007

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

本日は、ラン科の「ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)」をご紹介します。

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

被子植物 単子葉類   時期:7~8月
学名:Nigritella nigra ニグリテラ・ニグラ
和名:バニララン 英名:BLACK Vanilla Orchid
科名:ラン科(Orchidaceae) 属名:ニグテリア属(Nigritella)

 

一見すると地味ですが、ラン科の花の中では私がもっとも好きな花が今回の「ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)」です。
初めてこのニグラ・バニラランに出会ったのは、イタリア・アオスタ山麓でした。その時のイタリアのガイドさんから「このランは香りが特徴的なんだ」と紹介され、ガイドさんの奥様もこのニグラ・バニラランが大好きだったそうです。
その時の出会い以来、私もヨーロッパ・アルプスにフラワーハイキングへ出かける際、お客様へ紹介したい花の1つとなりました。

 

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)は、ヨーロッパの中部から南部にかけて、ヨーロッパ・アルプスでは標高1,000~2,000mの草地に生息するラン科の花で、草丈は5~20cm程度で、葉は非常に細く茎頂に向けて垂直についています。
茎頂に花弁が深紅色の小さな花がたくさんつき、見た目にはたまご型に花が密集しております。

 

注目すべきは「花の向き」です。
普通のラン科は、花の唇弁が下向きであるのに対し、このニグラ・バニラランは唇弁が最上位にあり、上向きになっているのが特徴です。

 

もう1つの注目すべき点は、冒頭でもお伝えした「花の香り」です。
たまご型に密集している花からは、バニラの香りが漂っており、少し離れた位置からもその強い芳香を感じることができます。
ただ、誰もがこのバニラの香りを好むわけではありません。
ヨーロッパ・アルプスに放牧された牛は、このニグラ・バニラランを避けて食べません。間違って牛がこのニグラ・バニラランを食べてしまうと・・・何と、ミルクがブルー色に染まってしまい、この牛乳でつくるチーズやバターなどもバニラの匂いがしてしまうそうです。
また、スイスでは乾燥させたニグラ・バニラランを虫よけとしてタンスの中に置いていたそうで、「衣蛾草(Schabenkrant)」とも呼んでいる地方もあるそうです。

 

一見すると日本ではワレモコウ(バラ科:ワレモコウ属)にも似ていますが、日本にはニグラ・バニラランの近縁種はないそうです。

ニグラ・バニラランは草地一面に群生するといったことはないようですが、花の色合いからヨーロッパ・アルプスを歩いているとすぐに見つかります。
花の観察の際、花の前で腹ばいになり、是非花の香りを感じてみてください。
あまりの香りの良さから、間違えて食べないようにご注意ください。

雨露のついたニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

 

<ニグラ・バニラランに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)
スペイン・フランス国境越え 花のピレネー山脈トレッキング

006

タマシャジン(Phyteuma orbiculare)

先日、キキョウ科の「バルバタ・ホタルブクロ(Campanula barbata)」をご紹介しましたが、本日は同じキキョウ科でも日本には自生していないタマシャジン属の「タマシャジン(Phyteuma orbiculare)」をご紹介します。

タマシャジン(Phyteuma orbiculare)

被子植物 双子葉類   時期:68
学名:Phyteuma orbiculare
和名:タマシャジン 英名:Round-Headed Rampion

科名:キキョウ科(Campanulacees) 属名:タマシャジン属(Phyteuma)

 

タマシャジンはヨーロッパ・アルプスでは名花として紹介されていることが多く、花の美しさ、花の形状のユニークさもあり、一度観察したら思わず夢中になってしまう花の1つです。私もこのタマシャジンを初めて観察したときは、驚きとともに撮影に夢中になってしまいました。

 

ヨーロッパ・アルプスをはじめ、ピレネー山脈、アペニン山脈(イタリア半島を縦貫する山脈)、バルカン半島など、広く分布する多年草で、標高2,0002,500mの主に石灰岩質の草地や岩場などに生息します。
草丈は2050㎝で、根元の葉も、茎から出る葉も幅広い剣状をしており、茎頂にいくつもの小花が集まり球状となって咲き、中には長く伸びるものもあります。

