ平では高山植物の女王『コマクサ』が観察できる季節限定のツアーです。

 

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エゾイブキトラノオ(蝦夷伊吹虎の尾:Bistorta officinalis ssp. pacifica)

本日までにいくつか花の観察ツアーを造成させていただきましたが、お問い合わせやお申し込みをいただく際に弊社ホームページのツアーページを開くと、思わず高山植物の花に見惚れて、お客様のお話しを聞きそびれそうになる日々が続いています。

 

本日は「エゾイブキトラノオ(蝦夷伊吹虎の尾:Bistorta officinalis ssp. pacifica)」をご紹介します。

 

エゾイブキトラノオ(蝦夷伊吹虎の尾:Bistorta officinalis ssp. pacifica)

 

被子植物 双子葉類
学名:Bistorta officinalis ssp. pacifica
科名:タデ科(Polygonaceae)
属名:イブキトラノオ属(Bistorta)

 

エゾイブキトラノオ(蝦夷伊吹虎の尾)は、タデ科イブキトラノオ属に属する多年草です。日本では、北海道の夕張山地や中央高地から礼文島の海岸近くまでの広い範囲に分布し、海外ではサハリンなど北半球の寒冷地帯に広く分布します。

 

日本全国に分布するイブキトラノオ(伊吹虎の尾:Bistorta officinalis ssp. japonica)とは、亜種同士で兄弟ともいえる関係です。ただ、資料によっては「イブキトラノオ/別名:エゾイブキトラノオ」と記載しているものもあります。

 

草丈は30~100㎝となり、草丈20-80cmのイブキトラノオに比べ、草丈が高くなります。
葉は根生葉は長めの葉柄をもち、卵状楕円形と幅広く、根生葉の基部は心形。茎葉は根生葉に比べ小さく、少し幅も広い印象です。

 

花期は7~9月。花は茎頂に3~6cmほどの円柱花序を作り、白色から淡いピンク色の小さな花を密集して咲かせます。イブキトラノオに比べ、エゾイブキトラノオの方が花の量は多いとされています。花弁はなく、萼が5深裂しており、8~10本の雄しべが長く突き出ています。
エゾイブキトラノオは、イブキトラノオに比べ、草丈も高く、花穂も長く、色も若干濃いため、少し派手さを感じることもあります。

 

和名の「虎の尾」は、花穂を虎の尾に見立てたことから名付けられました。

 

4月23日現在、東京など4都府県に対して新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言発令を正式決定する見通しと政府より発表されました。コロナウイルスの感染症拡大の猛威には十分気を付けた生活を続けないといけませんが、この花のブログをご覧いただき、少しでも心を和んでくれればと願っております。

 

エゾイブキトラノオ(蝦夷伊吹虎の尾:Bistorta officinalis ssp. pacifica)

 

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ミヤマキンバイ(深山金梅:Potentilla matsumurae)

先日「飛鳥の里から奈良最深部へ」に同行させていただき、奈良の文化・歴史・自然を楽しむことができ、さらに各所で咲く桜やシャクナゲ、スミレ、シャガの花などの観察も楽しめ、充実の6日間でした。
次回は5月1日より「花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る」です。いよいよ春の花の観察が本格的に楽しめるツアーのため、今から楽しみで仕方ありません。
※まだ、残席もあり間に合いますよ!!

 

本日は「ミヤマキンバイ(深山金梅:Potentilla matsumurae)」をご紹介します。

 

ミヤマキンバイ(深山金梅:Potentilla matsumurae)

 

被子植物 双子葉類
学名:Potentilla matsumurae
科名:バラ科(Rosaceae)
属名:キジムシロ属(Potentilla)

 

ミヤマキンバイ(深山金梅)は、日本では本州の中部以北から北海道にかけて分布し、海外では千島列島やサハリンに分布する多年草です。ある資料には韓国の済州島にも分布するとありました。亜高山帯から高山帯の砂礫地や草地に自生する高山植物を代表する花の1つです。

 

草丈は10~20㎝で直立し、茎には多くの毛が確認できます。
葉は3小葉で、小葉は倒卵形で1.5~2.5㎝ほど。表面には光沢があり、縁には粗く(浅く)鋭い鋸歯も確認ができます。よく観察すると、小葉の縁に多少毛があるのも確認ができます。

 

花期は6~8月。茎頂に直径1.5~2㎝ほどの黄色い花を1~2個咲かせます。
花弁は広倒卵形で5枚、花弁の先端が少し凹んでいる点が特徴です。資料によってはハート形と表記するものもあります。
萼片は狭卵形で、萼や花柄などにも毛が確認できます。雄しべと雌しべはそれぞれ20個ほどあります。

 

和名の「深山金梅」は、高山に咲くキンバイ(金梅)と言う意味で、「金梅」は花の色が黄色で形が梅の花に似ているところから名付けられました。

 

黄色い花は似ているものが多く、見分けが本当に難しいです。
また、「ミヤマ~」と名のついた花、「~キンバイ」と名のついた黄色い花など、ややこしいの一言です。
ミヤマキンバイ、シナノキンバイ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマキンポウゲ・・・。

 

髙橋 修さんの「山に生きる花・植物たち」で、見分け方として「葉にも注目しましょう」とありました。大まかな見分け方は以下のとおりです。

 

ミヤマキンバイの花弁は5枚で先端が凹み、小葉は3個で切れ込みが浅い。
シナノキンバイの花弁は5~7枚、葉は深い切れ込みがある。
ミヤマダイコンソウの花弁は5枚で、葉は丸い。
ミヤマキンポウゲの花弁は5枚で、直径1cm程度と小さく、茎に付く葉は細長い針状。

 

夏に黄色い花に出会った際には、花だけではなく、葉にも注目して見分けてみてください。

 

ミヤマキンバイ(深山金梅:Potentilla matsumurae)

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>

※残席わずか まだ間に合います!!
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

残席わずか まだ間に合います!!
佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
※春の花咲くシーズンの佐渡の山旅。絶景ロッジ・ドンデン山荘に宿泊し、佐渡の最高峰金北山を目指し、花咲く楽園・アオネバ渓谷のハイキングも楽しみます。

 

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