 

このタマシャジンと出会えた際、注目すべきはその小花の部分です。

小花は、暗紫色のカーブした管状花が1520個集まっており、開花しても完全に開くことはなく、管状花が先端で裂開し、そこから雄しべ、雌しべの順で飛び出しています。そして管の根元だけが開き、雌しべの基部だけが外から観察できるという、非常に変わった咲き方をしています。
日本では、近縁種のシデシャジン(キキョウ科シデシャジン属)がありますが(北アルプスで観察した記憶があります)、花びらの先端は合着しないそうです。

 

花全体が、細かい糸状の花びらが複雑なカーブを描き、繊細で美しい花のように見えるため、とても印象に残る花となります。ヨーロッパ・アルプスでタマシャジンに出会った際には、花の全体像だけでなく、その繊細な形状にも是非注目してみてください。

 

■オバトゥム・タマシャジン(Phyteuma ovatum)
同じタマシャジン属の花の中では、草丈40~100㎝と比較的大型の種です。
集まった小花が偏平に広がるタマシャジン(Phyteuma orbiculare)とは異なり、高く伸びた茎頂に咲く黒くて大きな花の形状は少し衝撃的な印象です。
掲載した写真は下から徐々に管状花が広がり始めている状態のものです。
オバトゥム・タマシャジンと似たような形状をしたもので、スピカトゥム・タマシャジン(Phyteuma spicatum)という種もあり、これはオバトゥム・タマシャジンと似たような形状ですが、黄白色~緑白色をしており、他のタマシャジン属とは違った魅力がある花です。
※写真がなく、また観察できたときに掲載します。

オバトゥム・タマシャジン(Phyteuma ovatum)

 

<タマシャジン属の花々に出会えるツアー>
※ヨーロッパ・アルプス

アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)

※ピレネー山脈
スペイン・フランス国境越え 花のピレネー山脈トレッキング

 

005

バルバタ・ホタルブクロ(Campanula barbata)

本日は「バルバタ・ホタルブクロ(Campanula barbata)」をご紹介します。

バルバタ・ホタルブクロ(Campanula barbata)

被子植物 双子葉類   時期:6~8月
学名:Campanula barbata
和名:ホタルブクロ  英名:Bearded Bellflower
科名:キキョウ科(Campanulacees) 属名:ホタルブクロ属(Phyteuma)

 

キキョウ科の植物は世界で約2000種(約90属)あると言われており、日本でも約30種が自生しています。日本では、ホタルブクロやツリガネニンジンという名で認識されている方も多いかと思いますが、チシマギキョウ(ホタルブクロ属)、ミヤマシャジン(ツリガネニンジン属)、ハクサンシャジン(ツリガネニンジン属)もキキョウ科の花となります。

 

本日紹介する「バルバタ・ホタルブクロ」は、ヨーロッパ・アルプスや中央アジアでも観察でき、標高1,100~3,000mあたりの草原地帯(礫質の草原)などに生息します。

 

草丈は10~40㎝、葉はほとんどが地表に平らに並べた形状(ロゼット状)となり、茎は分岐せず一方向に偏り、花は長さ20~30㎜の釣鐘型、うつむき加減に咲きます。薄青色の釣鐘上の花びらの縁に5㎜弱の細い毛が生えているのが特徴で、英語名「Bearded Bellflower」(ヒゲのある釣鐘状の花)もバルバタ・ホタルブクロの特徴から由来します。

 

この繊毛は、花の蜜を盗もうと登ってくる昆虫やアリの侵入を防ぎます。昆虫が花の中に入っていくと、繊毛がまとわりついて、昆虫は密に辿り着く前に地面に落ちてしまうのです。
変温動物である昆虫は、外部からのぬくもりが必要なため、バルバタ・ホタルブクロの繊毛の間に入ることができる極小の昆虫たちは、この花を宿代わりに使うと言われています。

 

その他、チャボギキョウ(Campanula cochlearifolia)、ロンボイダリス・ホタルブクロ(Campanula rhomboidalis)、イトシャジン(Campanula rotundifolia)、エキシサ・ホタルブクロ(Campanula excisa)など、様々なキキョウ科・ホタルブクロ属の花が観察できますが、これらを見分けるのは、非常に難しいです。
エキシサ・ホタルブクロは花びらの切れ込みが深く、円形に切れ込んでいるので、見分けは付きやすいですが、その他のホタルブクロ属の花は花の形状も、茎から出る葉がすべて糸状なところも、本当にそっくりです。見分けるポイントは根元の葉と言われますが・・・私も正直すべてを見分ける自信はありません。

 

■チャボギキョウ(Campanula cochlearifolia)
岩場やガレ場などにも生息。葉は楕円形で葉の縁には粗い切れ込みがある。
草丈は10~18㎝と短く、花は12~20㎜の釣鐘状。
ひとつの花茎に花が1つ、または2~3つの花を咲かせる。

チャボギキョウ(Campanula cochlearifolia)

 

■ロンボイダリス・ホタルブクロ(Campanula rhomboidalis)
標高の低い場所を好み生息。草丈は20~70㎝。
葉は先が尖った卵型の広い葉で、葉の縁には粗い切れ込みがある。
ひとつの茎から7~10個の花が咲き、花の長さは15~20㎜の釣鐘状。

ロンボイダリス・ホタルブクロ(Campanula rhomboidalis)

 

キキョウ科・ホタルブクロ属の花は、ヨーロッパ・アルプスや中央アジアでの花の観察の際、比較的よく見られるため、よく観察していただき、1つ1つの違いを観察していただくのも、フラワーウォッチングの楽しみの1つです。

 

<ホタルブクロ属の花々に出会えるツアー>
※ヨーロッパ・アルプス

アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)

※中央アジア
キルギス・カザフスタン 天山自然紀行(キルギス、カザフスタン)
天山とパミールの懐へ  夏のキルギスアドベンチャー(キルギス)

004

タマキンバイ(Trollius europaeus)

本日は「タマキンバイ(Trollius europaeus)」をご紹介します。

タマキンバイ(Trollius europaeus)

被子植物 双子葉類
学名:タマキンバイ(Trollius europaeus) 和名:タマキンバイ
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae) 属名:キンバイソウ属(Ranunculus)

 

ヨーロッパ・アルプスでハイキングを楽しんでいると、色鮮やかな黄色い色合いが印象的なキンポウゲやリュウキンカなど様々なキンポウゲ科の花々に出会うことができます。その中で、容姿がとても印象深いのが「タマキンバイ(Trollius europaeus)」です。

 

タマキンバイは、ヨーロッパの広い範囲と西アジアに分布し、初夏の草原や牧草地で多く観察できますますが、盛夏にはあまり見られません。

 

タマキンバイは、その名の通り、直径約3cmの「玉のような丸み」を帯びており、まるで蕾のような形状をしています。
蕾のような形状をしていますが、花はほとんど開かず、上写真が満開の状態なのです。
色鮮やかな黄色い花びらが10~15枚が重なっており、頭頂部は少し開いていますが、花の内部はほとんど見えません。
以前、山小屋の方に了承を得て、一輪だけ花びらを一枚ずつ取り除いてみると、内部には多数の雄しべが隠れていて、小型の昆虫(ハエ?)がたくさん入っていました。山小屋の曰く、頭頂部の少し開いている部分から小さな虫が出入りしているそうです。
草丈は45~60cmで、直立する茎は上部で分岐し、枝先に通常1個の花を上向きにつけます(稀に2、3個の花をつけるものもあります)。

 

日本国内ではシナノキンバイや、チシマノキンバイソウ、ヨーロッパを含めた海外でも観察できるキンバイソウの近縁種です。

 

群生するとかなりの広がりを見せるため、に鮮黄色のタマキンバイの群生地に出会うと足を止めずにはいられません。ゆっくり足をとめ、その形状にも注目していただきたい花の1つです。

 

<タマキンバイに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)

003

チャボリンドウ(Gentiana acaulis)

本日は、アルプス三大名花の1つ「チャボリンドウ(Gentiana acaulis)」をご紹介します。

先日よりご紹介しておりますアルペンローゼ、エーデルワイス、そして今回のリンドウが「アルプス三大名花」と言われている花です。

被子植物 双子葉類  時期:58
学名:チャボリンドウ(Gentiana acaulis)
科名 : リンドウ科(Gentianaceae) 属名 : リンドウ属(Gentiana)

 

ヨーロッパ・アルプスを訪れると、地面からトランペット状の大きな花がご覧いただけます。今回ご紹介するチャボリンドウは茎がほとんど無いうえ、花の長さが45㎝と非常に大きいことから、比較的簡単に見つけていただくことのできる花です。
同じようにトランペット状に花を咲かせるリンドウは、ヨーロッパ・アルプスには今回ご紹介するチャボリンドウ(Gentiana acaulis)、英名でトランペット・リンドウと称されるクルシイ・リンドウ(Gentiana clusii)、花の長さが他より3㎝程度と少し小さいアルピナ・リンドウ(Gentiana alpina)の3種類あり、3種とも非常似た姿をしており、見分けるのは非常に難しいです。

 

見分けるポイントの1つが「葉」の違いです。違いは以下のとおりです。
1.チャボリンドウの葉は長楕円形、葉が柔らかく、葉の長さはそれほど変化はありません。
2.クルシイ・リンドウの葉は長楕円形、葉は硬く、地面に近い方の葉が長く伸びます。
3.アルピナ・リンドウの葉は花茎のすぐ下に短い楕円形の葉を持ちます。

 

また、「花の内側」にも見分けるポイントがあります。
1.チャボリンドウは花の内側にオリーブ色の筋があり、盛り上がった黒っぽい斑点があります。
2.クルシイ・リンドウにも黒っぽい斑点がありますが、小さくあまり目立ちません。

チャボリンドウとクルシイ・リンドウは、正直2つ並べられても見分けるのは難しいかもしれません・・・。

 

上記の3種以外にも、群青色や紫色の様々なリンドウが咲きそろっており、大半のリンドウが58月と長い期間で観察ができるため、1回のハイキングで様々なリンドウが観察できますので、皆様のお好みのリンドウを探していただくのも、ヨーロッパ・アルプスでのフラワーハイキングの楽しみの1つです。

 

<アルペンローゼに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)
究極のマッターホルン展望トレッキング(スイス)

002

エーデルワイス(Leontopodium alpinum)

本日は、アルプス三大名花の1つである「エーデルワイス(Edelweiss)」をご紹介します。
被子植物 双子葉類
学名:Leontopodium alpinum
和名:セイヨウウスユキソウ
科名 : キク科(Asteraceae) 属名 : ウスユキソウ属(Leontopodium)

 

エーデルワイスの名はドイツ語の「edel」(高貴な、気高い)と 「weiß」(白)に由来し、ドイツ語圏以外でも花の白い外観は「純潔、純愛の象徴」とされ、ルーマニアでは「floarea reginei」(女王の花)とも呼ばれています。

 

ヨーロッパ・アルプスが生息地として有名ですが、初めからヨーロッパ・アルプスに分布していた訳ではなく、氷河時代(今から2万年前)も前にシベリアから渡ってきた花と言われています。実際、Leontopodium alpinumとは別種のエーデルワイスが、西はピレネー山脈から東はトルコの山岳地帯までに生育しており、中央アジアの高山帯、シベリア、パミール高原、西ヒマラヤに産するものまで確認されております。
日本でもミヤマウスユキソウ(Leontopodium fauriei)やエゾウスユキソウ(またはレブンウスユキソウLeontopodium discolor)はご存知かと思いますが、こちらも今回ご紹介したエーデルワイスの別種となります。

 

エーデルワイスは、先端に白い綿毛に包まれた星形の花を咲かせます。観察していると星型の全体が花のように感じてしまいますが、花びらに見えるのは葉っぱが変化したもので苞葉(ほうよう)といい、花本体は苞葉の中心にあるポツポツとした丸い粒(径5-6mm)のような部分なのです。
間近で観察すると、苞葉や茎にも白い綿毛が生え、乾燥や強い日射しから植物を守っています。
ヨーロッパ・アルプスでは、昔から純愛の象徴として摘み草にされてしまい、一時はほとんど観察できなくなってしまいました。現在では保護意識が進み、少しずつ増えてきているそうです。

 

<エーデルワイスの探し方>
エーデルワイスは高山帯の石灰岩地や砂礫地を好みます。
実はエーデルワイスを探す際には、アルペンアスター(Aster alpinus ミヤマノギク)を手掛かりにします。アルペンアスターが咲かない場所にエーデルワイスが咲くことは滅多にありません。アルペンアスターが咲いているポイントに遭遇した際、辺りをゆっくり観察してみてください。

 

<エーデルワイスに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
究極のマッターホルン展望トレッキング(スイス)

001

アルペンローゼ(Rhododendron ferrugineum)

 本日より定期的に高山植物をメインとして、世界各国の花々を紹介させていただきます大阪支社 高橋と申します。
 長らく添乗を続けていく中で、お客様とともに日本各地や世界各国で高山植物を観察していると、心癒されることも多く、いつしか私自身も高山植物に興味を持ち始めるようになりました。

 先日自宅から通勤ルートを歩いていると、近所でツツジが観察でき、またツツジの名所の開花が始まったとのニュースで発表されていたこともあり、同じツツジ科の花にしようと決め、ブログ「世界の花だより」の第一回目はアルプス三大名花の1つである「アルペンローゼ(Rhododendron ferrugineum)」というツツジ科の花を紹介させていただきます。

アルペンローゼ(Rhododendron ferrugineum)

 被子植物 双子葉類
学名:Rhododendron ferrugineum

科名 : ツツジ科(Ericaceae) 属名 : ツツジ属(Rhododendron)

 

「アルペンローゼ(Alpenrose)」は、ドイツ語の呼び名で「アルプスのバラ」という意味です。アルペンローゼという名称ですが、実際はバラではなく、ツツジ科ツツジ属に属する植物です。

 

主に、ヨーロッパ・アルプスやピレネー山脈、ジュラ山脈(アルプス山脈の西端)、アペニン山脈(イタリア半島を縦貫する山脈)に分布します。
高原の森やその周辺、石灰岩の隙間に生育し、5~7月にかけて細長い花を咲かせ花の大きさは日本のツツジに比べると小さく、小花の長さは1018mmの筒状で5つほどの小花に分かれます。
英語では「rusty-leaved alpenrose(錆びた葉のアルペンローゼ)」などとも呼ばれており、葉の裏の色の特徴からそう呼ばれています。英語ではその他に「Snow-rose(雪のバラ)」とも呼ばれることがあり、これは霜に敏感なアルペンローゼが冬の期間は分厚い雪の下で寒さをしのいで過ごすためと言われています。
実はアルペンローゼは有毒で、放牧地には好まれていない植物で、餌が少なくなる冬に、シカやカモシカがこの有毒な植物を食べてしまうこともあるそうです。

 

同じアルペンローゼでも、比較的珍しいヒルスツム種(Rhododendron hirsutum)があります。この2つはよく似ているので、見分けるのは難しいですが、ヒルスツム種の葉はたくさんの繊毛に覆われており、葉の裏は緑色のため、その違いで判別できます。

 

ヨーロッパの名峰を眺めながら、このアルペンローゼの群生に出会うと、山頂に真っ白な雪を冠した雄大なアルプスの山々に、アルペンローゼの可愛いピンク色の花が良いアクセントを与えてくれ、ヨーロッパらしい美しい景色を楽しむことができます。

モンテ・ビアンコ(モンブラン)の麓に群生するアルペンローゼ

 

<アルペンローゼに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)